65 【ペアRP】記憶の鍵はどこ?【R18】
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潤さん……
[
誰よりも大事な人の名前を、呼べた。
]*
……やっぱり。お帰り、美鶴さん。
[
ネックレスは2人にとっての鍵だった。
その事実がとても嬉しくて、
でもそれを適当なところにぽいっと
放置していた輩にはイラッとして。
なんの世界なのか、結局わからないまま
彼は彼女を抱きしめて意識がなくなる。
彼女の方はどうだったか、
あまりわかっていないけれど、
次に目を覚ましたとき、
2人は寝る前の半裸の状態のままだった。
]
……なんや、危なかった。
おはようさん、美鶴さん。
[
朝食を作らなければいけなかったけれど、
今はただ、すやすやと眠る彼女の
可愛い寝顔を見ていたくて
頬を優しくフニフニと触っていた。
]*
……ただ、いま?
[
返事はこれでいいのかな、なんて思いつつ
手の中を見てみれば
光の粒とともに“鍵”は消え去った。
……まあ、私が大事にするものが鍵だったのは
嬉しいんだけど……。
余計な事まで喋った気がしてならない。
誰だこんな状況作ったのは!!!!
そんな憤りを彼が察知したかは知らないけど。
ぎゅうっと抱きしめられて意識が遠くなっていった。
]
んん……もーすこし…ねる…
[
頬を触られている感覚で目覚めれば
大好きな人がこっちを見ていた。
寝起きはうまく頭が回らなくてぼーっとしてたけど
ふと違和感を感じて左腕を見れば……
“痣がある”
夢でぶつけて出来た、痣。
……意識が覚醒した。
いや待って、待って。
もしかしなくても夢が夢じゃなくって
あの出来事を、記憶をなくしてたことを
実際に体験したとかありうる?????
もしそうだとしたら……
私はまたこの人に失礼なこと言ったことになる。
しかも隠してた過去を話して……しまったような…
夢の中の自分に盛大に裏切られてる……。
えっこれ潤さん怒ってたりしない?
私なら多少なりとも怒るよ???
現実の逃げるコマンドどこかな…
現実逃避まで思考が巡った私は
とりあえず布団をかぶって顔を隠した。
]*
[ハチヤが先に立ち、廊下を歩き階段を下りる。
部屋の外はこんな風になっていたのか。部屋は寮と似ていたのに一歩外に出るとまるで知らない場所だった。ドアすら開けた時はいつものドアだったのに、閉める時には違うものになっていたのだから不思議なものだ。
知らなかったけれど、聞いたことがなかったけれどこの場所はハチヤがかつていた場所らしいから。興味深くて見回しながら歩いていたら転ばないようにって片手が差し出された。こちらのハチヤは相変わらず優しい。
ここだよ、とハチヤが立ち止まったのはなんの変哲もない棚の前。人一人、余裕で入れる大きな棚。
知らない場所に、ふと一瞬だけ知らない廃墟の風景が混じる。先程の幻を考えるとハチヤの旦那が暴れた後の風景なのだろうか。風景を覚えこむように見回して、そして開けようと引き戸に手を伸ばした指先をハチヤが止めた。
そうして恐る恐ると彼が手を伸ばし、触れた瞬間に]
……。
[見えたのは、過去の愛情。それとも執着と呼ぶべきものなのだろうか。ハチヤはどんな顔をしている?気になるけど、俺だったら今顔を見られたくない。だから代わりに握ったままだった手をぎゅっと握ると抱きしめられた。
ハチヤは、そこまで旦那……しちろ?に未練はなさそうに見える。けれどしちろからハチヤへは。あの、向ける思いは本物で、確かに恋情なのだろう。
それを俺にも見せてくるのは牽制なのだろうか。ここまで思われてるハチヤを取るなら覚悟をしろとでも?どちらにしても……ちょっとだけもやもやするから、宥めがてら少しだけ高い背を引き寄せて額にキスでもしてやろう]
ここで……合ってる?みたいだな。俺が開けるか?
