74 五月うさぎのカーテンコール
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[達した後にも簡単に火が点くように紫亜に教え込んだのは自分だ。
一度抜いてもすぐはいりたくなることを教えてくれたのは紫亜だ。
抜く間際の声にじわりと熱が再び集まりそうになるが、悪戯は止められる。
本気の「駄目」を聞いてやれない男にはなりたくないから、代わりにバードキスで余韻に浸った。
ゆっくりゆっくり、灯りかけた慾が湯と一緒に流れていくまで。
〜〜〜〜だから、そういうことを言わない!!
呻きだけで耐えた自分を褒めて欲しい。
彼女は卯田を翻弄する言動に長けている。]
[指で触らせるのも忍びなく、責任を取って掻き出そうとしたが、それは叶わなかった。
後処理という作業でも、自分の指なら感じてしまうのだという事実を伝えてくれたことが嬉しいからその場は折れる。
でも正直これが夜なら覚悟しておいてほしい、という宣言は忘れずに。
一足先に身体を流して出て、抜け殻を拾って衣類消臭スプレーを噴霧しておく。
荷物から新しい下着を出して履いて。
浴衣の下は肌着がいると聞いていたので白のTシャツを身に着けた。]
え〜っと、前に伸ばして丈を調節……っつかちょっと短いかやっぱり……
右を下にして左を被せて腰紐、っと……
[選んで貰った浴衣を着て、帯を身体の横で簡単に蝶結びにする。
初めてにしては中々上手く着られたと思う。
ついでに借りた巾着にスマホと財布を移していると、紫亜もそろそろ上がってくるだろうか。
彼女の方はどんな仕上がりになるか楽しみだ。*]
[一回立ってみてのタイミングできっと冷凍ご飯をレンジに入れた。
カロリーが必要なのだ。もしかすると空腹でアルコールだけ飲むと凄く弱かったりするかもしれない。したことないから基準はわからない。]
ジンさんは酔ったらどうなります?
[首を傾けて聞いてみた。
先日よりずっと力が抜けて、表情筋も解れているのが自分でわかった。
彼はどうだろう、いつもあまり変わらないように見える。飄々と捉え所のない佇まい、懐の深い鷹揚な人。
でも、いじらしくて気にかかってるって肯定的な言葉をくれた。]
『次』はじゃあ、俺パパド焼きマス。
あと、らっきょうの漬物も好きです。
[ご飯食いと酒飲みの折衷案をほろり、ほろり。]
はい、白いきましょう。
スモークサーモンあるんですか?豪華!
[カマンベールは万能選手。
オリーブはオイル漬け状態だとなかなかスイーツ界にはやって来ないけど、好き。]
ワインで焼きおにぎり、これもなかなか。
[ころんとピンポン玉くらいに焼き上がったまん丸おにぎりをはむり。香ばしい醤油の香り。
お勧め白ワインは辛口。スレンダーな酸を感じるけど、滑らかで、後味は意外とボリューミー。サーモンとの相性抜群。
それに杏と、花みたいな香りがする。ゼリー寄せに向いてそうだなと思った*]
[欲に濡れて低くなる声が好き。
掠れながら求めてくれる響きが、好き。
でも丁寧すぎる指先は、彼の熱を知ってしまった体には
ちょっとだけもどかしくて。]
ッ……… れんじ?
[離れていく手に、はしたなかったかと不安になり。
下がりそうになった眉は、
彼が手に取ったものを見てすぐに引っ込んで。
その荒々しい仕草に頬が火照った。
覆い被さる彼を見上げれば、呆れたよう落ちた呟き。
いつもと違う余裕のない表情に、胸の奥がきゅんと鳴って。
合わさる額に、目を細めながら両手で彼の頬を包み
首を伸ばしてかすめるように、キスをした。
吐息が絡む距離で、ふふ、としあわせそうに笑いながら。]
ん───……
は、ぁ
[囁きと共に、ゆっくりと彼の熱を受け入れていく。
入ってくるときは、まだ少し苦しいけど
少しすればそれも痺れるような疼きに変わって。]
……ふ、ぅ…… 奥まで、はいった…?
