![]() | 【秘】 ユス → 共犯者 ツルギ 殴打音。殴打音。殴打音。 うららかな春の陽気。昼下がりの穏やかな時間帯。 日常が、一回ずつ丁寧に殴られ壊され崩れていく。 弟が呼吸すら止めるのに時間はたいしてあまりかからなかった。殴られて意識を手放す瞬間か細い声で「兄ちゃ、」と自分を呼びながら助けを求めていたのを熱も何もない瞳で見下ろしていた。 弟だったものがじわじわと床を赤く濡らしていく。日常がじわじわと非日常に侵されていく。 「ああ」 ……それでも、弟に関して何か思うことはなかった。 「何度も振り下ろすのは意外にも疲れそうだとは思ったが」 バットを受け取る。 持ち手から伝わる貴方の温もり。歪んだ先に残された弟の痕跡。 人が人らしく生きた、生きていた名残に一度触れて、 「何も問題ない」 それきり、弟の名残に興味を持つことはなかった。 ▼ (-118) もちぱい 2022/03/12(Sat) 8:33:16 |
彼女の兄だった ユスは、メモを貼った。 ![]() (a28) もちぱい 2022/03/12(Sat) 8:35:10 |
![]() | 【秘】 共犯者 ユス → 共犯者 ツルギ 女の頭へ振り下ろす。 女の頭へ振り下ろす。 女の頭へ振り下ろす。 誰にだってできる、簡単な単調作業。お手本の通りに、妹を壊していく。 自分や弟と出かけられると、浮かれて無防備に背を向けていたところを襲った。最後に聞いた妹の声は甲高い悲鳴だった。事態を把握できないまま苦痛に満ちた声がこぼれ落ちた。 それも直ぐに金属が肉と骨を叩く音で塗り潰されていく。 人を殺すのは初めてだったから、何度やればいいのか分からなくて。 ぴくりとも動かなくなってからも、ツルギが念入りに叩いた回数よりも多く金属バットを妹だったものに振り下ろした。 「……」 どれくらい殴っただろうか。 気付けば手も額も汗にまみれていた。慣れない作業でやたらと息が乱れてしまって、呼吸を整えようと何度も肩が上下に揺れた。 妹の様子を確認する。息をしていないことを確認してから、更に歪んでしまったバットを握ったまま共犯者へ向き直る。 「人ひとりを殺すのも楽ではないな」 妹を殺して出た感想はそれだけだった。 妹に関する感想は、特に何も無かった。 (-119) もちぱい 2022/03/12(Sat) 8:37:05 |
![]() | 【秘】 規律 ユス → 奇形 メイサイ>>-77 >>-78 「そうか。それは残念だ」 見れたらいいなと思うくらいなので、残念とは口にするけどそこまで残念がってはいない。 「ここで気楽にいられる奴は、恐らく世間というマジョリティや現実が齎す事実やしがらみに押し潰されてしまいそうな者たちだろうな。俺という個人の経験則からしか言えないが。 ここは咎める人も法もない。己の命を顧みないことが出来るなら、絶好の逃避場所だ」 「ナツメは……あいつは合議、意見するのに相当苦労していたように見えるな。リスでもまだ動けるだろう。リスのほうがマシかもしれない」 あまりにもあんまりな言い草。だからこそ、薬局の騒ぎなどで動くことを選んだ事実は彼女が一生懸命頑張った証であると青年は素直に評価している。 「……はあ。内情を晒すのに見学も参加者も関係ない気がするがな」 そう呟いて耳を傾ける。 ▼ (-123) もちぱい 2022/03/12(Sat) 10:21:48 |
![]() | 【秘】 規律 ユス → 奇形 メイサイ>>-77 >>-78 「……」 貴方の言葉で全て繋がった。貴方の状況を察し、その上で貴方が取った選択を振り返る。 「……。どういたしまして、後輩。 俺の話を参考にするもしないもお前の自由だ。不要なら捨てるといい」 「ただ」 囁いてきた貴方に手を伸ばす。 触れようとしたのは左胸。けれどその指が貴方の体に当たることなどなく、そのまますり抜ける。 ──貴方の体の中まで。 さて、心臓はこの辺りだろうか。 「お前がどうしようとこれからも何処かで誰かが提供者として選ばれ続ける。明確にどこの臓器が誰に移植されるか決まっていなかったとしても。 俺たちがこれからも過ごす毎日は、たまたま選ばれてしまった誰かの血肉と臓器で舗装されている。 そういう規律が作られてしまったから」 「俺たち候補者は僅かに残された選択の余地で死ぬかもしれない人間を選ぶことができるが、最終的に誰を殺すか決めるのはこの国だ。 あらゆるものを奪っていくのはこの社会だ。 人が人であるかぎり、俺たちは社会に管理され続ける」 ──だから、お前がそこまで気負う必要はないと思うんだがな。 最後のは自分の意見だ。でも、それは言わなかった。 ▼ (-124) もちぱい 2022/03/12(Sat) 10:23:13 |
![]() | 【秘】 規律 ユス → 奇形 メイサイ>>-77 >>-78 「……話が長くなってしまったな」 ぱ、と後輩の中から手を引き抜いた。 「それじゃあ俺はこの辺りで。お疲れ様」 そう言って踵を返す。 「メイサイ」 「賭けに勝ったお前にも、何か配当があるといいな」 心が欠けていたとしても。 似た境遇の後輩に何か思うところは、この青年にもあったのだ。 (-125) もちぱい 2022/03/12(Sat) 10:23:58 |
![]() | 【秘】 規律 ユス → 普通 ナツメ>>-92 少女は好きなものを好きに飲むだろうと思って自分の分しか出さなかったのだが、まさか分けてと言われると思わなかった。 でも断る理由が無かったので飲む前にお裾分けする。だばだばだば。コップの9分目まで入れた。 「……言われてみると色々あったな」 つらつらと並べられたものを思い出して呑気にそう呟いた。 「俺もカミクズさんに投票したし、他の者もそうした。予備提供者になった原因はお前だけではないのにそれでも後悔するのか」 後悔する理由が分からなかった。 「怖い、か。この合議の期間中そう思ったことはなかったな。嫌悪だとか嫉妬だとか、よくない感情はいくつか出てきたことはあっても恐怖は無かった。大怪我をして死ぬ間際になれば、きっと本能的に死にたくないと怖がるかもしれないが」 どんぐりクッキーをさくさくつまみながら、やっぱり呑気そうに答えた。 (-126) もちぱい 2022/03/12(Sat) 10:51:13 |