[落ち着くのを待って、そっと声をかける。こいつがどう思っていたとして、納得するようにしてやりたい*]
……どないしたん、そんな顔隠して。
今更、昨日のこと恥ずかしくなったん?
[
昨日のこと。何とは言っていない。
寝る前の話かもしれないし、
寝た後の話かもしれないし。
ただ、そう言って彼女の反応を見てみたかった。
どちらのことも彼女にとっては
恥ずかしかったことに変わりなく。
彼は、朝食のことを考えることをやめ
彼女の反応をただただ待った。
それが良いものかどうかは、
今の彼では分かりかねたけれど。
]*
[
昨日の事、と言われて
やっぱり夢の事ですよね!と
寝る前の事まで思考が回らないくらいには動揺していたので。
]
恥ずかしくないわけないじゃないですか!!
色々余計なこと喋っちゃったし…
あの、えっと…すみませんでした…!
わたしまた失礼な……
[
そろりと顔を出してまくし立てた。
潤さんがどんな反応をしたかはわからないけど。
とりあえず落ち着こう。…手近にあったパジャマを着つつ。
深呼吸を一度。
……夢のことを思い出せば、潤さんも色々気になることを
言っていたな、と思案して。
……私には言わないといけないことがある。
]
……あのね。聞いてほしいことがあって。
[
あの時。核心をつかれて応えられなかったこと。
今までは目を見て言えなかったことだったけど。
今なら……知られてしまった今なら。
それに、隠してしまったことで彼を傷つけてた。
……潮時、だなんて思わせてしまうまでに。
だから私は応えなきゃいけない。
彼の
想い
に。
]
私……素敵な女性じゃないんです。
料理だって潤さんと比べるとまだまだで
上達だって遅くて……
可愛かったり美人だったりもしないし…。
……潤さんは何でもできるから
一緒にいて何も返せたりとかしてなくて
……ふさわしくない、とか考えたり、とか。
すごく失礼だけど、私は潤さんのこと信じ切れてなかった。
なんで私なのかってどこかで思ってた、から。
でも。でもね…
私、それでも潤さんのことすごく好きで。
貴方のためならなんでもしたいし
貴方の時間は全部欲しいし
貴方には私だけを見ていて欲しい。
ずっとずっと傍にいたい。
貴方が帰って来るの遅いときは寂しかった!
……こんなに好きなの自分だけだったら
気持ちが重いって思われたらどうしようって不安だった。
“欲まみれ”なのは私だって同じ。
[
……少し息を吐く。
潤さんが何か言うのならそれを聞くし。
黙ったままなら、また言葉を紡ぐ。
あの時の答えを。
]*
………………
[
彼女の話を聞けば、彼はふっと笑みを見せた。
可愛い人だな、と思うしかなくて。
でも、そう思わせたのは彼女の中のせいで、
彼女のせいでは全くない。
だから信じ切れていなかったと言われても
そんなに傷つくことはなくて。
よしよし、と彼女の髪を撫でながら
軽く唇を重ねて彼女のことを労う。
]
話してくれて、おおきにな?
