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【人】 空虚 タチバナ[彼は私をかれん≠ニ呼ぶ。 その響きはいつだって名前以上の意味を持たない。 だから何度だって呼んでほしくなって、 いつも聞こえないフリをしようか悩んでしまう。 けれど二度と呼ばれなくなるのが怖くて 結局はすぐに返事をしまうのだった。なぁに?] え……。 [彼は服を着替えながら何てことないように尋ねた。 今度はすぐに返事ができず、 エアコンを操作する背中をじっと見てしまった。] (45) 2022/08/16(Tue) 20:24:44 |
【人】 空虚 タチバナわたしの、たんじょうび……。 [私が生まれた日。ケーキとプレゼントを貰える日。 プレートの上には「おめでとう」と書かれていた。 ずっと昔に忘れてしまった、一年に一回ある日。 プレゼントが楽しみだったのはいつまでだろう。 生まれた日が生まれてしまった日に変わったのは いつからだっただろうか。 その日がなければ、誰も不幸にしなかったのに。 その日がなければ、私が…… 頭の痛みが蘇るようで、慌てて結の背に駆け寄った。 そう遠くない距離すらゼロにして、 外で鳴くひぐらしのようにくっつく。] (46) 2022/08/16(Tue) 20:25:12 |
【人】 空虚 タチバナ[きっと、彼にとって深い意味はないのだろう。 些細なことなのか、当たり前のことなのか。 もし彼が不思議そうな顔をするのなら、 少しずつ話をするつもりだ。 まだ、怖いけれど。ずっと怖ろしいけれど。 過去の私の欠片と彼の手で生まれた私の話を。 準備も何もできない今を望んだ自身に 彼はどんな反応を見せただろうか。 そんな彼におずおずと欲しい物があると告げる。] (49) 2022/08/16(Tue) 20:26:49 |
【人】 空虚 タチバナ[時を離したばかりの結なら 今日≠ェまだ分かるのではと思ったと告げる。 現実とはく離したこの場所で、 いつまで正しい時間を認識できるだろうとも。] 結のこと、いっぱい覚えていたいの。 [結の誕生日。クリスマスイブ。 その日がまだ先であることは彼の言葉から理解した。 いつ死んだかも何年経ったかも覚えていないのは、 眠ることもなく特別な一日もなく、 一人きり空虚に過ごしてきたからだろう。 だからこそ一日だって忘却に奪わせるつもりはない。 全部ほしい。すべてを知りたい。 彼に向ける執着は彼の持つ探求心に少し似ていた。] (50) 2022/08/16(Tue) 20:28:49 |
【人】 空虚 タチバナ[手を繋いで、闇を絡めて、縛って。 それでいて様子を伺う視線を見せる矛盾した行動。 彼は私の願いを許してくれただろうか。 もし願いが叶うのなら、今日は二人でペンを取ろう。 テーブルに広げて、狭ければ床でもいい。 子どもみたいに膝をついて、顔を見合わせて。 私も話したんだから、と結の話も聞こうとする。 彼にとって人生が希薄だったことは知っているから 無理やり思い出を絞り出させることはしない。 しかし彼の病状を聞くことくらいはできただろうか。 与えられた余命についても。 もし内緒にしたければ心に秘めていてもいい。 そうでなくともカレンダーは空白塗れだ。 それは歪な二人が永遠で埋めていく余白にすぎない。]* (52) 2022/08/16(Tue) 20:30:49 |
【人】 空虚 タチバナ[いつもと変わらない彼の前向きな言葉。 いつもと同じ、他愛のない穏やかな構想。 少しずつ、彼とのいつもが増えていくのが分かる。 でも、今はそういうことじゃなくて。 急に背中へくっつかれて驚く声が降る>>61。 その後に聞こえたのは同意の言葉だった>>62。 顔を上げると、いつも通りの彼がいた。 ただ、気のせいかもしれないけれど、 瞳に欲望が小さな炎のようにちらついた気がした。 彼の欲はすべて私のもので、だから、炎も私の。 気のせいだとしてもそれがどうにも嬉しくて、 死んでようやく"生まれた"今日に浮足立って、 素直に願いを口にできたんだと思う>>L7。]* (73) 2022/08/17(Wed) 6:03:26 |
