人狼物語 三日月国


202 【ペアRP】踊る星影、夢現【R18/R18G】

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 ……
ほんで、いっぱい好きって言ってや。達也



[僕は自分の好意があれば
我慢できるんやから。と囁き、耳に息を吹きかけた。
その顏は少しばかり赤かっただろう*]


[古く、古く。

 夢が辿る回顧]
 

[生まれはただの狐だった。

 のどけき春に生まれて兄弟と共に育ち、稜線が赤黄に染まる頃には巣を立った。山を駆けて鳥や虫を食らい、凍える冬を越した次の春にはひとつ上の雌と番った。生まれた内の二匹は死に、残った三匹が秋には巣立ち、役目を果たした番いとも自然と別れた。

 そうしたことを幾度か繰り返して、季節を何巡も重ね、生きるために食らい続けた。その日々には、鷹に襲われたか啄まれて体中に穴を開けたかつての番い、狼に喉元を食い破られだらりと足を揺らす幼い我が子、老いて弱り虫に集られた臭いを放ついつかの我が子の骸があった。

 彼らを数多く見送り続けて、己が“ただの狐”を逸していた事実に気づいてしまった。本来とうに死を迎えている筈の体は、生まれて数年の頃と殆ど相違なく衰えを知らない。生気を奪う術を得てからは更に頑健な体を手に入れ、縄張りとした山で恐るるもの無い主となった]

[唯一危ぶんだのは山に踏み入る人間だ。
 爪も牙もろくに持たぬくせに、獣を狩る術を持つ彼らは異質で、何をしでかすか読めない。

 かかずらうこともないと放っておく方が多かったが、怯えるのも癪なもんで、山を汚すような奴らは襲って喰らった。無謀にも己を殺さんとする馬鹿も同じ。飯を奉じる奴らが出てきた時には目こぼしをしてやることもあったし、虫の居所が悪ければ殺しもした。
 飯の中で最も腹にたまり力を増せるのは人だったし、奴らの持つ“もの”は面白い。姿を真似、言葉を真似、知識を吸うのは存外悪くない趣味になった]

[だが、そんな得手勝手に生きて喰らう日々が突如終わりを告げる。
 深江との出会いが、人喰らいの化生の生活を一変させた。

 これまでも命は何度となく狙われてきた。その尽くを負かし逆に喰らって糧にしてきたが、煩わしいことこの上なかった。怪我も生気を得れば多くが癒えても痛むことに変わりなく、続けて何人も送り込まれれば万一もある。

 そんな折に現れた男はあろうことに、いくら傷を負おうが立ち上がった。それどころか裂けて抉れた肉すら埋まり、ひとりでに皮膚で塞ぐ有様で、どう見たって異常だった。
 一体何事かという疑問と関心が先に立つのも当たり前だ。そして異常の答えが不老不死だと知るや、気付けば取引を持ちかけていた。人に狙われる日々からも、都合よく狩れる人の減った生活からも解き放たれる絶好の機会なのだ]


[この時、少し悩むような表情の男から首肯を得られた瞬間が、今後すべての分水嶺であったのだと思う]
 

【人】 田中 天美

[心地よいリズムが体に響く。とんとんと叩く感覚が一つごとに眠りから意識を引っ張り上げて、朝に連れてきてくれた]

 んー……
 はよぉ。

[それでもまだ意識の端っこがぎりぎり目覚めに乗っかってるぐらいで、放っておいたら眠りに落っこちそうだ。もぞもぞと布団に腕をゆるゆる押し付けていた仕草が、隣から抱き寄せられたことで場所を変え、ぬくい深江の体を柔らかく撫でた。それが前肢でクッションを踏む動きと似ているのは、人と狐で意識が混ざり合っているからだった。

 夢があまりに、鮮やかであった為に]
(229) 2023/03/14(Tue) 6:02:20
[深江と始めた新たな生活は、今までの数百をあっという間に上書いた。
 人との関わりを持つ化生なりに、人の生活をいくらか知ったつもりでいたが、いざ本物の人間と暮らしてみれば出るわ出るわ未知の話。
 里山に降りることも殆ど無い山暮らしであるのに、相手がいるというのは大きな変化であり、想像以上に愉快なものだった。
 飯も種類が増えた、習慣も変わった、遊びも増えた、何より日々に会話があった。洞穴に溜め込んでいた訳の分からぬ道具やら本も意味を持った。これらを蓄えた過程に物思うこともあったかもしれないが、それでも深江は隣にいた。

