人狼物語 三日月国


54 【半再演RP】異世界温泉物語【R18】

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【人】 きっと教育係 キネレト



 ……へ?


[我儘? だったか??
何が? どこが?? 具体的にどの辺りが???

尋ね返す音を発した半開きのまま
ぽかんと口を開けた間抜けな顔になってしまう。
君の言葉の意味を理解するのに数秒かかった。

ぱちぱち、瞬いて君へと視線を向ければ
君は君で不思議そうに首を捻っている。>>2:102
その様子から察するに、
本気で我儘を言ったつもりでいるらしい。

なるほど。そうか。ふむ。そうか…………
ううむと顎を摩って首を捻ってしまったのは、
君の真似をしようとしてやったわけじゃない。
自分でも無意識のうちに
自然と君から移ってしまった癖だ。]


 ……?
 ………………???


[尚も暫く考え込んでいたのだけれど、]
(7) 2021/01/03(Sun) 19:30:24

【人】 きっと教育係 キネレト



 …………あぁ。


[続いた言葉ですっと腑に落ちた。
君はそういう人だった。
望まれて言われるがままになる僕ではなく、
ありのままの僕を尊重して受け止めてくれようとする人だった。

無理に合わせようとしなくたって
自然と歩調を合わせて寄り添ってくれる。
君はきっと僕以外の人間にも
同じように相手を尊重して接するのだろうけれど、
そういう君だから、僕は好きになったのだった。]


 …………、ふふ。


[二の句が継げなかった。
自分でも知らなかった自分に気付かされるようで。
子供たちを諭すことはあっても、
自分が言い聞かされるようなことは思えば殆どなかった。

それだけ努めて聞き分けの良い子供で居た記憶はある。
君の言葉が温かくて、心地良くて
じっくり嚙み締めるように反芻してから口を開いた。]
(8) 2021/01/03(Sun) 19:30:28

【人】 きっと教育係 キネレト


 ……本当に、
 二人で生きるのって難しくて…………面白いね。
 一人で居たらきっと知らないままだったことが
 どんどん見つかる。

 それじゃあ、……お願いしようかな?


[おかわりなら自分で、と言いかけて
湯呑みを手に取り君に差し出す。
お茶を煎れて貰える、ただそれだけのことが
なんだかこそばゆくて小さく微笑んだ。]


 例えば身体に染み付いた習慣であっても、
 変えるべきところは変えていきたいと思ってるんだ。
 自分にとっても良くない自分なら猶の事ね。

 僕はつい手を出したがって、
 君に出来ることは何かないかって
 無意識に探して実行してしまうけれど……
 君が何も出来ない人だと侮ってるわけでも、
 君の気持ちを蔑ろにしたいわけでもない。

 でも僕が先んじて片付けようとする度に、
 君はきっと無力感に苛まれてしまうんだろう?
 君に喜んで欲しくてやっているのに
 君を悲しませてしまうようじゃ本末転倒だよ。
 
(9) 2021/01/03(Sun) 19:30:32

【人】 きっと教育係 キネレト



 今は良くても、そのうちに君に
 煩わしく思われてしまいかねない。
 僕にとって一番辛いのはそちらだからさ。

 
[改めて、そう考えると僕のこれは
傲慢で一方的なお節介の押し売りで自己満足な我儘だ。

君のお世話をさせて貰える自分は
君にとっての特別なのだと承認欲求を満たして、
君がそれを望んで喜んでくれるって幻想を見ている。]


 君も薄々気付いていると思うけれど……僕は、
 突っぱねても構わないっていう選択肢が
 自分では思い浮かばない程度に、
 周囲に合わせて生きるのに慣れきってしまっててね。


