人狼物語 三日月国


87 【身内】時数えの田舎村【R18G】

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【置】 巡査長 清和

鬼走も、宵闇も、御山洗も、添木も、花守も、誰も違った。
この金髪を持っていたのは、外から来た、清和だけだった。

それがコンプレックスだったわけではない。むしろ、誇りだと思う。

母から貰った大切な宝物だった。だけど、それでも寂しかったのだ。
だから、あえてみんなから浮いて、前に進んで、羨まれる位置にいた。

お前が自分と同じになってくれて、俺は、嬉しかった。

寂しくなくなったんだ。お前がいてくれたおかげで、俺は。
だから、お前が戻ってしまうのが、こんなにも寂しいんだ。
だけど、お前は追いかけてくれる。こんなにも嬉しいのか。

ああ、どうすればいいんだろうな。この気持ち、わからないな。
(L11) 2021/08/16(Mon) 2:54:12
公開: 2021/08/16(Mon) 2:55:00
清和は、添木の髪に酔った勢いでキスをした。
(a22) 2021/08/16(Mon) 2:54:52

【置】 巡査長 清和

俺は本当は、鬼走さんの部下でも、添木と一緒の配属先になったわけでもない。

これは俺が10年前、この田舎に捨ててきた憧れと願望が作り出した、夢幻なのだ。

無力だと感じた。事が起こる前になんとかできなかった。
みんなを守れる"オトナ"にならねばならないと強く思い知らされた。

ハーフで地毛が金髪だなんて、警察官になれないと何度も言われた。
すべて、実力と実績で黙らせてきた。それをするほどの覚悟があった。

そして俺は『公安』になった。この田舎のみんなを守るために。
何かが起こってしまう前に、すべて俺たちで解決してしまえるように。

俺は『公安』だ。夢が終われば、あの不発弾の中身は全て処分しなければならない。

『公安』の正体が明らかになるようなものは、可能な限り処分しなければならない。

それがどれだけ思い出深いものであろうと。

俺の名前は『清和ルカ』

──清和とは、世の中がよく治まって穏やかなこと。

──ルカとは、光をもたらす聖者の名前。

お前たちの未来に光あれ。清和の世を生き、幸せであれと俺は願う。
(L12) 2021/08/16(Mon) 3:20:13
公開: 2021/08/16(Mon) 3:20:00

【人】 学生 涼風

>>+35 凪

 なんだか不思議な感じがして、八の字眉を下げて微笑んだ。二日前、勇気が無いと迷い子のようにしていたのはこちらだったのに。

「……うん。見つかったよ。夕凪姉ちゃんへの答え。ここに来て気づいたんだ」

 忘れていたものを思い出した。
 ずっとこの日々が続けばいいと、皆を誘う担い手か。
 何故かここに残らなければならないと声を聞く者か。

 違う、そんなものじゃない。そんなものを思い出す前に私は気づいてしまったんだ。

「私はね、ここでようやく亡くなった母さんにきちんと近況報告をすることができた。母さんは成長を喜んでくれる人だから、きっと楽しく聞いてくれたはず。きっとこれからも、望んでくれるはず。

