>>62>>63>>64>>65ラナー

くれないに染まる天使の瞳。
俺の記憶を掠っていったどの血よりも鮮やかに。

　「それが、俺の罪か……」

見ようとしなかったものの存在を、躊躇いなく俺に突きつける。
獣を前にこんなことが出来るのは
────天使ラナーしかいない。

>>68続き

ラナーの"応援"の言葉が、ひとつひとつ耳に届く。
闘技場のよどんだ歓声なんかよりも澄んでいる。

やはり────彼女はすべてを見通す。見通していた。
闘いに明け暮れた人生の、裏にあったもの、すべて。

「俺が勝つのは分かり切ってんだろ。
　どうしてわざわざ応援してくれるんだ……」

彼女は、俺の持つすべてを肯定してくれた。
強さだけではない俺に、生きてくれと言っているのだ。

>>69続き

今までは自分のために自分一人で闘っていた。
けれど今はもう一人ではない。

敵は闘技場には在らず、
万が一負けることがあるかもしれない、
そのことがますます俺の生きる意志を燃え上がらせた。

紅蓮の瞳に応える。目の前で拳を掲げて握る。

　「……俺の罪は俺の手で倒す。
　　そしておまえと共に望みを果たす！
　　
　　ラナー─────俺は、お前と一緒に闘うぞ」

>>19　ラナー


[どうやら天使には故郷が無いらしい。神のために造られるからか？　知らねぇけど。]


　『ここで一度ゆっくりしたかったの！』


[そんな『無邪気に弾む声』は久しぶりに聴いた。もう遠い遠い記憶の中だ。その遠さを思い出している自分にも驚く。そう、ソレも煉獄の作用なのだろうか、自分が掘り出されて、堪らない。]


　……用心棒ね。いーよ。
　そういやそういう仕事した時もあったな
　最後はどのみち殺すんだけどね。


["彼女"が、この場所を羽休めに選んだ理由が奏でられる。音楽というものに心を動かされる事は無い経験で、これからも無いんだと、今ここで聴いていて、思う。そんな回顧を見透かしたように、他愛無い会話がまた落とされた。]

　……タコ・ヤーキ職人やったんは嘘ちゃうよ？


[ひとつ戯けて笑ってみせる。

人間がよく死ぬ世界だった。家畜以下の扱いで殺されていく。少しでも生きる可能性を、と。存在価値を高めようと店を構えたりして、子供の頃から商魂に長けたのも多くない。
けれど、そんな努力は無駄なんだな。順番は俺にも等しく回ってきた。いやそれは順番ですらなく。]


　人を虐げたい奴等……殺したい奴らに理由は無い
　そこに意味もない。息を吸うように殺す。
　……純粋な、暴力……


　……こういう話になるって、解ってるよな？
　わざわざ言わせるのは、天使の役目って、やつ？

　……困ったな。話せば話すほど、
　生きるってなんだったんだろうって気に、なる。


[煉獄に落ちてから、愛刀は息を潜めてる。きっとココには満足いく血が足りてないんだ。]

　