……素直に、嬉しいわ。
*
[
…怒られたりとかあまりいい反応されない可能性も
なくはなかったのに。彼は笑みを見せてくれて。
夢の中の貴方も、嫌な顔なんてしなかった。
唇を重ねられて、潤さんは受け入れてくれるんだって
安堵した。信じ切れてなかった自分が
嫌になりそうではあるけど。
]
…潤さん昨日聞いたよね。
なんで私がOKしたのかって。
それは……
私を、飾りもせず女性らしさもない私を
そのまま受け入れてくれた貴方は、
一緒にいて心地よかった。
話していてとても楽だった。
気なんて遣わないその時間が、好きだった。
友達のままじゃ不可能な位の時間を
貴方となら共に過ごしたいと思ったから。
貴方が私の思い込みを超えて想い続けてくれたから
私は貴方に……
恋
をした。
[
仲良くなってからの貴方は、そう思わせるだけの
言葉を、想いをくれていた。
じわじわと水がしみ込んでいくように、
時間はかかったかもしれないけれど。
好かれるわけないって思いこみを
もしかしてって思うくらいに崩したのも貴方。
だって可愛さとも美しさとも縁のない私を
認めてくれる人がいるなんて…
思ってもみなかったから。
それでも鈍感な私は、
貴方の気持ちを確信できずにいたけど
でも、結局、貴方に惹かれて
貴方のほうへと振り向いたんだ。
]
だから…想い続けてくれて
私を好きでいてくれてありがとう。
ずっと、ずっと傍にいてください。
潮時なんて、もう思わないで……。
*
[着いちゃった。
なければいいなって思ってたのにあの棚は、記憶のままにあったんだ]
──ここだよ。
[棚に手を伸ばして、止める。
棚が鍵だったら、選ばれないんだろうなって思っててもいきなりエンと離れ離れになるかもしれない。それはちょっと嫌だから。
でも、冷蔵庫の一件もあるからエンに開けてもらうのも嫌だ。
だから、おれは、棚自体が鍵じゃないことに望みをかけて、エンの手をぎゅっと握ったまま、棚の扉を引こうと触ったんだ。
──そして、おれは、しちろの最期を見た]
[
ごめん、しちろ。
今のおれには、しちろの言ってることがわかる。
おれにも未練があるけれど、
それがしちろじゃなくてごめん……
顔を見せたくなくなってエンをぎゅっと抱き締めたんだ。
共感しかできなくておれも泣けてきちゃうから、上を向こうとしたんだけど、それより先にエンに引き寄せられて額にキスをされたから。
宥められついでに首筋に頭を擦り付けるように軽く抱き付いて]
うん、あってるよ。 あってるはず。
おれが開けるから大丈夫
[それからエンの提案を断って、棚の戸を引いたんだ。
触っても大丈夫って知っているから、戸を引く手は迷わない]
…………
[棚の中には魔術符が一枚。よりにもよって活性状態になっているんだけど…………なんでだろう。
魔術符は、おれの宝物だった魔術符は、おれはもう持ってないはずのものなんだ。
盗まれてぼろぼろにされて宝物は、取り戻せはしたけれど、おれが2年に上がるまで持たなかったはずなんだ。
そもそも盗まれた原因なんだっけって話だけど。
なんでここにあるんだろう。
活性状態、つまり符がなんかの魔法を使ってるってことなんだけど、魔術符は消耗品だから。
役目を終えれば、朽ちてしまうものなんだ。
おれがもう持っていないはずのものを使えるはずもないし、あっちのハチヤにしても使うかな?
なんで動いているんだろう。
これが鍵ならおれはまだ触りたくないななんて。
だからおれはエンの顔を覗きこんで、その言葉を待つことにしたんだ**
]
…………好き。
そのままの貴方が、好き。
ずっとそのままでいてほしいくらい。
恋に落ちてくれて嬉しい。
もう思わないから、貴方のそばにいます。
…だって、そんなに気持ちを伝えてもらえたから。
初めて、心の底から安堵したわ……
[
伝えながらぎゅっとだきしめた。
多分その抱きしめた腕は少し震えて
安堵の感情が伝わってしまったかも。
あれで記憶が戻らなかったら、と
不安で不安でたまらなかった。
そして、また4年かけて、となれば
彼はどんな選択をしたのか
考えただけでもゾッとする。
]
これからは、もっと素直でいて?
じゃないと、……
俺も苦しいから。
[
虚勢を張っていたわけではないけれど
待つことが苦になってしまうことも
そろそろ表に出してもいいかも、と
彼は彼女の瞳を見つめて伝えたはず。
]*
……そのまま、でいいの?
