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【人】 会社員 ツグアキあなたみたいに綺麗な方が 俺みたいに勉強しか取り柄のない男と お近づきになるメリットなんて 俺には思いもつかないですよ? [ からからと爽やかに笑ってみせる。 込み上げる笑みは、本物だった。 だって、初恋が実った日の幸福体験を 書き込んだどこかの誰かと こんなに似ているなんて。 ───こんなに別次元のものなのに。 (30) 2022/06/12(Sun) 6:05:43 |
【人】 会社員 ツグアキ[ こんなに様々な面において文明は進化しているのに なんで未だに論文は紙で提出なんだろうな。 馬鹿馬鹿しい、と思いつつ 整える束が微かに震えているのを感じていた。 堅苦しい文字が蚓のようにのたくっている 紙の束の表面 『腎臓内における神経の走行について』 なんていう仰々しいタイトルは あなたの目に映ることがあったか。 脳へ記憶されただろうか。 ] ……そうだな 次は俺からナンパするよ。 (32) 2022/06/12(Sun) 6:08:05 |
【人】 会社員 ツグアキ[ 一応ね、弁解しておくとその約束を きちんと守るつもりはあったんだ。 命を削って書き上げた論文が 理事長のご子息様の名で大々的に 発表されるのはすぐのことで。 そうだな、残念だったよ ……ナンパ出来なくなったこと。 各方面からの良い評価を 作者では無い"持ち得る者"である お坊ちゃんが得た事実は、 あなたの耳にも届いただろうか。 その時俺の姿はもう学校には なかったかも知れないけれど。 ] (33) 2022/06/12(Sun) 6:10:52 |
【人】 会社員 ツグアキ*** 『ストレスチェック……重大な症状が 潜んでいる可能性があります。 速やかに専門医の診断を受けましょう。』 [ 机の上で紙がかさりと音を立てる。 職場の健康診断の結果をもらった時は驚いた。 まじまじと穴が開くほど見つめ 可笑しいな、ストレスなんて あるはずないのに、と笑った。 きちんと緩やかな位置に固められた口角は そのままに、指定された病院の 予約時間を確認して、笑ったままため息を吐く。 ] (34) 2022/06/12(Sun) 6:15:34 |
【人】 会社員 ツグアキ[ 気づけば外はいつのまにか日が傾いて 電気もつけずに狭い部屋で一人 イヤホンを耳に、借り物の幸福に揺蕩っていた。 耳の上から宝物のように両手で大事に 覆い包み込んで、目を閉じる。 空腹感もあまり感じない。 食事を摂ったのはいつだったっけ。 立ち上がるのもめんどくさい。 歩くことも面倒なのに、 指示されたことに背くことも面倒で、 ノロノロと病院へ向かう。 病院なんて 一番、行きたくないのにな。 ] (35) 2022/06/12(Sun) 6:17:28 |
【人】 会社員 ツグアキ[ 医者になりたいと願って 掴みかけた幸福のこと、思い出してしまう。 まさか、そこで ナンパの続きが、 時を経て不意にやってくることになるなんて。 (36) 2022/06/12(Sun) 6:19:40 |
【人】 医者 サキ[ 母を助けることが出来なかった。 形だけは一人前に医者になり ただ1人治すことの出来なかった 患者のことを、ずっと引きずっている。 希望は咲き終えた。 そうだな、きっと、花じゃなかったんだ。 土壌が腐って、内側から蝕まれて、枯れた。 この大地に木が植わることはもうない。 …ない、はずだ。 ] (37) 2022/06/12(Sun) 15:35:53 |
【人】 医者 サキ[ 俺はいつもアユミに聞いていた。 「二人とも元気にしてるか」と。 俺がマユミに聞くことはなかった。 「二人とも元気にしてるか」なんて。 ] (38) 2022/06/12(Sun) 15:36:26 |
【人】 医者 サキ[ 世間に死の烙印を押されたのは船越亜結実。 今ここで息をし話しているのは船越真結実。 俺が理解るのはそれだけだ。 傷を抉らないように、触れないように。 聞くことがなかったのは、聞けなかったのは、 隠れているほんとうなど知りたくはなかったから。 その命に優劣も望みもありはしないのに。 ] (39) 2022/06/12(Sun) 15:37:50 |
【人】 医者 サキうーん……まあ、 ほら、 個人経営の医者なんて忙しいしさ、 すぐフラれちゃうんだよ いいのいいの。 使って貰えた方がチケットも報われるだろ [ 歯切れ悪く、適当な理由を1つ述べる。 最後はけらけら、笑って受け取るのを眺めていた。 実際の理由なんて次男だから、 面倒な嫡男がいるから、 メリットが見合ってないから、 上げだしたらきりが無い。 ゆらり、心で黒いものがもやつく。 診療時間が終わりかけていることを指す 時計を見やると、また口角を上げた。 ] (40) 2022/06/12(Sun) 15:38:24 |