[脚の付け根に彼の肌があたるのを感じて
根元まで飲みこめたのを確認すれば、
改めて一つになれた多幸感に長い息を吐き。
体の力がふっと抜けた。]
[ちょうど、その時。]
ぁ、
[不意に持ち上げられた足に、
僅かに繋がる角度が変わって驚き、彼を締めつけてしまう。
思わず腰が揺れ、奥が擦れてビクっと跳ねた。]
ぃ、じわる……、 ッ
[過敏になっている体中の神経が、
彼にふれられる度にざわめいて、奥から蜜が溢れだし。
彼がふれた場所からぞわぞわと痺れるような熱が広がって
物欲しげに小さく喉が鳴ってしまう。]
[じわじわと内側に籠っていく熱が、目尻に溜まり。
溢れて零れ落ちそうになる瞳で、彼を見上げ。]
蓮司、……好き。
[やさしくなくてもいいから、乱暴でもいいから。
もっと欲しくて、彼に欲しがってほしくて
おずおずと太腿を彼に腰にすりつけた。*]
[切れそうになる理性を、幸せそうな笑みが繋いで。
腹の奥から身体が締め付けられる。
普段は呼ばない呼び方で、彼女が俺を呼ぶ。
足を抱えたまま、彼女の下腹をそっとなぞって。]
全部入った。
[俺の形を覚えて、馴染めばいい。
下腹を優しく押しながら、身を乗り出して口付ける。]
[身近で見詰めた嵐の瞳は潤んで。
ああ。俺は彼女が好きだと思い知る。
意地悪と言うには、少し余裕の足りない顔で笑って。]
俺も好き。嵐。痛かったら教えて。
[そうして足と腰を微かに持ち上げると、嵐を求めた。
彼女の中は熱く畝って。
最初こそ彼女の性感を導くようにゆるやかに。
けれど次第に荒々しく。
肌に汗が浮かんで、呼気が荒くなる。
彼女の胸に腕を伸ばして、頂きに触れながらキスをする。
俺と同じように乱れれば良い。]
[恥ずかしがり屋の恋人。
今までは優しく、大切に抱いてきたけど……
俺の夢を見てくれる人。口付けで濡れてくれる人。
彼女のもっと乱れる姿が見たい。
もっと俺を求めて欲しい。俺ももっと……
理性なんて飛ぶくらい、彼女を求めたい。]
嵐
[腰を打ち付けて名前を呼ぶ。
その綺麗な肢体を抱き寄せて、抱き締める。]
嵐
[深い海の中。そこにしか空気が無いかのように、唇を求めて。
何時しか理性も溶けだして、俺は嵐に溺れていった。*]
酔ったら〜〜……?
あんま、人といるときは酔いたくないんだけどねえ。
[言うか。言うまいか。迷うはぐらかし。
軽く頭を掻いて、でも麦には言っておいたほうがいいか、と腹をくくる。]
こう、だんだん気が緩んでくるっていうか。
ほろ酔いくらいだったら、ふわっふわ笑ってるくらいだけど、だんだんなんか構いたくなってきて……
[それ、と麦が座っている後ろにあるクッションを指差す。
指してから、まだ残る理性が顔を少し染めた。
酔っているわけじゃない。
酔っているわけじゃないから言いづらい。]
……ひとりで飲んでるときは、それと喋ってる。
なんも答えてくんないけど。
[ちなみにメリィという名前がついている。当然勝手につけた。
麦がメリィを渡してくれるなら、両腕に抱き込んでクッションを撫でているところも見せたろう。
最近ネットで見かける、撫でるとしっぽを振る猫クッションが実は切実に欲しい。]
パパド? いいねえ。
食感軽いもの好きよ。
[ナンやチャパティでなくパパドが出る辺り、好みを見透かされてるのか偶然か。
パイが好きだとかいうあたりから、口当たりの軽いものを想定されたんだとしたら――ちょっと恥ずかしい。考えすぎであってほしい。
らっきょう漬け、言わずもがな。甘酢で酒を飲むのはあまり得意でなくて、箸休めの感覚だが。]
冷凍のだけどね。
ちょっと流水解凍しときゃ食えるでしょ。
[瓶詰めのブラックオリーブは冷蔵庫。
ああ玉ねぎがないのが残念だ。買っておけばよかった。
ついでにケッパーもない。ケッパーの瓶詰めはひとりで買ってスモークサーモンだけで処理しきれる量じゃない。
シンクに深めのバットを置いて、スモークサーモンをパックごと流水に当てる。
とりあえずはオリーブと白ワインだけ、持って戻ろう。]
醤油の深みも赤と合うよな。あんまり焦がさなきゃ白とも合う。
[言いつつ、いそいそボトルを開ける。
さっきまで赤かったグラスはチェイサーを注いでくるりと一回し、飲み干して洗う。
注いだ液色はシャンパンゴールド。]
そういや、麦ってなんで白金が好きなの。
[色から連想したのは、彼の店でのトレードカラー。
彼は色よりその存在感で、人の記憶に残っていそうだが*]
ああ、…ぁー……
それは、そうデスね、人といる時は。
[気が緩んだらどうなるんだろう。
ふわっふわ。だんだん構いたくなって。想像して、ワイングラスの縁を見つめる。
今日は酔ってくれますかって、聞いたら、直接的な意味になってしまう。]
それ…?
