【人】 遊惰 ロク>>7 メイジ 説明を聞き乍ら、手順を想像して。 メスを動かす少年の様子を案じたものの、 兎も角己も手を動かそうと、目の前のそれに刃を向ける。 「――――――、 あ 」 からん。硬質な音。 取り落とした刃物を拾い上げた。 それから、何事も無かったかの様に事は進む。 ツプリと刃を突き立て、ぐ、と力を籠める。 それに合わせて、耳元、黒の十字架が揺れる。 教わり乍ら、真似をし乍ら、 死体をバラバラに――食らう為の“肉”へと変えていく。 元々手先が器用な男だ。飲み込みも悪くは無い。 滞りなく作業は進行されるだろう。 その間、何を考えていたのか、いないのか。 他のものが窺い知ることは難しい。 男は、誰よりも隠す事が得意だったから。 (8) 2021/07/12(Mon) 21:27:13 |
失格 セナハラは、メモを貼った。 (a3) 2021/07/12(Mon) 23:49:02 |
失格 セナハラは、メモを貼った。 (a4) 2021/07/13(Tue) 0:00:24 |
【人】 被虐 メイジ>>8 ロク 瞬いた瞳が、あなたの様子を一瞥する。 その心中を察することもできない。 メイジは、あなたとこの男の関係を知らないからだ。 真っ赤に染まった手で、汚れるのも構わず顔の汗を拭う。 一度や二度で慣れるはずもない。 こみ上げてきそうになる胃酸を必死で我慢していた。 思い出す。友達をそうした時のことを。 バラバラにされた手足や骨や、内臓が、剥いだ皮膚が バケツの中に溜まっていく。 もう生前の見る影もなくなっていく目の前の男 彼が死を選ぶことを、メイジは知っていた。 「……ミロクさんは、」 ふと思い出したことを、呟く。 なにか話でもしないと気が変になりそうだったのかもしれない。→ (9) 2021/07/13(Tue) 1:38:02 |
【人】 被虐 メイジ >>9 ロク 「ミロクさんが生きることを望む人はいなかったけど 死んで欲しいって望む人もいなかったって だから、死ぬことを望まれて嬉しかったって言ってた。 ついでにオレたちを生かせるなら悪くないって……」 あまり色のよくない、汗の滲んだ面持ちで オレたちってついでなんだって、とわずかに口元をつりあげる。 誰が彼の死を望んでいたかなんて、メイジは知らない。 「愛されたかったのかなぁ」 ぽつりと手を止めて、俯いた。ただの主観だった。 "人生最大の幸福は、愛されているという確信である" 彼が零していた言葉だ。それが死を望まれることと 直結するなんて、歪んでいると思いながら メイジは否定ができなかった。 そうして、ひとりの男だった者は自分らの糧となる。 (10) 2021/07/13(Tue) 1:43:49 |
【人】 遊惰 ロク>>9 >>10 メイジ 少年の声を聞くうち、手が止まる。 内心をチットモ面に浮かべず涼しい顔していた男の、 紫に黒を少し落とした、暗い色した瞳が揺らぐ。 瞬いて、少年の方を向いて、それから下を見て。 いつの間にやら詰めていた息を細く吐き出した。 「――ついでって、ハハ、ひでェひとだなァ。 おれは“ガキども守って死んでくれ”って、 ……たしかに、そう。……、言ったってのに」 真に酷いのは誰か知っている癖、酷い人だと詰って笑う。 きっと、これまでで一等下手くそに。 そうして、最早形を留めていない肉塊。 そこに彼の心は無いと知り乍ら、ボソリと呟きを落とす。 「……そんなのが、うれしかったのか、お前サン。 …………ばかだなァ 」生首の、耳に光る白い石。触れようとして―― 伸ばした手が赤く濡れている事に気がついて、止めた。▼ (11) 2021/07/13(Tue) 11:19:47 |
