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【人】 落星 クロウリー失礼致します [形無き招きを受け、闇の中へと踏み込んだ。 長年新書の佇まいを保ち続ける年代も疎らな書籍の並び、 常に埃一つ無く軋みや傷みを得ることも無い空間。 廃屋とはまた違う生活感の無さがそこにはある。 記されたものの多くが、悪魔やその同胞から人に与えた智慧ならば 彼自身がそれらをこうして収納し管理する意味とは何なのか 疑問に思い、その特殊な嗜好の一環かと結論付けた過去の記憶が蘇る。 書架の群れの合間から漏れ出る灯りを視線が辿り、 強張った身体を落ち着かせ、ゆっくりと歩みを進めた。] (119) 2022/05/25(Wed) 2:42:15 |
【人】 落星 クロウリー……はい、インタリオ様 [偽った身分で使用したものではなく、本物の響きで紡がれる名前 過去と現在が重なるようだった。 唯受け入れ、それが喜ばしいというように微笑みを崩さないだけ。 語られなかった意味は、彼を通して得た教養から答えを知れた そこに込められたものは、館に置かれた日々が悟らせた。 ──私は。 美しさの代わりに利用価値を獲得し、手を離れることを許されただけ。 この館の数々の作品と何も変わらない。夜闇を飾る配列達の一つ。 今尚、地を這う定めの生き物の一人として定義される。 契約の名の元に上位存在に生かされている、それだけのもの。] (120) 2022/05/25(Wed) 2:42:32 |
【人】 落星 クロウリー[漸く現れた彩りと共に、主はそこにいる。 暗色ながら闇には覆われない机、羽撃きを閉じこめるランプ 胸像に飾られるネックレスには特に、思い出がある。 教会の教えを否定し、忘れていく最中のことだったのだ 命令に従い両の手を組む際、少しの嫌悪感を抱いていた。 まるでそれを表すように、純白は見る見る内に黒に染まった。 この作品そのものが穢れであるのか、 穢れた祈りを見分けることが出来るとでも言うのか。 館の数々の芸術品の材料と性質を思うのならば、 こちらの意思が反映されるなど、馬鹿馬鹿しい思考だが。 悪魔と、悪魔に魂を売った人間が祈祷の真似事をした結果ならば 否定しきることは出来ない──と、私には思えてならなくて。] (121) 2022/05/25(Wed) 2:42:49 |
【人】 落星 クロウリーお許しをいただけるまでは 貴方の御慈悲に甘えることは出来ませんから [厚意に感謝を述べながらも、小さな笑みに眉を下げそう述べ 銀のトレーを置きワインボトルを手に取った。 注がれる視線を強く意識しながらも、手先には乱れは無く 真紅に染まるグラスは、より華美さを増すと共に毒々しさを手に入れる。 二つがそうして清らかな透明を失った後、空いた椅子へと腰を下ろす。 教え仔としての生活の中で数えることを忘れる程この場所に通って、 何度も窓から外を見下ろしては 此処から見える景色に恐れを抱いていた気がする。 主と共に在ることで病を退け、寿命を無意味なものとした私でも 昼行性生物として暗闇に危機感を抱く本能は変わらないらしかった。 或いは、幼き日々の記憶の影響もあっただろうか。 事実私は、主に認められ名前を与えられ人の世に帰されてからは 様々な手を使い、人間らしい生活を保ってきた。] (122) 2022/05/25(Wed) 2:43:10 |
【人】 落星 クロウリー血相を変えるだなどと、とんでもない 私の主は至って冷静でいらっしゃりました 外出好きの貴方が、世俗の様子を知らずにいたわけもないでしょう? [注ぐグラスも、口をつけるのも主が先。 当然の規律を守った後に、緩やかな速度の語らいが始まる。 何とも惚けた悪魔の言葉に、首を横に振り穏やかに否定を返す。 そうしながら、魔術師として独立した当時のことを思い起こした。 大凡人間二人分の人生以上の時が過ぎ去っていたというのに、 異端狩りが収まるどころか加速していたことには呆れたものだ。 幾多の人間が己の欲望の為に動き、その耳元に囁けばより陰謀は加速した 人間の尺度ではそれは短い期間に多くの争いが起きたのではなく、 長く争いが続きあらゆる被害が生まれた時代であった。 国を出て長く帰らなかった要因の多くを占めているといえよう。] (123) 2022/05/25(Wed) 2:43:45 |
【人】 落星 クロウリー[その頃の人の世の動き、争いにより確保した魂の剪定の難しさ ある悪魔の気が短すぎ、召喚させた人間を焼き殺した時の思い出。 性急さも無く味を楽しむ彼に合わせながら舌を躍らせたのなら、 話題は幾つか渡っていき。 水面が枯れ果てる前に確りと注ぎ直した主のグラスも、 再び半ばまで減り、私の手元のそれも水位が下がってきた頃。 ふと思いついたような切り出しと共に、温度無き手が触れる やはり、あの消失は彼の体現の為だったらしい。] ああ、…… [グラスを置き、礼を言おうとした声が──途切れた。 ブローチの置いてあった場所にある本に、 今更意識を向け、そして気づき目を見開き固まったからだ。 それは私がアレイズ=クロウリーとして書き上げた 魔術と思想を人々に伝道する著作物の内の一冊である。 他の信仰者の書籍も保管されていることを知っている。 決して、おかしな話ではないのだが。] (124) 2022/05/25(Wed) 2:44:02 |
【人】 落星 クロウリー……ありがとうございます 奪われていなくて、本当に良かった [再び浮かべた笑みはぎこちなくなっていた。 先程までと変わらぬ振る舞いを続けているようで、 黒混じりの黄を見る翠には、確かな怯えが滲んでいる。**] (125) 2022/05/25(Wed) 2:44:22 |
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