【人】 空虚 タチバナ何だか子どもに戻ったみたい。 [色鉛筆なんて大きくなってから触った記憶がない。 あの子たちもこういう物を喜ぶのだろうか、なんて。 すっかり結に影響された思考が ままごとをした幼い子を思い出させた>>1:87。] んー……あれ? え、わぁ。 結って線引くの上手だね。 [真っ白なコピー用紙にガイド線なんて存在しない。 定規があればそちらも拝借していただろうが、 なかった時はケースや他の物を利用するしかない。 どちらだったとしても、 結はきっと器用に線を引いたのではないだろうか。] 少なくとも……私よりは。 [彼の引いた線に比べ、線が歪んでいるのは確かだ。 ほんの少しだけ悔しそうにしながらも、 二人で刻≠描く作業は一瞬、 この地とこの身に宿る業さえも忘れさせてくれた。] (75) 2022/08/17(Wed) 6:04:39 |
【人】 空虚 タチバナ[時間の歪んだ世界において、ひとつ提案をした。 眠らない夜は一日を終えなくていいし、 置きたくない朝はまだ訪れなくていい。 甘やかすようで、すべてを彼に与える重さに 結はどんな反応をしただろう。 ふたつめは彼からの提案だったか。 私にとっては味のしない飲み物だが匂いは分かる。 インスタントの粉がお湯に溶け、 湯気を立てる様は決して嫌いではなかった。 彼が自分のために用意してくれるなら尚更。 断る理由なんて何もなくて、素直に同意を示した。] (76) 2022/08/17(Wed) 6:05:56 |
【人】 空虚 タチバナ[最後の議題は今日を何日とするか≠セった。 結も当然自身もここに入ってからの時間は曖昧だ。] じゃあ……うーん、17ね。 今日≠ヘ8月17日。 [適当な選択だったのはどう見ても分かっただろう。 一列七マスの枠の中、中心の辺りに数字を書く。 日にちや時間に執着はなかった。 死んでどれだけ経つなんて数えたこともなかったし、 誕生日だって祝う人がいなければ呪いの日だ。 ――でも、理由ができれば話は別。] (77) 2022/08/17(Wed) 6:06:57 |
【人】 空虚 タチバナ[数枚奥のコピー用紙を引っ張り出して花丸を描く。 それから「むすぶの誕生日」と続けた。 クリスマスの気配はどこにもない。 重要なのは今日≠ェ今日≠ナあることで、 ちょっと先に絶対忘れたくない日があること。 あなたが私に与えてくれたように、 私もあなたの”生”に祝福を与えたいのだ。] …………ダメ? [たった一日≠サこらで本質が変わるはずもなく、 不安そうに彼へ尋ねる。 答えを待つのも怖かったのか、 返答から逃げるように立ち上がった。] あっ、…… あー、そうだ、そうだ。 シーツ片づけなきゃ。ね。 (78) 2022/08/17(Wed) 6:09:47 |
【人】 空虚 タチバナ[腰に巻いてしまえば、 彼の言っていた服に見えないことは……ない。 腰からだからスカートなんだけど。 全身を包めるシーツが余りに余って 足どころか床まですっぽり覆っているけれど。 それでも白いパジャマと合わせれば、 辛うじて形は成り立つはずだ。] あの……ね。 その、むすぶは……ワンピース、好きなの? [果たして不安確認の逃げ道がこれで良かったのか。 全然良くないけどもう後戻りはできない。] (80) 2022/08/17(Wed) 6:14:57 |
【人】 空虚 タチバナ[彼の名前がちはや むすぶ≠ニいうこと。 私の名前がたちばな かれん≠セということ。 相手を呼べる音があれば、他にはもう何もいらない。 手先が器用なことだって、彼を蝕む病だって、 もっと彼が馴染めば気にならなくなる。 だってそれが、それだけが日常なんだから。 彼が景色に新鮮さを抱くのと同じように、>>60 次第に日常に馴染んでいくのだろう。] ……あれ。 [そういえば、最後に頭痛がしたのはいつだろう。 彼と強く触れ合う間だけ止まっていた痛みが いつの間にか見当たらないことに気づいた。 線を引く手を止め、前のめりだった身体を倒す。 背後に体重を預けて顔を上げると、 彼の顔がさかさまに見えた。] (103) 2022/08/17(Wed) 23:00:10 |
