人狼物語 三日月国


203 三月うさぎの不思議なテーブル

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 僕、まだまだ先輩には敵わないけど
 いつか、……いつか見合う男になります!!

 いつも僕に優しく厳しく、してくれる先輩のこと
 尊敬してるんで。

 だから それまで、……それまで待っててください!
 絶対、絶対ですよ!!!

[ そして件のコーナーは、いつも通り。
 苦笑いを一つ、合図のジングルが流れれば、
 表情、声色、はスイッチが入るように切り替わる。 ]

 懐かしいなぁ、昔はこういう役も
 やらせていただいたな、覚えてる人いるかなぁ。

 運ちゃん、喜んでくれているかな。
 どうぞくれぐれも、運転気をつけてね。

 それではまた来週、お相手は高野景斗でした。


[ その放送は、デートの二日ほど前に
 放送されることになった。** ]

メモを貼った。

メモを貼った。

メモを貼った。

――たけのことアスパラの日――
 
[まずはいつものように撮影する。
最初こそ店長に許可を取ったが、そこからは自由に撮っている神田である。

自分の行動を見て「良いんだ」と解釈した客が撮る姿も何度か見かけたが、高野が撮っているのは珍しいので「へえ」と思わず見てしまった。
自分より早く来店していた彼のオーダーは既にデザートの段階。
タルトに添えられた装飾が「彼への特別」であることは他の皿を見ればわかる。
それを見た高野の顔が――

 (あっ これは僕見ちゃ駄目なやつ)

察して目を逸らした。]

[さて自分の目の前にある二皿だ。
どちらから食べようかと思案して、まずはてんぷらからにする。

箸で摘まめば、さく、と音を立てる揚げたての衣。
穂先多めのリクエストに応えて貰ったから、細長くて食べやすい。
強く噛まなくても柔らかく歯が通るたけのこには下味がついていて、後から天つゆにつける必要がない。
衣のさくさく感が好きだからこれはありがたい。

使われているつゆは店のオリジナルらしい。
今度はそのつゆを出してもらってそばをリクエストすることを決意した。
だから仕入れておいてください、店長。

対して横の大葉は水気を纏っていたらしんなりしてしまいきれいに葉を広げた状態で揚げるのが困難になる。
だから味はついていないと判断し、少し塩を振らせて貰った。]


 僕、大葉の天ぷらも大好き……無限にさくさくしたい……
 ポテトチップスと同じ棚に袋で売ってないかなっていつも思ってる。

[恐らく時間が経つとさくさく感が失われてしまうので今後も商品としてスーパーのお菓子売り場には並ばないとは思う。]

[鶏肉で巻かれた野菜の色どりが目にも美味しい。
ごぼうは冬の煮物でも太目が活躍するが、春先に出回る春ごぼうは柔らかくて甘味があるのが特徴だ。
アスパラとにんじんを一緒に巻いていても、噛みにくいということはない筈だ。]

 あっ好きこの味付け。

[思わず声が零れた。
天ぷらでふんわりと上品な味を楽しんだ後にやってくる、日本人のDNAに刻まれたみりん醤油砂糖酒の黄金カルテット。
鶏肉にはしっかりその味が浸みこんでいるが、中身の野菜には到達していないから、野菜の旨味も損なわれることなく感じられる。]


 しいたけ途中で食べるとまた煮汁がガツンと来て食感も違っていいな。
 いや〜それにつけてもアスパラは流石おすすめ食材!
 レストランで食べてもアスパラって繊維が気になることがあるけど、
 新鮮だから?それとも調理法?
 ぜんっぜん気にならないや。

[ゆっくり食べないと真白の退勤までただ座席を温めるだけの客になってしまうのだが、食べ始めるとそんな当初の予定は忘れてしまう。
これはデザートまでにまだ何か頼まないと。

鶏のにゅうめんだって?!
麺は控え目でスープ多めで貰おうかな!]

