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![]() | 【人】 XIV『節制』 シトラ── 薬草園 [ 声が届く程度にわたしから離れて佇むクロさんに どうぞ、と椅子を勧めてみたけれど 座ってもらえたかどうか。 表情からも声色からも、彼の緊張は伝わってきた。 わたしの動揺もきっと伝わってしまっている。 何か話さないと、と考えあぐねているうち 薬草園に流れ出した張り詰めた空気を 先に破ったのは彼の方だった。>>2:396] ……え、 [ 持ち出されたのは、 2年目の誕生日に贈ったノートの話。 返事なら短いながらもその場でもらったはず、 そう不思議に思いながら耳を傾けていれば>>2:397 中に書いたメッセージへの返事だと彼は言う。 2年前のわたしが、 彼へと宛てて想いを込めた短い手紙。 何を書き記したかは、一言一句憶えている。] (103) 2022/12/18(Sun) 18:50:10 |
![]() | 【人】 XIV『節制』 シトラ[ 反応はなくても仕方ないと思っていた。 捨てられてしまっても致し方ないと思っていた。 ところが彼は わたしに返事ができなかったことを ずっと胸に抱えてくれていたらしくて、 幸せを願うと語る声に偽りの色はないように思えて もう、それだけで 声を上げて泣き出したくなった。] ありがとう、……ござい、ます [ クロさんは、わたしが憎くはないんですか。 『節制』の証を、魂を継ぐわたしが。 喉奥までせり上がった質問を、 愚問だと自戒して呑み込んだ。 彼はいま、『節制』のわたしではなくて シトラと話をしようとしてくれている。 そう感じたし、そうなのだと思いたかった。] (104) 2022/12/18(Sun) 18:50:56 |
![]() | 【人】 XIV『節制』 シトラ[ 息を深く吸いこんで、薬草の香りで肺を満たした。 すこしの間を置いて、彼へと向き直って ゆっくり、口を開く。] わたしの幸せは…… ……たとえ この世界に留まることが 必ずしも、幸福とは……限らなく、ても この世界にあって、 きっと、箱庭にはない……、って そう、思っています。 ひとは、……いつかは、死にます 世界が崩壊しなかったとしても こうしている間にも、 世界のどこかでは、誰かがきっと 亡くなっていて でも、こんな形で…… ただ純粋に生きていたいと願っていたひとたちの未来を 一方的に終わらせていいとは、思えません いいはずが……ないんです。 [ 絞り出すようにして発した声は自責の色を帯びた。 濡れた睫毛の雫を払って、 わたしが問われたのと同じ質問を投げかける。] (105) 2022/12/18(Sun) 18:51:39 |
![]() | 【人】 XIV『節制』 シトラ……どう、でしょうか あなたの幸せは、どちらにありそうですか。 クロさんにとって 幸せ……って、何、ですか。 どんなときに、幸せを感じますか? [ 『節制』と『運命の輪』は、教典によれば 考え方が合わず距離を置いていたという。 わたしたちは、どうだろう。やっぱり合わないのかな。 それとも、歩み寄れそうな部分を 少しくらいは見つけられるのかな。 ラピスラズリの瞳をそっと覗き込んで 暫し、彼の声に静かに耳を傾けた。]* (106) 2022/12/18(Sun) 18:52:00 |
XIV『節制』 シトラは、メモを貼った。 ![]() (a30) 2022/12/18(Sun) 19:05:31 |
![]() | 【人】 XIV『節制』 シトラ[ いくらかの会話がひと段落した頃 不意にクロさんが、何か見つけたような声を上げた。>>85 その視線の先を釣られて追えば、 探していたひとが、そこに立っていた。>>52] アリアちゃん……っ おかえり、なさい……! うん、わたしも お話できた……と、思う 今、お話できて、……良かった。 [ どこかほっとした様子のクロさんの返事を聴いて、 一拍遅れてわたしも胸を撫で下ろす。 元々、アリアちゃんの考えが聴きたくて探していた。 クロさんのリクエストにこくこくと頷き その回答に、固唾を飲んで耳を傾けた。 ] (167) 2022/12/18(Sun) 22:29:19 |
![]() | 【人】 XIV『節制』 シトラわたしと、同じ…… [ わたしが何を選ぼうとしたか、 わたしはまだ、 明確には彼女に伝えていないはずだ。 伝える前から答えの予想がある程度ついているのか、 どんな答えでも、合わせようとしてくれているのか ] …………、 [ 凛と涼やかな声で紡がれるアリアちゃんの意見は>>53、 意志を固めようとしてなお、覚束ない わたしの心を支えてくれる。 二人の会話を時折頷きつつ脇で聴きながら、 ひとつ、ふと思うことがあった。] (168) 2022/12/18(Sun) 22:29:32 |