【人】 遊惰 ロク>>13 >>14 メイジ 「……はいよ、セキニンは取ろうかねェ」 笑い顔を僅かに歪めて、そんな風に返事をした。 困った様なその顔は、少しだけ幼く見えるだろう。 それから。もう一人を台に寝かせ、刃を入れる。 手順は大凡理解した。 肉を断ち骨を折り、テキパキと進めていく。 こんな時間、早く過ぎ去ってしまう様に。 「――そういやお前サン、こないだ、ここで。 キット質問をはきちがえてたと思うンだよなァ」 事を進め乍ら、合間にふとそんな事を語り掛ける。 続く一言を口にする時だけは手を止めて、 少年の大きな片目を正面からジッと見据えて。 「おれは“この医者の自殺を”手伝ったかってきいたんだ」 スイと視線を外し、再び手を動かしつつ。 それが当然の事のような軽々しさで、一度言葉を締め括る。 「こいつは自殺だろ。 しょ お前サンが殺しただなンて、そう背負いこむ必要はねェさ」 この時の男は医師の死んだ経緯も知らなければ、未だ遺書を目にしてもいない。 只、抵抗の跡が見て取れなかったという事実だけでそう確信していた。 (15) 2021/07/13(Tue) 20:28:31 |
【人】 被虐 メイジ>>16 ロク 「……違うよ……オレが殺したんだ。 "人の殺し方"を教えてくれるっていうから。 オレは、今まで……生きることを教えてくれた セナさんのことを利用して……」 メスを握る手が、震えていた。 これは建前だ。本当はわかっている。 自分の身を使ってまでやることじゃない。 やがてメイジは目を伏せて、ため息を吐いた。 「──勝手に死なれるより、その方がよかった」 「……いいんだ。オレはそうしたいんだよ。 痛みを分け合いたかったんだ。背負いたいんだ。 ……この気持ちを、忘れないように……」 もう動かない抜け殻を、バラバラになっていく それを見つめながら呟いた。 (17) 2021/07/13(Tue) 22:00:04 |
【人】 被虐 メイジ>>18 >>19 ロク 「……もし死者にでも会えるんだったら 文句のひとつやふたつ言いたい気持ちはあるけどね」 首だけになった彼をぼんやりと眺めた。 ……文句なんてひとつも出ない。今はただ、つらくて、寂しい。 そっと壊れ物を扱う時のように布に包んで、しまう。 ふと、沈黙を破るあなたの様子に首を傾けながら ぱちりと一度瞳を瞬かせた。 「うん、ありがと…… ロクさん。やっぱりやさしいね」 それは以前に手当してくれた時にも、思ったことだった。 やさしい大人、というよりは少し年の近い兄のようだと思う。 家族に例えてしまうのはメイジの悪いクセだが。 ほんのちょっと、心強さを感じながら素直に頷いた。→ (20) 2021/07/14(Wed) 2:17:10 |
【人】 遊惰 ロク>>20 >>21 メイジ “会えるんだったら”。そういや見てねェなァ、と思う。 どこぞに隠れてしまったか、もうここにはいないのか。 その答えが分かるのは、きっとこの後直ぐの出来事だ。 “やっぱりやさしいね”。やさしかねェよ、と小さく笑う。 ――生きてたらこの年頃だった、きょうだいの様な友らがいた。 放っておけなかった理由は、只それだけだ。 汚れた手をよくよく洗って、綺麗に拭いて。 座る少年に近寄り「拭くぞ」と一声かけてから、 顔の汚れをグイと拭う。 痛みのない程度に、しかし繊細さの足りない力加減で。 それからそこかしこが赤く染まった包帯を替えてやる。 その儘ではお嬢サンの前にも出づらかろうと。 「――そンじゃこれにて。 おれの方こそ、どうもアリガトウ」 それらを終えれば、ブリキのバケツを一つ手に取って。 蓋したそれを抱えて暇を告げ、少年を残して部屋を出た。 (22) 2021/07/14(Wed) 12:11:24 |
【人】 焦爛 フジノ初日は多くの人が集まっていた部屋。 今はガランと静まり返ったそこに足を踏み入れ、机の上に缶詰を並べる。 『メイジ』『ロクサン』 名前の書いた紙の上に重し代わりの缶切りを置いて、満足そうに頷いた。 ミロクはああ言っていたけれど、フジノは二人にもちゃんと食べて欲しいと、思うのだ。 食べることは生きることだから。 (23) 2021/07/14(Wed) 12:45:38 |
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