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【人】 未来へ 竹村茜「……アキラ」 境内の裏、少女は懐かしい出来事を思い出すような 村に響く音を聞いていた。 あの頃は馬鹿な言葉を叫んではこっぴどく叱られたっけ。 「馬鹿だなあ、それじゃあ皆に聞かせてるみたいじゃん。 男らしいってそういうことじゃないでしょ」 耳に届いた声は、夏の隙間を通り抜けて、さわやかな一陣の風のように頬を撫で。 少女は嬉しさと照れくさい気持ちで、胸がいっぱいになる。 ▽ (14) 2021/08/18(Wed) 17:01:00 |
【人】 未来へ 竹村茜「……ありがと」 境内の裏から姿を見せた少女は、晴れやかに笑って。 「でも、その言葉……ちゃんと、会えた時にもう一度聞かせてよね。 それで、皆の事探して―――今度こそ、"また会えたね"って言って、話をしよう。 あたしも、手伝うから」 不器用で、こうするまで人に頼ることすらも出来なかった幼馴染に。 手を差し伸べて、笑う。 きっと見つけて、この手を取ってくれると信じられる。 また皆で。そして、貴方と一緒に未来を見たいから。 (15) 2021/08/18(Wed) 17:02:02 |
【人】 編笠>>15 アカネ 少しだけ視線を逸らして、頬を掻いた。 卯波が踏み出し、アオが踏み出し、 アカネが目の前にいる。 「皆知ってるだろ、馬鹿なんだよ多分。 だから、また馬鹿だなって笑ってほしいんだ。 ……ここにいる俺は、 村のどこにいたって聞こえる声しか出せなかったけど、 世界のどこにいたって、また声を伝えようって思うから」 だからこれは、告白ではなく宣言だ。 今から何百回、何千回と繰り返し伝える言葉の、 覚えていないかもしれない最初の一回だ。 一番恥ずかしい思いをさせたら、 もしかしたら永遠に残るかもしれない。 その胸の高鳴りを抱いたまま、 いつか俺が来るのを待っていてほしい。 同じ空が続く、世界のどこかで。 ▼ (16) 2021/08/18(Wed) 21:35:15 |
【人】 編笠>>15 アカネ 「ああ……任せろ。 どこにいたって、どんな姿をしてたって。 必ず見つけてやるから。 自転車の後ろに乗せるから、皆に会いに行こう」 手を取る。差し伸べられた手を握ると。 そこには10年前に欲しかった温もりがあった。 「……ごめんな、アカネ。 俺はお前を、 卯波を、青嵐を。 永遠に夢みたいな楽園にいさせてやりたかった。 これは、掛け値なしに本当の気持ちだった。 でも、どうやらそれは無理みたいだから――」 だから。 「――お前のいる"現実"を、 夢みたいな場所にすることにした。 今度は、諦めたりしねえから。 ……アカネが味方なら、百人力だしな」 ▼ (17) 2021/08/18(Wed) 21:36:45 |
【人】 過去から 編笠>>15 アカネ ばあちゃんみたいに、全員を一気に集めるとかできないから。 だから俺は、一つずつ繋いでいく。 糸を編むように、繋げていく。 出来るかなんてわからない。何年かかるかもわからないし、 その間にほどけて行くものがあったとしても、それでも。 それが今の俺に出来る、精一杯の感謝と謝罪だ。 握ったアカネの手を引き、相手の背中を抱いて。 その耳元に頬を寄せ――。 ……静かに、今度はアカネにしか聞こえない声で囁いた。 「―― だから"未来"で待っててくれ 。"10年前"から、一気に自転車ぶっ飛ばして。 必ずお前に「好きだ」って言いに行くから 」だから今は、少しだけお別れだ。 青く、青く澄んだ空の下で。 伝えられなかった言葉を、静かに伝えた。 誰かが、微笑んでくれているのを感じながら。 (18) 2021/08/18(Wed) 21:40:07 |
