［　廃れた神社の本殿のような造りの建物。
　　こぢんまりとした印象ではあるだろう。

　　中に入れば神気が満ち、清浄な空気が漂う。
　　囲炉裏も見当たらないが
　　温かさもしっかり感じられる。

　　その場に鬼はみつきを下ろすと
　　深く息を吐き、己の巫子を見る。　］

　

　　ここがこれから我と巫子が住む塒だ


　　よいか？
　　巫子には務めがある
　　それを果たせば山の機嫌は良い。
　　吹雪もなく天候は安定する。
　　夏は日照りもなく雨を降らせることもできる。
　　村を、人を、守ることができるのだ。

　　

　　早速そなたの、巫子の生気を我に与えてみせよ
　　さあ、みつきならどう与えてくれる？



　

［　あえて方法を教えず、楽しそうに
　　余裕のある笑みをしてみせた。



　

　　なんだ、我を待たせる気か？


［　時がそんなに経ってはいなくとも
　　そう言って急かすのも意地悪の一つだ。


　

［　手招きをして、みつきを呼び寄せる。


　

［　己自身の生きる理由など




　

　

　はっはっはっ！
　我ほどの鬼となれば真名を隠す必要もないのでな

　だから言ったであろう？
　名を呼ぶのは不敬だ。とな



　

　だがそなたは平気であろう？
　我が許したからであるぞ

　因って、気後れなどするでない
　呼べるうちに沢山呼ぶといい

　

　

　

　　出会いには希望が迎え
　　別れには寂しさが付きまとうものよ

　　
［　震える手に気が付いていた>>61

　　だがどうしたら震えが止まるのか、
　　なぜ震えているのか>>60





　

　　その笑み、我は好かん
　　無理に笑う必要はない

　　自分の心に正直に生きよ


［　言葉より気になったその笑みが>>62
　　心からの笑顔ではないとわかってしまった。


　　震える手もそのままで、無理に笑えるものか。
　　だから手を。
　　手を掴む、つもりであった。



　

　　震えは止まったか？
　　
　　　　　　　　　　





　

　　村のものは巫子がその後どうなったかぞ
　　知る由もないだろうな



　

　

［　全てを委ねるのは簡単だ。
　　だが流されるままでは気も流れる。

　　思考を我でいっぱいに埋めるのだ。
　　それでこそ強い気が手に入る。　］
　　


［　みつきの言葉に素直に従う様に
　　向き合った>>70

　　頬に触れる手はまだ冷たさが残り
　　じゃれるように頬の熱を渡す>>70　］

　

　　ほう……？　


［　何も知らないはずの巫子。
　　触れただけの唇から生気が流れ込む>>71　］







（　だが口から息と共に流れ込む生気は
　　悪くはない。むしろ────……。　）


　　　　　

　

　　そなたも気持ち良くなれ
　　






　

［　この地域の冬は厳しく
　　雪と寒さが生き物に試練を与える。

　　人身御供。
　　人は捧げて満足するだろう。




　

　　天災を鎮める為に
　　人に恐れられし山であれど

　　生きとし生けるもの
　　最も尊きはその御魂だ

　　生きたいか？
　　巫子が望めばいつでも逃げて良い



　　巫子は選んで良い

　

［　この言葉で逃げた巫子は数知れず。



　　最初に少しばかり生気をもらえれば
　　それで良い。




　

　　我は離さぬ



　　ならばそなたも離れるな


［　求めるまま、与えられ
　　やがてこちらに寄りかかる重さに>>94
　　自我を徐々に戻していく。

　　目の色が飢えていた赤から黄へと変わる。　］

　

　　美味しかったぞ
　　みつきの味


［　力のなくなった体を抱きしめ余韻に浸る。
　　自らに気が戻り体に力が入ることを実感する。



　

　　我の巫子だ

　　解ってて言っているのだろう？
　　


［　呆れた顔で見やるが
　　その表情は何も変わらぬだろうことは
　　面の下からでもわかる。　］

　

　　我が巫子は我のために
　　生きていたのだと言ったぞ


　　逃げもせず、気丈に振る舞って
　　健気であろう？

　

　　少なくないと言っておきながら


　　知らせずともどこからか聞きつけてくるのだろう
　　静かな塒にそんなに来客はいらぬぞ


　

　　思えるか
　　そんな大きい置物は邪魔にしかならぬ

　　用が済んだのなら帰ってもらおうか
　　今は機嫌が良い
　　このまま巫子と寝るのでな

　

　　……言われずとも
　　我が巫子を守れずしてこの山を守れようか

　　我に力が戻れば山も戻る
　　またこの山で花見をしよう。……皆でな

　　ほら、もういいだろう
　　

［　手をひらひらとさせ追い払う動きを見せる。
　　寄りかかった体を抱え直し
　　力を入れすぎず、落とさない様にと
　　慎重に持ち上げる。　］

　

　　知っておったのか
　　抜け目のないやつだ

　　みつきに聞かれたらどうするのだ
　　



　

　　あやつにはなんでも見通されてしまうな

　　みつき……。我の巫子