ユスは、途中、後輩の返答を聞いて目を一瞬丸くしたことだろう。 (a29) もちぱい 2022/03/12(Sat) 11:46:58 |
ユスは、抵抗も、反抗期も、切り捨てて楽な道を選んでいたから。 (a30) もちぱい 2022/03/12(Sat) 11:47:23 |
ユスは、だから、目を丸くしたあとほんの少しだけ瞳を細めていた。 (a31) もちぱい 2022/03/12(Sat) 11:48:12 |
ユスは、笑い声を聞きながら立ち去った。自らの意思で「俺のようになってほしくない」とはっきり思いながら。 (a32) もちぱい 2022/03/12(Sat) 11:54:16 |
![]() | 【秘】 規律 ユス → の名残 カミクズ『そうですね。おかしな話だ』 自分の知る限りでは、脳や心臓が動かなくなれば人なんてそこで物語の幕が下りるものだから。その先の蛇足なんて誰にも紡げないものであると思っていたから。 『でも、それでもいいと思います』 『カミクズさんが後悔しないのなら』 『ここにはおかしいからやめろなんて、意思を取り上げ押しつぶしてくるような法も人もありませんから』 死者にとっての都合のいい話があってもいいじゃないか。どうせ全てが水泡へ変わっていく夢なのだとしたら。 誰かだって言っていたでしょう? 『W最後に楽しかったなって思って死ねるなら、 それは幸せな事ですからW』 『消えてなくなり本当に死を迎えるまで、それを追い求めてもいいんじゃないでしょうか』 ▼ (-142) もちぱい 2022/03/12(Sat) 19:25:41 |
![]() | 【秘】 規律 ユス → の名残 カミクズ 貴方の本心を黙って聞いていた。死んでから自覚した思いを拾い上げていた。 名残が生者に出来ることなど、ほんのささやかなものでしかなくて。手を伸ばしてもすり抜けてしまう。 そんな光景を思い浮かべて、苦い味が胸の中に広がった。 『遺される側は辛いとは時折聞きますけど』 『 その場 に遺される死者も、辛いのでしょうね』▼ (-143) もちぱい 2022/03/12(Sat) 19:26:01 |
![]() | 【秘】 規律 ユス → の名残 カミクズ『後悔は特にしませんが』 馬鹿正直に前置きを述べた。この青年はもう天秤が一つの存在以外に傾くことなんてないから。躊躇いなく身も蓋もないことを述べてしまう。 『貴方とまた話が聞けてよかったなと思います。俺にとって有意義な時間でした。 もう少し話をじっくり聞きたかったとさえ考えるほどに』 今後の活動の為に聞いた話だけではなくて。 いつも曖昧に笑ってひた隠しにしていた貴方の本心を聞いているこの光景が見れたことも、青年にとっては歓迎すべき利であったのだ。 ▼ (-145) もちぱい 2022/03/12(Sat) 19:26:21 |
![]() | 【秘】 規律 ユス → の名残 カミクズWこの場所は、ここで誰かと過ごした時間はW Wきみにとって少しでも、納得とか、満足の行くものでしたかW 『』 入力中。けれど、それも一瞬のこと。 『いいえ』 『と答えたら、貴方はどうしますか? ……半分はいで、半分いいえと答えるべきでしょうか。』 『俺は最初、命を返しに来たんです。 俺は臓器移植によって助かって、今こうして生き続けることが出来たから。 周りからは救われた命を無駄にするなと言われたから、惰性で生きて批難されるくらいなら提供者として死んで無駄なく命を使おうと思った。 貴方の次に、立候補するつもりでした』 『でも生きる理由そのものに出会いました。 そのせいで俺は欲が出るようになりました。 人と過ごす時間がもっと欲しいと思うようになりました。 足りない。全然足りない。 生き続けるのであれば、この狭い箱庭のちっぽけな時間だけじゃ満足できない』 勢いのままに、ペンを走らせて入力した。力が必要以上に込められる。 『……そう、思うようになりましたよ。 自分が何かをこんなにも強く欲するなんて、思っても見なかった。』 ▼ (-147) もちぱい 2022/03/12(Sat) 19:29:15 |
![]() | 【秘】 規律 ユス → の名残 カミクズ『生きる理由となった者と過ごす時間以外についても。 考えさせられることが多かった。何も思わない、なんて時間は一つもなかった。あればあるだけ、欲しいとずっと満足しないままかもしれません』 『当然、貴方との時間も』 しっかりと、念を押すように答えた。 貴方がどう考えようと関係ない。 青年にとって、例外なく貴方との時間にも思うことが沢山あった。それだけだ。 (-148) もちぱい 2022/03/12(Sat) 19:31:23 |
![]() | 【秘】 共犯者 ユス → 共犯者 ツルギ まだ少し荒れた息のままじっと動かず、大人しく貴方に拭われる。 無愛想な顔に紅が混じる。自分の弟や妹だったものの名残。けれどそれが心を揺らすことなど微塵もなく、先程まで聞こえていたような気がする幼い声がもう一度呼び起こされるなんてこともないまま青年の顔を汚した。 「親が俺たちに何かあった時のためにと隠すように続けていた貯金の通帳がそこの棚にある。 使わずとも持っていけばより空き巣らしくなるだろう。後はそうだな……」 他人事のように家の内部を説明し、荒らせる箇所を示していく。 日常の名残が、共犯者達が残していく名残によって上書きされていく。 粗方説明し終えると二人分のグラスを食器棚から取り出し、水道水をいっぱいに入れて片方をツルギに差し出した。本当はこの日の為に炭酸飲料でも買っておこうと思ったが、家で殆ど飲まなかったのにいきなり用意すると家族に怪しまれるので買えなかった。 水を一息に呷る。思ったよりも喉が渇いていた。 「ああ。そろそろだな」 バットを持ち直す。 「いってくる」 (-151) もちぱい 2022/03/12(Sat) 20:57:24 |
