【人】 ハリの豺狼 カナイ仮眠室を出て、誰かの声を聞いた後。 弾かれたように廊下を駆け出して、 その傍らに気配を探る。読み取ろうとする。不安定な気配を。 今明確に排除すべき恐ろしいもの──奈尾の気配を。 進行方向がわかるのであれば、その背後に回り込むように。 殺さなければきっと殺される。 真に恐ろしいものから逃れるには、殺すしかない。 自分ならきっとできる。自分がやるしかない。 何れにしても脇目も振らず会議室への道を突っ切っていく。 元はドッグトレーナーを目指していたのだ。 犬と共に駆ける為の日々の名残は、まだ身体に残っている。 (11) 2022/06/07(Tue) 7:35:45 |
カナイは、猟犬じみて廊下を駆けて行く。狩るか狩られるかは、まだわからない。 (a15) 2022/06/07(Tue) 7:36:58 |
【置】 氷肌玉骨を手に ナオアキあなたは死ななければならない 奈尾がやって来る方……銃声二発が鳴っていた場所は、 叶らが彼女と相対した場所から随分遠くからだった。 あなたは死ななければならない そこから移動した彼女を迎えに行っていた叶が、 今いた場所とはほとんど反対の位置で。 あなたは死ななければならない 会議室へと向かおうと思えば、 叶が奈尾の背後に回っている暇などなかっただろう。 あなたは死ななければならない あなたは死ななければならない ──奈尾の道中に誰もいなければ。 あなたは死ななければならない あなたは死ななければならない (L2) 2022/06/07(Tue) 8:22:34 公開: 2022/06/07(Tue) 8:25:00 |
【人】 トラジコメディ フカワ『弊社の試験薬が』 『貴方様にご迷惑をおかけしてしまったこと』 『深くお詫びしたいところですが──』 見ないうちに随分と変わり果ててしまったものだ。 我々に投与された薬とは一体全体何だって言うのか。 「故に少々、お時間をいただけますでしょうか?」 針のような気配に震える瞼を開けて、 引き攣った微笑みを顔に貼り付け、奈尾の前に立ち塞がる。 眉間に皺を寄せてアンテナを握り締めれば、 其処彼処から軽くも不規則な足音が響き始める。 それはまるで行進(/パレード)の始まりを告げるように。 (12) 2022/06/07(Tue) 8:46:21 |
【人】 氷肌玉骨を手に ナオアキあなたは死ななければならない パァンッ!! あなたは死ななければならない 開演に水を差す、なんとも無粋な音がした。 あなたは死ななければならない あなたは死ななければならない 「アタシ、会議室に行かなきゃいけないの」 あなたは死ななければならない あなたは死ななければならない 一も二もない発砲。狙いは深和の足元。 三半規管も狂ってきているのか、散弾のほとんどは深和を捉えなかった。 次もそうなるとは限らない。 あなたは死ななければならない あなたは死ななければならない あなたは死ななければならない 「ねェ?」 あなたは死ななければならない 丈夫に作られていたはずの服は溶け、奈尾の上半身はほとんど露出していた。 焼けた肉と黒いどろどろの中に、白が見え隠れ。 斜め掛けにした鞄の肩紐も深く食い込み、骨が支えているようなものだった。 深和からはあまり見えないが、状態としては背中が一番酷い。 あなたは死ななければならない そんな状態にもかかわらず、これはまだ人の形を保って動いている。 (13) 2022/06/07(Tue) 10:10:08 |
ナオアキは、銃口を少し上へやり、引き金を引いた。 (a16) 2022/06/07(Tue) 10:10:32 |