【人】 未来へ 竹村茜>>18 アキラ あの頃触れなかった手は、ずっと大きくて温もりがあった。 夏の暑さとは別に、握った手が熱を持って存在を主張する。 「あたしだって、そうだったんだよ。 婆ちゃんがいるこの夢にずっといたいって思ってた。 そうあれば幸せだって信じてた。 だけど、アキラの言う通りそれは叶わない 泡のような夢でさ」 それでも。 「"忘れてきたもの"が、あたしを―――皆を、前に向かせてくれたんだ。 アキラや卯波、シュン達と未来に行きたい。 そして、婆ちゃんに『あたしも負けないくらいオシャレになったよ』って報告したいから」 夢も叶えたよって。ずっと話せなかった分、目いっぱい。 ▽ (19) 2021/08/18(Wed) 23:53:14 |
【人】 未来へ 竹村茜「……うん、うん。 待ってるよ、皆より一足早く辿り着いたところに、あたしはいるから。 だから、今度こそ――― 男らしいところ、ちゃんと見せてよね 」くすぐったいような、耳元の声に頷いて。 そのまま、こつんと額をくっつける。密着した顔が、熱くて仕方ないけれど。 あの時のように、悪戯っ子のような笑みを浮かべていた。 それ以上は、"未来"までお預けだ。 大丈夫、もう10年待つ事はないんだから。 待ってるよ、同じ空の下で。 (20) 2021/08/18(Wed) 23:57:52 |
竹村茜は、未来で待っている。 (a10) 2021/08/19(Thu) 13:28:28 |
【人】 君ぞ来まさぬ 百千鳥>>@3 >>@4 夜長 【祭りの終わり】 「そうだね」 夢を見せるなら、最後まで騙していてくれたらよかったのに。 この夢も、この祭りも なまじ楽しいと思ってしまえるから、 尚の事終わりが来る事の寂しさが募る。 この夢の終わりを感じ始めてから、何度も思った事。 「うん、夢を見せ続けてくれないなら、初めから。 皆には、きっとこの夢が終わっても会いに行けるよ。 でも、僕が本当にこの場所で会いたかった人には 夢から覚めたら、何処に行っても、もう会えないから。」 思い出の中にしか居ない人には、思い出の中でしか会えない。 見ないふりをしていた事実を改めて、喪失感が蘇って行く。 どうにもならない想いを抱えて、それでもと言葉を継いだ。 「でも、この夢で 皆と過ごした時間が楽しかったのは本当のこと。 『みんな』と『この村で』会う事はもう叶わなくても 僕が思っていたよりもずっと、 皆は過去に縋り付く事無く"今"を生きていける人達でも 僕はそれならそれで、どうとでも納得する事はできてしまうし 呼子姉が皆を好きだった事も、無かった事にはならないから」 (21) 2021/08/19(Thu) 22:10:03 |
【人】 君ぞ来まさぬ 百千鳥>>@3 >>@4 夜長 【祭りの終わり】 「呼子姉もきっと 僕が皆と、また昔みたいに遊んでいられた事 よかったねって言ってくれるとは思うんだ」 「でも、だからやっぱり寂しくて。 呼子姉と一緒に来て、一緒によかったねって笑いたかった。 それはもう叶わない事だから、 いつまでも考えたって仕方ないのにね」 淋しげに笑って、晴臣へと片手の小指を差し出した。 目の前に居る人が、和臣でなく晴臣だという事は 夢の残滓がそうさせるのか、大して違和感も無く腑に落ちて。 「ね、晴臣くん。 僕はきっと、それでもずっと同じ事を考え続けてしまうから また会いに来て、君達の居る"今"を大事にできるように。 いつか遊びに連れ出しに来て、考える暇も無くなるように。 …またいつか、約束してくれる?」 (22) 2021/08/19(Thu) 22:12:44 |
【置】 あの頃の 宵闇──宵闇 翔『不発弾 <タイムカプセル> 』の主な中身『一枚の写真』 10年前の三人が自分を中心に写っている。 卯波少年からもらった(宵闇談)ベストショット 背景は宵闇の家の前、今の田舎そのままだ。 『カセットテープ』 当時宵闇が文化祭のバンドでボーカルをやった ──という設定で歌っている流行りのロックな歌。 今聴けなくてよかったかもしれない。 『ノート一冊』 なにやら色々な言葉やらくがきが書きなぐってある。 村の人たちの名前、料理のレシピのようなもの。 いわゆる、混沌と化したポエムノートかもしれない。 『楽譜』 10年前、初めて自分で作詞作曲したもののようだ。 『薄っぺらい紙切れ』 "10年後の清和へ、お前はたぶん今彼女いないに5000円賭ける" と書いてある。バカ。 (L5) 2021/08/20(Fri) 11:24:14 公開: 2021/08/20(Fri) 11:25:00 |
