人狼物語 三日月国


203 三月うさぎの不思議なテーブル

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【人】 厨房担当 ゲイザー

[瑞野の『神田さんスペシャル』>>0:360>>0:404を神田から見せびらかされていた時には当然、大咲のうさぎのクッキーのいきさつも何も気づく由はなく。
 その後の『スペシャル』>>2:548>>2:578のサーブだって、電車や空港や飛行機からは覗けていない。
 唯一のヒントはこのところの接客態度くらいになろうが、ムール貝の日>>228>>253はもうちょっと未来の話かもしれない。
 ここ最近、大咲の制服が襟長のシャツに変わっていたことも>>53、装いの微妙な変化にやや鈍感な節のある速崎は、あまり深く気に留めていなかった、けれども。]


( デザート、作れるようになるのに、越したことはないよ。 )


[花を生かすのは水だけではないし、土だけでも、日の光だけでもない。
 真白に写真をくれた人も、母親も、真白を迎え入れた店長や同僚たちも――それこそ自分だって。
 その人の咲みの周りに在る、自分には見えざるものも含めての恵みを思いながら、なかなかは変われない己の事も少し思うのだ。**]
(288) 2023/03/16(Thu) 21:18:47
厨房担当 ゲイザーは、メモを貼った。
(a21) 2023/03/17(Fri) 8:30:03

【人】 厨房担当 ゲイザー

― 隕石落下地に残されていたもの ―

[ある日の晩に、速崎はアパートの自室で未読の内容をチェックする。
 このところの多忙その他で、速崎はサークル仲間たちのトークルーム>>6:3をろくに覗いていなかったが、未読マークが示す件数は、そこそこといったところだ。

 現役生であればこの時期は新歓周りで慌ただしいだろうけれど、巣立った者たちは、それぞれの進路に就きながらも至ってマイペース。
 流星群や蝕に関しての情報や、新たな銀河や小惑星が発見されたニュースを落としたり、国内での星見の名所への誘いを載せてみたり、或いは国外での観測レポートをシェアしたり。
 そして天文学以外での推し語りの場所に困ったメンツがうっかり布教リンクを暴投したり、或いは普通に犬猫の写真を暴投したり……というぐだぐだの場と化していた。]
(408) 2023/03/17(Fri) 11:06:11

【人】 厨房担当 ゲイザー

[未読postの中でも古い方、大分前の日付での「ダビー」からの投稿に目が留まる。]


『すまん。テラ宛てだったやつこっちに誤爆した。
 でも折角だから皆も見てくれると俺とテラが嬉しい。』


[投稿を自分側で削除しても、他のメンバーにはその投稿が表示され続けるトークルーム。
 1to1のチャットに載せる心算だった推し語りをこの場に墜落させたことを示すこの文字列の上に、ふたつのリンクがサムネイル画像付きで貼られている。

 一つ目のリンクは、あのヒットチューンのMV>>1:14>>1:15>>1:16
 その曲自体はもうプレイリストに入れるくらいに聴いていた>1:73>>6:17から、MVをちゃんと見ることもなくスルーした。]
(409) 2023/03/17(Fri) 11:07:19

【人】 厨房担当 ゲイザー

[そして二つ目のリンクの、小さなサムネイル画像の中にみえる顔は>>3:18
 そしてそれ以前に、記事タイトルの中に含まれている名前は>>3:19――。]


  は、?


[――見覚えがある。ある、というより、まさか。
 速崎は何故か妙に緊張した心地で、サムネイルをタップして、その記事の写真と文面に目を落としていく――。]


 ......
Oh dear......