【人】 空虚 タチバナ誰のせいにもしない……うん。分かった。 じゃあ私も――わた し、も ……っ、ぅ、あ ……――私にも、そうしてね。 私が結をいっぱい困らせたら……叱って。 [彼に寄りかかったまま一日≠フ話をする。 一つ目の提案に彼は好意的だった。>>86 その上でもっと柔軟な考えを与えてくれる。 過去の私にとって叱責≠ヘ恐怖の象徴だった。 しかし今の私に過去はなく、 手に取ったのは結と共にする永遠だけだ。 だから、お願いする時に少し声に詰まったけれど。 彼を見つめる瞳に恐怖は微塵も滲まなかった。 そのせいで彼を𠮟る気が全くないことが 表情から伝わったとしても、許して欲しい。] (105) 2022/08/17(Wed) 23:06:16 |
【人】 空虚 タチバナ[朝≠フ役目を終えたカップが 真っ白な底を晒してふたつ、寄り添っている。 明日≠ヘ何色が満ちるのだろう。 同じかもしれないし、違う色かもしれない。 明日のことは明日にならなきゃ分からない。 それでいいんだ。 彼の提案に頷いて、 差し出された小指に己のそれを優しく絡めた。]* (106) 2022/08/17(Wed) 23:06:59 |
【人】 空虚 タチバナ― 8月17日 ― [白を纏った身体は今、彼の腕の中にある。>>89 彼の返事も待たずに離れ(と言っても数歩程度だ)、 腰に回したシーツは床まで広がって 咄嗟に踏ん張ろうとした足先を掬った。 結果、一瞬だけ全体重を預けることになってしまい、 あわあわと彼の胸へ飛び込んだ。 どうやら私の夢が届けた幻ではないらしい。 再び天才との評価を受けて>>90 気恥ずかしさを孕んだ表情を隠すように 額を彼の左胸へと押しつける。] そ、そんなの当然でしょ……だって、 [ワンピース大好き。結はワンピースが好き。 明日≠烽ワたシーツ探しに行こうかな、なんて 逸る気持ちを抑えつつ顔を上げて、] (107) 2022/08/17(Wed) 23:07:40 |
【人】 空虚 タチバナ[その後、互いの「大切な日」を書き記した。 割れた窓ガラスが散乱していた。 私にはあと一つしかなくて、最初の紙を選ぶ。 ベッドはなぜか抉られてスプリングを晒している。 名づけの意味なんていらない。苗字も不要だ。 複数人の足音、指示を飛ばす籠った声。 彼の呼んでくれる響きだけがあればいいから、 元より成果が得られると思ってなかったのだろう。 「かれんの誕生日」と綴った。 「いません」と報告する声は淡々としている。 (109) 2022/08/17(Wed) 23:15:08 |
【人】 空虚 タチバナ[「おはよう」と挨拶を交わし、朝が来る。 結がふたつのカップに飲み物を入れてくれる。 最初は三つだった選択肢も、 備えつけだけでなく、購買の物がいくつか増えた。 コーヒーのことが多かったけれど、 空が暗く暑い夏は冷たいオレンジジュースにしたり、 入道雲の広がる乾いた秋は紅茶を選んでみたり、 眠れない長い夜の後にはホットミルクを準備したり、 眠らない夜を求めた日はただの水を交わしたり。 最初の頃はずっと同じ物を望んだけれど、 味に鈍い私でも炭酸が楽しめると分かってからは、 ごく稀にこちらから誘うこともあった。 別々になんてしませんとも。やです。 だって彼の感じたことのすべてが欲しいんだもの。 だからと言って彼に無理強いすることはしない。 一方が支配するのではなく、互いが望むまま、 話し合うことができるのだから>>87。] (122) 2022/08/18(Thu) 21:12:07 |