 だからね、私は。
 ここにはいない、ここには来れなかった人たちに……

 沢山の思い出を、沢山の感情。
 生きてきた軌跡を綴って、報告してあげたい。

 それが私の……今を生きる人としての本当の役割だと思うから。


 だから立ち止まるなんて出来ない。私は、もう一度ペンを執るよ」

【→】
(61) 2021/08/16(Mon) 3:45:26

【人】 学生 涼風

>>+35 >>61 目の前の貴方

「ねえ、教えて」

 からん、ころん。
 下駄が鳴る。誘うように、手招くように。

「こんな私は、格好悪いかな?
 医者を目指して、物書きもして。両手にいっぱい抱えるから、私はきっと沢山転ぶ。
 そんな私は、格好悪いかな?」

 からん、ころん。
 夕凪よりも少しだけ高い目線からそっと優しく見下ろして。

「大人って、どういう人のことを言うの?」

 からん、ころん。
 出来る限り距離を詰めて。貴方と離れるのは嫌だと言うように。

「──ねえ、お願い。
 答えが出ないのなら、出るまで一緒に考えよう?勇気が無いのなら、出るまで一緒にいてあげる。

 会えないなんて、寂しいよ。大好きな夕凪姉ちゃんと夜凪兄ちゃんが苦しむのは、悲しいよ。

 私に出来ることはない?
 ねえ── ■凪さん」

 からん、ころん。

 貴方に寄り添う、夏の音。涼やかな囁き。
(62) 2021/08/16(Mon) 3:48:49

【人】 君ぞ来まさぬ 百千鳥

>>59 鬼走 【四日目/夏祭り】

「………あれっ、」

 不意に名前を呼ばれて、下駄を鳴らして振り向いた。
 その声と呼び方には覚えがあったけれど、
 自分に声を掛けるような用事があっただろうか、そんな疑問。

「鬼走さん!
 ううん、約束はしてるよ。
 先に行っててって言われたから適当にぶらついてただけ!」

 涼風と、一緒に行こうと約束したのは事実で
 先に行っていてほしいと言われたのも事実だ。
 独り歩きの違和感、その理由にはならないかもしれないけど。
(63) 2021/08/16(Mon) 5:13:14

【人】 おかえり 御山洗

>>60 宵闇

「、ま、だ」

遅まきに言い訳を講じようとしたのだろう喉はつかえて言葉を吐き出せなかった。
隠し事、後ろめたいことをしていたのだということを少しも隠し立てしない、できない。
近づいてくる宵闇とは反対に、部屋の奥へとふらつくような足取りで下がっていく。
みるみる内に顔色をなくして、唇は震え指はこごえていた。
追い詰められた獣のように遅い足取りで、とうとう部屋の壁に背中がついた。
(64) 2021/08/16(Mon) 7:22:36

【人】 学生 涼風

>>+36 >>+37 目の前の貴方、夜凪兄ちゃん

「じゃあきっとまだ大人じゃない。大丈夫。
 だから、まだわからないままでいいんだ。はっきりした夢が見つからなくてもいい。
 だから、君は格好悪くなんてないよ」

 それは単なる子供の屁理屈かもしれない。でも、それが当然であるかのように少年は涼しい顔で言ってのける。

「うん。勿論。
 全部聞かせて。私も全部話すから。
 そうして一緒に会いに行くんだ。皆で会いに行こう。きっと皆も会いたがってる。皆、二人を必要としてるもの」

 ここに来て夕凪が色んな人と助け、助けられをしていたのをこの目で見ている。
 貴方たち姉弟を、皆好いていることを知っている。

「約束だよ。──夜凪兄ちゃん」

 絵が得意な年上のお兄ちゃん。夏を楽しんでほしいと願う姉思いのお兄ちゃん。
 貴方は遠慮しているけれど、自分にとっては自慢の兄貴分なのだ。

 少年は笑って手を伸ばす。
 大丈夫だよと伝える為に、抱きしめる為に。
(65) 2021/08/16(Mon) 7:23:37

【人】 影法師 宵闇

>>64 御山洗

「……んー? なんて?」

下がっていくものだから、男はつい目の前、間近までやってきて
壁の横に片手をついて、大男を見上げる。追い詰める気はないのだ。

男は、御山洗が怯えている理由を知らない。

「どした。これじゃ俺が苛めてるみたいだろ。
 ……なんか変だぞ、お前。
 行きたい気分じゃないなら、そう言えば帰ったさ」

小さく息を吐いた。やや困ったような目。
怯える友人を見て、笑う趣味は男にはなかった。
(66) 2021/08/16(Mon) 9:17:55

【人】 巡査部長 鬼走

>>63 百千鳥【四日目/夏祭り】
「そうか。随分とつまらなさそうな顔で歩いているように見えたからな。一人だとそんなにつまらないものか。……つまらないか」

さすがに鬼走でも一人の夏祭りが退屈に思う人間は多々いる事の想像もつく。実際自分もこの歳でも別に一人で来たわけでもない。一人ならまず来ないのもあるが。

「約束した相手を待ってる間のつまらなさ、と言うには随分と退屈を通り越しているように見えた。そう見えただけで別に平気なら構わないが」
(67) 2021/08/16(Mon) 10:18:27

