【人】 行政書士 辺見 華蓮オーダーしてすぐにギネスビールとナッツの小皿が出てきたので、カウンター越しに店員さんの顔を見つめ、ふっと笑みを浮かべた。いつもの女性だ。 ギネスは冷やさないほうが美味しいというのが通の意見らしいけれど、私はほどほどに冷えている方が好き。 つまりこのグラスを冷やしたスタイルが好き。 小皿に盛られたアーモンドをつまみながら、私の好みをすっかり理解してくれている、この店員さんの顔を見る。 年は私と同じくらいで、身長も同じくらい?結ったポニーテールと切れ長の目は、なんとなくさっぱりした性格を感じさせる。 同性に好かれるタイプ、かどうかはわからないけれど仕事柄、出会いは多いだろう。 人生経験も多分豊富なんじゃないかな、なんて勝手な想像をしたりもする。 (11) 2023/04/10(Mon) 21:37:53 |
【人】 行政書士 辺見 華蓮カウンターに座って話をすることもまあまああったけれど、基本彼女やマスターは聞き手だから、私は彼女達の事はあまり知らなかった。ひょっとしたら名前でさえも。 私の方は、名前に仕事くらいは話したことがあった…というか、話の成り行き上名刺を渡したことがあったと思う。 「行政書士ってやつです。一応、私自身も資格を持ってるので。 といっても、今はそれ専門だけじゃ食べてけないですからね、他にもいろいろ勉強してるところ。 今は他所で勤めてますけど、いつか開業して自分の事務所を持てたらいいなって思ってます。」 そんなぐらいの話は、彼女にも既にしていただろう。 (12) 2023/04/10(Mon) 21:38:52 |
【人】 行政書士 辺見 華蓮―今日― 「ありがとう。今日も無事、変わりなしよ。」 差し出された>>10ソーセージの盛り合わせを受け取り、軽く笑ってみせる。 ちょっと疲れたようには見えてしまうかもしれないけれど。 市販のものより随分大きめの、しっかりボイルされたソーセージにマスタードを乗せ、 端を噛んで唇を窄めて咥えつき、ぷりっとした中から溢れ出る肉汁と脂を、小さくぢゅっと音を立てて吸い尽くす。 「ん…おいし……♪」 ギネスの苦味に脂ののった味わい。思わず笑みがこぼれてしまう。 それだけで十分幸せ…ではあるのだけど、ふと店員さんの方に視線を向けた。 (13) 2023/04/10(Mon) 21:41:00 |
【人】 行政書士 辺見 華蓮「何かおすすめのカクテルとかってあるかな? あんまり強くない…酔い潰れないくらいの。 そうね、あなたのおすすめというか、好みというか、そういうのある?」 そうリクエストしたのは、まだ名前もろくに知らないとはいえ、こうして毎週ならず顔を合わせる彼女の事に、 純粋に多少興味をもったからなのだろう。 あるいは、少し寂しさがいつもより強くて、誰かと話をしていたかったのだ* (14) 2023/04/10(Mon) 21:45:18 |
【人】 行政書士 辺見 華蓮あまり強くないお酒、酔い潰れない程度のお酒。 学生の頃はもっと強いものを好んで飲んでいた。 ウィスキーや焼酎だってロックで飲むのは好きだったし、一番は地酒。 一升瓶の半分くらいは余裕で空けられた。 でも、それはもうしない。 そうやって飲める自慢をした結果、私は自分の価値を損なったというほかないし、 残ったものは特にない。人でさえも。 (19) 2023/04/10(Mon) 23:16:38 |
【人】 行政書士 辺見 華蓮「マリブ・コーク……ラムベースね。 へえ、トロピカルで…官能的な味わい。うん、それをお願いするわ。」 カクテルづくりを見る>>16のは楽しい。 取り出されたマリブとコーラ、氷を入れたグラスに注いで混ぜると氷のからんと小気味いい音が響く。 ココナツの甘い香りは確かに南国を思わせる。 提供されたグラスを受け取り、炭酸の弾ける様に視線を向けた。 一口喉に運べば、喉に抜けるさわやかな炭酸とココナッツの香り。 「ラムとコーラ……うん、絶対間違いないやつ。普通のラムじゃなくてココナッツの香りが効いてるのが、 なんだか本当に南の島に行ってるみたい。 いいチョイスね……ありがと。」 片手でグラスを掲げ、くいっと一口、二口。南国の香りが咥内に満たされる。 深く、深く息をついた。 (20) 2023/04/10(Mon) 23:16:57 |