今みたいに沢山頼ったままでも…
朝起こしてもらったりとか
ご飯作ってもらったりとか…
うん……私もずっとそばにいる。
貴方の記憶をなくして
貴方がどれほど私にとって大切で、
私がどれほど貴方にとって大切なのか
やっと、わかったから。
やっと確信できた。
[
潤さんにぎゅうっと抱きついた。
彼の腕は震えていて、ああ、こんなに心配をかけて
不安にさせてしまっていたとようやく気付いて。
手を伸ばして、そっと彼の頭をなでた。
……私が記憶をなくしたままだったら。
多分彼を好きになるのに四年はかからない…はず
でも、万が一夢の出来事を忘れて記憶もなかったら…
どうなっていたかわからない。
]
……ごめんなさい。
潤さんだって、
かくしごとしてたんじゃないですか……
いつも涼しい顔してるようにみえて…
ぜんぜん、わからなくてっ……
[
見つめられながら苦しい、なんて言われて
そうさせたのは私なのに、涙が溢れてくる。
上手く言葉にならない。
ずっと大事な人に苦しい思いをさせてたなんて
私は、なんてことしてたんだろうって思う。
]*
[棚の中から出てきたのは、一枚の魔術符。あれは……みたことがある。ハチヤの宝物だ。覚えてる。これが原因でハチヤはいくつかの授業が出入り禁止になったし近くにいたからと俺まで巻き添え喰って罰を受けた]
これ。ハチヤが宝物って言ってたやつだよな。盗まれて取り返すのにお前が大暴れしたやつだろ。
懐かしいな。ボロボロんなってあんまりにも落ち込んでるから、保護の魔術俺がかけてやったんだよ。そういやあの直後くらいからハチヤがすげー懐いてきたんだよな。そうか、しちろの符だったのかこれ。
[知らない間に恋敵に協力していたらしい。それにしても目の前の符は今にも朽ちてしまいそうだ。これが朽ちたら……朽ちるまでに、ハチヤが戻らなければ。あちらのハチヤは消えてしまうのだろうか]
……ハチヤ…なぁ。あっちのハチヤとお前と、両方残ることってないのかな?今のお前をあいつが覚えていれば、そしたら。
……ないかな。ない、んだろうな。ハチヤ。ハチヤ……俺……
[唇が震える。その言葉を口にしたくなくて。けれど、その言葉は俺が言わなくてはいけないことなのだろう]
……そっか
[魔術符を目にしたエンは懐かしそうに目を細めて、ハチヤがエンに懐いた時の話を聞かせてくれたんだ。。
エンから聞いた思い出話は、当たり前の話だけれどおれの記憶とは違ってて。
なくなったはずの魔術符と、今ここにいるおれ
なくならなかった魔術符と、今ここにいないあっちのハチヤ
鏡をみてるみたいなあっちのハチヤとこっちのおれ。
だから、多分この思い出は、ハチヤの分岐点だったんだろうってわかるし、
これが鍵なんだろうっていうのも確信してしまうんだ]
[消えたくないって縋れたら楽だった。
傍にいたいって縋ってしまいたい衝動に駆られた。
でも、おれがそうするより先に、エンが縋るような目を向けたから。
奇跡に縋りたそうだったから。
おれは、言いたかった言葉を飲み込んだんだ。
「おれをあっちのハチヤが覚えていれば」なんて、
統合じゃなくそっちが出てきちゃう時点で、おれとハチヤはそれほどまでに別物で。
裏を返せば、ハチヤにとってエンはそれほどまでに大きな存在だったっていうことで──…
ああ、もう、頭の中がぐちゃぐちゃだ。
なんかエンはあっちのハチヤがいる前提で話しちゃってるし、つまりは、うん……そうだよね
なんでおれはあっちのハチヤに見せつけられなきゃいけないんだろうなって気持ちが、別れる辛さより強くなってきたから]
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