人狼物語 三日月国


45 【R18】雲を泳ぐラッコ

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視点:


【人】 二年生 早乙女 菜月

[そんなことは分かっていても、私は必死にチアに打ち込む。
 そうしていないと、友君のことを思い出してしまうから。
 線路や、紅葉や、月や。
 何気ない風景を見るたびに、友君の言葉が思い浮かぶ。

俺も、絵があるのも好き。
  けど、この本は写実的っていうか……
  読んでるうちに頭の中に風景が浮かぶんだ。


 そうだね、友君。
 世界にはこんなにも、友君と拾い集めた風景が散らばっていて。
 何もしないでいると、空を眺めるだけで泣いてしまう。

 自分の体を苛め抜いて、泥のように眠る。
 だけど夢の中では、いつもあの図書室にいて。
 目を覚ませば、友君ともう会えないことを思い出して、べそべそと泣いた。]
(44) 2020/10/08(Thu) 6:02:06

【人】 二年生 早乙女 菜月

「また延長ですか」

[司書の先生が呆れたように言う。
 あれから、図書室と友君の世界は断ち切れてしまった。それでも二週間に一度は足を運ぶ。
 小川未明童話集、「赤いろうそくと人魚」。私が唯一借りた本を、何度も延長する。
 「何か月借りるつもりですか」「卒業する時に買います」「これ備品だから高いよ。アマゾンの本が安いですよ」「この本が良いんです」「もう読み飽きたでしょう」「まだ読み終わってません」
 そう、まだ私はこの本を読み終えていない。
 友君と一緒に読もうと思っていたから。

 きっと、この本を読み終えることは、無い。]**
(45) 2020/10/08(Thu) 6:03:03