【人】 行政書士 辺見 華蓮「甘くて強いのが好き、か。って事はあなたもまあまあ飲める方? 珍しいんだ。こういうオーダー… いや、なんとなくね。バーテンダーだと、男性客に声かけられたりする事ありそうってイメージがあってね。 そういう好みみたいな…聞かれたりするのかなって思ってた。」 控えめに言っても、顔立ちはいいしスタイルも女性らしさがしっかり出ている。 仕事ぶりも、私が見ている限りは真面目でしっかりしている。 そういう人は間違いなく男性にも人気があるものだ。恋人などいるのでもなければ。 (21) 2023/04/10(Mon) 23:17:09 |
【人】 行政書士 辺見 華蓮「そう。酔わないくらいがいいの。飲もうと思えば飲めるけど… そういうのはもうやめたんだ。色々失敗もあったしね。 ……自分を許してくれる、か。 ふふ。じゃあ、今甘えたい気分なの?」 彼女が作っているカクテル>>18は、誰もオーダーしていない。 彼女自身のためのものだろう。 飲みたい気分なのかな、なんて思いながらそんな事を聞いたのは、軽い気持ちから。 ただ、彼女の言うことはよくわかった。 自分に言い訳したい気分、甘えたい気分。 私が昔やたらと飲んでいた時も、心のどこかにそういう気分があったのかな、と今では思えるから* (22) 2023/04/10(Mon) 23:18:51 |
【人】 行政書士 辺見 華蓮ちなみに、彼女が私の食事中に視線をそらして少し居心地悪そうだった>>15のには気づかなかった。 そのぐらいリーリエで食べるソーセージは美味しいもので、その間は幸せな気分に浸っていたはずだから。 気づいていたとしても、別段気にはしなかっただろうけれどね* (23) 2023/04/10(Mon) 23:21:57 |
【人】 行政書士 辺見 華蓮「確かに。ラムコークなら家でも作れるけれど、マリブは…うん、こういうところで飲むならこっちね。」 少し特別感のある香り。官能的といわれるのも確かに納得がいく。 オーダーの事やバーでの仕事の内情はわからないにしても、彼女の話の一端からだけでも、 一部の男性客相手の苦労は何となくしのばれた。 飲みの誘いや、個人的なことを聞き出されるのは確かに気分はあまりよろしくないだろう。 下心交じりであれば特に。 「なるほどね。自分で作ったものの味はわかっておきたい、そりゃそうだ。 …そっか、うん。あなた、結構モテそうだもんね。 私も似たようなものかもしれないけど。」 女性が恋愛対象。それに応える代わりに、自分の事を小さく付け加えた。 正確には恋愛対象がはっきり女性というわけではない。女性でも抱ける、抱かれられるという程度のもの。 昔付き合っていた相手は男性だったし、恋愛を介しないにしても、ほとんどの相手は男だった。 もっとも、その記憶は大半ないのだけど。 女性は1人だけ。しかも恋愛関係ではなし。ただ、決して悪くはなかった。 精神的な満足という意味では、ある意味男以上だったかも。 なんてことをふと思う。 (27) 2023/04/11(Tue) 6:23:34 |
【人】 行政書士 辺見 華蓮「まあ……ね。酒の席での失敗は本当にいろいろしたわ。 学んだよ、すごく。 そっか。…そうよね。そういう事もあるもんね。」 甘えたい。許されたい。許されたい、というのはどういう気持ちだろう。 アルコールを言い訳にしたいと思うことは私もあったけれど、そういうことだろうか。 彼女のグラスから漂うアーモンドとアプリコットの香りは正に杏仁豆腐のもの。 フレンチコネクションの名前は知らなくても、この香りは一度嗅いだら忘れない。 乾杯とは言わないにせよ、私も軽くグラスを掲げてマリブコークを呷った。 「わかるよ。…うん、大人になると、素直に人に甘えたりするのは難しいよね。 飲んでも、自生制が効かないこととかあって、失敗したりして、なんとか立ち直って…」 今はもう、サークル時代みたいな失敗もしないはず。 失敗して失うものは大きいし。 寂しさを我慢するほうが容易いからそちらを選んだ。 (28) 2023/04/11(Tue) 7:00:56 |
【人】 行政書士 辺見 華蓮ごくりと喉を鳴らしてグラスを傾けマリブコークを飲み干す。 ふと、差し出されたコースターに書きつけられた名前に目が止まった。 「薫さん?杓谷さんね。 そう言えば、いつも私のオーダー、先に準備してくれてるよね。 ありがとう。って、前から言いたかった。」 彼女、薫さんの整った顔を見つめて目を細める。 それから空になったグラスを差し出した。 「私にも、あなたが飲んでるのと同じもの。もらえるかな?」* (29) 2023/04/11(Tue) 7:16:29 |