[そして見事にお腹がいっぱいになってしまったので、タルトは持ち帰る羽目になる。
真白がまかないをパスするなら、彼女の分も二切れ。

店内で食べるなら神田ブレンドのコーヒーがお供になるが、家の場合ティーバッグになる。
もう少し良いものを買っておくんだったと少し後悔した。*]

― 白うさぎと紺色うさぎの幕間 ―



[ 大咲が神田からオーダーを受け取り、
  横を通り過ぎる際にも、つい。
  物言いたげな視線を向け、かつ、それを拾われるなら ]


  …………混ざりたいというか。
  私、三年目じゃないですか。瑞野さんと。

  ……知らないうちに瑞野さんに息子が出来てて、
  ちょっと、複雑な気持ちなだけです


[ もうちょっと可愛い妹扱いしてくれても良いんですよ?
  大咲はいつでも歓迎ですよ?
  息子もいいけど妹も良いと思いませんか〜!?

  …なんてことは言わないが。
  男同士の気安さとかもあるかもしれないし、
  仲良きことは美しきかな、ここは譲ってあげ── ]

 

 


  ( いやちょっと待って
原酒と原酒のカクテル!?

    作ったの? そんで
出したの!?
 )


[ 葉月が酔い潰れた原因の事実を後程知れば、
  いややっぱ譲れませんけど!? と思う羽目になる。

  ……無事の帰宅(?)が叶って何よりだ。
  本当に。いやマジで。* ]

 

 ― 引き続き、白うさぎの夜 ―



[ そんな閑話休題と指導計画はともかくとして、
  種類は違えど大咲のやきもちは彼に見えていたか。
  あの日、しれっと過去の交際経験を仄めかされ
  ちょっとだけもやもやしていたことは内緒である。

  いや、嘘だ。大分気にした。
  元恋人たちとどんな風に感じていたかどうかは二の次で、
  "どんな人で、どうして付き合ったのか"は気に掛かった。
  好きだから? なんとなく?
 
その人にも、かわいいって言ったのかな。


  そりゃいたよね、神田さんなら。と思う反面
  いや私の受け取り違いなら良いのになぁ、とか。 ]

 

 

  たけのこと言えば、和食が多いかなぁと思って。
  他には応用しづらいけど、案外何とかなりますよ。


[ まあそれでも余れば賄いになるだけである。強制的に。
  多くは用意していないし、実際出たから問題ない。
  小さな拍手には、ちょっとだけ気恥ずかしげに笑って ]


  ……………… あの、


[ い、意地が、わるい。
  分かっていて作ったことまで理解されている笑顔だ。
  小声で問われて、思わず頬を赤くし、
  それから同じだけの声量で答えを返した。 ]

 

 

  ……呼ぶのは、二人の時が良いです



[ しれっと料理名で呼ぶことも考えはした、けど。
  そんな風に思ってもいたことだから
  この場は貴方に折れて貰おう。

  白うさぎはそのままお泊りの許可を取り付け
  一転して穏やかな笑顔で「おいで」と言ってくれた彼の
  浮かれた言葉と約束へ、ふにゃり、咲い
  幾分か軽くなった心を弾ませた。 ]

 

 

[ 彼のことを知る前は豊富な語彙力程度に捉えていた感想も
  知った後ならなるほど納得の言葉遣いだ。
  作った人を自然と嬉しい気持ちにさせてくれる、
  そんな非凡ではない確かな才能。
  プライベートの神田として来店していると言っていたし
  実際そうなのだとは分かるけれども。

  美味しいを、言動にしてちゃんと伝えてくれる
  そんな貴方だからこそ、好きになったことを実感して ]


  ふふ。アスパラの繊維は、ちょっと分かります。
  店長の仕入れ先か調理法かは企業秘密ですけど。
  ……しいて言うなら、神田さんへの想いの量かな。

  あ、瑞野さんが作ったスープ、美味しいですよ!