【置】 少年 編笠

ある日家に帰ったら母親がいなくなっていた。
誰もその理由を教えてくれなかったし
俺宛の手紙や言葉も何一つ残されてなかった。
だから想像するしかなかったんだが
どうやらどう考えても子供の俺には
悪者が世界のどこかに連れ去ったんだって
そんな想像しかできなかった。

でもどうせそうやっていつか皆んな
黙って俺の元からいなくなるんだって思ったら
いつからか上手く笑えなくなってた
だってそうだろ…
母親がいなくなって泣けないやつに
誰が笑うことを許してくれるんだよ。
例え誰がいなくなっても泣けないかもしれないやつに
誰が手を差し伸べてくれるってんだ。

あの時独りで見上げた空と同じ空が
今ここには広がっている。
(L13) 2021/08/16(Mon) 10:23:20
公開: 2021/08/16(Mon) 12:00:00

【人】 おかえり 御山洗

>>66 宵闇

「行く、つもりは……ないわけじゃ、ない、けど」

すぐ間近に見下ろした顔を見てまた怯えたように顎を引いた。これ以上逃げる場所がない。後ずさろうとした肘が壁にぶつかって擦れる。痛みを感じない。
夏の盛りだというのにやけに冷えて感じる空気が喉を凍りつかせていくばかりだ。

「俺は、別に。後からでも、みんなで、行けば、」

うまく言葉が出てこなかった。自分は何を言い訳したいのだろうか。何を申し訳なく思って、何に後ろめたさを感じているのか。思考がごちゃ混ぜになる。
怯えている。恐れている。全部が全部壊れそうな思いだ。
見下ろした目の中に鏡のように映り込んだ背の高い男の表情は、罪の重さに耐えられないような顔だ。

「来なければよかった、帰ってれば」

そのまま踵を返してどこかに行ってしまうことを願っていたのに。じっと黙り込んでいれば、そのまま別のところに行くだろうとそう思っていたのに。夢の中の景色と重なって息を呑む。苦しさで瞼の裏の景色が滲んできた。

「俺は、」

思い出を壊したくなかった。壊すのは自分自身だ。
思い出を汚したくなかった。忘れ去るままでいたかった。

「俺は、」

息ができないほど焼き付いた胸が、楽になろうと自白しかける。
ずっと隠していた罪悪は、紐解くつもりなんて一度もなかった。
10年も昔から。子供だった時分から。
どうして今、思い出してしまったのか、帰ってこなければよかった。

(68) 2021/08/16(Mon) 11:30:11

【置】 おかえり 御山洗

>>66 宵闇



ーーお前よっぽど俺のこと好きなのかい

ーーバカ。冗談言うなって




(L14) 2021/08/16(Mon) 11:30:24
公開: 2021/08/16(Mon) 11:30:00
御山洗は、恐れている。怯えている。思い出を壊す自分自身の心に。
(a23) 2021/08/16(Mon) 11:31:03

【人】 おかえり 御山洗

>>66 宵闇










          
「お前のことが好きだったんだ」











(69) 2021/08/16(Mon) 11:31:32

【人】 さよなら 御山洗

>>66 宵闇

掠れるような声でそう吐き出して。伸ばしてたが肩を押して遠ざけた。
苦痛を堪えるように目を伏せる。焼けた髪の色より幾分濃い色の睫毛が視界を閉ざした。
首を横に振る。力は強かった。そのまま、腕を伸ばしても届かないくらいに距離を空ける。