![]() | 【秘】 共犯者 ユス → 共犯者 ツルギ 玄関の鍵が回り、それからすぐに慌ただしい足音と共にリビングの扉が開かれる。 目を見開き入り口で立ちすくむ母の顔は仕事帰りもあってか疲労が滲んでいた。 二年前に父が亡くなって専業主婦をやめて働くことを決意してから、みるみるうちに母は草臥れたような姿に変わっていった。 W……ぇ、あ。よしの──W 母は状況を掴めず混乱していた。それもそうだ。何の前触れもなく日常が滅茶苦茶に荒れ果てていたのだから。 でもそんなものだろう。父が交通事故で亡くなった時だって、何の予兆などなかったじゃないか。 己の名前を呼ばれるよりも前にまず一度金属バットを振り下ろした。 女の体が呆気なく床に崩れ落ちる。邪魔だったから物が沢山詰まった手提げ鞄を足で蹴飛ばした。 もう一度両腕を持ち上げる。 女は呻いていた。 なんで。どうして。義徳。義徳。 頭を揺さぶられて吐き気がするのだろう、気持ち悪そうに呻きながら己の名を呼んでいた。殴ったのは自分なのに。 「……」 何も思わなかった。そのまま凶器を振り下ろした。 (-152) もちぱい 2022/03/12(Sat) 20:58:02 |
彼女の息子だった ユスは、メモを貼った。 ![]() (a39) もちぱい 2022/03/12(Sat) 20:58:34 |
![]() | 【秘】 共犯者 ユス → 共犯者 ツルギ 母の頭へ振り下ろす。 母の頭へ振り下ろす。 母の頭へ振り下ろす。 誰にだってできる、簡単な単調作業。きっとこれは神様がくれた、否、違う。 俺たち二人が掴み取った 幸運 だ。もうなんだってよかった。 もう生きたいなんて思わなかった。 どうでもよかった。 だって、 何故なら、 「お母さん」 自分の命は、自分だけのものでは無いらしいので。 (-153) もちぱい 2022/03/12(Sat) 20:59:27 |
![]() | 【置】 共犯者 ユス「命をくれた人に感謝するんだ」 うん! おかあさん。 「その人がいなかったら今の貴方はいなかったのよ」 ありがとうって、ちゃんと言うね。 「何馬鹿なこと言っているの。命を救われたのだから、もっと人の役に立つ仕事に就かないとダメじゃない」 他の子みたいにしちゃダメなの? 「大きくなったね義徳君。昔はよく寝込んでいたのになあ。救ってくれた人に感謝しなくてはね」 そうだね、叔父さん。 「ちゃんと今年の分の手紙は書いたの?こういうのは欠かしてはいけないのよ」 誕生日よりも大切なことなんだね、お母さん 「毎日を大切に生きれば、きっと貴方の中で生きる提供者の方も喜ぶと思うわ」 先生。臓器は何も言いません。俺に心臓をくれた人は、こんな臓器一つになってまでも生きていると思われたいのでしょうか。 (L0) もちぱい 2022/03/12(Sat) 21:00:27 公開: 2022/03/12(Sat) 21:05:00 |
![]() | 【置】 共犯者 ユス ありがとうございます。 命を救ってくださりありがとうございます。 自分の命は貴方のおかげで助かりました。 この御恩は一生忘れません。 これからは毎日感謝を忘れず生きていきます。 ありがとうございます。 この命は自分だけのものではありません。 無駄にする事なく生きていこうと思います。 貴方に誇れる人間になることを努力します。 世のため人のために生きていこうと思います。 ありがとうございます。 (L1) もちぱい 2022/03/12(Sat) 21:00:55 公開: 2022/03/12(Sat) 21:05:00 |
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![]() | 【秘】 ユス → 共犯者 ツルギ 女の頭へ振り下ろす。 女の頭へ振り下ろす。 女の頭へ振り下ろす。 誰にだってできる、簡単な単調作業。 女が物言わぬ肉塊になっても尚、ずっとそうし続けていた。 珍しい景色が見たかった。 もう一度考えることを始めた心が、久方ぶりに動くほどの景色が見たかった。 俺の中にある他人を見ず、俺を見てくれたお前が心から笑う姿が見たかった。 もう、それしかないんだ。 それだけが、生きる理由なんだ。 ……一成。 俺の命は、俺だけのものではないから。 (-154) もちぱい 2022/03/12(Sat) 21:04:21 |
加害者 ユスは、メモを貼った。 ![]() (a40) もちぱい 2022/03/12(Sat) 21:05:46 |
![]() | 【秘】 共犯者 ユス → 普通 ナツメ「どうやら嫉妬するらしい。俺も驚いた。 俺のものに手をつけられるのは酷く嫌だった」 まるで他人事のように答える。例えようのない、制御しようがない心の動きを自分の中で観測するなんて随分と懐かしいものだったから。 さて、後悔の話に関しては。 「成る程な。逆に知らなければ精神的に負荷が掛からず済むと考える者だっているだろうに、ナツメはそうではなかったということか」 どんぐりクッキーをひょいと口に入れ、水で喉を潤してから言葉をまとめる。 「知らないことを綺麗だと言うのか。 俺は逆に、そういう自覚できていなかった己を知ることが出来れば今後何処かで活かすことができる情報が増えると考えて良いものだと思うのだがな」 「知らなければ挽回も出来ない。知らなければ改善も出来ない。知らないまま悪手を取り続けたとしても、気付けない。 それは時に罪とも呼ばれるし、愚かとも蔑まれる。 無知のまっさらで綺麗な白より、俺は多くを知っている濁りの方が好ましいと思うぞ、ナツメ」 貴方をフォローしているというより、最早個人の好みの話をしているようだった。 (-162) もちぱい 2022/03/12(Sat) 22:58:28 |
