人狼物語 三日月国


87 【身内】時数えの田舎村【R18G】

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視点:


【人】 少年 編笠

それは明確な夢の終わりだ。
それを、ただひたすらに求めた者と
どうしてもそれを成したかった者と
自分が求めている事も忘れていた者。
そしてそれを叶えようとしてくれた誰かが離れるのを感じて。

歪に、だからあまりにも綺麗だったこの風景は。
――静かに、でも確かに、色と容を取り戻していく。

夢の終わりはいつだって突然だし。
それは夢を見る者にはどうすることもできない。

目を閉じて、空を仰ぐ。
自分が取り残されていた田舎の空が、そこにある。
(1) 2021/08/16(Mon) 23:27:49

【人】 少年 編笠

「………マジだったんだけどな」

紛れもなく、自分は本気で、
この田舎を永遠のものとしようとして、
そしてどうやら、志半ばで叶えることは出来なかったらしい。

同じ空の下にいる、
自分と同じくらい強い気持ちを持った誰かに、
ごめんな、力になれなくて、と謝った。

自分が産んだ綻びの正体くらい、分かっている。
俺が強く、強く願った夢の中で、
俺の大切な、本人を傷つけてでも欲しかった誰かの存在は、
俺の執着なんか飛び越えて、綺麗で、特別で――。

だから。籠の中に閉じ込めることが出来なかっただけだ。
その羽があまりに綺麗すぎて、
この空を飛ぶところを見たいと思ってしまったから。
見たいと思ってしまった俺の、負けなんだ。
(2) 2021/08/16(Mon) 23:28:22

【人】 少年 編笠

「………」

俺は、自転車を押していく。
押していた自転車はやがて速度を増し。
それに飛び乗る。
舗装されていない道に小刻みに跳ねながら、
ガチャガチャとチェーンを軋ませながら進み、
やがて立ち漕ぎになって、全力でペダルを回す。

時間がない。
時間がないんだ。

夕凪の姉さん。夕凪の姉さん……! 夕凪夕凪夕凪夕凪夕凪。
最後まで、最後の瞬間まで、この世界でやることを見つけた。
それはあんたのおかげで、あんたのせいだ。
必ず答える。必ず応える。必ず、夕凪の姉さんに、伝えに行く。
俺の口で、俺の言葉で。だからその前に。

――この夢の中で紡げる物を、全部紡いでから行く。
(3) 2021/08/16(Mon) 23:29:06

【人】 親友 編笠

砂利道を、上り坂を、道なき道を、下り坂を。
息を切らせてペダルを踏んで駆け回る。
居そうなところ、思いつく場所を片っ端から自転車で周り、
小一時間もしたところで、強烈な『違和感』に気づく。

流石に、思いつく場所は全部探し終えた。
――ここまで、どこにもアカネが居ないのはおかしい。

額から滴る汗を掌で拭いながら、
高く登る太陽を仰ぐ。汗が出るのに、喉が渇かない。
そうだ、都合のいい世界で、ここまで都合が悪いのは、
なんらかの作為があるはずだ。

考えろ。
考えろ、考えろ、どんなに探しても探しても、
アカネの元にたどり着けないことの意味を。

「っ、はぁ……はぁ……!」
(9) 2021/08/17(Tue) 21:00:04

【人】 親友 編笠

>>9
――すぐに思い至る。これしか考えられない。
この世界で自分たちに連れていかれた者は、
会いに行こうとしてもこちらからは
絶対に会いに行くことが出来ない。

その残酷なルールが、今は"俺にも適用されている"としたら。
俺がどんなに自転車を回しても、たどり着けない理由はそれだ。

世界が。田舎が。この村が。
『完遂する』ことが出来なかった俺を、拒絶し始めている。

自転車を持ち上げて向きを変える。
今まで漕いできた河川敷への道を、引き返す。
だったら、俺がやるべきはこれしかない。

向かうは――この村の"
村役場公民館
"だ。
(10) 2021/08/17(Tue) 21:05:33

【人】 親友 編笠

>>10
そこにたどり着くと、
――自転車を叩きつけるように置いて、
流石に全力で漕いで来たので膝に手をついて長く息を吐いた。

その俺の隣を――子どもの姿の――
"添木の旦那"と"清和の旦那"が追い抜いていく。
汗に塗れた顔で、その後ろをよろよろと追いかける。

子どもの添木の旦那が、公民館の番号錠に手を掛ける。
それは、この村での記憶の"残像"だ。

"この村のカギの番号、全部頭に入ってるんだ。"