【人】 医者 サキおー、楽しみに待ってるよ 無理しないでな、お大事に。 [ 友達と行く、もお土産を買ってくる、も 消化されることがないとは、知らず。 ひらひら、手を振って見送った。 次に来た時だって、つけ込む気はなかったさ 今のまま、いてくれたのなら それでよかった。 想像するはずも無い。 日常は続かないだなんて、そんなこと。 ]** (41) 2022/06/12(Sun) 15:39:17 |
【人】 内科医 カナ[やっぱり信じてはくれないらしい。>>29 しかも得は思いつかないとまで言い切られる。 決して間違っているとも言い切り難い損得勘定は 卑屈という感情を正確に体現していたから。>>30] 損と得だけで動けるほど私は賢くないよ。 でも強いて言うなら... 興味を持った人と話が出来るのなら それだけで得になるものじゃないかな? [得がないといえば嘘になるけれど それが全てというのは全くの嘘。 でもそう、あなたに嘘をついても きっとバレるって直感が警笛を鳴らすから 思うことは正直に伝えるようにと決めて。 見えた黙示録とあなたのお誘いに>>32 この話の続きを、 期待を胸に待ち焦がれた。 ] (42) 2022/06/12(Sun) 18:40:34 |
【人】 内科医 カナ[ちゃんと約束した予定じゃないけれど それでも私にとっては大切な予定だった。 彼の努力の結晶に触れる時間 その精製に至るための苦悩 聞きたいことは山ほどあるし 話してみたい話題も山ほどある。 だから私はあの日、講義が全て終わって 彼が私の元へ来てくれることを 待って、待ち続けて。最後には探して。 その未来を見失った。] (49) 2022/06/12(Sun) 18:51:49 |
【人】 内科医 カナ[あなたの身になにがあったのか。 その日の夕方に見た大学の広報に載った 『腎臓内における神経の走行について』 という論文のタイトルと学会発表の予定日。 どこにも見当たらない研究者の名前 それが、答えの全て。] (50) 2022/06/12(Sun) 18:53:50 |
【人】 内科医 カナ[不意に目線は机の天板へと向かう。 そこにあったのは私が卒業した来年に発行された 学会が監修する学術誌。 私が卒業時に書いた論文は今もここに掲載され 当然引用された論文だって書かれている。] 『精神障害における腎機能の症状と 神経伝達機能との因果関係』 [この研究だってヒントを貰ったのはあなたの論文。 けれどその栄光はハリボテのお坊ちゃまに向けられ 本当に栄誉を受けるべき人は消えたまま。] (53) 2022/06/12(Sun) 18:59:26 |
【人】 内科医 カナ[あの論文の研究者名を黒で塗りつぶしたページを 開いたまま机に置き直すと 新人の看護婦の子に声をかけて。] 次の方が今日の最後の診察です。 適宜休憩しつつ、入院されている 患者さんの様子を診ておいてください。 [Override Syndromeの重症化に苦しむ患者達の 様子を案じなが指示を出すと、予約されていた 患者の名前を確認して目を丸くするのだった。]** (54) 2022/06/12(Sun) 19:06:13 |
【人】 女子大生 マユミ[ 火事以降、暫くこのアカウントは放置状態だったから、 単純にその間にフォロワーが減っている というのも勿論ある。 それでも、私がこのアカウントを引き継いで 定期的に投稿をしても、 フォロワー数やファボの数は緩やかに減少していった。 それが全てではないと分かっていても、 それこそが真と亜の力量の差なのだと、 突きつけられているようで……。 付け焼刃の努力など、しょせんこんなもの。 ] (56) 2022/06/12(Sun) 19:22:38 |
【人】 女子大生 マユミ[ きらきらした、幸せな、 ちゃんとした人生を引き継いだはずだった。 "船越真結実"は、今もこの世界に生きている。 私がその名を引き継ぐことで、 一縷の希望を現実に結び付けたつもりだった。 ……厚顔無恥にもほどがある。 この体たらくはなんだ? SNS上ですら、きらきら女子大生を維持できていない。 ] (57) 2022/06/12(Sun) 19:23:14 |
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