「……ごめん。祭りには、一人で行ってくれ。
 瑠夏とか百千鳥とか、みんな待ってるだろ。
 俺は一緒に行かない。行けない。だから、一人で行ってくれ」

言うつもりはなかった。言うべきことではなかった。
ずっと、いつだったか、子供の自分が口を閉ざして隠していたものを、自分が壊してしまった。
御山洗は恐れていた、怯えていた。自分にとって大事な思い出を壊すこと。
御山洗はこの場所に帰ってくるまで思い出の中にしまっていられた、焦がれるほどそばに置かずにいられた。
なのに、帰ってきてしまったから。思い出のままにしておきたかった全てを掘り起こしてしまった。
口にすれば全てを終わらせてしまうのをわかっていた。
いつかの三人組ではいられなくなることを、わかっていた。

「……今までありがとう」

だから、これは、決別だ。
(70) 2021/08/16(Mon) 11:32:23

【置】 警部補 添木

添木には何もない。

両親の写真は、一枚もなかった。
一枚だけ祖母がとっておいたものを、見もせずにキッチンで焼いた幼いころ。

自分を捨てた大人なんかと、自分が繋がっている由縁を、一つたりともこの世に残したくなくて。

あんたは優しいけど。
ずっと前にいるのに、時折振り返って笑ってくれた。
ずっと一緒に過ごせるんじゃないかって、そう思わせてくれた。

嘘つきだ。
あんたは嘘つきだ。
本当にひどい。

でも、今度はその嘘を俺が引き継いで、誰かに背中を見せてやる。
こうしないと、きっと救われない”誰か”がいる気がすんだよ。



これでいいよな。 これでいいんだ。 きっと。
(L15) 2021/08/16(Mon) 13:22:55
公開: 2021/08/16(Mon) 13:25:00
添木は、寝たフリをした。少しだけ、泣いた痕が残っても、多分気付かれないだろうから。
(a24) 2021/08/16(Mon) 13:24:06

【見】 天狼の子 夜長

【祭り、どこかのベンチ】

 夜長は祭りの中、藍鼠の甚平姿。食べ終わった飴の棒を、行儀が悪いなと思いながらかじっている。つまようじみたいな味と、しみ込んだ飴の味。嫌いじゃなかった。

 雅也さんに、もう母さんを探さないでいいと言われた。母さん、ここに来ていないんだな、と思った。雅也さんも言い切れない何かはあるみたいで、ちゃんとは言われていないが……そうだと思えば、本当なんだろうなと。

 母さんが約束をなかったことにするなら、ちゃんとした理由があると思うから。
 

 探して探して、俺でない他の人も、本当に誰も見ていなかったから。
 

 いくらかくれんぼが上手でも、日が暮れたらみんな出てくるものだから。


 父さんに怒る理由が増えたかもしれない。母さんがここに来ていないのなら、父さんの方が嘘をついていたことになる。雪子さんはこの村に来ていない。ああ、晴くんの方が先に来てしまった。モモチと同じで、母さんは気にしないだろうが。
(@2) 2021/08/16(Mon) 16:04:24

【見】 天狼の子 夜長

【祭り、どこかのベンチ】

 自分ひとりで考えて、自分ひとりで決めて、ここに来た。大人になったら、全部じゃなくても、そうやって自分で決めることが増えると思って。大人になったら、出来ないことがたくさん出来るようになるとも思っていた。

 でも、けっこう出来ないことは出来なかったな。怒っているからあまり考えなかったが、父さんだったら上手く出来たのだろうということはいくつもある。

 あの人も晴くんみたいに、誰かに迷惑をかけてごめんなさいをして、助けてもらってありがとうをしていたことはあるんだろうか? 今度話してみようと思う。怒るのが先だが。
(@3) 2021/08/16(Mon) 16:04:45
夜長は、人を見ているのが好きだ。話を聞くのが好きだ。思い出に触れるのが好きだ。だから、
(t9) 2021/08/16(Mon) 16:04:55