![]() | 【神】 共犯者 ユス 指をさす姿を見るのもなんだか懐かしく感じられるな(>>2:11)と思いつつ、「行儀が悪いぞ」と言ってやった。今回は規律を遵守する者ではなく、単純に揶揄うつもりで。 叩きつけられたメモを見る。 「ふむ。だいたい何も決まっていないな」 馬鹿正直に答えながらツルギにもメモを渡しつつ。 「だからこのメモがどんな話になるのか分からない。 完成したら、ツルギと観に行くかもしれないな。お前にとって悔いのないものを作ってくれ。俺は舞台を見たことがないから、お前の作品が初めての舞台鑑賞になる。 一人の観客の舞台イメージが良いものになるか悪いものになるか、お前次第ということだ」 「頑張るといい。頑張ったら、脚本芥像の建設費用少しくらいは出すことを考えてやるから」 そう言いながら貴方が裁判場へ出ていくのを見送ったのだった。未来の自分達がどんな景色を見るために何をするのかなどは伏せたまま。 ……それは、貴方と話をするのに必要ないだろうから。 (G33) もちぱい 2022/03/12(Sat) 23:40:02 |
ユスは、アクタから貰ったメモを撮影して端末に保存した。 (a47) もちぱい 2022/03/12(Sat) 23:41:06 |
![]() | 【秘】 共犯者 ユス → 怪物 ツルギ 何も聞こえない。 痛いほどの静寂が広がっている。耳に飛び込むのは自分の乱れた吐息だけ。 家族がいない時の家はこんな感じだっただろうか。でも、一人でいた時の空気にしてはいやに気持ち悪かった。落ち着かない。 「………………はぁ」 俯けば普段後ろに流しているはずの前髪がだらりと視界を塞ぐことに気付いた。鬱陶しさに思わず乱雑に片手で前髪をかき上げれば僅かに滲んだ手の汗が額をかすかに濡らした。 Wなんか事故でもあって、親が死ねばそこで終わるけどW。 あの時、紛い物の世界の中で貴方が語った嘘を思い出す。 「……あれは確かに嘘だったな。 死んだところで何も終わりになるはずがない。 死者が齎すものは名残のみ。終止符をくれることなど決してない」 もう一度、深いため息をついた。 「終わったところで、楽になるという気持ちなど手に入らないな」 葬儀が面倒だなとか、遺産の処理も考えるだけで億劫だとか、そんな場違いな事が脳裏によぎった。 (-171) もちぱい 2022/03/13(Sun) 3:56:31 |
![]() | 【独】 共犯者 ユス ──こうして、似た状況を作り上げて気付いてしまう。気付いてしまった。 ああ、彼と相互理解するのは不可能なのだと。 可能性も、見いだせないと。 胸に去来する感覚に意識を向ける。 血の繋がる人間を全て殺した時から迫り来る何かが、みるみるうちに心を食い潰していく。 無理だと悟った原因。心を埋め尽くす一つの感覚。 ああ、それを、言い表すならば──。 (-172) もちぱい 2022/03/13(Sun) 3:57:30 |
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![]() | 【秘】 怪物 ユス → 怪物 ツルギ ただただ虚しい。何もない。 救いもない。絶望もない。 楽にもならず、苦にもならない。 ただ心の中に虚が広がっていくばかり。 憤りは当然のこと、寂しいも悲しいも苦しいも何もなかった。 全て自分の意思だ。 自分の選択で殺した。 家族だけじゃない。己もだ。 考えることを放棄した時に自分は心を切り落としたんだ。 他の人ならきっとやりようはあったかもしれない。でも自分はこの選択を取り続けた。やめる事ができた筈なのに、望んでこの選択をし続けた。 人の心臓を貰い救われて、誰か見知らぬ人間が選ばれ死んでいく事実を踏み台にして生きて帰ってきたと思えば家族を皆殺し。 親不孝者、忘恩の徒。 命を踏み躙る怪物、人でなし。今の自分はまさにそれだ。 (-174) もちぱい 2022/03/13(Sun) 4:03:01 |
ユスは、小さく喉を鳴らした。「……ふ、は。……はは、ははは……」 (a55) もちぱい 2022/03/13(Sun) 4:03:23 |
![]() | 【秘】 怪物 ユス → 怪物 ツルギ どうしてこんな生き物になってしまったんだろうな。 父も母も堅物が過ぎるが、真っ当な人だったのに。何一つ不幸せな事などない、ごく普通の家庭だったのに。 どうしてだろうな、なんでだろうな。 同じ境遇にあっても、他の人はきっと違っただろう。 ……ああ、ツルギが話していたな。 W生まれた子供に罪はないWと。 罪は無い。罪が無かったとしても、だ。 (-176) もちぱい 2022/03/13(Sun) 4:06:40 |
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![]() | 【秘】 怪物 ユス → 怪物 ツルギ 結論を口にする。それでも何か思うところなどない。あったとしても、きっと生まれたそばから抜け落ちて周りに叩き落とされ潰れている。 だって、自ら器の底を切り取ってしまったのだから。 (-177) もちぱい 2022/03/13(Sun) 4:08:25 |