[ステージを切り取った写真の中の「俳優、高野景斗」の顔かたち>>3:21は、確かに、「タカノん」だった。]
(410) 2023/03/17(Fri) 11:08:15

【人】 厨房担当 ゲイザー



  あ…… ( そういえば…… )


[ここでふっと、いつかの神田の言葉とその反応>>1:64>>1:137が脳裏に過るも、この時はまだ記事に意識は釘付け。
 あの「離さない」のMVをきちんと確認して――曲だけなら何遍も聴いていた筈なのに声の主に気付けなかった耳を自覚して「まじかよ」を零すのは、もう少しだけ後のこと。]
(411) 2023/03/17(Fri) 11:09:20

【人】 厨房担当 ゲイザー



( そうだったん、だな。 )


[MVを確かめる前から(レポートにはそのMVの話は見えなかったが>>2:177)あの時の上機嫌>>1:20の訳が、なんとなく分かった気がした。

 “死亡説”すら流れていた中での新生。優等生らしい答えながらも、それでもリスナーへの誠意が確かにあると思える感謝と「よろしく」>>2:347>>3:20
 それでいて、いつかの日の、自分の苦手も、他愛ないことへの努力も否定しない姿>>1:251
 染みついた高慢の棘>>1:409を速崎が零さずに済んだのは(この記事を知らずとも、だが)きっと幸いだったに相違ない。]
(412) 2023/03/17(Fri) 11:09:33

【人】 厨房担当 ゲイザー

[さて、サークル仲間の推し俳優がまさかの常連さんだったという(非常に今更な)驚愕と再認識を得ながら――。

 写真の印象に邪魔されずに、レポートを改めて読み返していく。
 速崎がこの記事を再読できたのは、いつかのグラビア付きの声優特集と異なり、写真の撮り方や載せ方にそこまでの不快感を得なかったから(ライターが高野と対面して実際何を感じていたか>>2:330は、この記事からは覚れない)。
 これは、声だけで勝負する(と速崎は思っている)声優でない俳優は、基本的に顔をさらけ出すのが前提の役者であるから……という認識があった故だろう。]


( 「恋人同士」は言い過ぎじゃね?
    ……いや、「のよう」、か。 )


[幾らか飾られたような言葉を交えながらも、ライターの記す文章は過不足の無い仕事ぶりを示すもの。
 配信ですらその戦隊もの>>0:24>>0:25を見ていなかった人間にも、高野の等身大の一面やファンへの姿勢をきちんと伝えてくれるもの――取材された高野その人が、この記事の前に白旗を挙げたこと>>3:134>>3:135までは知らずとも。
 それでふっと、誰がこれを書いたのか、に興味が向いた訳である。]
(413) 2023/03/17(Fri) 11:10:34

【人】 厨房担当 ゲイザー



    ―――…へ?


[「葉月佑一」。テキストのクレジット表記に確かにそう記載されていた。
 書店の芸能雑誌では、新生後の「高野景斗」の名も写真も見ることがなかったから>>3:136>>3:137、現状の唯一の取材者ですらあるかもしれない、その人の名前。
 葉月が店内にPC作業を持ち込んでいた日>>1:555も、そういえば記憶にあったか――。]


 ハヅキ、さん。 へー。へー。へー…。

 
(414) 2023/03/17(Fri) 11:11:37

【人】 厨房担当 ゲイザー



 ( やるじゃん、ハヅキん。 ってかすごいな!? )


[この時の感嘆は後に、「色々」という語に集約されて栗栖の前に零されることになる>>218
 そんな、あの晩の恋バナよりも少し前の晩に、二つの隕石すごいことが新たに発見されたという話だった。

 ちなみに「ダビー」からの件の投稿には、他のメンバー同様、サムズアップを示すマークを「いいね」機能のように押すだけに留めた。コメントをきちんと残さないこのリアクションはある意味冷淡だったかもしれないが、このサークルメンツではいつものことである。
 当然ながら、自分の勤める『Madam March Hare』にかの高野景斗や葉月佑一が通っていることも、トークルームに洩らすことはなかった。**]
(415) 2023/03/17(Fri) 11:16:05
厨房担当 ゲイザーは、メモを貼った。
(a22) 2023/03/17(Fri) 11:35:25

【人】 厨房担当 ゲイザー

ハギス会
誕生日会とその後日と ―

[あの夜のことをざっと振り返ると――。
 大咲からの「サプライズ」の後、今度は瑞野>>310から――否、「うさぎ」たちから、サプライズを受けた。]