　『例えばその"相棒"を失くして
　　　ガチで死にそーになったときに

　　　　────それでも生きてえ、って思えるか？』

■ドラマシーン　秘密開示
■相手：アルバリ
■場　所：温泉※任意可

公衆浴場にて。
私はアルバリの背中を洗っています。

アルバリは最初抵抗しましたが、私が何度か迫ると諦めてくれました。
はい。丁寧に綺麗にしますからね。


泡越しに見るアルバリの身体は、痛々しい傷の痕ばかりで、彼が、どんな道をたどってここにいるのかを物語っています。

「キミは、最初は弱者だったのですね」

私に遠慮というものはありません。
している暇などありませんから。
唐突に切り出します。

「キミは、弱者という立場から逃げて、逃げて……逃げた先で、相棒のフォーマルハウトさんを得て、強者へとのし上がった」

あっ。
アルバリの身体がこわばりました。
流石に温泉にフォーマルハウトさんを連れてこれませんからね、寂しくなったのでしょうか？

なんて。
そうじゃありませんよね。
愛しい背中に優しくお湯をかけて流したあと、手をひたっと当てます。

「そろそろ……この物語シナリオの始まり根源と
　それと、キミについて。
　私が見ているものを見て頂けますか」

しまった。

背中を流していては、顔が見られません。
アルバリ、キミは今、どんな顔をしているのでしょうか。

・元々はサラという1人の天使だ。
・PC4人たちの導き手となった時、苦悩のあまり人格が分裂し、サーリフとラナーという片翼の天使となった。

温泉にて日々の疲れを癒したあとは、
お気に入りの練乳を数本買い、マッサージチェアを占領する。
フードはなく黒髪が濡れて別人のようだが、鎖が証明してくれる。
彼の手元には妖刀。

　『なあ……俺忙しいんだけど。いつまでやんのこれ』
　「温泉に来るやつがせかせかすんなや。付き合え」
　『……………』

いつかの闘技観戦のときみたいにマッサージチェアに並ぶ。
魔法の絨毯みたいにチェアの表面がうね…うね…と動く。
ちなみに今の設定は"弱"だ。必要な情報だから言ったぞ。

　「風呂上がりのこの状態でな、
　　冷たい練乳飲むのがすげー気持ちいいんだよ。
　　おまえもやってみるか？　これ俺のオススメ」

アルバリが他に何も持ってなければ練乳カップを押し付ける。
俺は残ったカップの蓋を開け、ぐいと喉に流し込む。
本当はスプーン使ってちまちま食うものらしいんだが知るか。

　「…………っあーうめえ！」

>>80続き

　「─────この瞬間だけはさ、天国みてえだよな」

本物がどんなところか知らねえけど。

　「天国に行きたくて死ぬ奴もいるくらいだ。
　　きっと良いところだろうな」

強いやつも弱いやつも、
正しく生きることが出来れば訪れることの叶う場所。

裁きの後で、あの天使の二人に会うとしたら
そこ行くしかねえんだよなぁ……などとぼやく。

　「なあアルバリ。
　　天国にいけるチャンスあるとしたらさ。

　　あの地上に戻ってでも
　　……おまえはそれを掴みたいって、思うか？」

[シャフリヤールのおっさんは、死んでるのか生きてるのかわからない感じで、酒を飲んでいた。

そして"それで良い"みたいな様子が、俺には好ましく映る。『生きる場所になんらこだわりが無い』『自分は自分』だと、そういう感じ。


俺も、自分はそうなんだと思ってたけどね。

けれど煉獄は息苦しい。血が足りない。相棒がそう呻いていて、なんだか俺も死にたくなってた。もう死んでんだけどさ──そうここは、やっぱり、生者の場所じゃないんだ。]


　ねぇ、シャフリヤール……サン。
　アンタは生者の世界に未練なんてなさそうだね。


[って言ったらなんて返ってきたっけ。気だるそうなご尊顔が、まんまるお月様を見てる、その目は子供のように。

『タコ・ヤーキ』と『オコノ・ミヤーキ』　　の作り方、従者に教えてやろっか？　まァすぐ飽きるんだろうけど。
　
もしかして、生前、出会っていたら、アンタを殺してたのは俺かもしれないね。なんて朗らかに他愛ないセリフを零したりして。うっかり昔を懐かしんでしまった。
──なんだろね、この人の前だと、何もかもが等しく無駄で意味のないものになって、且つそれに安心を感じてしまう。

神様とやらがいるなら、俺はこんな感じがイイね。]

[片翼の天使がなにか言っている。

……聞こえない。
聞こえない。



聞こえない。





ああ、嗚呼、聞こえん。

俺には、そんなものは存在しない。

など。なぞ。


そも、俺は、

己

アイとは――――何だ？