![]() | 【秘】 怪物 ユス → 怪物 ツルギ「…………」 WそれWを見た。 氷とかじゃなくて、これは、そう───包丁のような。 馴染みのあるものだった。自ら何もかもを切り捨てた自分に呆れた人間がよく見せていたものだ。 理解する。 声に出さずとも、その声その目その態度が全てを伝えてくれる。 可能性をまだ純粋に信じていたのなら、そんな反応見せる筈がないだろう? なんだ、もうお前も分かっているじゃないか。 きっと無理だ、同じ景色を見るなんて。 なんだかおかしくてもう一度乾いた笑いが出そうになった。目の前で笑ってやろうかと思った。 笑ったまま、目の前で死でやったらどうなるんだろう。 悲しむ? 泣いてくれる? ああでも、きっとただ可能性がありそうな人間を失ったと落胆するだけのような気もするな。 お前が泣いていたのは、本心を晒した時だったから。 夢が叶わず落胆するなんて、もう散々経験しているものな? 慣れているだろう? (-178) もちぱい 2022/03/13(Sun) 4:09:49 |
![]() | 【秘】 怪物 ユス → 怪物 ツルギ「ツルギ。ここは暗いな」 徐に口を開いた。 「俺のいる場所は、周りが色褪せて見えたままだ。けれど此処が明るく鮮やかな訳じゃない。暗くて、誰もいない。 誰もいないんだよ」 こんな人でなしの周りなんて。 けれどきっと、貴方と同じ場所にはいない。 こんなにも近くにいるのに、自分たちは。 ──ひとりぼっちのまま、それぞれのトンネルに閉じ込められながら並んでいる。 (-179) もちぱい 2022/03/13(Sun) 4:10:36 |
![]() | 【秘】 怪物 ユス → 怪物 ツルギ 服を着替えろと勧めた貴方の言葉を無視して貴方の目の前まで歩み寄る。 普段綺麗に整えられている髪も、数歩動いただけでぐちゃりと揺れて崩れた。濡羽色した前髪が、ばらばらと血に塗れた青年の顔を覆っていく。 「…………」 一度濁れば、もう無色透明に戻ることは叶わない。 人でなしの汚濁を湛えた眼差しが、じぃと貴方を見下ろしている。 「……………………」 かすかに小首を傾げる。 こきん、と己の首の骨が高く鳴いた。 (-180) もちぱい 2022/03/13(Sun) 4:11:34 |
![]() | 【秘】 怪物 ユス → 怪物 ツルギ「ツルギ。聞きたい事がある」 怪物は静かに貴方を見ている。 「お前の目には、俺が……俺たちがどう映っている?」 その濁りは、貴方を見下ろしている。 「これは全て俺の意見なんだがな」 「お前は出会う者たちを理解者たり得るか、そうでないかの基準でしか見ていないんじゃないかと思うんだ」 じっとこちらを、周りを見据える刃物のような視線を思い出していく。 貴方は己を試していた。ずっと、ずっと。 今だってそうだったのだろう。 自分に都合の良い存在かどうか、試していた。 「周りの顔色ばかり気にして」 「そのくせ、試すようなことばかりをして」 「怖くなったら予防線を張って」 「お前自身が、お前の周りに瓦礫を積み上げる」 ▼ (-194) もちぱい 2022/03/13(Sun) 12:59:59 |
![]() | 【秘】 怪物 ユス → 怪物 ツルギ「なあツルギ。 俺は、お前だけが俺を見てくれていると思っていた。 周りは常に俺の中にある他人を必ず見ていて、俺という個人だけを見ようとはしなかった。 でも違う。 お前は俺という個人すらも見ていなかった。 お前は散々他人から誰かの代わりとして見続けられたのに、 他の誰でもない自分自身を見て欲しいと思っているのに、 お前は他人越しに理想の存在ばかりを夢見ている。 お前にとっての俺は唯一か? お前にとっての俺は、ほんとうに俺の形をしているか? 個を見ようとしない限り、 お前がその人を品定めする目を止めない限り、 お前が人を人として見ようとしない限り、 お前は誰にも見てもらえない。 ……今のお前では、きっと何処にもいけないよ」 ▼ (-195) もちぱい 2022/03/13(Sun) 13:00:44 |
![]() | 【秘】 怪物 ユス → 怪物 ツルギ「……でも」 「それでもいいよ」 「俺は、それでもいい」 振り返る。あの紛い物の、仮初に満ちた世界での日々を。 「お前にとって俺は理解者になる資格など持っていなかったとしても。 お前の唯一になれなかったとしても」 たのしそうにわらう顔が。 全てを晒して泣く顔が。 貴方が見せてくれた本心が。 「お前が俺の心を確かに動かしたことだけは真実だ。 虚ろしかなかった俺の心が、 何もかも切り落として死んだはずの俺の心が、 心臓を取り上げられた時から他人に居場所を奪われた俺が、 もう一度生き返ったのはお前のおかげだ」 こうして、本物にまみれた暗い世界に戻って来させた。戻ってきてもいいと、思えた。 紛い物の世界の中で手にしたもののなかでも、 この感情だけは、本物だ。 (-196) もちぱい 2022/03/13(Sun) 13:03:00 |
![]() | 【秘】 怪物 ユス → 怪物 ツルギ「俺もまたもしかすれば心が動かしてくれるなら、個を見てくれるなら誰でもよかったのかもしれない。 でも、ありとあらゆる可能性の中から俺が出会ったのは剣城一成だ。 俺にとって、唯一として大切にしたいとW俺の意思でW選択したのは、剣城一成ただひとりだ。 もう、誰でもよくなんかなくなったんだよ」 考えることを放棄したのを放棄した。 もう一度生き返って、考えて考えて錆びついた頭が壊れそうになっても考えて、 そうして手にした選択がこれだ。 貴方にとって自分がどれほどの価値だったのか分からない。 けれど、自分にとって貴方の価値は、 命だけではなく全てを捧げても惜しくないものなんだ。 ▼ (-197) もちぱい 2022/03/13(Sun) 13:03:41 |