[それが短い人生の中で学んだ、
自分を護れる一番楽な処世術だったから。

合うものも合わないものも人前では全部呑み込んで
顔色を窺って、『正解』を探して、
それでも決められない事柄は全部神様に丸投げしてきた。

けれど君には、僕は自分の意志で納得して
ちゃんと希望を伝えられているような気がしているんだ。]
(10) 2021/01/03(Sun) 19:30:36

【人】 きっと教育係 キネレト



 こう話した後だと
 君に合わせて言っているみたいに聴こえてしまいそうだが……
 君の杞憂は的を射ている。

 まだ大丈夫、まだいける、って知らぬ間に度を過ぎて
 身体を壊して一歩も動けなくなったこともあるし、
 何年かに一度は自分でも訳の分からない激情に
 呑み込まれて暴発してしまうんだ。
 みっともない姿を晒してしまう前に君が止めてくれ。

 ただ、自分を大切にする方法さえわかっていないから
 どうすれば君を大事に出来るのかもわからなくて……
 ……君はどんなときに、大事にされていると感じる?


[こんな話を誰かにしたのは初めてじゃないだろうか。
煎れて貰ったお茶を啜って喉を潤してから、]


 僕は、君が僕を大事にする方法を模索してくれてるって
 それを知れただけでとても幸せに感じるよ。

 
(11) 2021/01/03(Sun) 19:31:05

【人】 きっと教育係 キネレト



 ……なんて大真面目に
また長々と
語ってしまったけれど
 僕はこういう真面目な話を君とするのは好きだ。
 君とのより良い将来について考えるのは
 むしろ楽しいことだしね。

 ああ、もちろん
 もっとどうでもいいような
 明日には忘れてそうな馬鹿馬鹿しい話も
 いつでもしたいと思ってるよ。君となら。


[君との会話が心地良く感じられるのは、
君が僕と話すことを楽しんでくれていて
僕を理解しようとしてくれているのが
伝わってくるからなんだろう。

知っての通り僕はつい生真面目に受け止めてしまうけれど
君は疲れさせてしまわなかったかな?
そうだ。これは反省会じゃなくて慰労会だった。

ゆっくり落としどころを見つけていきたいな。
もうじき年も変わるしね。

「君には敵わないなぁ」

声には出さず微笑み返すことで、話題を一旦切り上げた。]*
(12) 2021/01/03(Sun) 19:31:33

【人】 きっと教育係 キネレト



 そうか……
 彼らしか知らない勝手や作法もあるかもしれないね。
 却って邪魔をしてしまうかもしれないな。
 大人しくしておくことにするよ。


[もてなしのプロに張り合っても勝てる気もしない。
もう冷蔵庫や金庫や非常口の確認とか
夕食朝食の時刻チェックとかしか思い付かない。
そしてそれは別に僕が率先してやらなくとも、
君にだって一瞬で確認出来ることだ。
借りてきた猫のようにしゅんと肩を落とした。

手持ち無沙汰になって、ゆっくりとお茶を啜る。
人に煎れてもらったお茶って
こんなに美味しいものだったっけ。

君が煎れてくれたお茶だからかな。
なんだか泣いてしまいそうになって、
外の雪を眺める振りをして誤魔化そうとした。のに。]
(13) 2021/01/03(Sun) 19:39:01

【人】 きっと教育係 キネレト



 夢見がちなのは僕も同じさ。
 ……今、ひとつ我儘を思い付いた。

 10秒で良いから君の胸を貸しておくれ。王子様。


[君は本当に、
本当に感情を言葉にするのが上手い。
君自身の気持ちは勿論、時には
僕自身が言葉に表せないような想いまで
的確に掬い上げてくれてしまう。

返したい言葉が喉奥に張り付いて、
嗚咽になってしまって言葉にならない。
自分でもよくわからないんだが
君とともに過ごすようになってから、
多分僕は随分と泣き虫になってしまった。
なんだか子守りをさせているみたいで申し訳ない。

でも君だって悪いぞ。
君が底抜けに優しいから甘えてしまうんだ僕は。]