嘘吐けよ。子どもの頃は、間違いなくそう思ってたけど、
どこに侵入するにも番号錠をすぐに開けてた姿を覚えている。
だから――添木の旦那が言ってたそれは、
案外誇張なしで本当だったのかもしれない。
それを証拠に、俺が教えてもらった番号に錠を合わせると、
"見事に鍵は開かなかった"。
……そうだった。俺たちが特に悪さをした大抵の施設の鍵は、
ある時期を境にドアの鍵を無意味なものにした添木の旦那のせいで
片っ端から取り換えられてたんだった。

本当、つくづく思い通りに行かせてくれねぇあの旦那!
(11) 2021/08/17(Tue) 21:09:33

【人】 親友 編笠

>>11
"ここに関しては覚えなくても大丈夫だ。こうすれば開くから"。

子どもの清和の旦那が、ドアの枠ごと上に持ち上げた状態で、
ドアの左下を蹴る。物理的に老朽化した鍵が跳ねて、
ガチャンと目の前でドアが開く。

俺もそれに倣い、ドア枠を持ち上げて同じ個所を蹴ると、
番号錠を無視してドアが開いた。
……ホンット。

「ただただ冒険の仲間に入れてほしかっただけのガキに、
 悪いことばっかり、教えてくれてんなっ……あの二人!
 おかげで、めちゃくちゃ助かったよこの野郎……!」

歯を剥いて、笑ってしまった。
こんなに愉快なのは生まれて初めてかもしれない。

俺たちが公民館に忍び込む理由だった『それ』の場所も、
もう俺にはわかっていた。
それは、"田舎"には絶対にあるものだ。
そしてそれは大人たちが用意に子供には触れられないように
普段は隠されているものだ。
でも俺は知っている。悪い年上のせいで、知っていた。

――俺は、
トランシーバー
をひっつかむと。
それを肩から下げながら公民館を出て、再び自転車に跨った。
(12) 2021/08/17(Tue) 21:14:26

【人】 編笠

>>4:-96

「――アカネ」

トランシーバーを口に当てたまま。
自転車が、境内に、勢いよく突っ込んでくる。
大きく天を仰ぎ、息を吐いた。

随分と、遠回りしたし、
遅れてしまったけど。


――俺も、お前が……大好きだ


ちゃんと今度は。
この言葉を伝えに行くよ。

トランシーバーの電源を。――静かに落とした。
(13) 2021/08/17(Tue) 21:51:59

【人】 編笠

>>15 アカネ
少しだけ視線を逸らして、頬を掻いた。
卯波が踏み出し、アオが踏み出し、
アカネが目の前にいる。

「皆知ってるだろ、馬鹿なんだよ多分。
 だから、また馬鹿だなって笑ってほしいんだ。

 ……ここにいる俺は、
 村のどこにいたって聞こえる声しか出せなかったけど、
 世界のどこにいたって、また声を伝えようって思うから」

だからこれは、告白ではなく宣言だ。
今から何百回、何千回と繰り返し伝える言葉の、
覚えていないかもしれない最初の一回だ。

一番恥ずかしい思いをさせたら、
もしかしたら永遠に残るかもしれない。
その胸の高鳴りを抱いたまま、
いつか俺が来るのを待っていてほしい。
同じ空が続く、世界のどこかで。
(16) 2021/08/18(Wed) 21:35:15

【人】 編笠

>>15 アカネ
「ああ……任せろ。
 どこにいたって、どんな姿をしてたって。
 必ず見つけてやるから。
 自転車の後ろに乗せるから、皆に会いに行こう」

手を取る。差し伸べられた手を握ると。
そこには10年前に欲しかった温もりがあった。

「……ごめんな、アカネ。
 俺はお前を、
 卯波を、青嵐を。
 永遠に夢みたいな楽園にいさせてやりたかった。
 これは、掛け値なしに本当の気持ちだった。
 でも、どうやらそれは無理みたいだから――」

だから。

「――お前のいる"現実"を、
 夢みたいな場所にすることにした。
 今度は、諦めたりしねえから。
 ……アカネが味方なら、百人力だしな」
(17) 2021/08/18(Wed) 21:36:45

