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【人】 受験生 雨宮 健斗…ご心配をおかけしました… 多分大丈夫ぽい。 [二人にそう言って、立ち上がる。 意地とプライドにかけて、負ぶってもらう訳には いかないと思いながら。 ぽん、と叩いた帽子を近藤に礼を言って返す。 なんか言おうとしたけど、 礼以外のことは、やっぱり言えずに。 ] (3) 2020/11/29(Sun) 8:12:12 |
【人】 受験生 雨宮 健斗[差し出された手に>>@5一瞬の躊躇いの後、 ぐ、と力を込めて握って、立ち上がった。 ピアノ弾きの端くれの己から見ても悔しいくらい 大きくて、繊細な手だと思った。 そんなことを考えていたから、矢川の頬が ぴくりと動いた>>@5ことなど、気付く訳もなく。] あー、そうかも。 ちょっと部屋で寝るわ。 [近藤に答える矢川に、頷いて。 BBQまでには回復する、と近藤に笑ったけれど、 やっぱり立ち上がれば多少血の気が引いて、 提案通りに肩を借りることになった。 ふわりと浮いたのは、足元だけだったのか。 有り難くも複雑な気分で。 ] (29) 2020/11/29(Sun) 16:00:58 |
【人】 受験生 雨宮 健斗[ぼそぼそと紡がれる言葉が、普段より随分近い。 そーだな、と頷いて、 ] あー!ちげぇ、文化祭のあとだろ! 委員長にふられたやつ。 [とすぐに顔を顰めたけど。 ] ……居ないよ。 なんか、自分のことも女もよくわからん。 ライブで、きゃーきゃー言われてんのは 知ってるけど。 [矢川とは、反対側に顔を向けた。 空と紅葉した森は綺麗だなと息を吐く。 ] (32) 2020/11/29(Sun) 16:04:35 |
【人】 受験生 雨宮 健斗[ 女を抱いても、心が跳ねない。 ]**それは、いつからだったか、なんでなのか。 そんなこと、一番大事だと思ってる友人に、 とっとと相談すりゃいいのに、と思うのに、 出来ない日が続いていた。 (33) 2020/11/29(Sun) 16:06:12 |
【人】 受験生 雨宮 健斗ピアノ。 手が最近調子悪くて。 まじで弾けなくなって。 試験近いし。 気晴らしに女と遊んでも。 そーゆーことしても。 なんも思わなくなって。 ちょっと参ってた、っつーか。 [またざぁ、と風が吹いた。 今度こそ、あんまり聞こえないといいなぁ、 とぼんやり考えた。 ]** (63) 2020/11/29(Sun) 21:33:23 |
【人】 受験生 雨宮 健斗[矢川の手が首元に触れる。 殴られる、と思った。 目は逸らさずに睨んだまま、ぎり、となる 奥歯の音を聞いていた。 痛くなかったかも知れない。 噛みつかれるように、唇が触れた。 だらんと落ちたままの左手が心底うざかった。 ぶん殴ってやることも出来ない。 がち、と歯が当たる音がした。 ] (81) 2020/11/30(Mon) 0:46:57 |
【人】 受験生 雨宮 健斗[無理矢理ねじ込む矢川の舌に傷がついたかも 知れないと思う。 さっきまで、己がしていたような。 今までなんの気無しに繰り返してきたような。 酸素を求めても許されない、 呼吸が相手の手の中で、 初めてぞくり、と身体が跳ねた。 それは、恐怖にも、快感にも似た (82) 2020/11/30(Mon) 0:48:15 |
【人】 受験生 雨宮 健斗……っ…! [はっ、はっ、と酸素を求めて短い呼吸を繰り返す。 飲み込みきれなかった唾液が、唇の端を伝って、 ぜいぜいと動く喉を撫でた。 開いたままだった瞳で見た矢川の顔は、 なかなか見事に歪んでいて、 吐き出すように溢れる言葉を聞いていた。 ] …なんで、お前が そんな顔してんだよ。 [ぽつりと告げて、同じように歪んだ口元は、 なんとか笑みの形に変えられただろうか。 ]** (83) 2020/11/30(Mon) 0:49:51 |
【人】 受験生 雨宮 健斗[特別だっつっても友人で、もちろん男で、 がっちりホールドされて、 うっかり頸動脈キメられて、 殴られるどころかキスされて。 いくらあいつがデカくても、 多少己の血の気が引いていても、 抵抗することなんていくらでも出来たはずなのに。 何すんだ、って怒鳴るとこだろう。 …何やってんのお前。 なんで、こんなこと、すんの。 (84) 2020/11/30(Mon) 8:16:12 |
【人】 受験生 雨宮 健斗[もう体重を預けられる肩はそこには無くて。 置いてきゃいいのにそれでも己を気遣ってか、 ゆっくり歩く矢川を、己の意思に反して 閉じようとする瞼を懸命に上げて目で追った。] [呼びかけた声は、割に落ち着いていて。 振り向いてくれなくてもいい。 目の前が、急に色を失って。 座り込むように、倒れる直前。 ] (87) 2020/11/30(Mon) 8:23:02 |
【人】 受験生 雨宮 健斗[ ぼんやり開けた視線の先には天井と、 電気が見えた。 体の下は落ち葉じゃなくて肌触りのいいリネン。 自分の置かれた状況はなんとなくすぐに理解して。 さっきまでのキリンの夢に思わず 小さな苦笑いが溢れて、 見える世界が滲むのが分かった。 ] (92) 2020/11/30(Mon) 14:07:30 |
【人】 受験生 雨宮 健斗[養護教諭の先生の声が聞こえて、 右腕で顔を覆おうとしたら、 点滴の管が引っかかってアラームが鳴る。 今朝、部屋で何度も鳴らしたアラームと 似たような音だな、なんて思いながら やがてやってきた医者の話を黙って聞いた。 睡眠不足、と、貧血。 医学部には圧倒的に足りない偏差値の己でも 付けられる診断をして、人の良さそうな その若い医者が笑う。 いくら林間学校が楽しいからって、 と。 ]ちゃんと食べて寝なさい、 (93) 2020/11/30(Mon) 14:10:26 |
【人】 受験生 雨宮 健斗[点滴を外してもらって、立ち上がる。 まだ寝ていたら、と言う声に首を振った。 肉、食ってこないと。なんて笑ったら、 無理しないようにと釘を刺されて 退室は許可されて。 確かに与えられた休息と睡眠のおかげで、 随分楽になっていた。 服装をちょっとだけ整えて、頭を下げた。 部屋を出る際、ここまで運んでくれた友達に ちゃんとお礼を言うように、と言う 先生の声が背中に届く。 …はい、と小さく返事をした。 ] (94) 2020/11/30(Mon) 14:12:08 |
【人】 受験生 雨宮 健斗[先生にはああ言ったものの、 流石にBBQに参加する気分でもなくて、 ぼんやりと部屋に向かって歩いていた。 部屋に戻っていいものか、と目を伏せる。 けれど行くところも他にない。 室内には誰も居なくて、足音が重く汚く響く。 賑やかな声が漏れ聞こえていて、 ふいと窓に目を向ける。 月が、綺麗だな、と思った。 文豪が意訳したその綺麗な文章を、 知らない訳でもなかった。 昨日の風呂を思い出す。 (95) 2020/11/30(Mon) 14:14:54 |
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