【人】 行政書士 辺見 華蓮美人、と容姿のことを言われるのはよくある。 仕事柄もあり、身だしなみはきっちりしているつもり。 でも嬉しいものだ。 「んー?ふふ、ありがと。 薫さんも私以上に綺麗だと思うけど。 …大丈夫、少し強めくらいなら。 それより、貴女の飲んでるものに興味が出たってことかな。」 両手で頬杖をつきながら、薫さんの手際を観察させてもらう。 アマレットとブランデーだったっけ。混ぜ合わされればブランデーの豊潤な薫りにアマレットの杏仁の芳香。合わさって芳しい。 薀蓄に耳を傾けつつ、一含みすれば口内が満たされる。 (32) 2023/04/11(Tue) 19:06:02 |
【人】 行政書士 辺見 華蓮「へえ、犯罪組織の映画… ホントだ、30度。強いわけだわ。でも…いいね、これ。 うん、気に入ったかも。」 もう一度口に含めば久々の強いアルコール。体の奥に熱が入るのを覚えた。 薫さんから、話を聞くと言ってくれたのはそのあたり。 グラスを軽く揺すりながら、少し苦笑い。 「弱音か。…そうなのかな。 …そうかもしれないね。 わかっちゃうんだろうな、こういうの。」 合わせて添えられた言葉>>31に、ふと顔を上げ、ウインクと視線が合った。 (33) 2023/04/11(Tue) 19:06:37 |
【人】 行政書士 辺見 華蓮「あはは。ありがとう。…でも、いいの? ゆっくり話を聞いてもらえるのはありがたいけど…」 ただの客にそこまで付き合ってもらうのは悪い… と言いかけて、言葉を止めた。 もちろん、ただの客にそこまでする道理なんてないはずだ。 だから、彼女は私のことをただのバーの客とは見なしていない。 彼女は自分に言い訳したくて、私は思いを吐き出して甘えたい気持ちがあって。私は彼女に興味を惹かれた。 なら、答えは一つしかない。 (34) 2023/04/11(Tue) 19:11:13 |
【人】 行政書士 辺見 華蓮「ううん、なんでもない。 明日は休みだし、薫さんが良ければ、お仕事終わりに 外ででも話を聞いてもらえたら、嬉しいなって思うわ。」 ウインクに応えるように、頬杖のまま小首を傾げてみせた* (35) 2023/04/11(Tue) 19:13:33 |
【人】 行政書士 辺見 華蓮「ん、そうなんだ。 じゃあ、このまま待たせてもらおうかな。」 どうやら、私の勘違いというのではなかったらしい。 それに、社交辞令というわけでもなかった。 くいっとグラスを煽るのに合わせて、私も。互いにカクテルを飲み干せば、アマレットの香りと強い酒精が喉を灼く。 薫さんの声をかける先、>>37マスターの方に視線をやれば、快諾してくれた様子。 他の客も少なければ、そのくらいは融通が利くのだろうか。 しばらく待っていれば、私服に着替えた彼女が現れる。 (39) 2023/04/11(Tue) 21:58:36 |
【人】 行政書士 辺見 華蓮「ううん、そんなに待ってないよ。 どこがいいかな。 私はこの辺はこのバーとランチを食べるようなところしか 普段立ち寄らないし… カフェもいいけど。……でも、そうね。 薫さんの部屋でもいいなら…… お言葉に甘えさせてもらおうかな。 ゆっくり話をさせてもらうなら、そっちの方が いいかもしれないしね。」 囁きに小さくうなづいて返す。 わざわざ部屋にあげてくれるというのなら、断る理由はもうない。 私の部屋は家具と本棚とベッド程度の殺風景なものだけれど、彼女はどうだろう。 自宅をバーカウンターのようにしている人も中にはいるらしい。 そういうものだったりしたら、そうでなくても面白そう。 だから、彼女の部屋を、と。そう所望した。 (40) 2023/04/11(Tue) 21:59:25 |
