181 忘却の前奏曲、消失の1ページ
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[ 目を開けると、白い天井に虫が湧いていた。]
(1) 2022/10/26(Wed) 15:08:12 |
| [ 柄石膏ボードとカーテンレールが包む部屋に 消毒液が充満して、頭が痛くなる。 ボクの、知らない臭いだ。
] ………………。 [ ボクが起きたことに気づいた看護婦さんが 慌てて先生を呼びに行く声が聞こえる。 けど肝心のボクは、まだ身体が動かせなくて。] (2) 2022/10/26(Wed) 15:09:10 |
| (3) 2022/10/26(Wed) 15:09:43 |
| (4) 2022/10/26(Wed) 15:11:00 |
| (5) 2022/10/26(Wed) 15:11:22 |
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[ ボクは手を伸ばした 誰もいない空へ、手を伸ばした。
誰も居ない事実に、目を背けて。]**
(6) 2022/10/26(Wed) 15:14:33 |
| [ 本来いるべきなのが親というもの。 たとえボクがどんな存在だったとしても いて当然なのが親のはずだったのに。 キミの当然を崩壊させるきっかけを作ったボクは あまりに罪深い存在なんだろう。 >>7>>8 でも今のボクには、それを詫びることも出来ない。] (13) 2022/10/26(Wed) 17:38:02 |
| [ 伸ばした手を掴んだ人は 甘く優しい香りがする人だった。 >>10>>12 独りかもしれないという恐怖心が 少しだけだけど薄らいだ気さえする。 ] (14) 2022/10/26(Wed) 17:40:23 |
| [ 彼女が何者なのか。 どれだけ記憶を辿っても、答えが見つからない。 元親くんって誰の事だろう? >>10 どうして彼女はここにいるのだろう? 何も分からないボクはキョトンとした様子で。] (15) 2022/10/26(Wed) 17:43:55 |
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えっと、とりあえず…大丈夫です。
なんか身体はまだ痛いけど まだ耐えられるくらいのものだから。
(16) 2022/10/26(Wed) 17:44:13 |
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ところで…
はじめまして、ですよね。 貴女のお名前を、聞いてもいいですか? (17) 2022/10/26(Wed) 17:44:41 |
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[ ボクがキミにそう尋ねた時だ。
先生がボクの所へやってきて ボクの身に起きたことを説明してくれた。]*
(18) 2022/10/26(Wed) 17:45:21 |
| [ ボクが彼女の名前を聞いた途端に 空気が凍りついたような気がした。 >>21 ボクの言っていることがおかしいと。 信じられないと、そう言いたげな顔で ボクの記憶を否定する。] ……え?
[ でも明らかにボクへの意地悪じゃない。 本当に、心から信じられないって顔だ。 すると決して噛み合わない鎖が 先生が繋げてくれた。 >>22>>23] (28) 2022/10/26(Wed) 19:38:20 |
| [ ボクの記憶が無い。 今度はボクが信じられないという顔を浮かべた。 でも、さっきの噛み合わない会話の説明をつけるには あまりにも納得がいってしまう事実で。 ボクは思わず頭を抑えてしまった。 だって頭が、痛くて仕方がなかったんだ。
] (29) 2022/10/26(Wed) 19:39:10 |
| (30) 2022/10/26(Wed) 19:40:03 |
| [ 何も知らないまま産み落とされた赤子のように 右も左も分からないという恐怖心に 頭がクラクラと悲鳴をあげてしまう。 それでも落ち着いていられたのは ボクと同じくらい真剣な表情で この事態を受け止めている人がいたから。 >>24] あの…先生… ボクの記憶って… それに、ボクの父さんと母さんは… [ ボクの質問に先生が首を横に振る。 ボクの記憶が戻る確証はなく、 地道に治療を続けていくしかないらしい。 そして真にボクの心を抉ったのは 両親がここにいない理由だった。
] (31) 2022/10/26(Wed) 19:41:23 |
| [ 先生がボクと彼女の前で口を開く。 彼女の前で言っていいのかと躊躇う先生に 構いませんと言い切ったからだ。 ボクの父さんも母さんも >>0:106 違う場所でそれぞれ家庭を築いている。 中学生の頃までは親戚のお婆さんが 親の代わりになってくれていたけど、 そのお婆さんもボクが高校に上がる頃には 既に施設に入ってしまっていて。 今は元両親から養育費だけが >>0:107 毎月振り込まれている。 それがボク、朝日元親の現状なんだと。 緊急連絡先に登録された母さんの携帯に繋げて 先生が全て母さんに確認してくれたらしい。] (32) 2022/10/26(Wed) 19:43:17 |
