人狼物語 三日月国


45 【R18】雲を泳ぐラッコ

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―― 事件の翌日 ――
[まだ暗いうちに目を覚ませば、
今までと同じように自分の部屋の天井が見えた]

[事件が起きたのは昨日のこと。
その日はリフルの眠るベッドの隣で夜を明かした。

今日はご飯だって執務だって、
全部、けが人の部屋に持ち込もうとするものだから
メイド長直々に引き剥がされた。

仕事もご飯も終わらせて、枕を持ち込んでいたところを
今度は侍女に見つかり、
医者に任せてくださいって閉め出された]


 ……みんな、いじわるね

[夢の中で誰かにされたように、両手で私を抱きしめた。
私がいたって役に立たないのだから、
彼に負担かけないように。
……そんなの解っています]

[事件の日は「私のせいでリフルが死んだらどうしよう」
そればかり口にしていたせいか、
お父様が勲章を贈ることを決めてくれた。
『彼はよくやってくれた』と言ってくれたけれど、
目を覚まさない彼を誇る気持ちにはなれなくて、
ベッドのそばから離れられなかっただけです。]

[今日は見張りをつけられながら1人で寝たもの。
窓から脱出するのは思いとどまったもの]


[今日は仕事の合間に仕事を増やした。
カードックの義手技師にリフルの義手の状況を送って、
指示を願って駿馬を飛ばしたのだ。
きっと、こちらに向かっている王子とお連れさまに
文を持ち帰っていただくのがいいのだろうけど、
王子様を待つ気はもうなかった。]

[こんこん]

 『遅くに失礼します、お嬢様。
  リフルが目を覚ましましたよ』

 ほんとう!

[彼が気がついたら何時でも知らせてと
お願いしたとおりにドアが鳴った。
ネグリジェにガウンを羽織ってドアを開け、
ノックしてくれた侍女の横を抜けようとしたら捕まった]

 『今は医者が看ております。
  お嬢様はせめて着替えてからにしてくださいませ』
 

[こんこん]

 リフル、シャーリエです。
 入りますね。

[早く着替えられる街着でまたこの部屋に戻ってきた。
起きたその場に居ることはできなかったけれど、
リフルのおかげで無事です、ありがとうって伝えるのが一番。

お医者様に痛み止めを打たれるときのしかめた顔には、
私の方が唇を噛んだ。
右腕の話を聞いたときには、ああって手を組んだ。
顔だけ笑ったリフルの隣に椅子を置き、
お医者様の注意を一緒に聞いている。

侍女がお医者様を見送りに出て行く。
お嬢様、今日はお部屋で寝てくださいって念を押されたけど
何にもいえずに2人を見送った]


 ……リフル……
 ごめんね、酷いことさせて、
 痛い思いさせて、ごめん

 助けてくれて ありがとう
 私はどこも平気。

 ……リフルが目を覚まさないんじゃないかって……
 怖かった、こわかったの

[怪我はしてないって頭を振ったのに、
怖いことはと聞かれて、右目をこすった。
捜査が進んでいる間、警備は厳重で、
私は外出禁止を命じられてるから大丈夫。
簡単に現状を説明する。
三人組を雇った奴は捕まって、
黒幕を吐かされている最中だから、
すぐにも解決すると思う。]

 だから、私は大丈夫。
 リフルが心配だった……

[今度は左目を拭った。
リフルは泣いてるのを隠すことも出来ないんだ、
私が泣いてどうするの]

[勲章を渡す話もしなくちゃ
リフルが堅苦しいのいやがるのは知ってるから、
誓いの議はやらないことになるだろうと伝える]


 よく頑張ってくれました、騎士さま。
 あなたに不自由がないよう尽くすのが
 あなたの働きへの感謝のしるしです。

 ……義手の先生も呼んだからね。
 休んで元気になってね

[血生臭い悪夢はまだ彼を捕らえているのだろうか。

花瓶ごと持ってきていた中庭のバラを、
サイドテーブルに飾る。
私の部屋にあったのをそのまま持ってきた]