夜長は、ひとりでもけっこう、この祭りをたのしんでいる。でも、
(t10) 2021/08/16(Mon) 16:05:04

夜長は、誰かと一緒の方がもっとたのしいだろうなと思った。
(t11) 2021/08/16(Mon) 16:05:11

【見】 天狼の子 夜長

【祭り、どこかのベンチ】

 「みんなでいて、たのしくないこともないと思う」

 だからみんなのいる所に来ていたつもりだが、みんなはそうでもないのだろうか? 今日見ていない人は、俺が見ていないだけならいいと思う。

 かくれんぼじゃないが、隠れている人はいるかもしれない。なんとなくそんな気がした。動かないでじっとしているだけじゃなくて、ひとりで歩いて鬼
-誰か-
から隠れている人も、たぶん。

 隠れている人も、隠れていない人も見つけに行こう。鬼は得意でないが、そうしたいので。それが今の俺の、祭りをたのしんでみるだと思う。
(@4) 2021/08/16(Mon) 16:05:56
夜長は、ベンチを離れて歩き出した。見つけられるだろうか。
(t12) 2021/08/16(Mon) 16:06:08

夜長は、慈姑に手を振った。
(t13) 2021/08/16(Mon) 16:09:09

夜長は、ばあちゃんは祭りをたのしんでいるのだと思った。振り返ってどこかに行く後ろ姿が、ご機嫌そうだったから。
(t14) 2021/08/16(Mon) 16:09:26

【人】 君ぞ来まさぬ 百千鳥

>>67 鬼走 【四日目/夏祭り】

「……あー、うん」

 頬を掻いて一度、返答のなりそこないのような声を発した。
 とはいえ何か言葉に詰まるような事があるでもなく、ただ
 そんなふうに見えているのか、という思いがあるだけで。

「うん、つまんないよ。
 …てよりは、寂しいかなあ。
 一人でご飯食べるのって味気ないじゃない?
 多分、そういうことなんだと思う」

 それが本来どんなに楽しい時間でも、一人では味気ない。
 それがあなたにとって共感に足る心情かはわからないけど
 一般論としては理解の及ぶものではあるはずだ。

 そんな例題を一つ挙げて、だから大丈夫と笑って見せた。
 だってもうすぐ、一人ではなくなるから。
(71) 2021/08/16(Mon) 16:10:43

【人】 影法師 宵闇

>>68 >>L14 >>69 >>70 御山洗

──瞬き。

嗚呼、軽率だったな、と男は悔いた。
目の前の友人は、海で手を引いてくれた時と同じ目をしていた。

宵闇 翔にとっての御山洗 彰良は、幼い頃からの友人だ。
清和とぶつかり合っている中に無理やり引っ張り込んで
自慢していつも困らせているような。
けれどそれでも付き合ってくれて、影で頑張ってくれるような。

──今でも、そうだ。

御山洗の言う好き、とは違っても。
ただ、大事な友人であることは確かだった。
何年経っても、再会できて過ごせたことは
この夏のひと時は、安らぎだった。

今の宵闇 翔は今にも夢に縫い付けられそうな
"かえりたくない" "このままでいたい"
そういう思いでいっぱいの、だめな大人だった。
その夢が崩れていく音がして、ほんの一瞬、迷子のような妙な顔をしてしまった。
いつもの余裕で取り繕うことが、できなかった。

耳に届いた掠れた音が、苦痛を堪えるように目を伏せる姿が
いつまでも焼きついていて、
気付いた時には、距離が離されていた。
男は、ただ無表情でその場に立ち尽くしている。
(72) 2021/08/16(Mon) 17:54:17