【人】 空虚 タチバナ[日記を書き終われば、暖房をつけて一緒に眠った。 睡眠が必要なのは彼だけだったけれど、 冷たくて、寝返りの邪魔もしてしまうけれど、 それでも私は彼の傍を離れない。 彼の寝息と一緒に心音を確かめるのが好きだった。 時折解け、また抱きしめてくれる腕が欲しかった。 眠らない情熱的な夜も、眠る静かな夜も、 彼のすべてが私に与えられる幸福を享受した。 実際そうなのか私が抱く夢なのか分からないけれど、 彼の鼓動は日に日に弱くなっていくようだった。 時折私の肌へ彼の体温が移るような気もした。] (125) 2022/08/18(Thu) 21:15:13 |
【人】 空虚 タチバナ[少しずつ、私の死が彼にのしかかっていく。 代わりに彼の抱えた病は鳴りを潜めていたはずだ。 現世から解放された時間は正しいものではないし、 私以外が彼を蝕むのを許すはずがないからだ。 具合が悪そうな様子はないはずだから、 彼の身体が弱っているという訳ではないと思う。 本当は私も眠ってしまい、夢を見ているだけかも。] (127) 2022/08/18(Thu) 21:16:19 |
【人】 空虚 タチバナ[手先の器用な彼は料理も上手にできるようだった。 あるいは、半年間の成果かもしれない。 味見のできない私は彼の隣でお手伝いをする。 彼ほどではないけれど、多少は成長したと思う。 その結果の料理が皿に乗り、湯気を立てている。 ワインクーラー代わりのパスタ鍋は少々大きく、 ラベルを剥がしたペットボトルの白い頭だけが覗き、 プラスチックの身体を悠々と氷の海に 半分浸していることが容易に想像ついた。] ……今日、結の誕生日だよ? [何よりも違うのは私自身だろう。 景色からもっと近い場所へ視線を戻すと、 主役より着飾った自分の姿が見えた。 普段パジャマの袖で隠れている白い腕は露わに。 反対に胸元は彼が与えた白で覆われている。 腕を持ち上げて頭を触れば、 三つ編みの凹凸が指の腹を擽った。] (130) 2022/08/18(Thu) 21:19:27 |
【人】 XX タチバナ― 0年12月24日 ― [死に近づこうとも決して消えることのない命>>139が ゆらめき、瞬き、微笑む。 ふと何かに気づいた様子で目の前の彼を見上げた。] また……伸びたね。 [物も、場所も、私も。 ここに在るものはすべて解放されているのに、 彼の心音だけが未だ正しい時を刻んでいる。 己の目覚めだけが「刻」を示す中で、 彼は狂うことなく、順応すらしてみせて 今、ここに在り続けていた。 彼が元来持っていた思考>>86が この地に会っていたからなのか、 吞み込まれたことで少しずつ変異したのか。 彼が傍にいれば理由なんて何でもいいけれど、 私の存在が意味になればいいと思う。] (148) 2022/08/19(Fri) 0:25:15 |
【人】 XX タチバナもちょっと切っておけばよかった? [過去は影になった。 彼にとっての己の価値を見誤ることはないし、 彼の好意も素直に受け止められる。照れるけど。 だから彼へ伸ばした手が拒まれることはありえない。 躊躇も怯えもなく前髪に振れ、毛先を揺らす。 少しずつ、結が私を埋め尽くしていく。 欠片の誇張もなく、彼だけのものになっていく。] (149) 2022/08/19(Fri) 0:25:27 |
【人】 XX タチバナ[しっとりと肌を滑る空気が彼の声>>141で霧散した。 注いだ黒は材質まで再現することはできず、 重さも感じさせないまま上着の形で停滞している。] ふふ……あは、 主役はお姫さまだったの? [珍しくくすくすと声を漏らしながら笑ってから、 彼に心からの祝福を贈り、願いを受ける>>L16。] いるんだよ。 ずっと、一緒にいるの。 [彼の差し出してくれた手を取りながら返事をする。 XXの言葉というには陰湿で、 誓いよりも呪いに近い響きを有していた。 この場に似つかわしくない温度を持って、 彼がくれた白を纏い、光の下、花のように笑う。]* (150) 2022/08/19(Fri) 0:26:04 |
