170 【身内RP村】海鳴神社の淡糸祭
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…だからね、ぼくね
うたがうまくなりたいんだ
すきなうたをずっとうたって…
みんなをえがおにしてあげるの
。゚ ゚o .゚
..。゚ ゚o
。o゚
[その時、気づかれてしまったのだ
其れが『願い』であると、気づかれてしまったのだ
妖に、人の生の短さ等些細な話で
『みんな』という言葉の意味を履き違えたまま。
――俺にとって、『みんな』とは、
父と母と、海音だったのに。]
私達の好みも千差万別
私の好みは、雑味な願いが混ざる前の──
純な子が望んだ欲が、熟した果実
其れが美味であり、私の魂をも満たすのです
十年です
十年、胎の中で願いを孕ませなさい
期が熟した頃に、歌えましょう
宛ら人魚の様に
その身を贄とし、永久に歌えましょう
[その後、俺は何事も無かったように。
迷子として祭りから抜け出して――
悲痛の顔を浮かべた両親の腕に抱きとめられた。
心配したんだから、と怒り、悲しみ、安堵。
全てをぶつけられて、それで終わりだった。
――終わりだと、思っていた。]
[それは、俺に覚えのない記憶の断片。
脳を強請られて、引きずり出された記憶。]
おとうさん、おかあさん。
あのね、ぼく、みんなとはなれたときね
だれかにあって、みちあんないしてもらったの
なにか…おはなししたようなきがする
でも、わすれちゃった
ぼく、ありがとうっていえたかな
[子供の曖昧な世迷い言を。
両親は、青褪めた顔で聞いていた事なんて――
俺は、知らなかった。
わすれて、いた。]
[十年後。その願いが果たされる迄。
俺は『歌』を忘れていた。
『声』の言う通り、
歌を、愛を、心に秘めて孕ませたまま。
今まで見向きもしなかったもの。
軽音部、譜面、ギター、音楽。
十年を境に、その才は一気に花開いた。
願った事も忘れて、
愛する人に、歌を聞いてほしくて。
一番は海音だったけれど――
家に帰って、聞いてほしい人が、いたんだ。
]
親父、おふくろ、俺、曲作ってみたんだ。
ちょっと聞いてくれないか?
[両親、というものは。
本当に子の事をよくわかっているものだ。
その歌を聞いて。
『俺』が、『何』を、『誰』に願ったのか。
その時、大方を悟ったのだ。
――曲を聞き終えて、おふくろはただ一言。
『素敵な歌ね。』と。それだけだった。
高校生が作った稚拙な歌だから?
その時から、俺に対する愛情が薄れていたから?
――その、どちらも違った。
父も母も、刻限が迫っていると気付き、
俺の前で平静を取り繕うので精一杯だったのだ。
]
[それは、俺に覚えのない記憶の断片。
管を通じて、送り込まれてくる『誰か』の記憶。
お金を机の上に置き、書き置きを残す。
朝から晩まで、村に残る書物を漁る。
自分たちの寝る暇も惜しんで
何度も、何度も、何度も探して。
ときには村を出て、専門家にも訪ねた。
言い伝え、伝承、呪い、代償。
科学的根拠の無いもの、けれど確かに近づくもの。
それに抗う手段、方法、対策。
――その全てが、水の泡に帰そうとも、
愛する子の為に、全てを尽くす親の姿。]
["刻限は、次の祭りの夜"。
夫婦は、夢に出てきたその『声』を捉えた。
血の繋がりと、執着の成せた結果だろうか
――その真実は、定かではないが。
夫婦は、子とは別に神社に足を運ぶ。
楽しそうに笑う子と、その友の姿を一瞥して。
黒い提灯に――捧げたのだ。]
「どうか、息子を、あの子の人生を、
幸せを、奪わないでください、神様。」
。゚ ゚o .゚
..。゚ ゚o
。o゚
――ならば。
声に値する程の供物を寄越しなさい
人魚の落とし子には才がある
それをみすみす逃すのは口惜しい
『お前たち』にならば、出来るでしょう?