[ すっごく丁寧に仕込んでたので、と笑いかけ
  オーダーが入るならその通りにご用意を。
  そんな風に、三月うさぎの店の夜は更けていく。 ]

 

 

[ 賄いは、今日は食べずに帰ろう。
  彼が持ち帰るタルトが二つに増えるなら、一つ分の代金は
  「一緒に食べたいです」と伝票から引いておいて。

  じゃあ今度は、二人で茶葉でも見にいきましょうか。
  家にティーバッグしかないことを知れるなら
  そんな未来の約束も出来ますね。
  クローズ作業を終え、制服から私服へ着替え直す。

  モカブラウンのだぼついた袖口がお気に入りのニットと、
  オフベージュのアシンメトリーフレアスカート。
  ウエストをリボンできゅ、と結んで、髪を直し、
  桜のようなピンクのリップを薄く塗って。

  少し迷った末、二つ結びを解き
  低めの位置でゆるくポニーテールへ結び直した。
  白いリボンは、今からは後頭部にひとつだけ ]

 

 

  神田さん、お待たせしました
  ……手。繋いでいいですか?


[ どうしても待たせてしまうのは申し訳ないけれども
  出来る限り可愛い私で、いたいので。

  今からは巣穴を飛び出し、ただの私と貴方になる
  手を繋ぐのはその合図。
  単に繋ぎたいだけ? ……言わないでください* ]


 

 ― 巣穴を出る前に ―



[ 速崎から視線を向けられることは、無かった。
  或いはタイミングが悉く合わないだけなのか。
  失恋の瞬間と葉月との会話にも鉢合わせた大咲は、
  尚更なんと声を掛ければいいか分からなくて
  結局その日も、後ろ姿へ指先を伸ばしかけるばかり。

  バックヤードの事務用品置き場から紙とペンを拝借し
  置手紙を書き記す。
  まるでいつかの再来だ。

  今度は此方から送る番。
  店長へ「けいちゃんが大丈夫そうな時、渡してください」と
  言付けてから、しっかり預けた。 ]

 

 


   『  けいちゃんへ


      ちゃんと話し合えたの、見てたよ
      私も一度、けいちゃんと話したいことがある

      でもまだ少し整理できないんだ。
      言葉を押し付けることはしたくないから
      整理してから、話したい。
      避けないし、離れないって約束する

      だからちょっとだけ、待ってて


                  真白  』


 

 


     [  ──いつ届くかは、さて。*  ]


 

メモを貼った。

[時間配分も満腹具合も見誤る。
酔いつぶれた葉月を笑えない体たらく。

会計後にタルト1つ分の計上がされていないことに気づいて「あっ」と声を上げたが、もうひとつ分払うとレジ前でごねるのもみっともないか。
真白の方が上手だった。
苦笑してレシートを畳み、「彼女の分も払う男」になる機会は次に持ち越すことを内心誓う。]

メモを貼った。


 ……ちょっと動こ。

[クローズから彼女が出てくるまでの間、腹と胸を落ち着かせる為に近くをうろついた。
もう何度かこうして彼女が上がるのを待って一緒に彼女の家まで歩いたり一緒に電車に乗ったりしているが、いまだに待つ間にドキドキしてしまう。

これが初恋という訳でも初交際という訳でもない。
過去には恋人もいたが、こんなに強く求めてしまう想いが自分の中にあることを今初めて経験している。
そのことを彼女に話す機会があるかどうか。
言葉端に滲んだ過去にもやもやしてしまう程に自分の言葉に敏感でいてくれる彼女を安心させるには、話すのと話さないの、どちらが良いのだろうか。

不安を感じる隙も無いくらいに愛を実感してもらいたい。
今のところ、自分が負けっぱなしな気もするが。]

[今日、これから、彼女が泊りに来る。
焦らすつもりがあったのかなかったのか、
二人きりになって、名前を呼ばれることを想像しただけでじっとしていられない。

あまり激しく動き回ったら、ナギのスープや想いで繊維質を消すマジックのかけられたアスパラが勿体ないことになりそうなので、あくまでウォーキングレベル。

しかし、店から出て来た彼女が疑問に思う程度には、出迎えた自分は息が上がっていたことだろう。]