【置】 いつかの 御山洗──御山洗 彰良『不発弾 <タイムカプセル> 』の主な中身きっと二人の入れたものより、内容は少ないのだろう。 『一枚の写真』 三人が遊んでいる風景の写った写真。 村の大人に、もしかしたら鬼走かもしれない、撮ってもらった写真は、視点が高い。 思い思いのポーズをとっていて、薄い写真からでもそれぞれの性格が現れるようだった。 『MDプレイヤー』 ずっと昔に御山洗が使っていた。一枚のMDディスクがそのまま入っている。 好きな順番で録音された中には、清和や宵闇の勧めた曲が入っているのだろう。 "11' 夏"とラベリングがされている。 『フォトブック』 料理の写真と料理名や感想が乗っている。 清和の家でいただいたものや集落の外で外食した時のものばかり。 そんな機会は少なかったのか、後ろの方はページが余ってしまっている。 『押し花の栞』 ベゴニアの押し花がプラスチックに挟まれている。 (L6) 2021/08/20(Fri) 13:10:38 公開: 2021/08/20(Fri) 13:10:00 |
【人】 過去から 編笠>>23 凪 ――俺は、静かにその言葉に応える。 「……ああ。分かった、姉さん。 それだけは、絶対に約束する。 俺も自分の気持ちに、はっきりとケリをつける覚悟、 姉さんのお陰で出来たから。 お互い、どこまで覚えているか分からねえけど、 だからこそ意味のある約束を、ここでしよう」 言いながら、目の前の誰かに、小指を差し出した。 それは意味のない約束だ。 ここから出たときに、夢から覚めた後に、 どれくらいそれを覚えているかは分からない。 ましてや本人でもなければ、今のままの姿とも限らない。 それでも、今ここに居る俺たちの間で約束をすることが、 必ず意味を持つ。 (24) 2021/08/20(Fri) 19:34:14 |
【人】 過去から 編笠>>24 夕凪 「……俺が出来る限りの何もかもを引き連れて、 必ず、会いに行く。夕凪の姉さんが思っているよりも、 もっともっとすげえものを見せるために、 ちゃんと自分の声を伝えに行く。 ――今なら、 自転車一個でどこまでも行けそうな気するんだ。 夢のような言葉も、夢のような現実も、 何もかも持って行くことを、ここで約束しよう」 だからこの"初恋"だけは、 もう少しだけ決着を先延ばしにしておく。 これは間違いなく、"本人同士"の問題なんだから ちゃんと失恋なりなんなり、しにいかねえとな……。 「なあ、こっちからも一つだけお願いしていいか、 ――『夕凪の姉さん』」 相手に、静かに尋ねる。 (25) 2021/08/20(Fri) 19:35:43 |
宵闇は、御山洗に口づけをした。 (a11) 2021/08/20(Fri) 20:02:26 |
御山洗は、宵闇を抱きしめた。 (a12) 2021/08/20(Fri) 20:35:42 |
【人】 陽は落ちぬ 夕凪>>25 編笠 「……大げさ。 それでも、夕凪は楽しみにしてる。 怪我してこないでよ、…急ぎすぎないで。 夕凪は、ただ。 こんな約束ができただけで、十分なんだよ」 小指を絡めただけの意味のない約束。 少年はなにに固執していたのか、今になってわかったような気がした。 編笠の"夕凪たち"に対する気持ちが聞きたかったのだ。 夕凪として聞きたかったのか。 夜凪として聞きたかったのか。 今となっては混ざってしまって明確にするのは意味をなさないだろう。 一度でも任せてしまいたくなったこの気持ちも。 一度でも隣を夢見た形にならないこの気持ちも。 あなたへの気持ちが泡沫のように消えてしまうのかは、この約束さえあれば不安じゃない。 "なれなかったこの気持ち"は、成熟する前に夢が覚めていく。 (26) 2021/08/20(Fri) 20:50:23 |