 世を変える戦乱も天地揺らがす災いも、幾度も頭上を通り過ぎていく。一変する大事と深く関わりのないまま数百を過ごして今現在、すっかり人の社会に紛れて生きている]

[ただ面倒なものはいくらかある。その筆頭が戸籍だ。
 当然そんなのと縁もゆかりもない狐にとって、まず何のために存在するんだというレベルの話だったが、深江に言わせてみれば彼が生きてた時代から似たようなもんはあったらしい。
 当時は人の数を把握するもんじゃなく、年貢やら公事を取り立てる為に郷や村単位で管理してたと聞く。かったるそうだ。

 ともかく“最近”は身分をきちんと証明できないと出来ない手続きが多かった。その都度必要な書類を化かす羽目になる。まあ、化生でも不老不死でもない人間だって偽造してるんだから別にやったって構わないだろう。

 本当に面倒なシステムだが、それでも写真の横に記される自分の名を見る時間は好きだ。
 暮らしていた山の名から「アマミの狐」と呼ばれていたのを、深江があてた漢字だ。名付けの理由を聞けばいっそこそばゆい程の賛辞だったが、事実には変わりないので、誇らしげにふわふわの胸毛を張るようにしてそれで良かろと認めてやった]


[それに、山はもう役目を果たしたのだから。

 広い海が映えて望める「海見」の山。
 あそこは、「深江」を見出すには絶好の勝景であった]
 

【人】 田中 天美


 どーした、深江。

[胸元に顔を埋めて声をくぐもらせながら、ふん、と笑う]

 だの。
 今日も楽しいぞお。

[昨日までも、明日からも。
 言外に込めた思いが伝わらずともいい。今だけが伝わっていればそれで]
(230) 2023/03/14(Tue) 6:03:59

【人】 田中 天美

[川遊びはこれでもかって程にはしゃぎ倒した。
 人の目がろくに無いのもあったが、あったとして今更年がどうの体面がどうのもない。
 澄んだ川にじゃぶんと入って泳ぎ、潜っては珍しいもの探して見せ合う。食えそうなものならすかさず回収し、昼に食うかと笑い合う。
 蔓を掴んで飛び込む際には深江の場所を狙ってやった。さて受け止められたかスッと避けられて沈んだか。後者なら避けたとこの顔狙って水を引っ掛けてやろう。

 冷えた体は焚き火と飯ですっかり温まった。
 持ってきた混ぜご飯のおにぎりも焼き魚も、遊び疲れた体に丁度いい。
 味噌まで持ってくる入念さには笑ってしまったが、水草との相性が良いのは知っているから、褒めた上で出来立てのそれをいただく。

 腹も満ちて身体も乾いたなら、ぼちぼち次の目的地に向かう頃合いだ。
 山菜取りも兼ねながら移動をすれば、温泉に着く頃には十分な量が手に入った]
(231) 2023/03/14(Tue) 6:04:20

【人】 田中 天美


 おぉ〜……!
 思とった十倍ぐらいしっかりしとった。

[施設を見上げて思わず上げてしまう声は隣と重なった。
 想定を上回る立派な施設は、湯殿はもちろん、貸切風呂さえも複数用意されている。どっから入ったものかと悩んでしまう。もちろんそれは嬉しい悩みってやつなのだが]

 露天も種類あるみたいだの。
 お、時間帯で男女が入れ替わる仕組みかあ。
 今ならあっこか。

[そうして選んだ湯殿は、広々とした岩造りの露天風呂だった。山中の木々に囲まれながらも、開放的に空が開かれている。
 かけ湯を済ませて乳白色の薄い濁り湯に浸かると、じんわりと染み渡る心地よさだ。ツンとした匂いが漂うが仄かなものだから、ここは柔らかい硫黄泉なのだろう。
 きょろりと見渡し、成分についてとか書いてないかと探しながら]
(232) 2023/03/14(Tue) 6:04:44

【人】 田中 天美


 ふふ、遊んだなあ。

[伸び切った声を漏らす隣に笑う。本当にここ数日遊びまくった。行き当たりばったりの予定がここまで充実したものになるとは、山を目指した時には思いもよらなかったことだ]