 お疲れ様。
 タルト、冷蔵庫借りててごめんね、持つよ。

 ……うん、僕も繋ぎたい。

[同じ気持ちだとはっきり言葉に出して手を差し出す。
繋いだら、そこからはもう白うさぎを独り占めする時間。]


 この服袖が広いんだ?
 手首まで掴めちゃいそ。

[繋いだ手から指を伸ばして少し悪戯。
ふふ、と笑って見下ろした彼女の唇の美しさに動揺したのは指の跳ね方で伝わるか。]

 今日のスカートも可愛いな〜
 このまま誰にも見せずに僕の家に連れて帰りたいけど、
 お泊りセット、買うでしょ?

[営業時間がうさぎよりも長いドラッグストアは駅前にある。

店に来る前から泊りを計画していたなら持っているかもしれないが、恐らくそうではないだろう。
布団はあるし寝る時の服は貸せるけれど、その他今の自分の家には女の子に必要な諸々は何もないので。

茶葉はさすがに置いてなさそうなので、大人しく次のデートを待ちます。*]

[白状しよう。

 住所をそのまま伝えたのは、
 伝えたところで自宅に押しかけるような
 人柄ではないことぐらい、十分に理解していたからだ。

 男の一人暮らし。
 誰かが押しかけてきたとてそれなりの重さの鍋と、
 毎日厨房に立つ立ち仕事。

 ジムに通っていなくても、
 刃物など振り回されない限りはなんとか出来る心持ちはある。
 魅せる為の身体をしているか、といえば別の話だが。

 高野の知り合って見てきたものの中で、
 そういった行動に出ることは微塵も思いつかなかった。

 まあ、それはそれとして。
 自宅に来る、というのなら。

 断る理由もないか、と思ったのも一つ。]

[寧ろ、後日返信で送られてきた住所に、
 真顔で首を傾げたものだった。

 少なくとも『芸能界』に携わる人間が、
 そんなにあっさりと住所を渡してもいいんですか。

 ……俺が流出したら、
 どうするつもりだったんだろう、この人。


 行けなくはない距離の地名を見ながら、
 小さくため息をつく。そんなつもりは毛頭ないが。
 
 だけど。

 自身も、同じように信用されているのだとしたら、
 悪い気はしなかった。]

[胸が火傷したような熱さを覚えたあの日以降も。
 メッセージのやりとりは続いた。

 待ち合わせの場所、時間。
 もう一度、シフトの確認。

 短いやりとりの中に挟まれる、
 期待が滲んでいる言葉。

 遠足を前の日にする子供のようだな、と。
 微笑ましくなって液晶を撫でる。

 時間が経つとともに火傷は落ち着いて、
 そんな日々を重ねながら、
 一度店に高野が来店した時には、
 いつものように接することが出来ただろう。

           

             ――そのラジオを聞くまでは。]

[いつもの深い夜、風呂上がりの缶一本だけのビール。
 同じ時間にAIに呼びかけられば、
 部屋にサウンドが流れ始める。

 タオルで濡れた髪を拭き取りながら、
 今日も始まったラジオ。

 その日は誰かの誕生日を祝うメッセージから始まった。
 そういえば、速崎もそろそろ誕生日の時期で。
 あれから、彼女を祝うミニパーティの話は、
 進んでいるような、いないような。

 速崎から直接聞いた大咲との話。
 口を挟まないと決めたからには、
 大咲に振るわけにもいかず。

 二人の間がぎこちないまま過ぎていく今では、
 その話題も立ち消えになっていくのだろうか。]


[そんな考えを巡らせていた時に、
 不意に聞こえたタルトのキーワードに
 ラジオに意識が引き戻された。

 一生わすられない味。
 写真にも残した、宝物。]


  …………、


[忘れもしないあの日の。]
 

 


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