【人】 陽は落ちぬ 夕凪>>26 編笠へ だから今この祭りの間だけは、 夕凪としてこの夏、ここにいる。 「お願いって、何? わざわざ改まって」 あなたの言葉を聞くために、ここにいる。 ――ねぇ、淡い初恋を話してくれるのが楽しみよ。 大切な思い出が存在したことが嬉しくて仕方ない。 今も思ってくれていたことに胸がいっぱいで。 本当に来ていたら、その手を掴んで、水に飛び込んでいたでしょうね。 お魚さんは、逃げちゃうのかしら、捕まっちゃったのかしら。 夜凪なら、きっとそうしたわ。あなたのことが好きだから。 だから私も、言葉があふれる前に体が先に動いてしまいそうね。 (27) 2021/08/20(Fri) 21:05:45 |
【人】 過去から 編笠>>27 夕凪 ずっと、その器用に何かをこなす彼に憧れていた。 子どもだった俺たちは全員、その背中に背負われてきたはずだ。 普遍で、不動で、信頼できて、 何故かそれが絶対崩れないと信頼していた。 だから、誰も気づかなかった。 他の皆には夜凪の旦那がいても、 夜凪の旦那には、夜凪の旦那が居なかったことを。 弟分が、卯波が憧れを捨て去ったなら。 あいつのことを格好いいと思ってしまった俺が。 ――じゃあいつまでも、 こんな気持ちを抱えてていいはずがない。 助けての言葉が言えない相手に、手を伸ばさずにいられない。 「……伝わんないかもしれないけど。 ……全部勘違いかもしれないけど。 俺は憧れていた『夜凪の旦那』になる覚悟が出来たから。 だから、アンタにも必ず会いに行くよ。 でも、一人じゃ何もできないから。 ――たくさんの仲間を連れて」 そしたらきっと。 俺は、俺たちは――無敵だと。 そう信じさせてくれた親友がいるから。 (30) 2021/08/20(Fri) 21:37:16 |
【人】 夜を越えて 編笠>>27 夕凪 たち 一人じゃ救えないかもしれない。 一人じゃ答えを出せないかもしれない。 人は、誰かを救うようには出来ていない。 何もかもを解決するなんて無理だ。 なあ、もう一人の俺。 もし会えたら言うよ。必ず探し出して伝えるよ 人の腕が二本しかないのは。 誰かの差し出した手を握り、誰かに手を差し伸べるためだって。 「……だから夕凪の姉さん。 『 旦那も姉さんも待っててくれ 』って。そう伝えてくれねえかな。必ず、迎えに行くから。 それが、俺のお願いだ」 少しは、これで惚れた相手の前で格好つくかなと、 少年だった顔で、自然な顔で笑って肩を竦めた。 (31) 2021/08/20(Fri) 21:39:34 |
【人】 陽は落ちぬ 夕凪>>32 編笠 たち 「『なんだか楽しみ、賑やかそうで。 もちろん伝えてあげるわ。 今の言葉、夕凪にはさっぱりわからないのに。 夜凪がずっと聞きたかった言葉だってすごく思うの。 男の子同士で伝わるものなんて、なんだか妬けちゃうな』」 伝わらないかもしれないけど。 全部勘違いかもしれないけど。 「『夢から覚めたら、―――』 夕凪たちの物語も、これから紡がれていくんだから。 私から夜凪たちに伝えることは、 」一生があれば、大抵のことは大丈夫ってこと ここには凪いだ波しかなくて。 何一つ紡がれていなかったとしたら。 未来に繋がる"それ"さえ、あれば。 夕凪たちは二人でいくらでも待てるよ、だから。 「「待ってるね、編笠。 夕凪たちはきっと、そう言うよ。双子だからわかるんだ」」 青い空に、朱い灯火に、黄色の太陽に、緑の山に。 忘れ物はもうしなくてすむように。 もし、なくしたものがあったなら。 一緒に探して、また、魚でも捕まえて帰りましょう。 思い出はいつだって、みんなが来るのを待っている。 (33) 2021/08/20(Fri) 23:20:57 |