【人】 トラジコメディ フカワチッ、と熱い何かがズボンや靴の端を掠めて、 バターでも抉ったみたいな跡をつけたのを感じる。 へへ、だの、ははだの、笑っちまったくらい濃厚な死の気配。 「いえ勿論!……重々、承知です、とも」 『ああああ当たる死ぬ?当たる嫌だ怖い当たる嫌』 実に手強い客だ。ここまで強情なのはいつ振りか。 ──そう、あくまでも映画のように劇のように。 無機質な散弾銃、劈く発砲音、異形と化した彼。 それらをひとつでも、確かな現実のものとして受け止めたら、 もうすぐにでも狂ってしまう。出来る限り俯瞰しなければ。 銃口が上を向いたのを見れば、及び腰で一歩ほど後退りを。 「申し訳ございません……何から何まで」 『こここ、こい、ここ、に、ここから、音の方』 背後の方から駆けてきた中型の実験動物を、 アンテナの柄でいなし、先ほどの銃声を頼りに飛び掛からせる。 狙いが外れたり逸れたり、それか盾になってくれたらいい。 痛みを増す頭は、寧ろ正気を保たせてくれて有難い。 (14) 2022/06/07(Tue) 10:52:49 |
フカワは、念の為アンテナを支えに低く屈む。ひぃい、と情けない悲鳴が溢れた。 (a17) 2022/06/07(Tue) 10:53:55 |
篝屋に来た カジヤマは、メモを貼った。 (a18) 2022/06/07(Tue) 11:59:45 |
【置】 猶大 ロクーーーー顔合わせに数刻遅れて会議室に向かう廊下。 単独行動であることに加えてまともに連絡も取り合っていないロクは、人が減っているだとか、銃声だとか、異変らしき事実にようやっと現実味を覚え始めていた。 ドロドロに溶けた人間だったらしいモノを踏みつけると、不快な粘着質な音を立てて散った。 無意識にシャットアウトした施設に蔓延する臭気も情報を得ようと意識した途端に吐き気を催しそうになる。 濃厚な血と腐敗した肉の絡みあったオブジェが放つそれは探さずとも至る所で目に入る。 「あ〜……メンドクサ。 こんなトコで死ンだ奴らはさぞかしお可哀想に。まぁでも?人間辞めちゃったら俗世の苦しみから解放されるのかね」 それはまるで神の齎す救済のように。 心から人が望んだ解脱のかたちなのかもしれない。 「アイツ、欲望に忠実だったからなぁ……昨日も会議室に来てなかったし、こうなると死んでる方がまだマシかもな」 もしそうだとしたら。 どうもしないのか。どうにかしたいのか。 考えるのも面倒だった。 (L3) 2022/06/07(Tue) 12:46:41 公開: 2022/06/07(Tue) 12:50:00 |
無明長夜 ヌイバリは、メモを貼った。 (a19) 2022/06/07(Tue) 12:54:53 |
【人】 氷肌玉骨を手に ナオアキ 銃弾を浴びながらも飛び掛かっての勢いそのままに近くまで来た一匹には、 避けながら鞄のペットボトルを一本投げつけてやった。 あなたは死ななければならない ぱしゃり、水が打ち付けられる、場違いに爽やかな音。 次いで崩れた肉と露わになった骨が落ちる鈍い音がして。 最後には溶け残りの蓋の奏でる軽い音が転がった。 あなたは死ななければならない あなたは死ななければならない かくん、頭は痛くて重くて持ち上げる気にならない。 傾いてそのままにされた。 あなたは死ななければならない 篝屋に使った騙し討ちのような手段は上手くいかないだろう。 今度は銃を捨てても近くへ寄れそうにない。 あなたは死ななければならない (15) 2022/06/07(Tue) 12:56:57 |
ナオアキは、歩を進める。 (a20) 2022/06/07(Tue) 12:57:06 |
【人】 氷肌玉骨を手に ナオアキ「…篝屋クン、あっちの方でまだ生きてると思うのよォ」 あなたは死ななければならない あなたは死ななければならない あなたは死ななければならない だから、何か言うならこの方向だと思った。 善意や思いやりを取り落としてきているのに、 他人のそれが存在することを知っているのだ。この男は。 あなたは死ななければならない 篝屋が生きているかは知らないが、別にトドメを刺していないのも事実だ。 生きているのなら、生かす気があるのなら、手当ては早い方がいい。 あなたは死ななければならない そのつもりではあるが、言った方が今は嘘臭くなる。 立場が対等でない者とする約束なんて、形だけのものにしかならない。 あなたは死ななければならない 信用を取る気はなかった。多少でも思考が逸れればそれで良い。 排除できる。 (16) 2022/06/07(Tue) 12:59:04 |