 え、あ……やっべ忘れてた……私が……。
 そ、そっか。ナギー、最初っから、その。
  …………まさかマシロん……おまえもか……。


[今日の夜の閉店後に時間あるかと尋ねられた時点で、察するべきだったイベント。
 今夜の主役として祝われているにも関わらず、非常にばつの悪い顔で暫く狼狽える速崎の姿が、そこにはあったという。]
(429) 2023/03/17(Fri) 16:53:41

【人】 厨房担当 ゲイザー

[Closedの店内の会場で目に留まる、オレンジソースで象られた、ヘッドフォンを被ったうさぎ>>49>>55
 白のプレートに重ねられたそれは、今宵の真白との和解を織り込んでいるとすら示すような、二色の彩。
 「まさか」と呟いたことがまさに事実であると告げるような、巧みにして、暖かな演出。]


  ……ありがと。


[動揺が少し収まってから、眉を下げたままながら、漸くへにゃりと笑うことが出来た。]
(430) 2023/03/17(Fri) 16:56:20

【人】 厨房担当 ゲイザー

[こうして速崎璥は、たくさんのお祝いを貰うことになる。
 会場のテーブルに鎮座するハギスも、オレンジのフランベ>>80も、いつか他愛なく口に出したお祝いの希望の品。
 それに、何時かの「サキサキのクッキー」を思わせる、コーヒー味のアイスボックスクッキーも。
 それらのメニューを前にして――]


 しあわせ、だな。私。


[そんな一言が、ほろっと口から零れる。
 なお当然ながら、この場で食べるハギスが美味しくない訳がない。
誰がなんと言おうと美味しくない訳がないのだ。
]
(431) 2023/03/17(Fri) 16:57:03

【人】 厨房担当 ゲイザー

[ちなみにここ近日中には、「オレンジうさぎ」だけでなく、「ダークレッドうさぎ」と「ピンクうさぎ」のお祝い>>422もまたあったものだった。夜営業中の栗花落の誕生日祝いも含めると、誕生日ラッシュの春というべきか。
 まるであたかも、3月が終わってもなお続く、終わらない3月のお茶会のよう!

 なお、シャミーたこ将軍が指揮する無限たこやき天国は、
天国
だった。
 速崎璥は、体重だとかGI値だとかを特に気にすることなく食べ続け――うっかり渡し損ねていたベイリーズの小瓶を慌てて手渡した、という顛末があったとか。]


 これ、ストレートでもいいんだけどさ。
 コーヒーとかアイスとかに掛けるのが
 私も結構好きなんだよね〜。


[アイルランドの話題で、お酒が美味しそう、と遠藤が言っていたのを踏まえてか否か>>4:238――多分この時の速崎には、お酒の産地についてまでは語る余裕がなかっただろう。]
(432) 2023/03/17(Fri) 16:58:17

【人】 厨房担当 ゲイザー

[自分の誕生日会の時に瑞野から送られた、スターゲイジーパイを少し想起させるいわしのマリネは、パーティの際に食べきってしまったけれど。
 生まれ年のワインの方は今もアパートの自室に置いて、勿体なさ故に封を開けられないままでいる。

 その誕生日パーティから大分経った頃に、瑞野からその話>>312を告げられた。]


 うん?
 そうなんだ、ナギー。


[最初こそ、同僚の新事実を告げられたこと自体には驚けど、それ以外は特に何も気にする素振りなく答えていたのだが]
(433) 2023/03/17(Fri) 16:58:54

【人】 厨房担当 ゲイザー

[「ケイさんが初めてかも」>>313と聞いた時に、はっと気づいたように瞬いた。]


 そっか。
 ……話してくれてありがと、ナギー。


[この時の璥の笑みは、努めて明るく、そして穏やかに。

 自分の在り方のことは、若気の至り(今でも若いが)だとか愚直さの延長で、今でも比較的さらっと喋ってしまうけれど。
 他の人は自分と同じではないのだと、改めて認識して。

