人狼物語 三日月国


209 賢い狼さんと生意気な子猫の小旅行

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視点:



 ああ、流石に専用機とかは持ってねぇからな?
 そこは期待するんじゃねぇぞ?

[そう言いつつも、ファーストクラスを用意した彼は
「そういうところ」って奴であろうさ。]**

[――――そうして。

 指定されていた座席は想像していたエコノミーとは違って、
 足元の空間も広く、ゆったりと個室のように作られた
 ファーストクラスのシートだった。]


  ……いや、専用機までは考えてなかったけど、
  これはこれで予想外だわ。


[もちろん、ファーストクラスに乗るのは初めてのこと。
 呆れ半分、ありがたさ半分でアルに視線を向ける。
 おかげさまで旅路は十分に快適なものになりそうだから。

 文句は言わず、甘えることにして慣れない座席に身を埋め。]

[イタリアからニホンまでの約12時間半を、
 近場の観光地を調べてみたり、食事とシャンパンを楽しんだり。 
 最新の映画を先行で見て、仮眠を取っていれば。

 あっという間に飛行機の窓から眺める景色は、
 イタリアから遥か彼方、島国の土地へと運ばれていく――。**]


 仕事でエコノミーは良く乗るんだけどよ、
 …ほら、脚が辛くなるだろ?


[そんなに呆れる事でもないだろうに、とはセレブの考え。
隣席で見せる表情は「初めて」に好奇心を見せる子猫
だったから、眺めていて飽きが来ない。]


 それに、ほら…なんつーのかな。
 折角二人っきりだからゆったりした方がいいし。


[少なくとも、彼は不満がないらしい。
口元から溢れるツンとしたご返答はあったとしても、
まるで存在しない苦言に口元は緩まるばかりだ。]

[生憎と乗り物酔いするほど繊細には出来ていない。
 いらねえ、と重ねて笑い混じりに応えた後。

 案内されたふかふかのシートに包み込まれるように
 身体を沈めてから隣を見遣る。

 仕事でよく乗る、なるほど。

 口振りからして海外への移動も多いのかもしれない。
 足が辛くなる程乗った経験も少ないので、頷きづらいが。

 少し言葉を濁らせたアルから続いた言葉は、
 純粋に二人での旅行を楽しみにしているようだから。]


  ……ふぅん。
  ま、悪かねぇな。ゆっくりできるなら。


[ニ、と人の悪い笑みを浮かべてしまうのは、
 妙に素直に『二人っきり』を強調する恋人が憎めなくて、
 その配慮に甘んじようと思ったからだ。

 あまり痛い財布を突付かれたなら困ってしまうが、
 旅費の話は旅の終りにでも話し合うこととして。
 彼なりに選んだプランを恋人として楽しまなくては。]

[ゆったりと出来るならと笑う彼に、またコチラも笑い返してみせる。だって、良いだろう。二人だけという『特別』は特別であるからこそ良いのであって、その分価値は上がっていくものだから。

楽しみにしてくれるならば嬉しい。
何なら旅費も深く考えなくても──半分ほどは『遊戯』での勝利品であるのだし──と思うのだが、自身が買うからこそ得られる思い出もあるから敢えては口に出さない事として。

…思いを込めて自分が伸ばした指先は、彼の朝焼け前の色に似ている髪を触れてみせただろう。こそばゆい動きだったら申し訳ないが、その指には気遣いの色が見えている筈だ。
こうして恋人とゆったりと楽しめるだなんて今まで無かった機会であると共に、自分もある意味で初めての機会なのだ。]