 また、明日来ます

[窓の外を見る横顔を見る。
生きていてくれて良かった、話してくれて良かった。
今はそれだけでいいって思って、後ろ手にドアを閉めた]

[私を見るでもなく、お医者様を見るでもなく、
どこかに向けられた顔を見ているとなにも言えなくなる。

それから抱きついて泣きたいのを我慢する数日が過ぎた*]

 
[そんなことを考えながら
 乱れていた金髪に指を通していけば
 手入れが行き届いているのだろう
 するりと簡単に整って、艷やな流れを取り戻す。

 ひとつ美しくなれば
 そうではない箇所
 膝下で蟠ったスラックスが気に掛かり

 眠りを妨げぬよう気を付けつつ
 反対の足首からも鎖を外して
 レースの下着と、拘束具以外を取り除いていく。]


   ん…?


[先程よりも、脚が重く感じるのは
 眠っているからだけじゃない。
 脱がしやすいように
 手伝ってくれていたからなのだろう。
 

―― 数日後・怪我人の部屋 ――
[彼と買いに行ったピアノ譜をなぞって
頭の中で鍵盤を鳴らす。
リフルに聞いて欲しい気持ちと、
私も曲を作りたい言う気持ちが混ざって、
何度も同じフレーズを弾いている。]

[今日も当たり前のようにお見舞いに居座っている。
お医者様でもない私が役に立つことはなくても、
人を呼んで助けを求めることくらいはできる。
あのときみたいに、リフルの側に居たがった。
そのくらいには気持ちを持ち直したとも言える]

 騎士さま、お加減はいかが?

[そういって花瓶の水を換えるのだ。
バラの向きを気にする振りをして、彼の顔を伺うのだ]

[話しかけるには塞ぎ込んでいるようなら、
話さずに出て行こうとしたけれど、
今日はどうしても言っておきたい事があった。]


 リフル、あのね。
 ……私、王子様のお話、お断りすることにした。

 かわりに頑張って国を支えようって思ったの。

 


 へんな話してごめん、
 ……また仕事終わってからくるから

[きびすを返した顔は
傍目からも赤くなっているのがわかるだろう。
そのまま出て行こうとして、
ドアの押し引きを間違えて顔をぶつけてた**]

 
[言葉どおり
 全部見せてくれようとしていたのだと
 期待してしまう自分も居る。

 けれども、油断させるためという線を
 どうしても消せないのは


   (………きっと、これのせいだ、)


 チャリ、…

 外したチェーンを持ち上げる。


 こんなモノでは
 貴方の体は繋げても
 心まで縛ることは出来ない。]
 

 
[椅子の上にまっすぐ伸ばした
 白さと長さが際立つ脚を
 ぬくもりが移るくらいのゆっくりとした速度で
 惜しむように撫で上げて

 それから、レースの上を
 へその窪みを
 紅の模様を崩してしまわないように
 避けながら胸を遡り

 俺にはある喉の突起を
 探るように首を滑らせてから

 最後にまた、頬をふたつの掌で包み込んだ。]
 

 
[眠り姫に口づけて起こす絵本など
 見たことも読んだことも
 まるで無いまま、虫に狂って育った男は]




   ずっと…、居て、 俺と




[不器用に望んでから
 下着とお揃いのレースの手袋を切なく見つめつつ
 残った2本の鎖も外して

 ただ、静かに
 その目が開いて
 また自分を見つめてくれるまで、待った。]
 

【人】 二年生 小林 友



  天使でありますから、たとえ破られても、
  焼かれても、また轢かれても、
  血の出るわけではなし、
  また痛たいということもなかったのです。
  ただ、この地上にいる間は、
  おもしろいことと、
  悲しいこととがあるばかりで、
  しまいには、魂は、みんな青い空へと
  飛んでいってしまうのでありました。

     ─────『飴チョコの天使』
            小川 未明
(19) 2020/10/06(Tue) 9:44:54

【人】 二年生 小林 友

[その日の逢瀬で、菜月と一体何が話せたろう。
 けれど、夕方の束の間の時間なんて
 俺達にはちっとも足りなくて、
 俺は家に本を持ち帰って、
 話し足りない続きを書こうとした。