 あの夜に葉月が「テンちゃん」のことで告げた予想と想い>>2:275も、ふっと頭に過り――。
 色々とだべってしまった際の栗栖からの「苦労したんだな」>>257の一言は、少なくとも直接は性自認のことに触れるものではなかったし、その人のこれまでの日々>>6:+238>>6:+239をつぶさに語るものでもなかった、けれど。

 そんなことが重なり合って口から出てきた、瑞野への感謝。]
(434) 2023/03/17(Fri) 17:03:14

【人】 厨房担当 ゲイザー



( ……、今の私なら、にぃ次兄にも信頼してもらえるかな。
  でもあんな「言い過ぎる」私見てたら、そりゃ、無理か。 )


[これまで瑞野が聞き手になってくれることに甘えて、ことあるごとにバックヤードで家や地元の田舎について愚痴を零していた。その中には自身の「女じゃないけれど男でもない、はっきりしない、ふわっとした感じ」という性自認の話もあったのだけれど――。
 そんな璥が、瑞野にさえも零さずに口を噤んでいることがある。
 それが、二番目の兄の、おそらく未だに秘密のままの恋。

 仔細は割愛するが、次兄が貰ったラブレターをある切欠で偶然見つけてしまったまま、相手からはその事実をまだ打ち明けられていない、ということ。
 法事で久々に顔を合わせた時>>3:44だって、パンツスーツの璥に対して特に何も打ち明けない、「平常運転」の次兄のままだったのだ。]
(435) 2023/03/17(Fri) 17:05:51

【人】 厨房担当 ゲイザー

[話が自分の家のことに及べば――未だ少し受け入れがたいこと示すように複雑な顔になり。
 それでも、やんわりとした苦笑いと共に、うんと頷きをひとつ返した。]


 大丈夫って信じるのも、なかなか難しいけど……。
 まずこっちから、あの人たちのこと信じなきゃ、
 凝り固まってるものも融けやしない、よな。
 ……もし色々、昔のまんまでダメに終わっても、


[誕生日会の直前に果たされた真白との約束、その時に零したこと>>287に、真白は何と言っていたのだっけ――。]
(436) 2023/03/17(Fri) 17:07:24

【人】 厨房担当 ゲイザー


 ナギーがいてくれるなら、心強いよ。
 店長に雇って貰った時から、私の居場所は
 ここだって思えたけれど――。


[この店にあの履歴書>>0:258を出した時も特に訂正を求めずに採用してくれた御堂のことを添えながら、瑞野が伝えた尊敬に、今度は曇りの無い笑みを向けて、伝える。]


 大分今更かもしれないけど――、
 何かあったら、私も、ナギーの側に立つさ。
 散々愚痴聞いて貰ったりしたお返し……もあるけど、
 それ以前にうちの仲間として、ひとりの人間として、ね。
 
(437) 2023/03/17(Fri) 17:09:11

【人】 厨房担当 ゲイザー

[ところで璥はこの時も、瑞野が付き合っている男性が誰なのかを問うことはなかった。仮に相手が女性であったとしても、問わなかった。

 葉月が手掛けた記事>>3:19の中で、高野とファンの「恋人同士のよう」な繋がりが記されてはいたけれど。
 その高野にいま、本当に、恋人になった人がいること――目の前の瑞野こそがその人なのだとは、この時の速崎は全く想像していなかった。]
(438) 2023/03/17(Fri) 17:14:50

【人】 厨房担当 ゲイザー

さて、あの夜栗栖が、自分なら「大丈夫」と保証してくれたこと>>259。笑って言い切ったその言葉は、偉そうな響きで、けれどどこか祈りにも似ていて――。
 経済状況こそ違えども、不思議と『出来過ぎ』てしまった同士>>258からの、その祈りを思い起こしながら。]


 うん、大丈夫。信じる。


[栗栖の目を見て、ちゃんと笑って口にできたその言葉を。
 ここで飛ばされた主語には、「私は」のみならず「うちの家は」も含めて――。

 瑞野の前でも、今一度、自分を奮わすように口にしていた。**]
(439) 2023/03/17(Fri) 17:18:56

【人】 厨房担当 ゲイザー

― 夏の夜の夢でも、盗まれたタルトの裁判でもなく ―

[多分それは、藤の花も散ってしまった頃の。
 けれども梅雨の湿り気も盛夏の苛烈さもない、からっとした暑さが大気を占める日の夜のこと。]
(447) 2023/03/17(Fri) 18:46:01