私の眷属となりなさい
さすれば、子の命と幸せは下界に
[親は、なんでも知っていた。
俺の願いが、歌を歌い続けることも、
その所以の幸福の根幹が、
『アイツ』だということも。
―――その日から、
家に金が置かれる事もなく、
俺の親は、俺に姿を見せなくなった。
* "その日"と、同じだったのだ*]
しら、知らない、
知らない、知らない知らない知らない
こんなの、
こんなの嘘に決まってる!!!
[絶叫した。痛みに、ではない。
苦し紛れの現実が、妖の呪いを受けていたなんて
信じられなかった。受け入れられなかった。
誰も、愛情を断ち切ってなんて、いなかった。]
『でも、謡えているでは或りませんか』
[『声』は笑う。
眷属を自身の隣に侍らせている。
動かない身体で、眼球だけ、彷徨わせる。
どれだ。どれなんだ、
俺の父と母が、
もはやどれなかもわからない。
]
お、オ、俺、俺は、俺は、俺は俺は!!
俺は、親父もおふくろも、海音も、
ただ、俺の隣に居ないだけで、
歌えば、歌ってれば戻ってくれるって思ってただけだ!!
お前たちに叶えてもらった願いじゃない!!
全部"俺"がいちから作ったんだ!!
[ドク、と脳髄がまた痺れる。
俺の感情を吸い上げるように、管が嚥下する。
光はさっきよりも赤く、あかく。
黒と違う淀みのようだった。]
『君の音楽、どれも良いね』
『採用しよう、我が社から売り出す事を約束する』
[コンポーザーとして、どこにも所属せず、
ネット活動や路上演奏で稼いでいた頃。
その言葉は、希望の光のように思えた。]
『では、この楽曲は
××さんの曲として、世間に公表するから』
[大手音楽会社に、曲を提供した時。
その一言で、光は一瞬で陰る事となる。
俺は、契約上、自身の名を明かせなくなる。
無名の俺が、曲を多くの人間に広める方法。
その手段として、会社はこの形態を取った。
ネット活動も制限されてしまった。
"ゴーストライター"
それが、俺の本当の今の仕事の肩書。]
[当然、始めは納得いかなかった。
いや、今だって納得が行っていない所もある。
けれど。現実は、厳しいものだった。
誰をも魅了する
人魚では、ないのだ。
俺の『歌』は――
ただ、俺が愛する人へ愛を伝えるときに、
自分の思い通りに、曲が作れるだけ。
何度かチャンスが訪れたとしても。
『俺自身』は、売れないままだった。
アイドルの突発的なヒットチャート
サブスクリプションで聞けるR&B。
J-POPに、レゲエが混ざった恋の歌
全て、俺が作った曲だと、世間は知らない。
形態を変えれば、たちまち、大衆は笑顔になった。
『歌』だけが、皆に愛されるのだ。]
有涯、生在る者の望む至高の幸福とは
如何に欲に塗れているものか
随分下界で苦労されているようですね
叶った後に関しては
私は一切、関与をしておりませんが
人魚の落とし子よ
再度『願う』のならば、叶えましょうか
真実を知り、何か新たに願う事はありますか?
……それとも、海鳴の子
ここに来た理由は、他の妖が原因でしょうが
私は、貴方の願いも、聞き届けますよ
[他人事のように、当然のように。
揺蕩う『声』に、悪意は感じられなかった。
ただただ、感性が違うのだ。]
お、れ、俺は、―――俺は……
[意識が、朦朧と、する]
| [ 伸ばした手。 何も掴めないのならいらない。 手の消失。 ] [ 真実の見えない瞳。 君の姿が見えないのなら必要ない。 眼の消失。 ] [ 動けない足。 君の元へ近付けないのならいらない。 足の消失。 ] [ そうしてひとつ、またひとつ、 消して────。 ] (31) 2022/08/23(Tue) 4:46:58 |
| (でも声は、声だけは───── 声がないと伝えられない。 君に伝えられなくなってしまう。) [ 伝わらないのなら声は****。 声の**。 ] (32) 2022/08/23(Tue) 4:47:24 |
| [ もしそれらが本当に消えていったとしたら。 俺というものは何でできているのだろう。 ] (33) 2022/08/23(Tue) 4:47:34 |
[ 火花が爆ぜたような一瞬のこと。
知らぬ声が耳ではなく
脳に響く。
でも今、気にするべきはそこじゃない。 ]
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