【人】 過去から 編笠

>>15 アカネ
ばあちゃんみたいに、全員を一気に集めるとかできないから。
だから俺は、一つずつ繋いでいく。
糸を編むように、繋げていく。
出来るかなんてわからない。何年かかるかもわからないし、
その間にほどけて行くものがあったとしても、それでも。
それが今の俺に出来る、精一杯の感謝と謝罪だ。

握ったアカネの手を引き、相手の背中を抱いて。
その耳元に頬を寄せ――。
……静かに、今度はアカネにしか聞こえない声で囁いた。

「――
だから"未来"で待っててくれ

 "10年前"から、一気に自転車ぶっ飛ばして。
 
必ずお前に「好きだ」って言いに行くから


だから今は、少しだけお別れだ。
青く、青く澄んだ空の下で。
伝えられなかった言葉を、静かに伝えた。

誰かが、微笑んでくれているのを感じながら。
(18) 2021/08/18(Wed) 21:40:07

【人】 過去から 編笠

>>4:+55 凪
ああ。
そうか。

……そうだったのか。
ずっと疑問に思っていた。
この夢の世界が、俺の思っている通りの場所で。
慈姑のばあちゃんが関わっているとして。

俺の内心や本心までを踏襲しているのだとしたら。
この夢の中に、絶対に居なければならない人間が、
『一人だけここに居ない』のは何でかって、
ずっと考えていた。

最初から彼もそこに居て。
そして同時に、彼女も存在していたんだろう。

最初にここに閉じ込めようとした夕凪の姉さんの表情が
その意味が、全て繋がっていく――。
(23) 2021/08/20(Fri) 19:29:27

【人】 過去から 編笠

>>23 凪
――俺は、静かにその言葉に応える。

「……ああ。分かった、姉さん。
 それだけは、絶対に約束する。
 俺も自分の気持ちに、はっきりとケリをつける覚悟、
 姉さんのお陰で出来たから。

 お互い、どこまで覚えているか分からねえけど、
 だからこそ意味のある約束を、ここでしよう」

言いながら、目の前の誰かに、小指を差し出した。
それは意味のない約束だ。
ここから出たときに、夢から覚めた後に、
どれくらいそれを覚えているかは分からない。
ましてや本人でもなければ、今のままの姿とも限らない。

それでも、今ここに居る俺たちの間で約束をすることが、
必ず意味を持つ。
(24) 2021/08/20(Fri) 19:34:14

【人】 過去から 編笠

>>24 夕凪
「……俺が出来る限りの何もかもを引き連れて、
 必ず、会いに行く。夕凪の姉さんが思っているよりも、
 もっともっとすげえものを見せるために、
 ちゃんと自分の声を伝えに行く。

 ――今なら、
 自転車一個でどこまでも行けそうな気するんだ。

 夢のような言葉も、夢のような現実も、
 何もかも持って行くことを、ここで約束しよう」

だからこの"初恋"だけは、
もう少しだけ決着を先延ばしにしておく。
これは間違いなく、"本人同士"の問題なんだから
ちゃんと失恋なりなんなり、しにいかねえとな……。

「なあ、こっちからも一つだけお願いしていいか、
 ――『夕凪の姉さん』」

相手に、静かに尋ねる。
(25) 2021/08/20(Fri) 19:35:43

【人】 過去から 編笠

>>27 夕凪
少年は照れたように頬を掻き。
そして真っすぐ青年の目をして、言った。

「……難しいことじゃないよ。
 ただ『夜凪の旦那に、伝言してくれねえかな』って。
 凄くシンプルな言葉なんだけどさ」

きっと多分。
この祭りに意味があるとするならば。
この形に意味があるとするならば。

――きっと、全部そのためにあったんだ。

「……同じなんだ、伝えたいこと。
 この言葉をそのまま伝えてくれ」
(28) 2021/08/20(Fri) 21:33:59

【人】 過去から 編笠

>>27 夕凪
「……俺じゃ。
 
夜凪の旦那の代わりにはなんねえかな?