【人】 影法師 宵闇

>>68 >>L14 >>69 >>70 御山洗

「なあ、アキラ」
「……俺が、好きだって言ったな」

確かめるように、呟く声は夜の海みたいに、静かだった。
大きな体で小動物のように震える男を前にして
まるで怯えさえないように、静かに言葉を紡いでいる。

「そりゃあ、さすがに驚いたよ。
 けど、"今までありがとう"?別れの言葉に聞こえるなー……
 だから俺と付き合いたいとかじゃないのかい」

わざとらしい、いつものような調子を作る。

「俺は、切り替えのできる大人ではあるが。
 "はいそうですかさよなら"って今のやりとりで
 友人捨てられるほど、薄情でもなかったらしい……」

「来なければよかった? なぜだ? 俺が好きなのに?」

「……どうして、逃げる? 俺が好きなのにかい?」

「なんで、そんなに怖がってるんだ」
「教えてくれないのかい、俺は聞きたい」

「話がしたい」

無責任なことを言っている自覚はあった。
(73) 2021/08/16(Mon) 17:57:24

【人】 影法師 宵闇

>>68 >>L14 >>69 >>70 御山洗

「──本音を言うとお前とこのまま別れたくないだけさ。
 ……さよならするなら、納得がいってからがいい」

男は、まるで昔の諦めの悪い少年のような目をしていた。

「俺、この田舎にずっといれたらいいなって思ってるんだ。
 ここにいたら忘れてしまった大事なことを取り戻せそうで。

 ……帰りたくない、お前は、そうは思わないか?」

──そんなことは無理とは、どこかでわかっているのに。

今の宵闇 翔は今にも夢に縫い付けられそうな
"かえりたくない" "このままでいたい"
そういう思いでいっぱいの、だめな大人だった。

男はあなたが本音を言ったのと同じように、本音を返してやった。


「……祭りには一人で行くよ、それは言う通りにする。
 けど、──急に、いなくならないでくれよ。
 俺がまた海に落っこちたら、そのまま沈んじまうかも」

笑顔を作る。

「"またな"」

男は一方的にそう言い放って、背中越しに手を振った。
(74) 2021/08/16(Mon) 17:59:29

【置】 学生 涼風

拝啓

 夕涼みにほっと一息つく、晩夏のきょうこの頃、いかがお過ごしでしょうか。

(中略)

 今の私は沢山の欠片を持っています。
 例えば、こうして便箋を手に取ってペンを持った時。
 例えば、どこかの街で賑わう夏の祭りを目にした時。
 やはり私は昔を思い出すのです。皆と会ったあの頃を。

 いなくなってしまった人を思う度、美しい思い出たちはガラスの破片となり、振り返ろうとする私の足に噛みついて鋭い痛みを与えてこようとする。
 痛みに泣いて、蹲って、砕けてしまった思い出をかき集めて抱きその場から動けなくなってしまったら、きっとどれほど楽だったことでしょう。

 でも、優しい夢に囚われ続けるのであれば。
 完璧な形でないといけない、そう思いませんか?
 いてほしい人がいない甘い夢では、いない人の事ばかり考えてしまうもの。弾き出されたその人が寂しい思いをしてしまわないかと、私は気になってしまうのです。
 だから私はここにいる。こうして貴方に手紙を出す。寂しさが少しでも埋まるように、お裾分けできるような思い出の欠片を沢山拾いながら。

 生者のエゴだと思いますか?ええ、きっとそうでしょう。葬儀とは、弔いとは、死者のために行うものは、生者が己の心の整理をする為にあると言われるほどですから。

 じゃあこの手紙も送るのをやめましょうか?なんてね。
 エゴかどうかは、生ききって私も死んだ先、貴方と合流してから答え合わせをしましょうね。
 それまでに土産話を沢山用意しておきますから。

(中略)

敬具 

  20××年 8月××日
涼風薫 
(L16) 2021/08/16(Mon) 18:42:39
公開: 2021/08/16(Mon) 19:00:00
涼風は、相手の手を優しく握り返す。
(a25) 2021/08/16(Mon) 18:46:32