![]() | 【秘】 怪物 ユス → 怪物 ツルギ「ツルギ。 俺はお前の命も、時間も、感情も、何もかも。 俺が、俺の為に、全部欲しいって思ってる。 お前がそうじゃなかったとしても。 似た苦しみも、おぞましい痛みも、必要なら喜んで飲み干すと言った。 約束は違えない。俺は、お前以外は平等にどうでもよくて、平等に無責任を振りかざす。 でも、お前のことだけは何があっても全て責任を取る。 お前を理解できなくても、お前と同じ場所に並んで立てなくても、 俺は壁の向こう側にいてもなお傍らにいる。 壁を挟んでも、ずっと近くにいる」 泣いて突っ伏す貴方の足元にずっといたように。 「暗くても、ひとりぼっちでも、俺は平気だから。俺は、怖いなんて分からない人でなしだから。 俺はお前のものとして生きているだけで、お前が作る景色を見る事ができるだけで、お前がお前らしく振る舞うのを見るだけで、それでいいんだ。 俺は理解者なんていらない。理解されなくても、俺はお前のおかげで虚しさを埋める事ができるから」 ▼ (-198) もちぱい 2022/03/13(Sun) 13:04:31 |
![]() | 【秘】 怪物 ユス → 怪物 ツルギ「ツルギ。 俺とお前、共犯者がやる事はこれで最後だ」 「着替えてくる。 あとはお前の手で、俺に暴力を振るって被害者に仕立て上げるだけ」 「それで俺とお前の罪は完成する」 共犯者は穏やかに語る。 「でも、どの選択をするかは全てお前に任せる。 このまま完遂して、俺と生きるでもいい。 全て諦めて自殺するでもいい。 嫌になったからと俺を殺しても構わない。 着替えている間に逃げたっていい。 何もしたくないなら、これ以上お前が苦しまないように俺がお前を殺すとしよう。 俺はお前にだけ、全ての責任を持つ。 俺はお前だけ、全て受け入れる。 お前の為に、俺の為に、俺は動く」 ▼ (-199) もちぱい 2022/03/13(Sun) 13:05:33 |
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ユスは、真正面から君に向かって笑った。 (a60) もちぱい 2022/03/13(Sun) 13:13:03 |
ユスは、一度、肩をとんとそっと触れて部屋に一度戻った。 (a61) もちぱい 2022/03/13(Sun) 13:14:20 |
![]() | 【秘】 ユス → 怪物 ツルギ それから暫く経ったのち、穏やかに笑いながら君の共犯者は同じ場所に戻って来る。 少年の選択を確かめる為に。 (-201) もちぱい 2022/03/13(Sun) 13:15:54 |
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![]() | 【秘】 ユス → 怪物 ツルギ されるがままに引き寄せられる。ぼやけた視界の中で、人でなしがわらっている。 貴方が吠えている。貴方が晒している。 透明だった、呪いまみれの貴方がなりふり構わず叫んで泣いている。 ……ああ、珍しい景色だ。良い光景だ。 大切にしたい。胸に広がる温かさをそのまま外に出して、貴方を包んであげたい。 ……ああ、これはきっとW愛しいWなんだろうな。 貴方とは反対に、青年は瞳を更に細めた。 「そうか。恐いか。訳わからないか。 俺も分からない。よく話すお前のことだって完璧にわからないのに、人間の本質なんて理解できるはずがない」 涙はとうに枯れ果てた。最後に泣いたのはいつだったか。調理実習で玉ねぎを切った時くらいだったかもしれない。 でも、貴方は違う。きっと、いつもいつも泣いていたんだ。貴方が気付かないだけで、貴方すら気付かない暗闇の中で、ずっと、ずっと。 「教えていいのか」 「じゃあ、教えよう。俺なりの回答だがな」 出来て当たり前なんてものは無い。 全員が全員、世間一般に当てはまることなんてないのだから。 ▼ (-229) もちぱい 2022/03/13(Sun) 16:55:46 |
![]() | 【秘】 ユス → 怪物 ツルギ「夢を捨てろ。夢から醒めろ。 ここは仮初の世界でも夢の世界でもない。 ゼロになりきれない可能性を追い続けるのはやめろ。 W賭けWばかり続ける天任せの生き方をやめろ。 理解者を作ることしか考えないのを止めてくれ。 理解者は作ろうとして作るものじゃない。 人を知って、知ったものを積み上げて その果てにはじめて作られるものだ」 ▼ (-230) もちぱい 2022/03/13(Sun) 16:56:39 |
![]() | 【秘】 ユス → 怪物 ツルギ「……だから、俺と生きよう。 今すぐ死にたいと言うのなら、すぐに殺すつもりだったのだが。 教えろと言われたのなら、教える為に俺はお前と生きたい。 なんてことない会話をして、 なんてことない食事をして、 なんてことない外出をして、 なんてことない時間を過ごす。 そうして、生きた名残を積み上げたい」 もし嫌じゃなかったら…次は、誰かと来るといいですよ。二人で海を見たり、砂浜歩くだけでも、きっと何か… 何も思わない、って事は、ないんじゃないかなって… 「二人で色んな景色を見よう。 一人で見ても何も思わないものでも、二人で見れば何か変わるものだってあるだろう。 俺は海が見たい。カフェに行ってクリームソーダが飲みたい。どこかの誰かが脚本を務めた舞台が見たい。 お前と、一緒に」 「今度は、理解者を作るなんてことを考えないままで」 ▼ (-231) もちぱい 2022/03/13(Sun) 16:57:32 |
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ユスは、誰かの真似をした。小さな狭い海で教わった、その名残。 (a72) もちぱい 2022/03/13(Sun) 17:00:02 |