 お、深江、ここは肌の病気に効くんやって。
 あとは生活習慣病だと。
 贅沢したし丁度ええな。

[ご馳走も毎日食べとるし、とくつくつ喉を鳴らす。病気に縁のない身と知っていても、会話はまるでただの人間と変わらない。そんな風にして生きてきているからおかしいとも思わない]
(233) 2023/03/14(Tue) 6:05:05

【人】 田中 天美

[そうやって他愛無い会話を繰り返す内に、男女の切り替えの知らせが入った。一旦上がるも、でも折角来たんだからともう一つぐらいは入らないと損な気がする。
 狐で入るならそりゃ貸切だが、内湯の檜風呂も捨てがたい。ちょっと悩んだが、どちらともなく口にするのは]

 まあ、悩んだ時はどっちも行きゃええな。

[愉快げに笑うと目を合わせる。湯上がりで普段よりちょっとすべすべしたような気がする手を握って引っ張っていく]
(234) 2023/03/14(Tue) 6:05:41

【人】 田中 天美


[自分たちには時間がある。
 それは憂いではなく、楽しいことなのだと伝えるように]*
 
(235) 2023/03/14(Tue) 6:06:13

 ええ、ええ。ずっと——


[言い終わらないうちに、唇を塞がれてしまった。やわらかな唇も、絡めた舌も、なぞる歯列も全てがいとおしい。少し手を伸ばして、耳朶に触れる。少しずつ熱を帯びてゆくのがわかって、時折悪戯めいて引っ張ってみる。触れたところから、身体中全部が溶けてしまいそうに感じる。それは以前のようなかたちのない不安ではなくて、たましいが溶け合って包み込まれるような、あたたかさに満ちたやすらぎ。たった一人で、さみしくて蹲っていたあの頃からはとても信じられないくらいに、そう、夢のような、しあわせ。]

[夏が終わろうとしている。

 季節は変わっても、実のところ、私は何ひとつ変わっていない。
 誰かにそばにいてもらわなければ自分の足で立っていることさえできなくて、何もかもを支えてもらって、ようやくここに立っている。

 何ひとつ正しくなくて、何もかも間違えたまま、それでも手にしたとくべつなものを離したくはなくて。ここのところはすっかり慣れてしまって、少しばかり欲張りになりすぎたかもしれない。]


  ずっと、そばにいたかったな。


[隣で安らかな寝息を立てる貴方の頬をそっと撫ぜる。さすがにそれは過ぎた望みだとわかってはいるけれど、願わずにはいられない。

 この先の貴方の旅路が、良きものでありますように。そしてできれば、せめて貴方が目を覚ますまで、私があたたかくありますように。]**

[悪戯を窘めるように耳朶を擽り返し、なめらかさを取り戻した唇に舌を滑らせる。汗に濡れた肌を重ね合わせ、彼女の内に熱を注ぐ。たましいまで溶け合ってひとつになるような至福の時。

 そんなふうに彼女を“食べる”何度目かの時間で漸く気付いた。翌朝、飢餓感が薄らぐことに。

 どちらも本能に根差した衝動だからだろうか。あるいはそれは、たましいの傷を和らげる方法のひとつだったのかもしれない。
 彼女と共に在れば、誰の命も犠牲にせずに済むのかもしれなかった。彼女のほうはどうかわからないけれど]

[いつの間にか、季節が終わりかけていた。

 重ねていく日々はどれも至宝だった。
 彼女を支え、
 彼女に支えられて、
 寄り添いながら過ごす毎日。

 これからも変わらない幸福が在り続けることを祈って、その夜も眠りに就いた。彼女のあたたかい体を抱き締めて]

[ある町、夜遅く。外套に身を包んだ男が宿の受付を訪れた]


  一人。一泊。急で悪い……、霧で迷っちまって。
  その茶もらえるか? シナモン・シュガーを入れて。


[彼は宿帳に名を書き込んだ後、宿の主人が飲んでいたカップを指差す。そこには煙草のような芳香を漂わせる茶が入っていた。
 主人は当初不審がっていたが、それなりに会話する気のある客と見れば、少しずつ警戒心も和らぐようだ。前払いが決め手となって、茶の入ったカップとともに鍵を差し出してくれた。

 宿帳に書き込んだ名は“楓”──本名ではないけれど、この長い旅路でずっと使っている名だった]