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[ ボクがこんな目に遭っているのに それらしい人が誰も来ない理由が分かる。
でも、涙は見せなかった。 見せるほど、悲しくも感じなかったから。]** (33) 2022/10/26(Wed) 19:45:00 |
| *** [ 心の整理がつかないことを察してなのか。 先生が病室から出ると、彼女と二人きりになって。 すると、彼女がさっきのボクの質問に答えてくれる。] ハツナ、さん…? [ 確かめるように名前を呼んでみて。 >>25 必死に記憶の中を探ってみても、心当たりがない。 ハツナさん、と名前を呼んだのは ボクが以前そう呼んでいたと聞かされたから。 でも、ボクの手を握る彼女の言葉に ボクは首を横に振る。 >>26 予想だにしなくて当然驚いたけど 疑うよりも先に、哀しかったんだ。] (34) 2022/10/26(Wed) 19:45:58 |
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………ごめん。
[ 彼女の微かな望みを断ち切るように ボクはまた、首を横に振る。 >>27 もし彼女の話が本当だとしても 今のボクに彼女の特別である資格が あるなんて到底思えなかった。 ]* (35) 2022/10/26(Wed) 19:49:00 |
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[ 今ここに両親が居ないことが 悲しいことだなんて思わない。
自分が闇の奥深くに落とされて 手を差し伸べない親なんているだろうか? 考えたらたとえボクにだって答えが分かる。
ボクには、はじめから親なんて居ないんだ、と。]
(51) 2022/10/27(Thu) 4:08:09 |
| え?あ、う、うん…大丈夫だよ。 [ そんなわけがない。誰だって分かるのに。 >>36 反射的についそう答えてしまうのは ボクが彼女という人を知らなすぎるせいだ。 信用はしてる。でも信頼は……。
ボクの記憶が戻らないと困るのは どうやら彼女も同じみたいだったけど。 >>37 太陽が枯れ、死んでいく姿に >>38 ボクはひどく冷静な頭で、言葉を被せた。] (52) 2022/10/27(Thu) 4:08:54 |
| (53) 2022/10/27(Thu) 4:09:35 |
| [ 家族だった人達を信頼出来ずに 蔑み続けた結果、自己嫌悪に苛まれる。 奇しくも記憶を無くす前と同じ道を辿って 同じ台詞を吐いていたことにボクは気づけずに。 でも言葉を被せたボクの傍らで キミはボク以上に怒り、哀しんでいたから。 >>39 ボクは思わず目を丸くしてしまうんだ。] (54) 2022/10/27(Thu) 4:10:06 |
| *** [ ボクは以前彼女のことを名前で呼んでいたらしい。 しかも呼び捨てで。なんと仲睦まじいのだろう。 自分のこととは到底思えない。 疑うわけじゃないけど まだ彼女を完全に信頼出来るわけじゃないから。 彼女の言うことを信じたくても、まだ踏み込めない。 ] うん……ごめんね。 [ 気を遣わせてしまったことにも すぐに彼女の期待に応えられないことにも。 どこか無理をしているようにも感じる その笑顔にボクは心が痛くなってしまった。 >>41] (55) 2022/10/27(Thu) 4:12:44 |
| [ 途端、ボクの自己嫌悪を食い止めるように 彼女の口から事の顛末を語られる。 交通事故があった時のこと。 >>43 彼女の言うことが本当のことなら ボクも…こんなボクでも、誰かを守れたんだって。 少しだけ、安心することが出来たから。 ボクは謝る彼女に向かって、小さく微笑み。] (56) 2022/10/27(Thu) 4:16:27 |
| (57) 2022/10/27(Thu) 4:16:47 |
| [ 記憶を無くす前の自分の言いそうなことを 彼女へと告げる。 きっとボクなら、そう言うはずだ。 でも彼女は未だ崩れてしまいそうな 不安定に揺蕩う笑顔のまま。 >>44 秘めた決意だけで、突き動かされていた。 とはいえそれも全てボクの感想でしかない。 何を決意し、何を望んでいるのか。 >>45 今のボクには推し量ることしかできない。] (58) 2022/10/27(Thu) 4:17:28 |
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ごめん、ボクが言っても説得力、ないよね。
[ 口をついて出てしまって数秒。 ボクは困ったように笑う彼女に、頭を下げた。]
(59) 2022/10/27(Thu) 4:20:31 |
| [ 謝罪を終えて頭を上げると 彼女から今後のことの話をされた。 話題を逸らしたかったなんて そんな意図にも気づかないまま。 ボクはと言えば思わず唸ってしまう。 何から何まで彼女に手伝わせるわけにはいかないのに 先生の話からして、ボクに頼れる大人はいない。 しかも当のボク本人はこのザマだったんだから、 たとえ信頼しきれなくても、頼るしかなかった。] (60) 2022/10/27(Thu) 4:36:23 |
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