ユスは、片手で泣きはらした貴方の両目を隠して、君の額に唇を寄せる。 (a73) もちぱい 2022/03/13(Sun) 17:00:17 |
![]() | 【秘】 ユス → 怪物 ツルギ「考えるのが疲れたなら、考えなくていい。 決めるのがしんどいなら、決めなくていい。 俺は考えることを放棄するのを放棄したから。代わりにやろう」 「どうしても嫌になったら、俺がお前を殺そう。 俺が嫌なら、喜んで死のう」 「お前と作る景色が」 「お前が心から浮かべる表情が」 「見たいし、知りたいから」 (-233) もちぱい 2022/03/13(Sun) 17:00:43 |
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![]() | 【秘】 ユス → ツルギ「……っ、ぐ、ぅ……ッ」 何か千切れる感覚がした。 流石に笑い続けることは出来なくて、痛みに顔を歪ませるけれど。 こんな触れ方をしたのは、こんな反応を見せてくれたのは初めてだ。 その痛みすらも愛おしい。 こぼれ落ちた吐息にかすかに楽しそうにわらう音が混じる。 「……ふ、……はは。 ああ、ああ。行こう。海に行こう。 二人で同じ景色を見よう」 98uよりも広い、切り取られていない見渡す限りの海。 本物を一人で見たことなどないし、誰かとだって見たことがない。 ▼ (-238) もちぱい 2022/03/13(Sun) 19:07:20 |
![]() | 【秘】 ユス → ツルギ そうだな、おかしいかもしれないな。 だって俺は怪物だから。 憎い人間の呪いなんて、己の呪いで塗り潰そう。 「ああ。全部、全部代わりにやる。 お前の全てを貰おう」 全て切り捨てた俺は、何も持っていないから。 底すら無くした穴の空いた器だから、満たされることなんてない。 死ぬまで、俺の心が止まるまで。 ──ずっと、お前を欲しがり続けるよ。 「大丈夫、お前が教えてくれたから。 お前が俺を作ってくれたから。 生かすも殺すも、ちゃんとやれる」 ▼ (-239) もちぱい 2022/03/13(Sun) 19:08:13 |
![]() | 【秘】 ユス → ツルギ「お前の全ては俺のもので 俺の全てはお前のもの。」 「勝手に独りになるのも許さない。」 「地獄まで、一緒に見てもらうからな」 (-240) もちぱい 2022/03/13(Sun) 19:09:07 |
ユスは、決して消えない罪を完成させる前に、ツルギの首筋に顔を埋める。 (a74) もちぱい 2022/03/13(Sun) 19:09:43 |
ユスは、思い切り、首筋に歯を立てて印をつけた。 (a75) もちぱい 2022/03/13(Sun) 19:10:14 |
![]() | 【秘】 ユス → 亡骸のツバメ カミクズ『』 何か悩むように空白が流れ続けた。 『カミクズさんの話をもっと早くに聞いていれば、また何か変わっていたのかもしれない』 そこまで入力して、ゆるりとかぶりを振った。 無駄な命など無いと話を聞いても、きっと自分は選択を変えられなかっただろう。自分は楽な道に逃げたかったのだから。 『……いや、不毛な話ですね。たらればを言ったところで現実が何か変わることなどない。』 『でも、今聞いても決して遅くない。 自分のことは自分で決めていいのだと、より考えが磐石なものになりましたから』 ▼ (-246) もちぱい 2022/03/13(Sun) 19:54:11 |
![]() | 【秘】 ユス → 亡骸のツバメ カミクズ『そうですね。 死者は死んだらそれきり。思い出の中で生き続けるなんてことは決してない』 それは生者の思い込みで、エゴでしかない。 それは、過去の動きをなぞっているだけでしかない。 『……でも、たしかにそばに在る。 忘れませんよ。俺に必要なものなので。 貴方が嫌がっても、ね』 ▼ (-247) もちぱい 2022/03/13(Sun) 19:54:26 |
![]() | 【秘】 ユス → 亡骸のツバメ カミクズ『はい。ここで 暫しの 別れですね』死者が残した名残は綺麗な片づけられる。この紛い物の世界でも、本物にまみれた世界でも。 けれど各々の記憶の中だけは誰も手が出せない。 夢物語はきちんと読み終わって、その余韻だけを大切に持って帰らなければ。 『ええ、はい。言われたところに置いておきます』 端末を操作して、音声メッセージに切り替える。人は声から忘れていくと言うけれど、貴方ならきっと消えるその時までちゃんと持っていてくれそうだから。 「必ず会いに行きます。待っていてください。 今度はもっと、話をしましょう」 貴方の耳に、かすかな衣擦れの音がする。 青年のお辞儀の音だった。 「ありがとうございました、カミクズさん」 メッセージは、貴方との泡沫の時間は、その言葉で締め括られた。 ▼ (-248) もちぱい 2022/03/13(Sun) 19:54:47 |
![]() | 【秘】 ユス → 亡骸のツバメ カミクズ ……これは蛇足である夢の、更に蛇足。 「……。気にするなと言われても気になる程度には汚いな」 部屋に入って一言。やっぱり、馬鹿正直にコメントする。生きている名残がこれでもかと詰め込まれた部屋。初期設定のまま弄ることなく部屋を使用した自分と大違いだ。 テーブルには言われた通りに帽子を。 ベッドには、一輪の名もわからない花を。 それぞれ置いてから床に落ちている絵本に気付く。拾い上げて捲ってみれば、めでたしめでたしがどこにも無い。 「……」 笑みの下に隠された意思に触れたようで、無意識のうちに口元が緩んだ。 これも聞けば話してくれるのだろうか。生者のエゴにまみれた世界から抜け出した先で。 静かに本を閉じて元の位置に戻した。名残を歪めてはならないと教わったから。 そうして、生者は今日も鼓動を止めずに時間を積み重ね続ける。 名残だけを、けれども落とさないように持ちながら。 (-249) もちぱい 2022/03/13(Sun) 19:55:40 |