 何でも菜月は打ち明けてくれて、
 柔らかくて繊細な心をひた隠しに
 仲間や家族に笑ってみせた、その裏まで。]
(20) 2020/10/06(Tue) 9:45:53

【人】 二年生 小林 友

[出来るだけ近くで彼女の気持ちを聞きたくて
 影に寄り添い、声に出す。

 ─────ああ、悔しい。悔しいなあ。
 もっと触れたい、近くにいたいのに。

 便箋を書いては消して、書いては消して。
 今までのやり取りは頭の中。]
(21) 2020/10/06(Tue) 9:47:24

【人】 二年生 小林 友

[そんな扱われ方をした便箋が……
 もう、裏なんかセロテープが無いとこの方が
 珍しいくらいになっているそれが、
 こうなる事なんて、分かっていたはずなのに。]


  ─────……あっ!


[何となく書き添えた、赤いハート。
 恥ずかしくなって消そうとしたら、
 びり、と音を立てて便箋が裂けてしまった。

 慌てて学習机の上に手を伸ばして
 セロテープを取ろうとしたら、
 手も触れていない便箋が、びり、びり、
 もう耐え切れないのだ、と言わんばかりに
 ひとりでに千々に切れていく。]
(22) 2020/10/06(Tue) 9:49:07

【人】 二年生 小林 友



  
ちょっ、えっ、待ってよ!



[慌てて便箋を手で押えても、手の下で
 容赦なく紙は裂けていく。

 たとえ破られても、
 焼かれても、また轢かれても、
 血の出るわけではなし、
 また痛たいということもなかったのです。


 この紙が無くなったら、菜月に逢えない。
 いやだ、いやだ、嫌だ!
 焦る俺を他所に、
 シャーペンと消えるインクの跡を刻んだ便箋は
 もう飛ばす寸前の紙吹雪みたいになっていて。

 ただ、この地上にいる間は、
 おもしろいことと、
 悲しいこととがあるばかりで、
 しまいには、魂は、みんな─────
(23) 2020/10/06(Tue) 9:55:46

【人】 二年生 小林 友

[ともかく、セロテープで繋いでしまえば……
 そう思って、紙から手を離した矢先。


 細かく千切れた便箋たちは、
 たちまち真っ青な
へと姿を変えて
 窓の外へと飛んでいくと、
 まんまるなお月様の方へと
 飛び立っていくのでした。]
(24) 2020/10/06(Tue) 9:59:36

【人】 二年生 小林 友

[行く手に美しい星の光る空を仰ぎ
 窓から身を乗り出すようにして
 俺は一人、大きな声を上げて泣いた。

 「さびくて、しかたがない!」


 真っ青な蝶の昇った空には
 ただ青ざめた顔をした月が
 黙って地上を見下ろしていた。]*
(25) 2020/10/06(Tue) 10:05:32
 


   ――……、……
はぁ



[目蓋を持ち上げ、真っ先にしたことは
 まだそこに居てくれた彼を二つの瞳で捕まえて
 安堵の吐息を漏らすこと。

 それから、穏やかに微笑いかけ]
 

 

   ……!


[手が自然に彼に伸びて気づく。
 枷はそのままだが、鎖が外されている。

 彼が外してくれたのだ。
 ……、信用してくれたのだろうか。

 手袋を外し、引き締めた腹の上に置くと
 改めて彼へと生身の手を伸ばす。]
 

 
[拒まれなければ片手を頬に添え
 親指が輪郭を撫ぜるだろう。

 生きたひとは温かい……、なんて
 当たり前なことを識りながら。]



   ……ずっと一緒、だよ
   治人が手放さない限り、ね



[聴いたのは果たして夢か現か。
 判らないけれど、何度口にしても良いと思う。
 信じて貰えるその日が来るまで――、
 来た後も、貴方の隣で命在る限り、何度でも。]
 

 
[それから、
 話すことが許される雰囲気なら
 ひとつ願い出るだろう。]



   仕上げて貰う前に
   逢わせたいひとがいるんだ

   ここを出られたら……

     僕の家に、来てくれる?