 僕だって、
 ……大好きな君を大切にしたいだけなんだ。
 僕が大切な限り治らない病なら、諦めるから
 君も諦めてどうか一生患ったままで居てくれ。
 
(14) 2021/01/03(Sun) 19:39:10

【人】 きっと教育係 キネレト

[君に畳の端から端まで転がされている気分では居ても、
君を転がせている自信はあまりない。
君は感情を言葉にするのと同じくらいに、
それを澄ました顔で包み隠すのも上手いから。

今脱がせたい場合を訊かれたとしても
きっと同じ答えを返していただろうけれど、
君の問いは飽くまでも浴衣姿限定だったから
言及するのはやめておいた。
余分な墓穴を掘ってしまえば
いよいよ羞恥心に耐えられなくなりそうで。

浴衣を着た君もさぞかし格好良いんだろうな、と
誤魔化すように少し冷めたお茶を啜りきった。]*
(15) 2021/01/03(Sun) 19:39:21

【人】 きっと教育係 キネレト

[ほう。君もそんな顔をするんだなぁ。
貴重な一面を垣間見れた気がしたのは一瞬のことだった。
少し残念だなんて思ってしまって、
僕を揶揄う君の気持ちが少しわかった気がした。]


 なんでもはできないよ。流石に。
 でも君の役に立てて嬉しい。

 カウンターに座っているのだって
 ただ座っているだけではないだろう?
 手続きやら取り寄せやら相談やら……

 ……なるほど。その発想はなかったな。
 人手は年中足りていないが
 かといって気軽に雇えるほど潤ってもいないから……


[どうやって、と尋ねるより先に寄付の申し出だ。
やっぱり君が神様なんじゃないか??

思いきりが良いというか、時々こうやって
僕の予想を遥かに超えた発言をしてくることがある。
まさかその上を行く教会ごとどうにかする案が
ちらっとでも彼の中にあるとは知らなかったが、]
(16) 2021/01/03(Sun) 20:04:45

【人】 きっと教育係 キネレト



 忙しい期間に臨時で雇えるだけでも
 かなり助かると思うよ。
 ありがとう、無理のない範囲で頼む。


[子供たちにとっても、先生役は一人でも多い方が安心だろう。
実現されるかどうかは別として、それだけ
僕と過ごす時間を熱望してくれることは素直に嬉しい。
遠慮するのも野暮だなとお言葉に甘えることにして。]


 うん、行こう。
 折角来たんだからさ。


[君が玩具のあひるちゃんにまで
妬いてくれているとは微塵も気付かない。
厳選したスタメンあひるちゃん6匹を携えて
改めて君の手を取った。

ところで、何か忘れている気がする。
とても大切な何かを。
そう思ったけれどそれが何だか思い出せないままに
露天風呂へと続く回廊を歩み出す。]
(17) 2021/01/03(Sun) 20:04:52

【人】 きっと教育係 キネレト



 …………
忘れないでね。



[改めて口にすれば己の大胆さに火が出そうだ。
僕は君に内緒で言ったのに。内緒で言ったのに!!


脈が上がったのも繋いだ手から
容易に伝わってしまいそうで、
露天風呂に入る前からなんだか眩暈がしてきた。
こんな調子でだいじょうぶなんだろうか。
ただ、神様に止められようと君を拒むことはないと
言葉にする代わりに君の手をしっかり握っておく。

ぺたぺたと二人分の足音を並べて進んでゆけば、
湯気に包まれた屋根付きの露天風呂が姿を現す。
隣の君へと視線を上げれば──あ。これは見えないやつだ。
眼鏡ケースを取りに戻る君に一緒に着いていき
若干の歩数を余分に稼ぐことで、
一先ず平静を取り戻せるだけの落ち着きを得た。]


 洗うのは入浴の前……かなぁ? 後かな?
 どうなんだろうねその辺。
 
 でも確かにな、
 先だと洗っている最中に凍えてしまいそうだ。
 温泉って奥が深いねぇ。
 
(18) 2021/01/03(Sun) 20:05:42

【人】 きっと教育係 キネレト

[言いながらヴェールを脱ぎ、上着を脱いで畳む。
胸元を飾る紅い布を引き抜き、
ブラウスの釦をひとつひとつ外して
ぱさりと小さな音を立てて肩から落とそ……
……うとしたところで、
隣から積もる雪をも溶かしてしまいそうな熱い視線を感じた。

ちら、と君の様子を窺えば、明らかに此方を見ている。
折角落ち着けた熱をぶり返してしまいながら、
一旦脱ぐのを止めて君の服の裾をちょんと引いた。
お兄さん、お兄さん。手が止まってますよ。]


 じゃあ…………
 脱がし合いっこするかい?
 