【人】 厨房担当 ゲイザー

[未だ寒さ残る頃に、ゲイザーが挙げていた「ハートの女王のタルト」>>0:54
 あの神田ですら知らなかった>>0:138このタルトは、去年の夏前ごろに企画として考えてはいたものの、諸般の事情により没になったデザートメニューだった。主に味付けに難航して。
 以前に別の客からちらっと話に挙げられた覚えがあった所為か、常連の神田に対してもついこう言ってしまっていたのだが――。

 この没タルトの制作と販売は、この夏になって漸く叶う。
 フィリングのクリームチーズの控えめな甘さの中に、粗挽きの黒胡椒がピリっと効いた、スイーツというよりはおつまみ的なタルト。
 そのフィリングは真っ黒に見えるが――全部黒胡椒、ということはないのでご心配なく。ただ「ほとんど胡椒」に見えるように、竹炭パウダーでクリームチーズを着色しているだけである。

 タルト生地とチーズに含める糖蜜と、黒胡椒のバランスを如何するか……という相談をフィエに、そして大咲に持ちかけて。
 試行錯誤の末に、「ハートの女王」ならぬ店長からも漸くお墨付きがついた一品である。]
(448) 2023/03/17(Fri) 18:47:06

【人】 厨房担当 ゲイザー



 アンジー、お待たせしちゃいました〜!
 こちら、ハートの女王のタルト、
 ウィスキーのお供にしちゃってくださいねん。


[タルトの上からラズベリーソースでハート模様を描いた皿を、以前にも二人連れでこの店を訪れたそのお客様>>6:26に、いつも通りの笑顔でサーブ。
 「ありがとう」を告げるハスキーボイスに、「スーパーゲイザー」な速崎もにっこり。

 その後、タルトの皿を下げてもらうために呼び止められたのは、フロアのフィエでも嘉数でもなく――再び、速崎だった。
 この時丁度手が空いていたこともあり、速崎は特に何の疑問もなく、「アンジー」ことアンジュが座るカウンター端へと向かったのだが――。]
(449) 2023/03/17(Fri) 18:48:03

【人】 厨房担当 ゲイザー



「あの、ゲイザーさん、……ケイ、さん。」


[アンジュの声が小声になり、速崎はその小声を聞き拾おうと顔を近づける。
 やがて相手が、幾らかの逡巡の素振りを挟んでから、その話を切り出した。]


 「あたしのこと、……オレの、こと。
           覚えて、ます、か。」


[囁くハスキーボイスの声調は、幾らか、低いトーンに変調する。
 それと共に何故か変化した一人称に、速崎はぱちぱちと瞬くも。
 何かそういう気分なのかな、程度にしかこの時は捉えず]


 ――…もっちろん! ムール貝と蛤の日に
 リリやんと一緒に来てくれましたよね。
 ばっちり覚えてますよ〜。


「そ、そうじゃなくて。その……」
 
(450) 2023/03/17(Fri) 18:49:06

【人】 厨房担当 ゲイザー



  「 XXXX高の、天岩。
    天岩テンガン安樹ヤスキ、です。オレ。 」



 ―――――へ?
 
(451) 2023/03/17(Fri) 18:49:58

【人】 厨房担当 ゲイザー

[春先の来店時と同じテイストの、身体のラインを見せないふわっとした装いとウェーブヘアーからは、その人なのだとは全く分からなかった。
 ただ、その名を間近に告げられて、漸く――。
 化粧越しの目じりや鼻筋、顎の面影。
 ハスキーボイスの声の中のクセ。
 そうしたものが、過去のその人の記憶>>1:430>>1:431>>1:432>>1:433と一致する。]


  テン、ちゃん?