![]() | 【人】 XIV『節制』 シトラ[ わたしがクロさんを避けてしまっていたのも 後ろめたさに打ちひしがれそうになっていたのも この魂に刻み込まれた誰かの心が引き起こしていたのなら、 アリアちゃんは? アリアちゃんがわたしの傍に いつも居ようとしてくれるのは、 いつも居ようとしてくれたのも、 『隠者』の心が引き起こしているのだとしたら? その声が自分のものじゃないって気付いたとき それでも、わたしの傍に居てくれる──? ] (169) 2022/12/18(Sun) 22:29:53 |
![]() | 【人】 XIV『節制』 シトラ……わたしも、 そういうものだと……、思う 世界が滅んでも、滅ばなくても 誰かは、ぜったいに、悲しむことになる。 [ 聡明な彼女の言葉には一言一句過不足がない。 須らく追従になってしまう意見を口にして ] だから、 少しでも悲しむひとの少ない方を、選びたいの。 ……そう、思ったんだけれど 世界は滅ぶ方が望ましい、って 思ってるひとも、きっと、少なからず居て…… ……わたしが、 世界は……滅んでほしくない、って 思うから そちらの方が、悲しむひとは 少ないように思える、だけ……かも、しれなくて…… [ 出来得る限り中立な立場で在りたいと そう願う心がわたしの中の天秤を惑わせる。] (170) 2022/12/18(Sun) 22:30:03 |
![]() | 【人】 XIV『節制』 シトラ[ ただ、] 新しい宗教? ──ふふ それも……良いかも、しれないね。 アリアちゃんが教祖様なら わたし、喜んで伝道師になるよ。 [ 神様に真っ向から勝負を仕掛けるような 威勢のいい発言をするアリアちゃんは 誰に囚われるでもない、彼女本人の声のように思えて わたしは少しだけ、安心できたんだ ]* (171) 2022/12/18(Sun) 22:30:43 |
![]() | 【人】 XIV『節制』 シトラ── 少し前・クロさんと [ 質問に対する彼の答えを聴いて 心の底から安堵するのは、確かにわたしの心。 わたしたちの心は、もしかして 『節制』と『運命の輪』ほどは 離れてはいないんじゃないだろうか。 そう思ったのは、束の間のことだった。 皆がいるならどちらでもいい、と彼は言う。>>146 願う幸せは同じはずなのに、違う。 もっと、根本的な部分が。] ……わたしも、今が、幸せです この洋館でのあたたかい暮らしは それまでのわたしには……なかったもの、だから お話しあったこと、教わったこと、学んだこと 囲んだ食卓、お祝い、お茶会、合唱団…… 一緒に過ごさせてもらった時間、すべてが かけがえのない、大切な……想い出です できるならわたしも、 みんなと……これからも、みんなと、一緒にいたい その気持ちは、きっと同じ……です、よね。 (174) 2022/12/18(Sun) 23:06:14 |
![]() | 【人】 XIV『節制』 シトラ……でも、 みんなそれぞれにきっと 譲れないものが、あって みんなそれぞれにきっと 大切なものも、ある 崩壊を悲しむひとも、面白がるひとも 望むひとも、諦めてしまうひとも、きっといて もし、世界が滅ぼされず済んだとして 神様の希望に背いたひとが 箱庭に歓迎されるとは……わたしは、思えなくて もし、世界が滅ぶと、すれば ……この世界に大切なもののある、ひとたちは 箱庭で幸せには、なれない……そう、思います。 [ どちらを選ぼうと、『みんなで』は難しい。 歩み寄って譲歩し合わない限りは。 わたしの思考はどうしてもそこに行きついてしまう。] じゃあ……クロさんは、 [ そのお話は、探し人が戻ってきたことで一時中断になった。] (175) 2022/12/18(Sun) 23:06:32 |
![]() | 【人】 XIV『節制』 シトラ …………ただ 最終的に決めるのは 神様、ですし クロさんの幸せを……願う、気持ちは 今も、変わっていません。 [ アリアちゃんを出迎えつつ小さく呟いた一言が 彼に届いたかどうかは、わからない。]* (178) 2022/12/18(Sun) 23:07:19 |
XIV『節制』 シトラは、メモを貼った。 ![]() (a55) 2022/12/19(Mon) 0:22:24 |
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