人狼物語 三日月国


45 【R18】雲を泳ぐラッコ

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視点:


【人】 小林 友



「この世に悲しいことはたくさんある。
 だが、自分の手で死ぬのではなくて
 「ここにいたくない」と言うならば
 どれひとつ、同じ願いを持つ者と
 お前とを入れ替えてみよう。

 元の世界にいる、お前を知っていた人間は
 皆お前のことを忘れてしまう。
 そうして、お前は新しい世界で
 新しい親や友と生きるのだ。

 けれど、悲しいことはなくならない。
 影のように、お前のうしろをついていく。」

   ─────『あの日、月が言ったこと』

 
(9) 2020/10/08(Thu) 18:57:44

【人】 一年生 小林 友

  ー 数年後・某大学研究室にて ー


  「こら、小林くん。また手指消毒忘れてる」


[同じゼミの柳原が可愛らしく頬をふくらませて
 俺の背中を指でつついた。
 この『入退出時の手指消毒』の習慣は
 いつまでたっても慣れなくて
 ついサボっては、自分より
 頭ふたつ背の低い女の子にドヤされるのだ。]


  悪い悪い。何年経っても忘れるんだなぁ。


[一旦持ち出そうとした本を脇に置いて
 出入口に置かれたスプレーを掌に吹き付ける。
 いつまで経っても、俺はこの世界の風習に
 完全には馴染めないままでいる。]
(10) 2020/10/08(Thu) 18:58:35

【人】 一年生 小林 友

[─────あの日、月に願いを届けた瞬間
 俺の意識は遠のいて……
 気が付けば、病室の一角で
 色んな機械に繋がれていた。

 慌てて起き上がろうとしたら
 病室の前を通りがかった看護士が
 飛び上がらんばかりに驚いて叫んだ。

 『友くんが動いてる!』って。

 後で聞いて分かったことには、
 俺という人間は、中学校からの帰り道に
 トラックに跳ねられて以降、ずっと
 目を覚まさぬ植物人間状態だったらしい。

 名前も同じ『小林 友』。
 父親と母親の顔も同じ。
 ご丁寧に、中学校の友達と言って
 青柳と佐々木達まで見舞いに来た。]
(11) 2020/10/08(Thu) 18:59:00

【人】 一年生 小林 友

[すんなり飲み込むには、
 あまりに大きな変化だった。

 リハビリに励みながら何度も事実確認をして
 どうやら、ここが『コロナ』というウイルスに
 脅かされている世界だということは分かった。]


  …………じゃあ、菜月はここにいるの?


[だけれど、俺の周りに
 菜月を知っている人が
 誰一人としていないことが分かった時は、
 俺は、自分の世界を捨てたことを、
 ─────少し、悔やんだ。

 結局、君に会えないなら
 もう生きていたって仕方がない。]
(12) 2020/10/08(Thu) 18:59:36

【人】 一年生 小林 友

[でも、俺は結局諦めきれなかった。

 リハビリを終わらせて退院したら
 青柳達から一年遅れて高校に入り直して
 今、大学で近代文学を学んでいる。

 研究作家は、小川 未明。

 どれだけ研究しても、あの時
 俺と菜月に起きた、夢みたいな出来事の
 説明なんか付かなかったけれど。]
(13) 2020/10/08(Thu) 18:59:51

【人】 一年生 小林 友

[大学は、まさに人の坩堝。
 同じ講義を受けてる人間の名前なんか
 全く知らずに同じ教室にいる。]


  『おーい、小林!消毒!』


[小埜先生から呼び止められて視線を上げると
 隣に、背の低い先生より頭半分高い
 見たことのあるような女の子がいる。
 先生に招かれて近くによると
 背丈は、俺と同じくらいだろうか。

 あの子はチアをしていて
 筋肉がどうとか言ってたっけ。



  「「小林、こいつが前ちらっと話した面白いやつだ。
   文学部じゃないのに俺の授業とって
   歴史に残る酷いレポートを書きながら
   毎回授業取ってくる。
   今年も落ちる予定だ、なあ早乙女」」