 ただ脱がし合うだけで、
 続きはお布団までおあずけだよ……?


[冗談だ。ちょっと言ってみた(かった)だけだ。
その証拠に、項を不意に撫でられただけで
肩が少し跳ねてしまった。

君の手でネックレスとピアスが外されて漸く
忘れていたものを思い出す。宝石箱だ。
あまりにしっくりと身に馴染みすぎていて
外さねばならないことも忘れかけていた。]
(19) 2021/01/03(Sun) 20:06:05

【人】 きっと教育係 キネレト

[君の眼鏡と一緒にケースに仕舞い込まれる
ネックレスとピアスを安心して見守って。
君にありがとうと礼を述べて残りの服を脱ぎ始める。]


 靴を脱ぐのに気恥しさを感じたことはなかったなぁ。
 普段見せないものだからかな? 破廉恥……?

 でも外が見えているのに裸になるのは
 僕も新鮮な感じだな……
 家や教会のお風呂に比べると凄く心許ないよね。

 おもしろい。そうかも。
 あまり大きな声で話していると
 周りにも響いてしまうかな?


[雪が音を吸って、ここだけで声は留まるかもしれないが。
仕事で子供たちをお風呂に入れたりもする手前
あまり気にしない面はあるかもしれない。

尤も、好きな人の前でもそうかと言われれば
必ずしもそうじゃないしなんなら
誰の人気もない外で裸になるより恥ずかしいかもしれない。
それでも順調に最後の一枚を脱ぎ終わって、
6匹のあひるちゃんたちと
薄っぺらい小さなタオルを一枚だけ手に持った。
貧相な身体なのが申し訳ないがこればかりは致し方あるまい。]
(20) 2021/01/03(Sun) 20:08:00

【人】 きっと教育係 キネレト

[さむい。脱衣所でもう寒い。
君だって寒いだろう。お互い素っ裸だし。
僕らは可及的速やかに湯船に浸かるべきだ。
さ、行こう! そう視線で促して
扉を開く君を見守っていると、

……あれ? 出ないの??

高速で閉じられた扉と彼に小首を傾げた。
うん? なんだい?
なんだか信じられないものを見るような目をしているね??

思わず躊躇うほど外は寒いんだろうか。いやそうか。
結構な量の雪積もってるもんな。
ゆきだるまもかまくらも余裕で作れそうなくらいの。
ヒートショック、なんて単語が薄っすら頭を過ぎって
ぶんぶん首を振った。
折角の夫婦水入らずの旅行で君に万が一の事があろうものなら
僕は泣くどころじゃ済まない。]


 寒かったかい……?
 じゃあ、……お先に…………?


[譲られた場所へ踏み出して扉を開きさあ一歩、
表に出た瞬間思わず『
さっむ!!!
』と本音が飛び出した。
59秒だけ君が一緒に出て来てくれるのを扉を抑えて待ち、
耐え兼ねて風呂桶を引っ掴んで湯船に駆け寄ると
汲んだお湯を自分に掛けて──……]
(21) 2021/01/03(Sun) 20:08:23

【人】 きっと教育係 キネレト



 
あっつ…………!!



[え、熱い。熱いよ??
お湯めちゃめちゃ熱いよ? 家の比じゃないよ??
即飛び込みたかったのにこれじゃ飛び込めない。
先に放り込んだあひるちゃんたちも
心なしか既に茹だって見えるよ???