「流石に、判んなかった、ですよね……。
 すみません、驚かせて、その。
  ……その。 オレ、迷惑、だった、かな。」


[初来店の夜にまるで気づくこともなければ、この時打ち明けられたことも不意打ち。
 今から思えば、ぱちぱちと瞬いていたその時点で、その人は既に「ケイさん」に気づいていたのだろう(「ゲイザー」のあだ名も、料理部の頃からそのままだった)。
 まさかの邂逅――再会に、カウンターの前で暫く思考停止していた。]
(452) 2023/03/17(Fri) 18:51:13

【人】 厨房担当 ゲイザー

[アンジュ――「テンちゃん」は璥のこの無言を前に、同じように言葉を見失ってか、黙って俯いてしまったけれど。
 ややあって、璥は漸く、その一言を絞り出した。]


 ごめん。テンちゃん。
 あの時、何にも話、聞かないで、
 教室に置き去りになんかして。


[相手の戸惑いと逡巡を挟んでのこの謝罪は、葉月のような「開口一番」よりも、勇敢さに欠けていたかもしれない、けれど。]


 私はそういう性質だから、なんて言い訳はしない。
 テンちゃんバッサリ切り捨てて、一方的に
 距離取って、別れて……傷つけた。


[実際のところ、どちらから「なんとなく」>>1:433距離を置いてしまったのかは判らないけれど、それでも。
 春先の失態を鑑みて、それこそ『出来過ぎ』な平静を保とうと努めながら――。]
(453) 2023/03/17(Fri) 18:52:15

【人】 厨房担当 ゲイザー

[璥が言葉を止めてから少しして、「テンちゃん」が、躊躇いを苦笑いに崩して、口を開いた。]


「嬉しかったよ、オレは。
 ケイさんが、オレと付き合えない理由、
 はっきり言ってくれたこと。
 それに――…
女の子じゃないってこと、

 オレになら言ってもいいって思ってくれた、こと。」


  ………、……そう、だったん、だ。


[今以上に尖っていたあの当時の璥は、おそらく、天岩安樹という人に「信頼ゆえに」己のことをしゃべった訳ではなかった。
 ともすれば未成年特有の自己主張とも曲解されてしまうような、そんな愚直さ。
 それでも、「テンちゃん」は信頼>>434からの「嬉しかった」をここで伝えたのだと、璥は認識する。]
(454) 2023/03/17(Fri) 18:53:23

【人】 厨房担当 ゲイザー

[それから小声で、あの当時の話が告げられる。
 あの当時の天岩の立場と知識では「一人の女の子として」>>1:432としか言い様が無かった、ということ。
 天岩もまた、速崎を傷つけていたのではと思いながらも、謝罪にまで踏み込めず距離を作ってしまっていたこと。
 そんな心残りを抱えたまま、上京してからの生活に追われるうちに、昔の想いも曖昧になってしまったということ。
 下手したら上京タイミングは同時だったかもしれないが、そのことも互いに知らないまま!]



「だからその、……オレこそ、ごめん。
 でも、この店でケイさんと会えて――。
 大分悩んだけど、一言だけでも、謝りたかったんだ。」


  ……なんか、お互い様、だな。
  うん。謝るのはお互い様、ってことで。いいよ。


[今は営業中だ。泣いたりはしない。泣いたりは――。
 それでも目頭が熱くなることくらいは、許されるだろうか。]
(455) 2023/03/17(Fri) 18:55:26

【人】 厨房担当 ゲイザー


「それで、さ。
 ケイさんが、迷惑じゃなかったら。
 また『Madam March Hare』、来てもいいかな。」


 勿論だよ、テンちゃん。
 お一人様でも、リリやんやお友達連れでも。
 私もみんなも歓迎しちゃうぜい。
ね?



[「ね?」なんて、ふたりの間のひそひそ話を聞き拾えてもいないだろうスタッフたちに突然振る辺りが速崎である。
 そう、一旦謎の同意を店内に求めたところで――璥はひとつ、「テンちゃん」に小声で言い添える。]
(456) 2023/03/17(Fri) 18:56:06