[部屋に入って外套を脱ぐたび、その色が目に留まる。
 白。
 彼女が愛用していたマントの色。
 そしてその裏地は、琥珀色。彼の瞳の色。

 共に暮らした日々の終わりが思い浮かぶ。
 あの地を去る最後の日、小屋を炎で包んだ。
 何も残ってほしくなかった。
 あそこでの暮らしを知るのは二人だけにしたかった。
 帰る場所などいらない。

 そうして彼は独り、旅に出た]

[彼女のマントはあの後、仕立屋に持ち込んだ。
 自分が着られるように直してほしいと無理を承知で頼んだところ、表と同じ布が使われていた裏地を使ってサイズを合わせたらしい。新たに琥珀色の裏地が張られていた。

 仕立屋が何を思ってその裏地を選んだのかはわからない。だが、それ以来、彼女を思い浮かべる機会が増えた。鏡を見るたび、瞳の色を通じて。

 彼女はいつも傍にいる。
 声も聴けず、
 触れることもできず、
 姿を見ることもできないけれど]

 

  ……これ、本当に美味いと思うか?


[カップの中身を味わって、思わず問いかけの言葉を呟いた。確かに風味は随分変わるのだが、どうにも彼の好みからは離れている。
 体を共有したつもりでいても、こういうとき、別個の存在なのを実感せずにいられなかった。

 それがきっかけで普段は気にしない孤独感が増し、ベッドの中に外套を引きずり込む]


  傍にいてくれ──椿。



[もう、彼女の匂いはしない。使い込んでいけばいくほど、彼女のものだった痕跡は薄れていく。それでもこれは、彼女との思い出を繋ぎ止めるもののひとつ]

[変わらないことを望んで縋り続けた生活を捨て、新たな道に踏み出した。かつては一度も考えなかった選択肢の先に、今、立っている。
 かつて歩んだ道と違い、信じられるものは何もない。
 だからこそ、歩み続けてみるしかなかった。

 旅路の先で何か見つけても、何も見つからなくても、今はただ、思いのままに。
 どこにも抜け道のない袋小路だと思っていた場所さえ、こうして抜け出してこられたのだ。
 正しくても間違っていても、心のまま歩めばいい。そうすればいつか行き詰まったとしても、きっとまた、道は拓ける。

 これから先の旅路も、彼女と一緒に。
 誰にも見えない『二人旅』を、共に終えるときまで]**


[ああ、死にたいな。]
 


[天美と共にある時間が楽しければ楽しいほど
 その気持ちは募る。

 共に死にたい。置いて行かれたくなどない。
 そう、口にすることはないけれど。

 共に死ねるのが、一番良い
 俺一人だけが死ねずに天美を看取って、
 その後をどうすればいいか解らない。

 でもあの頃より死ぬ方法は増えたから。
 そのどれかが引っかかってくれるといい。]
 

[自分たちには時間がある
 物はないけど思い出は残る。
 それは憂いではなく、楽しい事なのだと。
 繋いだ手から何か注ぎ込まれでもされているのだろうか。

 そうかもしれない。

 自分にとって生きるために必要な食事は、
 きっと天美の存在だ。]

[彼を前にすると恋する顏が出てしまう。
ふとした瞬間に溢れる感情は止めどない。エッチな事を口にしたり、実行したりするよりもずっとずっと恥ずかしい。彼を誘惑するほうが恥ずかしくないだなんて、恋心は厄介だ。その上、彼の理想でありたい自分としては、そんな醜態をさらすことで幻滅されないか。と心配と恐怖があった。けど。

彼の胸にすり寄る自分を彼は痛いほど抱きしめてくれた。
惚れぬいて子どもっぽくなる自分をも、愛していると告げるように。優しい手が、緩まりその代わりにと髪に口づけを落としてくれる。撫でられながら、見上げ]


 ……僕も、好きやで。

 めちゃくちゃ好きや。


[彼が思うよりもずっと愛している。
彼が自分ばかりと好きだといつもどこかで思っていると知ったらそれこそ、僕の方が僕ばかりが好きやって思っているで。と教えただろう。彼の性癖が歪んでいるとは思わなかった。本当に自分が嫌がることを彼はしないし、何時だって大切にしてくれたから。

愛されているのだと分かっている。
けど、それ以上に僕は彼を愛しているのだと。
とてつもなく重いのを自覚して]