[先生がそう、笑って紹介してくれた
 その女の子の胸には、ボロボロの
 『小川未明 童話集』。]
(21) 2020/10/09(Fri) 18:44:39

【人】 一年生 小林 友



[その背表紙に『私立桐皇学院高等学校所蔵』と
 書いてあるのを見た瞬間、息が止まった。]

 
(22) 2020/10/09(Fri) 18:45:00

【人】 一年生 小林 友



  …………小林、ユウ、です。
  友、と書いて、ユウ。


[あれだけ見たいと願っていた顔が
 水面に揺らぐようにぼやけていく。
 話し掛けたいと思っていたのに、声が出ない。

 人違いだったらどうするんだ、と
 冷静な自分に急き立てられるように
 俺は、ただの小川未明好きかもしれない人に
 こう尋ねるんだ。]
(23) 2020/10/09(Fri) 18:45:44

【人】 一年生 小林 友

[もし、それに肯定が返ってきたならば。

 ……ああ、先生の前でキスなんかしたら
 後でしこたまからかわれるし……。
 世界を越えてもままならないことばかり!

 それでも、君と一緒なら。]
(24) 2020/10/09(Fri) 18:46:28

【人】 一年生 小林 友



   窓を開けると、いい月夜でした。
   美代子さんは、自分の造った千代紙の花を
   すっかり、窓の外に投げ散らしました。
   二、三日すると、庭には、
   いろいろな花が、一時につぼみを破りました。
   千代紙の花が、みんな木の枝について、
   ほんとうの花になったのです。

    ─────『千代紙の春』
            小川 未明

 
(25) 2020/10/09(Fri) 18:49:54

【人】 一年生 小林 友

[まるで夢みたいな話で、きっと
 俺たち以外誰も信じちゃくれないだろうけど
 でも、他ならぬ君が信じていてくれるのなら。]


  俺はずっと、金の指輪の片方を
  探し続けていたんです。


[まだ千代紙の春は、始まったばかり。]*
(26) 2020/10/09(Fri) 18:53:54

【人】 新郎 小林 友

[千代紙の花が芽吹き、
 古びた本が蝶へと変わり、
 ラッコが空を飛んだ日。

 あの日から、俺は菜月の温もりや声を知った。

 手を繋ぐと力強く握り返してきて
 たまに手が痛くなるのとか、
 案外涙もろいのとか、
 キスしよう、と言うとちょっと目が泳ぐのとか。
 あの日から菜月の新しいところを知って
 多分、菜月も影じゃない俺のことを
 毎日少しずつ分かってくれていくのだろう。

 何せ、俺は別な世界からの住人だ。
 手紙が窓から羽ばたいた夜から
 今日に至るまでの長い長い物語は
 千夜語っても語りきれない。]
(73) 2020/10/12(Mon) 14:01:01

【人】 新郎 小林 友

[だから、初めてデートに行くのなら
 一緒に本屋に行きたいと思う。

 めいっぱいオシャレした
 菜月の姿をこの目で見てから
 改めて「君が一番可愛い」って言いたい。

 それから、一緒に読むための本は
 相変わらず小川未明の童話集。
 紙越しじゃなくて、隣で
 君と他愛ない感想を言って笑いたい。

 そしたら、喫茶店でお茶でもしよう。
 フラミンゴのマドラーと一緒に
 意味深に、ストローが二本付いたドリンクを前に
 俺は多分もにょもにょ言ってしまうけど
 君が「一緒に」と言うならば
 必ず俺はそう、するから。]
(74) 2020/10/12(Mon) 14:01:22

【人】 新郎 小林 友

[それから、それから─────

 ああ、やりたい事は山ほどある!
 君に伝えたいことも。

 一日がたったの24時間なのが惜しくて
 つい、伝えられない気持ちのまま
 いきなり君を引き寄せて、キスしてしまったり。

 そう打ち明けたら、君は笑ってくれる?]
(75) 2020/10/12(Mon) 14:01:57

【人】 新郎 小林 友

[今は笑って指さしてくれたって構わない。

 いつか、君が隣にいるのが当たり前になった時
 ちゃんと言葉で想いを伝えたい。

 消えないよう、心の中に。]**
(76) 2020/10/12(Mon) 14:04:50