ナオアキは、歩を進める。 (a21) 2022/06/07(Tue) 12:59:14 |
ライカは、走って、走って。足がもつれても。 (a22) 2022/06/07(Tue) 13:07:10 |
【人】 未だピンボケ ライカ「あ、れ」 見つけた!と駆け寄った先に、見えるのは。 あの時、確かに標本室で。 「結木、さん…?」 どうして、死んだはずの貴方が。 (17) 2022/06/07(Tue) 13:23:18 |
【人】 トラジコメディ フカワ後退りをする。 「ひ、そ、それにつきましてはその」 一匹どっかから此処に誘導するのに、 どれだけ手間掛かってると思ってんだクソッタレ。 そう毒吐いてもとても聞き届けてくれそうにない。 愚痴ったら親身に聞いてくれそうだった彼は、 もうどこを探しても見当たらない。 指示なく異変を嗅ぎつけ、ちょろちょろとやってきていた二匹の小動物を見遣る。 片方は地面の液体を避けようともせず突っ込んでとろけた物体たちの仲間入りを果たし、もう片方は駆けることままならず、のろのろ空を引っ掻くだけ。 それをぽんと脚で蹴り飛ばす。 何かに気を取られてくれればいいのに。 『ひ、あ、後、無さすぎ、だろ……』 どれだけ怯えても、絶対に転んだりとかしないように。 背負ってるのはもう自分一人の安全じゃないんだ。 (18) 2022/06/07(Tue) 13:25:06 |
フカワは、後退りをする。 (a23) 2022/06/07(Tue) 13:25:13 |
【人】 トラジコメディ フカワ篝屋さんを引き合いに出されて、 一瞬、ほんの一瞬だけ硬直した。 何故かといえば、もしかしたら会社の後輩になってくれそうだった相手の安否に関わることだったから。 何故一瞬だったかといえば── 「排除──奇、遇ですねェ、 オレもそう……オレも頭痛いんですよ」 「その原因。安全を脅かすものを、 排除すれば解決すると思ってて」 自分は害意だけにはどうしても敏感だったから。 それも“排除”ときた。『彼』と似つつも決定的に違う、 加害者としての、実に傲慢なそれを聞き逃すはずはない。 「な、何もオレが行く必要ありませんし? だから、そう……こっちはもう」 (19) 2022/06/07(Tue) 13:30:50 |
【人】 トラジコメディ フカワ『後に引く気はねェんだよッ!』 寧ろ自分のごとそっちの頭も割れろ、とばかりに力強く吠える。 鼓膜を介さない、脳を貫き揺さぶる純然たる音の暴力。 施設に蔓延る獣たちに対する呼び声で、 急いで駆けつけようと奔る仲間への導で、 明確な意志でもって攻撃せんとする、初めての害意の形。 血の気がバカみたいに引いていく。 言ってしまったこと以上に、力に身体が侵される感覚。 こんなもん二度三度やれるようなもんじゃないということを、 嫌ってほど思い知らされる。 (20) 2022/06/07(Tue) 13:36:07 |
フカワは、後退りしようとした一歩で、力強く地面を踏み締める。 (a24) 2022/06/07(Tue) 13:36:42 |
【置】 ハリの豺狼 カナイ────居た。 遠く、けれど他人事ではない程度に近く。 轟く銃声がそれを確信じみたものにする。 そして『声』がそれを裏付ける。 ああ、でも、これじゃ迂回なんかしてる余裕は──いや、 動きを止めている。 最短距離を選びかけた足は即座に迂回路を選ぶ。 それが足を止めたという事がどういう事かはわかっている。 脅威を取り除く為にそれを直視し向き合う臆病者は、 もう嫌になるほど間近に迫った現実を見ている。 (L4) 2022/06/07(Tue) 13:48:10 公開: 2022/06/07(Tue) 13:50:00 |
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