 そう、伝えてほしい」

それは。
ここに存在して、
ここに存在しなかった、
もう一人の憧れに対しての言葉だ。

どんな理由があって、
どんな思いがあって、
こういう形になっていたのかは、分からない。

それでも、彼が夜凪の貌(かたち)で現れずに、
夕凪の姿(かたち)で現れたことに意味があるのなら。
きっと、俺も憧れを憧れのままで留めておくわけには、
それだけはいかなかった。
(29) 2021/08/20(Fri) 21:35:24

【人】 過去から 編笠

>>27 夕凪
ずっと、その器用に何かをこなす彼に憧れていた。
子どもだった俺たちは全員、その背中に背負われてきたはずだ。
普遍で、不動で、信頼できて、
何故かそれが絶対崩れないと信頼していた。
だから、誰も気づかなかった。
他の皆には夜凪の旦那がいても、
夜凪の旦那には、夜凪の旦那が居なかったことを。

弟分が、卯波が憧れを捨て去ったなら。
あいつのことを格好いいと思ってしまった俺が。
――じゃあいつまでも、
こんな気持ちを抱えてていいはずがない。
助けての言葉が言えない相手に、手を伸ばさずにいられない。

「……伝わんないかもしれないけど。
 ……全部勘違いかもしれないけど。
 俺は憧れていた『夜凪の旦那』になる覚悟が出来たから。
 だから、アンタにも必ず会いに行くよ。
 でも、一人じゃ何もできないから。
 ――たくさんの仲間を連れて」

そしたらきっと。
俺は、俺たちは――無敵だと。
そう信じさせてくれた親友がいるから。
(30) 2021/08/20(Fri) 21:37:16

【人】 夜を越えて 編笠

>>27 夕凪
たち

一人じゃ救えないかもしれない。
一人じゃ答えを出せないかもしれない。
人は、誰かを救うようには出来ていない。
何もかもを解決するなんて無理だ。

なあ、もう一人の俺。
もし会えたら言うよ。必ず探し出して伝えるよ
人の腕が二本しかないのは。
誰かの差し出した手を握り、誰かに手を差し伸べるためだって。

「……だから夕凪の姉さん。
 『
旦那も姉さんも待っててくれ
』って。
 そう伝えてくれねえかな。必ず、迎えに行くから。
 それが、俺のお願いだ」

少しは、これで惚れた相手の前で格好つくかなと、
少年だった顔で、自然な顔で笑って肩を竦めた。
(31) 2021/08/20(Fri) 21:39:34

【人】 夜を越えて 編笠

>>33 夕凪
「残念だけど夜凪の旦那との関係は、
 夜凪の旦那との関係だけなんだよ。
 同じように、夕凪の姉さんとの関係も、
 夕凪の姉さんとの間のものだけだけど。
 だから、俺にとっては……
 どっちだって欠けがたいもんなんだよ」

それは。
幼馴染三人の誰一人、
何一つ手放す勇気を持てなかったのと同じで。

今まで何かを支えてきた人が居るなら、
今度はそれになりたがったっていいはずだ。

どうせここが夢なんだとしたら。
夢みたいな話をしたって構わないだろう。
そしてその夢を現実にするために、
少しばかり頑張ってしまうのが男という生き物なんだ。
大切な誰かの夢を叶えてほしいから、
方法を迷わないのが、男なんだ。

そうだろう――夜凪の旦那。俺たちやっぱ、似てるかもな。
(34) 2021/08/21(Sat) 0:18:55

【人】 夜を越えて 編笠

>>33 夕凪
たち

「『夢から覚めたら、―――』
 今度はちゃんと、俺たちの話を紡ごう。
 ……10年待たせたんだ、もう少しだけ待ってくれよ。
 泣きながらでも、笑いながらでもいいから。
 ただその涙を拭ったり、一緒に笑えるように。
 必ず追いつくから」

だからもう少し、だけそこで待っててくれ 夜凪の旦那。
今度は、夕凪の姉さんに救われた俺が、救う番だから。

「じゃあ、ちょっと行ってくる。
 まあ、あんまり得意じゃない料理でも作って
 待っててくれるかい。
 ……ここでやらなきゃならねえことが、まだあってさ」
(35) 2021/08/21(Sat) 0:20:47

【人】 茜差す方へ 編笠

言いながら、自転車に跨った。
もう、後ろは振りむかない。
後ろに置いていくんじゃない、前に迎えに行くために。

だから、ここでは、さよならしなきゃな。

少年の残滓を置いていくようにして、
自転車のペダルに足を置いた。

「さあ、伝えてくるか。
 ――今度は、俺の番だ、アカネ」

世界の何処にいたって一番最初にはきっと、
お前を見つけてやる。何回でも。何十回でも。
そう思いながら、自転車に跨った。

お前のことが好きだと。
今どこにいても伝えにいってやるからな――。
(36) 2021/08/21(Sat) 0:23:11