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【人】 成瀬 瑛[ 本当に教師という職業は大変だと思う。 特に、真面目で面倒見のいい先生は。 卒業すらしていない、ほんの数ヶ月だけの生徒にも こうして真剣に向き合って叱ってくれる。 ……大人につれて、怒ってくれる人って 減っちゃうからね。 本当に、教師なんてブラックで、割りに合わなくて。 ─── 涙が出るくらい、ありがたい。 ] (19) 2020/08/01(Sat) 2:24:32 |
【人】 成瀬 瑛生徒 [ あたしに合わせてくれる歩幅、 目線の高さ。 実際に教卓を挟んだ期間は短くとも、 貴方はね、本当にいい先生だ。 ……言葉の全てを素直に受け入れることは、 まだできないけれど。 そうだね。 両親とどうしても上手くいかなくて。 世界に自分しかいないと思っていたあの頃も あたしを見てくれた人は、きっといた。 それはクラスメイトかもしれないし、 クールに見えて心に熱いものを持っている教師。 はたまた駅ですれ違った、悪いお兄さん。 あたしが気付いてないだけで、 他にもいたかもしれないね。 ううん。いたんだよ、きっと。>>0:223 ] (20) 2020/08/01(Sat) 2:24:54 |
【人】 成瀬 瑛ジャン先生。 ご指導ご鞭撻、ありがとうございました。 [ しばらく先生の言葉に耳を傾けた後。 真面目な顔で、頭を下げる。 ] ……今まで心配と迷惑をかけて、 ごめんね。 [ そして謝罪と共に、ゆっくり顔を上げてから 照れたように舌を出す。 あたしは高校を途中で辞めちゃってるから。 卒業式には出席していない。 だからあたしの卒業は、きっと今だった。 ] (21) 2020/08/01(Sat) 2:25:09 |
【人】 成瀬 瑛[ 結局あたしはホテルをチェックアウトしそびれて 仕事のない休日を再び迎える。 ] でも、今日こそ帰るから。 [ これ以上、仕事から離れるのは良くない。 憮然とした表情で、備え付けの鏡に言い聞かせる。 ……これ以上、たっぷり寝て、 美味しいものを食べて。 あたしを“瑛”として見てくれる人達と触れるのは あたしにとって、甘すぎる毒だ。 ] (35) 2020/08/01(Sat) 4:09:42 |
【人】 成瀬 瑛[ なのに、あたしは糊の効いた浴衣を着ている。 浅葱色に椿の花を散らせ、耳上で上下に分けた髪を 結い上げ、軽くほぐし、フラワーゴムでまとめて カラン、と小さく下駄の音を響かせた。 お祭り行くって、約束したから。 浴衣着て来いって言われたから。 そうやって、優しい人がくれた理由に、甘えて。 …… 浴衣は流石に借りたけど。 着付けも、ヘアアレンジも、自分でできる。 どれも初めてのことでは、ないから。 ] (36) 2020/08/01(Sat) 4:10:52 |
【人】 成瀬 瑛[ 祭り会場の河川敷は、やはり人で賑わっていて。 あたしは少し、気後れする。 人混みではなく、道行く人達の楽しげな顔に。 屋台が提供する娯楽や食事は、お馴染みのものから 少し奇をてらったものまで様々で。 あたしもかつてはその風景の一部だった。 そういう依頼を受けたなら。 甘えるように男性の手に腕を絡めて、 好きでも嫌いでもないりんご飴をねだった。 そうやってあたしは、生きてきた。 ] (37) 2020/08/01(Sat) 4:11:06 |
【人】 成瀬 瑛───っ、 [ 何となく、息をするのが苦しくなって。 人混みから逃げるように、 あたしは川辺に沿って河川敷を降る。 人の気配が薄くなるにつれ、祭囃子も遠のいて。 気付けばあたしは一人しゃがんで、 揺らめく水面をぼんやりと眺めてた。 ああ、これでは祭り会場とは言えないかもしれないな。 …… でもほら、河川敷っていうのは嘘ではないし。 なんて、やっぱり言い訳ばかりだね、あたしは。 ]** (38) 2020/08/01(Sat) 4:13:15 |