[勿論、海外である。
 明日にも……、という訳にはいかない。
 都合を訊き、数日の後に招待することになるが
 貴方はそれを許してくれるかな。**]
 

[眠っている間に施された処置は目覚めた時に説明されただろうが、傍で寄り添ってくれていた彼女の事をわざわざ教えてくれる様な人は居なかったか。
侍女の意味ありげな言葉も聞こえてはいたが、
そこから思い至れる迄はいかなかった。
それより、彼女が生きてそこにいる事に感謝したものだし。

扉を開けて入って来た彼女の顔は
嬉しそうというより、心配そうだった。
手の痛みから、己はただ疲れて眠った訳ではないと理解していたし、そりゃそんな顔になるんだろうけれど。
豪華なドレス姿でない事にはちょっと疑問が浮かんだが、口にする事はなく。
医者の話を一緒に聞けば、彼女の方が怪我人の様な顔になった。
それでも椅子に座って、隣にいてくれた]


  そっか。
  よかった。


[謝られたけど小さく首を振って、
彼女が大事なくて、今も安全を守られているとわかれば、医者に言った「そっか」とは違い、ほっとした様に笑う。
ほぅ、と強張っていた身体がひとつ、解ける気持ちだった。

「怖かった」「心配だった」とも言われたし、
涙を拭う様な仕草も見られたけど、
「ごめん」と返すとまた彼女を気に病ませそうだったから、微笑んだままでいた]



  ぁはは、
  ご配慮痛み入ります。


[勲章の話では、
そもそも誓いの儀なんてあるのかと苦笑もした。
「騎士さま」と呼ばれれば、はにかみからもう少し頬が染まる様な笑みになった。
色んな感情に振り回されるが、
日常の匂いに近付いて、悪くない]


  騎士、ね……
  くすぐったいですね。


[「義手の先生」と言われて、ちらりと義手を見遣る。
ちょっとくっつけるだけの前回と違って、直るんだろうかと疑問に思うが、ひとまず彼女の前で考え過ぎるのは止めようと思った。

彼女の持って来てくれたバラに礼を言って、
「また明日」と言ってくれる彼女に、
いつも通りのリフルの顔で頷いた。

彼女が静かに扉を閉めた後、
しばらく扉を見つめて、それから花瓶のバラを見つめた]

[この花の様に、ただ人の心を和ませられる存在であればどんなに楽であるだろう。

義手の繋ぎ目がかゆくなる迄眺めてから、
ゆっくりと枕へ頭を預けた。
掻けない、辛い。唇や舌をぎゅ〜〜と噛んで耐えた。

痒みを押さえ付ける痛みに、
バラにも棘があんじゃん、傷付ける事もあるじゃん、と気付いて目を伏せた。
思い出したくない事を思い出しそうで、
無理矢理眠った。

己がなるのは花でも駄目だ]

[それから何も変わらないまま数日が過ぎた。
否、変わらないのは両手の状況だけで、
他の痛いところは目に見えて回復していった。
うなされる様な悪夢だって、時間が少しずつ薄れさせてくれた。

傷跡が薄くなるとシャーリエも気付いて喜んでくれたろうし、
暗い表情を隠せない事が少なくなれば、
それも彼女の心を軽く出来ただろうか。

彼女の方も、
自分自身の問題を超えていった様な、
少しさっぱりとした様な、穏やかな顔をしていた。]


  あぁ……
  まぁ、気分は良くなったよ、大分。


[両手は未だ動かせないものだから元気とは言い難かったが、気持ちは日差しがさしてきたものだから、正直にそう答えた。
花の水を取り替えるなんて侍女がやる様な事をする彼女は何度見ても慣れないが、居心地の悪い光景ではない。
彼女がこっちを窺ったなんて気付かず、
目が合ったと思ったから、「ありがとう」と笑った]

 




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