一気に行ったらしぬ。
慣れている人なら平気なんだろうなこれ。
結果、恥を忍んでおそるおそるつま先から少しずつ
身体を慣らすように湯船に身を沈めていくことになった。]
(22) 2021/01/03(Sun) 20:09:23

【人】 きっと教育係 キネレト

[けれどなんとか胸元までお湯に沈める頃には、]


 ほぁ………………


[熱いと冷たいのコラボレーションはなるほど新鮮で
驚くほど気持ちいいと感じられるようになっていた。

なんだこれ。癖になりそう。
6匹のあひるちゃんたちと戯れながら
おいでおいで、と君に向かって手を振った。]
(23) 2021/01/03(Sun) 20:09:55
―― アルバイトの理由 ――

 ごめんお姉ちゃんそろそろ行かなきゃ。

[ え〜やだやだもっと遊ぶと、見事な甘ったれに
 育った妹は不満そうな顔をするけれど。 ]

 良い子で待ってて。
 お土産に柚理の好きなアイス、買ってくるからね。

[ わかったとニッコリする辺り、血の繋がりを感じる。
 とても、現金。そっくり。
可愛い。


 父と妹にいってきます、と言って家を出る。
 向かう先は父のよく知る蕎麦屋さん。

 アルバイトを始めるに辺り、父とした約束は三つ。

 土日祝日のみ、夜八時までに家に帰れるようにすること。
 成績を大きく落とさないこと。
 決して無理はしないこと。

 母は、欲しいものもあるんだろうし好きにしなさい
 とだけ言った。

 それから私は約束を守って、アルバイトに行っている。
 お昼少し前に蕎麦屋に到着すると仕込みのお手伝いをし、
 19時には仕事を終えて帰路へつく。 ]

 天ざる、おまたせしました。
 お茶のおかわりご用意しますか?

[ ふた月もすれば、仕事はある程度身についたし
 女将さんも大将も、同僚も、そしてお客さんもとても
 良くしてくれた。

 家に居ると、否が応でも妹にひっつかれるし、
 ――嫌ではないんだけれど。
 母があれこれと私にさせるものだから、
 息が詰まる時もあった。

 それに気づいていたからこそ、父はアルバイトを
 許可してくれたのだろう。 ]

 はーい、ただ今参ります!

[ 呼ばれて駆けつけると、いつぞやに
 おじさん、と呼んでしまった客が居た。
 
 あのときのことは誠心誠意謝ったし、
 向こうが気にしていないようで、
 時たま雑談することもあるくらいだから ]

 今日はどうしますか?
 いつもの南蛮蕎麦ですか?

[ 気さくに問いかけると、うん、と返事をくれる。
 ――尚、まだ20代らしい彼曰く、妹のように
 思っているだそうで。 ]

「真里ちゃん毎週いるよねぇ、そんなに働いて……
 なにか欲しいものでもあるの?」

[ そう聞かれた時に、迷わず ]

 会いたい人がいるんです、少し遠いので
 旅費と、もうすぐ誕生日なので、
 驚かせたいんです。

[ そう言った。その時はそっかぁ頑張って、とだけ
 言われたので、はいと元気よく頷いた。

 ――このお客様が後程、女将さんから
 なにやら忠告されていたということは、
 私は知らないし、これからも知ることはないだろう。 ]

 う〜〜ん………

[ 二十代後半の男性が、欲しいと思う
 大事にしてもらえるようなもの。
 
 なんだろうと考えて考えて考えても、
 答えは出てこない。

 リサーチしようにも、相手に心当たりもなく。

 雑貨屋、服屋、楽器店、気になる所には
 手当り次第入ってみたけど、これといって
 気になるものもなく。

 アルバイトをして得たお給料は、
 ときどき、妹にプリンやアイスを買ってあげる
 くらいで他には使ってないから、蓄えはあるけども。 ]

 あんまり、高価なものにすると気を遣わせそうだし
 かと言って安っぽいのも、やだな。

[ 親身になってくれた店員さん達、ごめんなさい。
 決めかねてしまって。大きな大きなため息をついた時、
 小さな子供が足にどすんとぶつかってきた。 ]

 わっ、ごめん、前みてなくて
 怪我してない?