【人】 成瀬 瑛[ それはできない。 あたしは彼女に、大切なことを言わないと。 身体についた泡をシャワーで洗い流すと、 意を決して、立ち上がり。 ずんずんと、湯船へ向かう。 とぷん、爪先からそっとお湯に浸かり そうして日頃の疲れを癒す彼女の耳元に、 そっと囁こう。 ] (75) 2020/08/01(Sat) 18:58:29 |
【人】 成瀬 瑛[ 知ってる。 あたしがもたもたしていたせいで。 彼女の誕生日は、二日も前に終わってしまった。 それはあたしの自業自得なんだけど。 綺麗なお姉さん、市村さんを始め きっと多くの人が彼女をお祝いしたんだろうなって ……なんて想像するのは、 詩桜ちゃんの交友関係を知らないあたしでも 難しくなかったので。 ] (77) 2020/08/01(Sat) 18:58:41 |
【人】 成瀬 瑛お祝いが一番最後になっちゃったの 少し悔しいからね。 プレゼントは来年の分ということにして。 363日早い、21歳のお誕生日おめでとう。 [ これなら、一番乗りだよねって。 子供みたいな理屈で笑いながら。 今年の誕生日は出遅れたし、 これから先の未来だって、 特別な人と共に、特別な日をお祝いするんだろうけど。 プレゼントに指輪を検討した身として、 来年の分だけお願いしますって、我儘を。 ] (78) 2020/08/01(Sat) 18:58:55 |
【人】 成瀬 瑛[ ─── 数分後。 川の側で座り込みながら、時間を潰す。 手持ち無沙汰になったので、葉っぱで船を作ったり、 平べったい石を、何回跳ねるかチャレンジしたり。 来るわけが、ないのにね。 祭会場 あたしはあそこにいないんだから。 ───── 十数分後。 …… なんであたしは、待っているんだろう。 再びしゃがみ込みながら、不思議に思った。 祭りはすごい人混みだったから。 スマホ無しに人ひとりを見つけるは、大変だ。 諦めても、おかしくないよね。 …… モテそうだしなぁ。 綺麗なお姉さんに声をかけられて、なんてことも。 あるかもしれないし。 ] (136) 2020/08/02(Sun) 1:00:04 |
【人】 成瀬 瑛あたしは、羽凪くんとご飯を食べるのが好きだし。 話をしたり、一緒にいることも好き。 それでもね。 君を、好きにはなりたくなかったから。 [ そう言って、ぱっと両手を離せば、 手の上に溜めていた水の塊が弾け、 はらはらと水面に飛び散った。 ]** (140) 2020/08/02(Sun) 1:01:56 |
【人】 成瀬 瑛羽凪くん、女の子の趣味悪いって言われない? [ へらへらしてて、 何しでかすかわかんなくて 一言も言わずにいなくなろうとするような 薄情なやつに対して。 いつだって、やさしかったね、君は。 ] (241) 2020/08/02(Sun) 14:27:15 |
【人】 成瀬 瑛仕事忙しいから、会う時間とか全然取れないのに。 …… その仕事で、着飾って、お化粧して。 別の誰かの彼女になるんだよ。 それは ─── [ あたしだったら、嫌だって思うよ。 ] (245) 2020/08/02(Sun) 14:28:13 |
【人】 成瀬 瑛だから久しぶりの休暇で。 口が悪くて、ちょっぴり意地悪で、 レディの部屋を遠慮なく叩いたりする失礼な人。 なのに優しくて、こんなあたしを見つけてくれて。 …… 好きだって言ってくれる 一緒にいたいなって、思う人に出会っても。 (246) 2020/08/02(Sun) 14:28:22 |
【人】 成瀬 瑛ああ、凄く素敵な人だったなって。 …… そう思って、終わりにしたいんだ。 [ いつの間にか風は止んでいて。 暮れなずむ空の下、 時が止まったかのような静寂だけが 辺りを包んでいた。 ]** (247) 2020/08/02(Sun) 14:28:26 |
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