![]() | 【秘】 ユス → 普通 ナツメ 青年は必要ではないことなどしない。身勝手で、傲慢だ。 だから「好ましい」が嘘なのかどうなのか、ここ数日で遠慮がなくなるほど話をした貴方ならきっと分かるだろう。 ぴっ。 こちらに向けられた指を見る。「行儀が悪いぞ」と普段なら言っていたけれど。 「そうだな。 真っ黒がいい。 何でも受け止められる黒が」 それより先に喉から言葉が飛び出した。 ▼ (-253) もちぱい 2022/03/13(Sun) 20:28:30 |
![]() | 【秘】 ユス → 普通 ナツメ「本当に作文みたいだな」 馬鹿正直に答える。 「じゃあ、判子がいるな」 手帳を取り出して、そのまま紙と判子を取り出した。 ぺたん。液晶ではなく、紙に押されたスタンプ。WよくできましたWと書かれた量産型のアレ。ちいちゃな桜付き。 それを貴方に差し出して、仕事をしたとばかりにどんぐりクッキーをまた摘み出す。 「そうだな。声をかけることは変化に繋がるが、何もしないままだと抱えた不安も永遠にそのままだ」 そこまで話して、一旦考え込む。 やがて納得したように頷いた。 「ああ。やはり、話さないことは停滞に繋がるな。ナツメがこうして話してくれてよかったと思う。 お前が話して、動いた事がきっかけで俺にとっても利が生まれたのだから。 話さないことは、きっと勿体無いことだ」 ▼ (-254) もちぱい 2022/03/13(Sun) 20:28:49 |
![]() | 【秘】 ユス → 普通 ナツメ「俺か」 話題を振られて考える。 「俺は本当なら此処に死ぬつもりで来たんだがな。俺の生きる場所はあまりにも面倒くさくて、疲れたから」 でも、と付け足して。 「見たい景色ができて、一緒にいたい奴ができて、漸く俺も人らしくなれた気がする。 世界は恐らく面倒くさいことに変わりはないだろうが、俺自身がこの場所で少しでも変われたように思える。 ……だからきっと、元の場所で同じように過ごしても感じ方が変わるだろうと思っている」 「総括して言うと、そうだな」 ぴっ。 貴方の真似をした。ここに規律を遵守しなくても、怒る者はいないから。 「悪くなかった」 ▼ (-256) もちぱい 2022/03/13(Sun) 20:29:43 |
![]() | 【秘】 ユス → 普通 ナツメ「……クッキーが切れたな」 話すだけ話して、お菓子が無くなったことに気付く。 「ナツメ。反省タイムは終わったことだし、次はお菓子の話か……そうだな、スタンプの話をしてくれ。 あのスタンプはいくつあるんだ。探せない」 先程とは打って変わって、なんてことないありふれた話題へ切り替える。 貴方だけでなく、青年にとっても普通の会話。 でも、ここでの時間は少しだけ普通じゃない事が多かったから。ありふれた話題でも暫くは尽きないのだ。 きっと、色んなお菓子を摘みながら多くのお話をしたことだろう。 普通ではない場所で、普通のお話を。 (-257) もちぱい 2022/03/13(Sun) 20:29:56 |
![]() | 【秘】 ユス → モノノ怪 ユメスケ『コタ。アクタのメモ、見たか?』 『俺とツルギとコタ。一緒だ』 淡々とした文章が送られてくる。 『お前は聡明で、俺では気付かない話を沢山してくれたから』 『同じ舞台を見ても、きっと俺では気付かなかった話を聞かせてくれるだろう。 視野が広がるな。意見交換会がしたい。話すのは嫌いじゃないんだろう?』 ▼ (-261) もちぱい 2022/03/13(Sun) 20:47:45 |
![]() | 【秘】 ユス → モノノ怪 ユメスケ『また話をする日が来ると俺は賭けている。 俺と違って、お前は考えることをやめないだろう? 俺みたいにはならないだろう?』 『考えるのをやめないのなら、何か出来る事があるんじゃないか』 『俺は応援しているぞ。無責任にな』 ▼ (-262) もちぱい 2022/03/13(Sun) 20:48:00 |
![]() | 【秘】 ユス → モノノ怪 ユメスケ 減らず口は、止まらない。 『そろそろ時間だ。それじゃあ俺はこの辺りで』 『ああ、コタ。そういえば』 『嫌よ嫌よも好きのうちって言うらしいな』 『お前の場合はどちらだ?』 『お前、俺の事が好きなのか?』 『分からないから、そう思うことにする』 ▼ (-263) もちぱい 2022/03/13(Sun) 20:48:41 |
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ユスは、返事をした。即レスで。『知らないな。俺は盲目で見えないから聞かせてくれ』 (a102) もちぱい 2022/03/13(Sun) 20:55:56 |
![]() | 【置】 ユスさて、どれくらい時間が経っただろう。 分からないけれど、きっとそこまで長くない。 だって、生きる理由と離れて行動する価値なんてそこまで無いだろう? たとえ君がどこにいても探し出して、愛おしそうに抱きしめて。 ……けれどそれは、恋なんて軽いものでも愛なんて美しいものでもなくて。 名前のつけようのない、たった一つの濁った貴方だけの想い。 それを秘めて、抱きしめて。 心の底から嬉しそうに目を細めて笑った。 (L10) もちぱい 2022/03/13(Sun) 20:59:22 公開: 2022/03/13(Sun) 21:00:00 |
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