[ 子供は風の子とはよく言ったもので、
 小さな男の子は、へーーーきぃーーと言って
 またぴゅんと風になって消えていく。
 
 その後ろ姿を見た時、 ]

 ――これだ!

[ ふわふわもこもこのファーコートを着ていた
 その男の子を見て、思い出した。

 兄は寒がりだったし、あまり家から出ない。
 だからこれしかない、って。

 それから家に帰って、タブレットで
 あれこれ素材やら吟味し、選び取ったのは
 "肩のこらない""でもとてもあったかい"
 黒のロングガウン、着る毛布。

 本当は、カシミヤのほうが手触りが良さそう
 だったけれど、気兼ねなく受け取ってもらえる
 値段のものをチェックし、翌週には実物を見に
 生活雑貨店へ行き、即購入。

 当日には間に合わなかったけれど、
 翌々日くらいにはきっと届くだろう。

 時間指定はなく、メッセージカードはつけず
 手紙だけ、同封した。

 やたらとうきうきしていたものだから
 誰かへのプレゼントですか、とコンビニの
 お姉さんに聞かれてしまったの、
 少し恥ずかしいけれど、きっと私は誰かに
 言いたかったから、 ]

 兄です、誕生日なので――……

[ そう答えて、荷物をお姉さんに預けた。
 どうか、寒がりな貴方を、あたためてくれますように。
 喜んでくれますように、と願いながら。* ]

        
悔恨

 ―とある少年のXX―


[幾度となく説得を試みたものの、
 母からの返答は芳しく無く、
 おざなりに生返事をよこすだけだった。

 話しにくいのならば自分から話すと伝えたところで、
 それは親の役目と譲らないのでは打つ手がなかった。
 
 ――少しだけ、少しだけ。
 もう会わない人間に割く労力が無駄、と、
 そう思っているような気がして、嫌な想像をしたと首を振る。
 
 こどもだった、と思う。お互いに。
 いっそ、もう少し自分を押し通すだけの幼さがあったなら。

 結果は、違っていたのだろうか。]



 ……あっちについたら、住所を教えて。

[それは、幾ら言っても無駄だと悟る少し手前の悪足掻き。
 ここのところ対話を拒否し続けていた母親が、
 漸くそこで反応を見せた。心底、嫌そうに顔を歪めて。]


 「なにする気? 来なくていいから。
  里心がついたら可哀想でしょ。
  それに、あたらしいパパが出来るのに、
  アンタが居るからって懐かなかったらどうする気?」


 ……は、

[絶句した。
 その言いぐさに、懸念が正しかったことに、そうして、

 やはり、母親にとって、自分は不要な存在だったのだと。]

[自分はどう戦えばよかったのだろうか。
 妹のために、何をしてやれたのだろうか。
 きっと全く手が足りなくて、届いていなくて、
 だからきっと、
 ――きみにとっての、頼れる兄ではなかったね。

 結局ここでも間違えた。
 無理を通してでも、話をするべきだった。]



 「まりかをきらいになったの」

 (まさか、そんなはずがない)


 「いっしょじゃなきゃやだ」

 (おれだっていやだよ、あのひとは"娘"を愛してはいるけど、
  それは"真里花"じゃない、きみを愛してくれない)


 「まりか、おにいちゃんがきらいなとこ
  ぜんぶ、なおすから、――だから!」

 


 兄ちゃんは、世界で一番真里花が好きだよ。 
 これまでも、これからも、ずっとだ。
 嫌いなところなんて、ひとっつもない。

 ほんとうだよ。

[ずっと間違えてきたなら、ここだけは間違えるな。
 なんとしてでも間違えるな。
 
 きみを愛してるよ。
 ずっとずっと、これからも。

 だからきみの頼れる兄であるために、
 虚勢を張ってでも笑って見送るから、
 ――どうかこの笑顔を憶えておいてほしい]