涼風は、ふらりゆらりと歩き出す。からん、ころん。下駄が鳴る。からん、ころん。それは遠くへ。
(a26) 2021/08/16(Mon) 18:47:36

百千鳥は、その手を握って、喧騒に背を向けた。
(a27) 2021/08/16(Mon) 18:56:02

百千鳥は、ずっと前から、全ては夢だと知っていた。
(a28) 2021/08/16(Mon) 18:56:16

百千鳥は、見ないふりをしていただけ。
(a29) 2021/08/16(Mon) 18:57:31

涼風は、ただ寄り添う。寄り添って、二人でそっと抜け出して。
(a30) 2021/08/16(Mon) 19:00:10

涼風は、ようやくここが夢だと気づいた。それでも、何も言わずに貴方と並んで歩く。
(a31) 2021/08/16(Mon) 19:01:08

【人】 少年 編笠

>>+50 夕凪
膝までを、川の水につけて。
夕凪と、ここで初めて会った場所で空を眺めている。

まるで一秒前にはここにいなかったような、そんな心地があった。
髪の毛が少しだけ濡れていて、犬のように頭を振ると、
そのわずかな水滴が水面に輝きを零す。
裾を絞ると川の冷たい水がぼたぼたと元の流れに戻っていく。

「……夕凪の姉さん」

声を掛けると、彼女はそこにいる。
探し始めたらすぐに自分が見つかるのと同じで。
出会いたい場所に自分が存在して、出会いたい場所で出会える。

夢とは、そういうものだから。

「何か用かい」
(75) 2021/08/16(Mon) 20:14:31

【人】 さよなら 御山洗

>>72 >>73 >>74 宵闇

「……ひどいやつだな、お前は……」

喉の奥からほとんどつっかえて出てこないような涙声が、ようやく震えながら音を成す。
なぜかだなんて。克明に思い出さずに済んだなら、この想いを風化できたからだ。
どうしてかだなんて。そんな気持ちを抱いたところで叶うわけが無いのを理解してるからだ。

目の前の彼が思うよりもずっと不届でみっともない願いを抱えて、
唄うような声もはしゃいでる声もとぼけたような声も、
長い前髪から覗く目もろくに体を作れるものを食べてないような細さも、
全部どうしようもなくこの手に掻き抱いてしまいたくて、そんなのは、お前には向けるべきじゃない。
"友達"だと言うのなら、こんな不自然な気持ちは最初から持つべきじゃなかったからだ。
抑えられないくらい好きな自分が、夢に見るくらいに好きな自分が、
自分では制御できない怪物になったようで、自分から思い出を守れないのが、恐ろしかったからだ。

宵闇の思いと御山洗の想いは全く違っていて、それはどちらも両立することは出来ない。

「俺は……」

首を横に振る。同じ思いを、抱けなかった。
ここにいたら、綺麗なまま額に入れてとっておきたかった大事なことを壊してしまう。
此処には居られない。いてはいけない。思い出に触れないまま、しまっておきたいと願う。
帰ってよかったと思う気持ちより、帰ってこなければよかったと後悔する愚か者は、
永劫の花園にはいられない――帰りたくないなどと、思えない。
このままでいることにも、ここままでいられないことにも、何もかも耐えられなかった。

(76) 2021/08/16(Mon) 20:14:32

【人】 さよなら 御山洗

>>72 >>73 >>74 宵闇

遠ざかる足音を聞いている。
そのうちに、力が抜けてずるずると落ちていくように壁に背を凭れて崩れ落ちた。
声を抑える。息を止める。言うことを聞いてくれない瞼を指で押さえて。
出ていく宵闇に、すすり泣く声が聴こえていないようにと、蹲って祈った。
蝉の声が遠く遠くに聴こえる。
(77) 2021/08/16(Mon) 20:14:40