【人】 行政書士 辺見 華蓮歩きながら、隣の彼女に視線をやる。 彼女といったのは結わえた髪と女性らしさをしっかり感じるフォルムのせい。けれど、こうして近くで見ると顔立ちは少し中性的なものを感じなくもない。 短髪にしたら一瞬迷ってしまう可能性もある。 けれど、私の印象では彼女はやはり女性だった。 こうして私を誘ってくれる人は、なんだかんだで時々いる…というか、実際今日も所長に飲みに誘われたりしたわけで。 それらは全て男性だったのだけど、彼らと今隣にいる彼女の間には、うまくは言えないけれど何か違うものがある、気がした。 もっとも、最終的にはそんなに違いはないのかもしれない。 違うとしたら、多分それは私の感じ方なんだろう。 その正体はわからないけれど、ただ、彼女が私に興味を持ってくれていること、私もそんな彼女に興味を持っていること。 それだけはどうしたって確かだった* (41) 2023/04/11(Tue) 22:08:34 |
【人】 行政書士 辺見 華蓮リーリエから歩くことほんの数分。 エレベーターに乗って案内された3回の1LDKの部屋は、私の間借りしている部屋よりは洒落た感じになっていた。 通されたソファに腰かける。 「お邪魔しまーす…… いい香り。 ラベンダーと…オレンジね。 ううん、そんな事ないわ…十分面白い。 私の部屋はもっと殺風景だし。来てよかった。」 少しぶしつけかなとも思いつつ、ざっと眺めた部屋はさっぱりしていたけれど、大きめのソファに、カクテルやお酒についての本を収めたラック、カウンター式のキッチン。 確かにこれなら、人を誘って飲みなおすにも不便はないだろう。 彼女の人となりは信用できると感じているし、誰の邪魔も入らない。カフェよりもこっちでよかった、と自分の選択の正しさを内心誇った。 鍵を閉めた音>>44は特に気にならなかった。 (46) 2023/04/11(Tue) 22:48:59 |
【人】 行政書士 辺見 華蓮「そうね… アルコールはもういいかな。 もしソフトドリンクかノンアルコールの何か… あれば一杯だけ。 おつまみはそれで充分かな。お願いしてもかまわない?」 薫さんに応えながら>>44、彼女が準備する様子を眺めていた。 こうして誘いがあって部屋に通してもらっているし、恋愛対象は女性だとはっきり聞いている。 だから、話をして、場合によってはその先だって十分考えている。 彼女の秘密だけはこうしていても知る由はないけれど。 自分に言い訳したいのだとしたら、まさに今こうしている誘いの事だと思っているから。 (47) 2023/04/11(Tue) 22:49:34 |
【人】 行政書士 辺見 華蓮薫さんが飲み物とおつまみを持ってきてくれたら、 「えっと… そうね。まず乾杯する? 何にって話だけど……二人の健康とか、 ……出会いは…ちょっとくさいかな? まあ、でも…乾杯。ね?」 なんて話してみるのだ。私の話はそれからでもいいはず。 聞かれたら、少しずつ話し始めよう* (48) 2023/04/11(Tue) 22:50:42 |
【人】 行政書士 辺見 華蓮差し出されたのはスポーツドリンク。ちょっと意外ではあったけれど、確かに酔い覚ましにはこういうのがいいのかもしれない。 手に取れば、グラスの冷たさが心地良い。 薫さんが腰を下ろすのは私の隣。ソファだから当然とはいえ、こんなに短時間でこんなに距離が縮まっていることにも、 それに特に違和感を感じていない自分にも驚いた。 「ふふっ。そうかも。健康はちょっとまだ早いかな。 薫さんも…まだ20代かな。私もまだ28だし。 うん、じゃあ二人の平穏に、かんぱい。」 今より若かった頃、というと学生の頃だろうか。 確かに懐かしいし、あの頃の話なら楽しいこともいっぱいある。 話したくないこともあるにせよ。 グラスをかちりと小さく合わせて、喉に運ぶと多少とも火照った体に潤いがしみ通っていく気がした。 (51) 2023/04/11(Tue) 23:22:48 |
【人】 行政書士 辺見 華蓮「いただきます。…うん、おいしい。いつも、夜はおつまみくらいであんまり食べないから。」 口に運ぶのはクラッカーに乗せたチーズの小片。もう少し何か食べたかったお腹にはちょうどいい。 もう少し飲んだところで、薫さんの方から話を促されてそうだった、とグラスを置いた。 「ごめんね。そうだった、こうしてるのが楽しくてついつい。 私の話、聞いてくれるんだったもんね。」 膝の上に置かれて、先を促すように軽く叩く手にふっと緊張が解かれて表情を崩す。 にこりと笑う薫さんの方に視線を向けながら口を開いた。 (52) 2023/04/11(Tue) 23:23:03 |
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