【人】 XX タチバナ[花が咲いたのはどの指だっただろう。 彼が触れたことのない場所などないに等しいから いずれの指であってもサイズはぴったりだろう。] ……。 [一瞬、言葉を忘れた。 初めて会った時のように何も返せなかった。 ただまじまじと手元を見つめ、 驚いた表情を隠さずに彼の方を向き直す。] …………いつ、作ったの? [最初に出たのはそんな気の利かない言葉だった。 実際、彼の傍を離れることはほどんどない。 それなのに気づかなかった。隠されていた。 彼に関して知らないことがあった。 不満が炭酸の泡のように、ふつりと浮いて弾ける。 けれど、それは心地よい刺激だった。 足りないことがもどかしくて、新しい彼がXXしくて、 何より彼が与えてくれたものすべてが嬉しかった。] (152) 2022/08/19(Fri) 0:26:48 |
【人】 XX タチバナううん……っ、ううん、 いいの。 これがいいの。これしかやだ。 [おもちゃみたいなんて言う彼に慌てて首を振った。 指輪を嵌めた手を抱きしめ、胸元に仕舞う。 押し当てた手の甲が布の向こうにある穴を感じた。] ……うれしい。すごくうれしい。 ありがとう結。ずっと大切にする。 [この穴に広がる感情を、 どうやったら言葉で伝えきれるだろう。 口から出た言葉はありきたりな物ばかりで、 音の不自由さにもどかしさを覚える。 うっとりと手元を見つめた。 細い何かを曲げて作ったのだろうか。 それなのに指先に何かが引っかかる感じはなく、 丁寧に作られたであろうことは予想できた。 彼から与えられた物が私に傷をつけても、 それもまた悦びでしかないのだけれど。 今は何よりももどかしさが勝って、 指輪を贈ってくれた彼の手を捕えようとする。] (153) 2022/08/19(Fri) 0:27:16 |
【人】 XX タチバナ……わたしは、何をあげられる? [邪気を感じさせない穏やかな声で尋ねる。] 私には、私しかないの。 でも私はもう全部結のものだから……。 [そう、プレゼント。誕生日には必要な物。 随分と遠ざかっていたせいで思いつかなかった。 相手の目を盗んで準備する器用さもなく、 彼を捕らえた手も反対の手も空っぽだ。 だって、元々全部あげてるし。 だって、結が寝ている時も離れたくないし。 そんな言い訳が頭の中を巡る。] 教えて、結。 [だから、今、ここで。彼の願いを求めた。]* (154) 2022/08/19(Fri) 0:28:10 |
【人】 XX タチバナ[名前の続きを書く時、ふと左手が目に入った。 あれからずっとつけたままの指輪は、 次第に体の一部であるかのように馴染んだ。 その……いっぱい動く時はなくさないよう外すけど、 指が寂しくてそわそわするくらいだ。 シンプルなシルバーリング。 頂点には小さな花が咲いていた>>L17。] 花に……蓮≠ナ、かれん。 ……が、いい。 [いつかに似た言い回し。>>47 彼は黙って受け入れてくれるだろうから>>62、 自ら「くさかんむり」を書いた部分を指で擦る。 指先にインクなんてつけてないから、 擦ったところで彼の掌が赤くなるだけだ。] (168) 2022/08/19(Fri) 3:21:36 |
【人】 XX タチバナ本当はこっち……でも。 いっぱいじゃなくて、ひとつがいい。 …………あなただけの花になりたい の。 [だから、私は名前を芽吹かせる。 あなたの前で蕾を赤く染めていく。] (169) 2022/08/19(Fri) 3:22:20 |
【人】 XX タチバナ[これは余談なのだが。 「私も結に指輪をあげたい」と相談し、 本人に習いながら指輪作りに励む未来があるはずだ。 きっと彼の物より歪になってしまうけれど、 何らかの意思が働いているのか 彼の指から勝手に離れることのない銀色が やがて彼の左手薬指を彩ってくれるだろう。] (172) 2022/08/19(Fri) 3:23:57 |
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