【人】 少年 編笠

>>+51 夕凪
「ああ、似合ってる。
 祭りの最中にばったり会ったら、
 思わず恋に落ちちまいそうなくらいには」

それは掛け値なしの本音だ。嘘偽りはない。
前髪から水が滴る。虚ろな魚のような目を夕凪に向けた。

「……………。
 夕凪の姉さん。
 
 多分な。
 もしここじゃなけりゃ。
 もし今じゃなけりゃ。
 もし俺が俺じゃなけりゃ。多分任せとけって言ってたと思う。
 初恋の残滓だって、火を付ければそれなりに燃えるはずだからな」
(78) 2021/08/16(Mon) 20:40:29

【人】 少年 編笠

>>78 夕凪
視界の中の風景は、過去を移す。
憧れであり、淡い思いを抱いていた相手の姿が、
憧れであり、追いかけていた背中である誰かが、
今の夕凪に重なる。

「でも、ごめん。
 俺はここで、嘘を吐くことに決めて。
 だから、その嘘に今縛られてんだ。

 ……ここにきて。
 俺のことを好きって言ってくれたやつがいるんだ。
 でも俺は、応えられなかった。
 答えすら与えてやれなかった」

それはもう実感としてあるかもしれない。
この世界が、誰かの思いで紡がれていることを。

「"夢"が"夢の中"である限り。
 俺にとっては、それは"夢のような言葉"なんだよ。
 黙ってようと、思ったんだけどな……」

そしてそれを自覚した今。
この夢の時間が綻び始めていることにも気づいている。
(79) 2021/08/16(Mon) 20:42:14

【置】 君ぞ来まさぬ 百千鳥

 
 ここが都合の良い夢だなんてわかっていた。

 慈姑が姿を消した時に、あの人は夢に還ったのだと思った。
 姿を消しては現れる夕凪や卯波を見て、
 そういうものなのだと思った。
 夢の中で何の根拠も無く、けれど確信じみてそう思うように。

 居なくなった人も確かにここに居て、
 決してどこかへ消えてしまったわけではない。
 会おうと思えば会いに行けて、一緒に遊ぶ事だってできる。

 今はここに居ない人も、きっと見えないだけでここに居て
 ここで待っていればいつか、
 せめてその面影に触れる事は叶うと思っていた。

 皆に会いたいと願いながら亡くなった姉が寂しくないように。

 あの頃のままのみんなと一緒に、
 あの頃のままの村を保って、待っていてあげたかった。
 それは決して叶わないという現実に見ないふりをして。

 夢を見せるなら、最後まで騙していてくれたらよかったのに。
 
(L17) 2021/08/16(Mon) 20:46:45
公開: 2021/08/16(Mon) 20:50:00

【置】 さよなら 御山洗

「――……ああ」

バカだ、と。やってしまったな、と思った。
今まで自分が大事にしてきたものは、この手で壊してしまった。
今までひた隠しにしてきたものは、この手で暴いてしまった。
思い出は浅ましい思い出塗りつぶされて、曇ってよく見えない。
これが、自分の望んでいた"夢"なんだろうか。
もしもそうなら、とんでもなく悍しい悪夢だ。
それでも俺は、翔のことが。

「……本当に、バカだ……」
(L18) 2021/08/16(Mon) 20:53:30
公開: 2021/08/16(Mon) 20:55:00
涼風は、百千鳥の手を握った。
(a32) 2021/08/16(Mon) 20:55:32

御山洗は、恐れていた。怯えていた。今は、後悔ばかりが焼き付いている。
(a33) 2021/08/16(Mon) 20:56:40

花守は、諦めて、諦めなかった。
(a34) 2021/08/16(Mon) 20:59:00

添木は、”遊び”を終わりにする。
(a35) 2021/08/16(Mon) 20:59:10

花守は、ウソをホントにする、きっと。いつか。
(a36) 2021/08/16(Mon) 20:59:57