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【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ 演奏を終えた彼女はカーテシーののち、 こちらをちらりと一瞥し、そして。 昨日と同じように、微笑んだ。 観客の一部のみから沸き起こる拍手。>>106 彼女らしからぬ楽曲も多かったのだろうか 一部の人々はあっけにとられたような、 不思議そうな様子で彼女を眺めていた。 ───まるでどこかで見た光景じゃないか。 >>2:256 ふと笑いが漏れ、 そして6人全員 メイレン・シュレグマーに盛大な拍手を送った。 ]* (176) 2020/09/29(Tue) 15:51:26 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン―表彰式・宮廷 舞踏用大ホール― [ 4位という結果に茫然となりながらも 鉛のような体を無理やり動かし、 機械仕掛けのように賞状を受け取った。>>124 メイレン・シュレグマーの顔を直視できず、>>146 審査員席から目をそらしてしまう。 順位決定までの紆余曲折や、彼女の抱えたジレンマを 知る由もなく。>>146>>147>>148 ……午前中の王立劇場ロビーの演奏会で感じた、 『これは彼女が俺達に向けた演奏だ』 という確信は?>>185 ……終演後のカーテシーの後、くすりと笑った彼女の 『昨日のあなた達とおんなじね』>>186 とでも言いたげな目は? ] ……すべては俺の妄想だったのだろうか? (222) 2020/09/29(Tue) 22:21:57 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ 受賞者発表はまだ続く。 賞状を持って元いた場所に戻り、>>149 とりあえず最後までは帰らずにいようかと うわの空で司会のアナウンスを聞いていた。 言葉を失う司会者にも、ざわつく会場にも もはや関心がなく。>>150 床の一点を見つめながら 一人、敗北を噛み締めていた。 ───その時。 ] (223) 2020/09/29(Tue) 22:22:39 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ ───審査員特別賞。 そんなものがあるなど、知らなかった。 審査員全員の総意でなくとも、一人のプロを 惹きつけられた事実に、 わずかばかりの救いを感じていると、 ] 『続きまして、平台奏者であり メニュレー男爵令嬢 メイレン・シュレグマー様の 審査員特別賞は────』 (─────えっ!?) [ ふたたび告げられるのは、 自分らのグループ名。>>152>>153] (225) 2020/09/29(Tue) 22:23:44 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ その後、自分らのグループはさらに2度呼ばれ、 計4つの審査員特別賞に選出された。>>154 中には宮廷楽長の賞も含まれており。>>155 コンペ開始以来初めての前代未聞の事態だそうだ。 そこで初めて、総合順位選出に何らかの 紆余曲折があったのではと想像が飛ぶ。 が、自身は3位のテノール歌手も 2位の雅楽奏者も、自分の目で実力の程を 知る機会はない。 真相を推し量ることもできないと、 その想像を胸の内にしまった。 いまだ状況が呑み込めないままに、 再度、前方に移動する。 自分たちに向けられた拍手は 動揺に満ちていて、しかし何やら 恍惚とした音に聞こえた。 ] (226) 2020/09/29(Tue) 22:25:45 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ 会場前方にて、各審査員による 褒賞の説明を受けたのち。>>156 メイレン・シュレグマーと初めて面と向き合い、 授与を受けながら、 直接掛けられる言葉に。>>157 本番の興奮と、彼女とのやり取りが思い出され 先程とは全く逆の理由で >>222 目の前の顔を直視できない。 目を数度しばたいて、つと顔を上げ。 満面の笑みのメイレン・シュレグマーから 賞状を拝受した。 ] (227) 2020/09/29(Tue) 22:34:27 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ 受け取った賞状は、他のどれよりも 熱をもって、手の中で震える。 昨夜の気概はどこへやら、 不覚にも揺れ霞む瞳に 彼女は、気づいただろうか。 ]* (228) 2020/09/29(Tue) 22:35:33 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン─表彰式後・夜 宿最上階─ [ 長い一日が終わり、 宿に戻ってようやく一息つく。 4つの審査員賞に加え、技術賞も受賞した彼らは 合計6賞を総舐めにしたとして 今日一日で人々の話題に上ったようだった。 むろん賛否は多く、結果を良しとしない者たちも 少なからずいたようだが。 受け取った賞状・ピンバッジの類を整理し、 各審査員からの褒賞を確認すべく メイレン・シュレグマーからの封書を開封する。] (233) 2020/09/30(Wed) 0:13:22 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ ───そこには、手紙が同封されていた。>>-205 聞くに、審査員特別賞の規定では 各審査員が用意した3つの褒賞から、 1つを選んで受け取ることができる というものがある。>>156 手紙にはその詳細についてと、 ……そして、メイレン・シュレグマー本人からの 6人組への賛辞の言葉が並べられていた。 ] (234) 2020/09/30(Wed) 0:15:20 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ 彼女は3つの褒賞において 俺らの音楽が広く普及するための道を 模索してくれているようだった。>>-207 また手紙の中には、 俺らの音楽が一部の者から反感を買っていること、 それでも彼女は俺たちを応援しているということ そして良き好敵手として認めている、という ことも記されていた。>>-206 (235) 2020/09/30(Wed) 0:17:44 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ 最後は、彼女が音楽界に寄せる思いの丈を 窺わせる言葉で、 手紙は締めくくられていた。>>-208 そのあとに、とても彼女らしい一言を…… 『次は直接仕合いたい』 という言葉を添えて。>>-209 ] (236) 2020/09/30(Wed) 0:18:05 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン―回想― ―表彰式・宮廷 舞踏用大ホール― 『……あら、どうしたの。 あなた達でも緊張することあるのね?』 [ 周囲に聞こえない位の小声で、そう囁かれる。 精一杯押さえ込んだ感情は、 彼女の前では無意味だったようだ。>>253 そして、また一つ、掛けられる言葉。 4つの審査員特別賞。 これは彼女たち審査員の、 自分らの演奏に対する答えだと。>>254 ] (262) 2020/09/30(Wed) 11:36:25 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン ───また明日、演奏会で会いましょう。 [ そう告げられ、>>255 『勝負』はまだ終わってないことを思い出した。 水膜で滲む視界を 再度目瞬いて振り払う。 そして、 「もとよりそのつもりだ」とでも言うように 今度は正面からメイレン・シュレグマーの顔を捉え 口角を結んで微笑ってみせた。 ]* (263) 2020/09/30(Wed) 11:44:06 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン―表彰式翌日― ―コンセールカリヨン滞在最終日― [ 手紙はすぐにメイレン・シュレグマーの元に 届けられたようだった。 ただの褒賞に関する報告と、感謝の言葉を述べた だけの手紙に、彼女はいつもの彼女らしく 驚き、そして愉快そうに、 手紙を読んでくれたようだった。>>271 ] (310) 2020/09/30(Wed) 19:02:18 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ リジィ第三王子の一件については>>273 あまりピンと来なかったらしく。 リジィがシュレグマーの研究室から音盤を 借りた(返してないようだが)ことは、 リジィにとっては忘れもしない出来事だったが、 彼女にとってはささやかな日常のワンシーン だったのかも知れない。 しかしそんな些細な日常風景が、数奇にも 今回の一連の出会いに繋がったと思うと なかなかに感慨深いものがあった。 (311) 2020/09/30(Wed) 19:06:36 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ ……そして、その日の午後には、 シュレグマーからの返信が届いていた。>>-281 泊まっていた部屋を…スタッフ含め総勢56人分全て …を引き払い、今にも出発するという時に 宿の者に運良く呼び止められ、渡されたのだ。 読む時間はないので 一旦それを内ポケットに仕舞った。] (312) 2020/09/30(Wed) 19:07:02 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ 本日はこの後 コンペ1日目に使われた会場で、>>35 メイレン・シュレグマーの演奏が披露される。 昨日、彼女は"普段の彼女らしからぬ" 挑発的で情熱に満ちた演奏を披露した。>>98>>104 会場の違う今日、彼女はどのような"計算"をし どのように観客を虜にしてみせるのか。 ] (313) 2020/09/30(Wed) 19:09:33 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン (314) 2020/09/30(Wed) 19:10:10 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン―回想・表彰式― [ 表彰式の序盤、 まだ審査員特別賞が発表される前のこと。 総合4位という結果を知らされ、 打ちひしがれているその横で。>>118 コンペ前日に出会った教会の娘は 彼とはまた逆の意味で言葉を失っていた ようだった。>>143>>144 あの日、『音楽祭で会おう』と やっとの思いで言葉をかけた彼女。>>0:93 負けた、とは思わなかった。 彼女を音楽会にと声を掛けたことも、 後悔はしなかった。 元々埋もれていた天性がこの世に存在した。 自分がそれを偶然見つけ、 音楽祭がそれを正当に評価した。 それだけのこと。 ] (339) 2020/09/30(Wed) 20:05:01 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ 表彰を受け、最優秀者の証である ティアラを頭に戴いた彼女は、 ある人間の寛恕を請う。>>291>>292 それは知らないことだった。 しかし、彼女にとってどんな立場の人間の事を 言っているのかは、 何となく"分かった"。>>0:92>>1:165 続いて口ずさまれる賛美歌は 同じ入賞者として前方で並んでいた 彼の耳にも聞こえただろうか。 ] (340) 2020/09/30(Wed) 20:05:15 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ あの時、娘を呼び止めた理由。>>0:93 そのなかには、自身が勝手に過去の自分と 娘を重ね合わせていた、ということも 多分にあったが。 教会から逃げ、謗り、代わりに音楽を拠り所と しつつも、その影から逃れられず>>2:152 過去を色濃く残した楽曲を作り続けている自分より 彼女自身が最も光り輝ける場で、あえて 自分に傷を付けた人間の許しを請う娘は ずっとずっと強く。 自身がずっと手に入れられなかった 過去を打ち破る術を、 彼女は既に持っているように思えた。 ] (341) 2020/09/30(Wed) 20:06:24 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ きっと彼女は、自分が声を掛けずとも 遅かれ速かれ誰かにその才を認められ、 このような場に立っていたのだろう。 そう確信して、 宮廷楽士になって国中を、海外を 渡り歩いている彼女の姿を思い描き。 さながら眩しい存在を見るかのように つと目を細めるのだった。]* (342) 2020/09/30(Wed) 20:06:55 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン―船着き場― ―コンセールカリヨン滞在最終日― [ 潮風に目を細め、 既に離れ小さくなった宮廷を仰ぐ。 音楽祭にて史上初の6冠を達成した 6人組は、5日間の旅を終え 自国に帰る船に乗り込んでいた。 といっても、 このコンセールカリヨンと今生の別れをする 訳ではない。 メイレン・シュレグマーら審査員から 受けた4つの褒賞を叶えるべく 近々この国に戻ってくる予定だった。 ] (348) 2020/09/30(Wed) 21:51:51 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ むしろこの帰国は、 この先しばらくは目白押しのスケジュールに 対応するために必要なものを、 一旦あっちで準備するための 一時帰国という意味合いが強い。 まずは、地方中心の国内巡回公演。 そして、音盤流通のための各種打ち合わせ。 まだ選べていないい褒賞も残っている。 メイレン・シュレグマーと手紙で交わした あの約束も果たさねばなるまい。 ] (349) 2020/09/30(Wed) 21:52:02 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ 『やはり直接仕合う方が >>-209楽しくありませんこと?』 彼女の手紙に書かれた台詞は、 そのまま彼女の声となって再生されるかの ようにリアルだ。 ついでにニヤリと微笑む彼女の様子も 容易に思い描けそうだ。 彼女は、これからも 宮廷楽士で…革新的な審査員の一人でいて くれるだろうか。 シュレグマーへの手紙で、 リジィを手助けしてくれと頼んだ。 そこでレイズという曲者との対立はあるかも知れず もしかすると既に目を付けられていたかもしれない それでも、彼女は 『私はやってみせるわ!』などと言って>>275 そして完璧にリジィを、音楽界を、 導いて行くのではないか。>>331>>335 理由はないが、そんな気がした。 ] (350) 2020/09/30(Wed) 21:53:02 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ 今日届けられたほうの手紙は>>312 まだポケットの中に入ったままだ。 出航したら開封しよう。 …その中に綴られてるのは、彼女も彼同様 田舎出身であるという事実。>>-283 互いを知れば知るほど増えていく共通点は 数奇を超えて、もはや似たもの同士であるが故の 自然の摂理、という気もしてくるが、 これはまだ彼の知らない話。 ] (351) 2020/09/30(Wed) 21:53:59 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ 唯一気がかりだったのは、 コンペの夜以降、ついに会うことの叶わなかった リペアマンの彼女のこと。>>1>>2>>3 あの日彼女が涙を流した理由を 今やもう想像することしか出来ず、 そして考えても、結論は出なかった。 この国に戻ったら、まず楽器工房を訪ねよう。 もしかすると電子六弦の部品をもっと沢山 仕入れているかも知れない。 ……というのは奢りだろうか? ] (352) 2020/09/30(Wed) 21:54:17 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ 後方で汽笛が鳴る。 沈みかけていた夕日は、 いまや西の方に少しばかりの残滓を残し 迫りくる夜闇に覆われようとしていた。 日が暮れるのが早くなったな、と独り言ち 黒いアシンメトリーの襟をかき合わせる。 この国に来たときは暑かったこの格好も そろそろ過ごしやすくなる季節だ。>>0:26] (353) 2020/09/30(Wed) 21:54:42 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ 天空を覆う夜闇はやがて 遠くの宮廷を、街を、 そしてコンセールカリヨン全土を包む。] ────『辺りが闇に沈む頃。』 それは、俺達にとっての "夜明け"。 >>2:213 [ 汽笛がもう一度鳴り、 もう揺れることのない決意を固めた男と、 仲間達を乗せ──── ] ────船は今、出航する。 fin** (354) 2020/09/30(Wed) 21:59:57 |
(a10) 2020/09/30(Wed) 22:26:35 |
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