【人】 夜を越えて 編笠>>33 夕凪 「残念だけど夜凪の旦那との関係は、 夜凪の旦那との関係だけなんだよ。 同じように、夕凪の姉さんとの関係も、 夕凪の姉さんとの間のものだけだけど。 だから、俺にとっては…… どっちだって欠けがたいもんなんだよ」 それは。 幼馴染三人の誰一人、 何一つ手放す勇気を持てなかったのと同じで。 今まで何かを支えてきた人が居るなら、 今度はそれになりたがったっていいはずだ。 どうせここが夢なんだとしたら。 夢みたいな話をしたって構わないだろう。 そしてその夢を現実にするために、 少しばかり頑張ってしまうのが男という生き物なんだ。 大切な誰かの夢を叶えてほしいから、 方法を迷わないのが、男なんだ。 そうだろう――夜凪の旦那。俺たちやっぱ、似てるかもな。 (34) 2021/08/21(Sat) 0:18:55 |
【人】 茜差す方へ 編笠言いながら、自転車に跨った。 もう、後ろは振りむかない。 後ろに置いていくんじゃない、前に迎えに行くために。 だから、ここでは、さよならしなきゃな。 少年の残滓を置いていくようにして、 自転車のペダルに足を置いた。 「さあ、伝えてくるか。 ――今度は、俺の番だ、アカネ」 世界の何処にいたって一番最初にはきっと、 お前を見つけてやる。何回でも。何十回でも。 そう思いながら、自転車に跨った。 お前のことが好きだと。 今どこにいても伝えにいってやるからな――。 (36) 2021/08/21(Sat) 0:23:11 |
夜長は、こくり、こくり。頷いて、百千鳥の言葉を聞いていた。しっかり、確かめるように。 (t1) 2021/08/21(Sat) 1:00:41 |
夜長は、差し出された小指を見て、少し申し訳なく思った。 (t2) 2021/08/21(Sat) 1:00:46 |
夜長は、小指を置いてけぼりにして言った。「考えても仕方のないことでも、考えてはいけないことではないです」 (t3) 2021/08/21(Sat) 1:00:59 |
【見】 天狼の子 夜長【祭りの終わり】百千鳥 「昔がよかった、こうだったらよかった。 それは持ち続けていていい、モモチの持ち物だ」 またいつかの約束をするのは嫌でなかった。むしろしたいことだったが、そうするよりも先に、言いたいことがあった。 「……なんだろう。砂が、経験や思い出の砂時計があって。 白い砂が、落ちたら色が付くんです。 生きていて、色砂が積もって、増えていって。 その増えたもののことを考えることが増えるのは、当たり前だと 俺は思う。良くない思い出一個だけをよけておくのも難しい。 砂が落ちて積もる場所は、ひとつだけだから」 雪子から聞く思い出話は、いい思い出だけではなかった。悪い思い出の全部が話されたわけでもないと夜長は思っている。それでも夜長は村が好きで、村に行きたかった。 「色砂はモモチの物だが、 忘れたり、考えないようにしまってもいい。 考えるとつらかったり、くるしかったりするから。 時間を刻まない、時計みたいになっても良くて」 鬼走から譲られた懐中時計も、もしかしたらつらいやくるしいが理由で止まってるのかもしれない。そんなことを考えたことがある。 家族が欠けて、かなしくて、それでも変わらず時を刻み続けて。それはすごく無理をしている状態で。みんなが揃っていた時には、同じ様に落ちても"みんながいるから"平気だったかもしれない。でも、落ちた時にはたくさんくるしかったから。 何もなく動き始めるとしたら、色んな奇跡が重なった時だろう。 (@5) 2021/08/21(Sat) 1:03:37 |
夜長は、ひとつ深呼吸をして。それから言った。「モモチ」 (t4) 2021/08/21(Sat) 1:04:13 |
【見】 天狼の子 夜長【祭りの終わり】百千鳥 「俺は会いに行きます、連れ出します」 「でも、考える暇がなくなるようにでなくて、 モモチがモモチの持ち物を全部持って行けるようにが、 俺の理由になるな」 考える暇がなくなるように。自分が動くのはそのためにではない。少し突拍子のない例え話は、夜長本人としては繋がったものだった。 「そっちは、できるのがいつかもわからない、 本当にいつかのことになってしまうが……それでも、」 止まった時計が動くのは、奇跡が重なった時だけではない。 「あなたに会いに行く、またいつかの約束は今に出来る」 (@6) 2021/08/21(Sat) 1:05:26 |