[どれ。と振り向いた
。後ろにあるクッション。
これ?]
このクッションとですか?
[持ち上げて、ジンさんに見せる。
そうしたら抱いて撫でてるところをデモしてくれた。
目をまん丸にする。]
……
……ンlovely!!!
[ああ!と両手で顔を覆った。萌え、とはカクノゴトキモノ。]
俺……生まれ変わったらクッションになりたい……
[赤のボトルから後を継いで、注がれる白ワイン、杏みたいな果実味の香り。
エビのアヒージョのエビを突いてひっくり返した。]
……え。
[瞬く。
ジンさんの顔を見て、ワイングラスのシャンパンゴールドへ視線を落とし。その色を見た。]
トレードカラーのことだって知らなくて。
ただ好きな色って聞かれたから……
[白ワインのグラスの、腰のあたりを緩く撫でる。]
その。ジンさんのイメージ?
白くて、でも白よりあったかい。生成りやクリーム色よりはもっと煌めいていて。
──綺麗です。ホワイト・ゴールド。
俺のイメージカラーだったら、何色なんでしょう、ね。
よくわからない。
コーギーのお尻の色?
[つまり小麦の色だ。
注いでもらったばかりのワインを一気に半分くらいまで飲む。
んあ、美味しい*]
[シャワーは二人で交互に浴びて。
途中、呻くような声が聞こえたけれど、それが自らの声が引き起こしたものだとは気づかずに小首を傾けながら。
先に出ていく彼を見送って、後処理をした。
息を詰めて指を秘部に入れて、奥へと指を動かせば。
彼が残した跡がとろりと時間を掛けて落ちてくる。
夜に繋がる宣言を思い出したら、また自分で自分の指をきゅうと締め付けてしまって、はしたなさに赤面した。
こんなに愛されてるのにまだ足りないなんて思うなんて、どうかしている。]
[彼に遅れること少し。
新しい下着(さすがに二度目は恥ずかしいから、色は普通の淡いピンクを選んでいる)を身に着けて、その上にキャミソールを着る。
濡れた髪をタオルで拭きながら部屋に戻れば、浴衣姿の基依さんが見えて、普段とは見慣れない姿にどきっとした。]
わ、格好いい……
[格子柄の黒のシックな色が彼によく似合っている。
彼の腰元に添えられた蝶がゆらゆらと揺れていた。]
[それから自分もと浴衣を羽織って。
短大時代に習った着方をなんとか思い出して身頃を重ね、帯が短いから彼と同じように蝶結びで纏めて、くるりと背中に回す。
男性用と違ってちょっと縦幅がある分、それっぽく見えるだろう。
まだ湿り気の残る髪は軽く結わえてアップにすればすっきりとした。
着付けが終わったら、彼の前で小さくターンを決めて。]
どうです?
変じゃないですか?
[見せびらかすようにして、はしゃいでしまう。*]
……人といる時にこうなんの、嫌じゃん。
ま、人がいたらクッションは抱かないけど……
[じゃあ何を抱くかって? 皆まで言うな。
だから酔いたくないんだって。]
その反応は余計恥ずかしいわ……
[もす、と隠すようにクッションに顔を埋める。
顔を突き合わせて飲んでいたはずが、お互いが顔を隠す時間が数秒生まれた。]
俺より先に死なないでちょうだい。
[生まれ変わりを願うのに、話を切りあげてメリィを押し付けよう。
はー、顔が熱い。チェイサーを一息に飲み干した。]
[ひっくり返ったエビがあかあかと彩りを見せる。
その見た目と香りだけで飲めるなと白ワインを傾けた。
爽やかなキレと後から追ってくる甘い香り。
赤よりはいくらか軽く感じるが、飲み口のせいだろうか。]
……え。
[瞬きに瞬きを返して、返事もオウム返し。
それから語られる、イメージカラー。]
あ、あー……そういう……
[おっとこいつも素面で聞くのはなかなかハードルが高い。
ワイングラスを傾けて、アルコールに助けを求めた。
ホワイトゴールド。そうかあ、とどこか現実味のないまま受け止めつつ。]
麦のは……白、かな。俺のイメージだけど。
なんにも染まってない感じ。
何でも受け入れるみたいだけど、でも純粋なままでいる、っていうか。
すごく綺麗。
[さて、そろそろサーモンの様子を見に行こうか。
照れ隠し半分おもむろに立ち上がって、シンクの方へ*]
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