【人】 軍医 ルーク ―― カイキリア ――[ 身をよじり、身体を動かそうとする。 けれど、からり、と手元の破片が音を立てた、それだけで。 そうだ、繋いでいた手が、あったはずだった。 首を傾ける。 小さな傷だらけの手は、確かにそこにあった。 自分の右手と、つないだままだった。] (151) 2020/05/22(Fri) 23:00:05 |
【人】 軍医 ルーク[ ――… ] 『ルウのおとうさんは、 随分…強烈なひとだったんだねえ』 [ 自分の話を聞き終えた彼女の第一声は、 それだった。>>0:6>>0:7 両親の話を聞かせてほしいと言うから語ったのに、 聊かならず、引いている。 じゃあ、君の親は? そう聞いたら、嬉しそうに色々なことを話し出した。 “話しても良い”と、彼女が判断したことだろう。 本当の両親ではないのだけれど、それは優しい人たちで、 自分に色々なことを教えてくれたのだという。 ――帰れるのだろうか、彼女は。 胸を鷲掴みにされたような息苦しさを、 表情に出すことは必死で抑え、“医者”の顔を作る。] (152) 2020/05/22(Fri) 23:00:58 |
【人】 軍医 ルーク[ 白い部屋だった。 寝台も、床も、壁も、すべてが真っ白で、 いっそ現実味を失うようなその空間には、 あるべきものがひとつ、ない。 窓のない部屋は、病室というよりは囚人を閉じ込める檻。 まるで白紙の世界に放り出されたかのような、 耳が痛くなるような静寂の底に、 自分たちの声が吸い込まれて行く。] さて、傷を見せて。 体調に変化は? 『えー、もっとおしゃべりしようよ。』 ん、何の話をするんだい? 『ルウの尻尾の話』 なにゆえ 『えー、だってすごくもっふもふで、 触り心地が良さそうなんだもの。 ね、触らせてー!』 [ 寝台の上に胡坐をかき、屈託なく笑う子供。 その笑顔が自分に向けられるたびに、 胸奥がぎしりと軋む。] (153) 2020/05/22(Fri) 23:02:18 |
【人】 軍医 ルーク[ 自分は、そのような表情を向けられる資格がある人間じゃない。 そのことは向こうだって、分かっているはずなのに。 父の死を切欠に、機獣の謎を解き明かしたいと望み、 この研究所に配属になった。 業績を重ね、医者としての腕にある程度の信を 置かれるようになった頃。 一つの任務が与えられた。 “機獣とともに回収された、 天の穴の『向こう』からやって来た子供を、 すべての情報を引きだすまでは 心身共に、情報収集に差し支えない 最低限の状態に保つこと。” ] * (154) 2020/05/22(Fri) 23:07:43 |
軍医 ルークは、メモを貼った。 (a19) 2020/05/22(Fri) 23:11:27 |
【人】 軍医 ルーク ―― 回想:第二研究所 ――[ 天の穴の向こうから来た人間。 それが意味するところは、一つだった。 機獣はただの災厄ではない、 送り込んでくる者たちがいるということだ。 あれが生物ではなく機械の一種であることを考えれば、 それは当然とも言えたのだけれど、 この世界の“上”にもう一つの世界があって、 そこに住まう者たちが自分たちを滅ぼそうとしていることは、 頭の中の世界がひっくり返るような衝撃ではあった。 ――天の向こうには、世界がある。 父の話を思い出す。 その父は、現れた機獣に襲われて死んだ。 彼女は、仇と呼ばれる存在であったのかもしれない。 けれど、日々身体を切り刻まれ、 その小さな体に傷を増やしていく子供を そのような目だけで見ることは、 どうしたって出来そうもなかった。] (176) 2020/05/23(Sat) 10:30:49 |
【人】 軍医 ルーク[ 捕虜から情報を引き出そうとするのは当然のこと、 増して自分たちが滅ぼされようとしている瀬戸際だ。 そう思おうとしても、どうしても見過ごすことが出来なくて、 せめてやり方を変えることは出来ないのかと訴えた。 諭すように、けれども苛立ちを隠さず、上司はこう言った。 “人道主義も結構だが、付き合っていられる状況ではない。 彼女から引き出される情報は、確実に我々の有利となる。 君の自己満足に付き合って、 手の内にあるそれをみすみす逃し、 何百何千という人が死ぬことになってもいいという、 それだけの覚悟で言っているのか? 君は汚れ役は周りに任せて、 感謝される役回りを与えられた。 その上で綺麗事を重ねるのは、 虫が良すぎるというものだ。 おままごとも程々にしておきなさい” どれ程食い下がっても、出来ることが何もなかった。] (177) 2020/05/23(Sat) 10:31:46 |
【人】 軍医 ルーク[ なかったのだろうか? ほんとうに? もし本気で状況を変えようと、 死に物狂いで戦ったなら、 結末は変わっていたのではないだろうか。 それをせずに、状況に流されるままに甘んじて。 恨まれて当然だった。 自分も、彼女を傷つける者たちと変わらないというのに、 その子供は、恨む素振りを見せなかった。 ――少なくとも、表立っては。 時折こっそりと持ち込む菓子を、嬉しそうに頬張る。 食べることが大好きで、 美味しいものを食べると何より幸せそうにする、 そんな子供だった。] (178) 2020/05/23(Sat) 10:34:13 |
【人】 軍医 ルーク お願いがあるの。 [ ある晩、彼女はそう言った。 取り替えていた包帯の下の、治りかけの腕の傷は、 治ろうとする端から再び抉られ、開かれて、 無残に化膿しかけている。 目を逸らしてはいけないと、震える指先を押さえつける。 ――自分が抉っていると変わらない、そのような傷だ。] お願い、何? [ 心臓がどきりと跳ねた。 自分に出来ることは多くない。 彼女が望んでいるであろう、此処から逃げ出すことも、 天の向こうにいるという、 “おとうさんとおかあさん”のところに帰ることも、 叶えることは、許されない。] (179) 2020/05/23(Sat) 10:35:31 |
【人】 軍医 ルーク 『おとうさんとおかあさんと、お話がしたい。 わたしを、機獣のところに連れて行って。 話をするための機械があるの』 [ 心臓が早鐘のように打つ。 それは、どうしたって、無理な相談だった。 彼女が機獣と共に降りてきた存在である以上、 接触させることなど許されるはずもない。 それがばらばらに分解された残骸であっても、だ。 “天の向こう”と連絡を取るなど、 ことによっては致命的な事態だ。 それは駄目だ、と首を横に振る自分に、彼女は言った。] 『わたしが何かおかしなことをしようとしたら、 その銃で撃ち殺してしまって構わない。 お願い、ひとことだけでいい。 わたしから話すだけでもいいから、 死ぬ前に一度だけでも、話がしたい』 [ 彼女の視線は、服の下、 支給品の銃が隠れているその場所に定められていて、 ああ、彼女は知っていたのかと、そう悟る。 両親と、ひとことだけでも話がしたい。 その望みが、杭のように胸に刺さる。] (180) 2020/05/23(Sat) 10:36:47 |
【人】 軍医 ルーク [ ――… ] [ 機獣の残骸が保管されている一画は、 研究所の北側に増設された巨大な格納庫。 人気もなく、見張りも少ない 此処は軍事基地ではなく研究所だ。 機密性は極めて高いが、 内側から忍び込むことは不可能ではなかった。 直ぐに頷いたわけではない。 けれど、“両親とひとことだけでも話したい”と、 必死に、残りの命を振り絞るようにして訴える子供から 最後まで目を背けることが、 どうしても、出来なかったのだ。 伽藍とした、天井の高い格納庫に、 整然と並べられた機獣の残骸は、 生き物の骨のような、亡骸のような、 酷く奇妙に捻じれた死を感じさせる光景だった。 腕であったもの、脚であったもの、胴であったもの。 並べられた残骸を見渡し、 子供はその中の一つ、“箱”に駆け寄る。 自分も、周囲を警戒しながらその後に続いた。 もし彼女が機獣に何かする素振りを見せたら、 通信でおかしなことを一言でも話そうものなら、 そのときは――引き金を、引かなければいけない。] (181) 2020/05/23(Sat) 10:38:06 |
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