203 三月うさぎの不思議なテーブル
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そういう生活、結構気に入っているし、
自分を不幸と思ったことはないんだ。
バイクも変わらず大好きだし……
ってそれは今日、伝わったかな
ここまでの通り道も、そういやここで
転がったな、とか思うくらい。
でも、君のことを意識しはじめて
少し、考えたんだ。
――俺は、俺はね
好きな人が幸せなら別に隣にいるのは
自分じゃなくてもいいってずっと思ってた
[ ペットボトルの蓋を空ける音。
静寂の中では、大きく聞こえる気がする。
ひとくち、冷えた水を流し込んで ]
これからもそうなんだろって思ってた。
けど、どうもそうじゃないみたいだ。
君がもし、好きな人がいるんだと
そう言ったら、俺はきっと、それを
応援することも、祝福することも、
できないと思う。
誰かの幸せより、自分の欲を優先する
っていうのかな、今ちょっと実感してる。
なので、こういうことも込みで
[ 跳ね除けられることがなければ、
君の手を取って、隙間なく、握り ]
君の隣にいる権利が欲しい。
これを言うには、どうしても
昔のこととか、知っておいてもらわないと
フェアじゃないよなって思って。
あと今少し話題になってるから、
迷惑もかかるかもしれないし。
――あと今更だけど、男の子に
そう思うのは初めて。
俺も自分で戸惑ってるんだけど。
[ じ、っと君の顔を見る。 ]
最初は、良い顔みたな得した
笑顔いいな、とかそんな普通の気持ち
だったんだけど。
あと胃袋掴まれてるからか?って
思ってた時期もある。
おいしいんだもん、那岐くんの作るご飯。
そのうち、後輩の面倒見てるの
優しいなぁとか、食べ終わったのよく
気づくなぁとか。よく目で追うようになって。
名前、教えてくれたときに確信した。
[ 繋がれたままならその手を、
そうじゃなければ自分の手を、
忙しい音を鳴らす、心臓の上に。
肉と血とそれを通しても、生きてる
音
は
伝わるだろう。 ]
もっと知りたいと思うこれが、
恋なんだなって。
今すぐ俺を好きになって欲しいとは
言わないけど、少し意識してくれないかな。
言って良いなら言うけどね
ああでも、……こないだ店いった時
帰り際、困らせたかなって少し、思った
それは本意じゃない。
俺の好き、は那岐くんの迷惑になるかな。
もしそうなら遠慮なく。
それで消えやしないけど、
役者だからね、上手に
演じて見せるよ。
[ 長い話はこれで終わり。
最後に向けたのは、
役者らしからぬ、弱々しい笑みだった。** ]
| [注文内容の共有後、遠藤 >>78から聞かれたことには] 鴨、やらせてよ。 [にっと屈託なく笑って、ローストを請け負う 自ら請け負う形での返答にはなったが、瑞野や大咲の手もここで借りることになろう。 それから小声で伝えられたことにはたと瞬いて――] ありがと。 じゃ、お言葉に甘えて、鴨以外はひとまず シャミーやみんなに引き受けてもらおっか。 [それで結果的にこちらの手が空くことになったなら、他のオーダーの助力にも回る心算で。] (163) 2023/03/10(Fri) 8:48:55 |
| [と、ここで、わざわざ遠藤がスタッフ内だけの小声で訊いてきた訳を察して苦笑いをひとつ。] こないだは色々アレだったけど……、 今はもう、そんなに無理とかないから、大丈夫。 それより私こそ、シャミー調子悪そうだった時に あんなドタバタやらかしたりして、ごめん。 [法事の後から今まで伝えそびれていた謝罪をそっと添える。 あの時点で >>2:209遠藤の具合に微かに勘付いてはいたのだが、きちんと振り返れることができたのは、大分後になってから。] (164) 2023/03/10(Fri) 8:49:31 |
| あ、ツユりん……いらっしゃいませ〜! [栗花落 >>81の来店の際、挨拶の言葉をかけるまでに僅かに間が空いた。それでも、ゃんと、いつも通りの明るいゲイザーの笑顔を向ける。 シュネーバルの感想のこと、2枚のチケットのこと、それにサキサキのクッキーの感想を貰った時のこと……一気に脳裏に押し寄せてきたそれらは、一旦頭の片隅に追いやった。 応対は遠藤が承ってくれた >>98ので、速崎は鴨のローストのほうに専念する。] (165) 2023/03/10(Fri) 8:50:11 |
| [イチゴのショートケーキとオススメケーキのオーダー >>85も、貝沢にカクテルを届けた際にきっちり聞いていたが、そちらはフィエらの担当になろう >>105。 嘉数 >>104の呟きも、後々のことも鑑みて、自分の意識の中にも留めておく。] チエりんも、作る方、板についてきてるかな。 [この前のブロッコリーのトマト煮込みのことも思い出しながら、ぽつり。 とはいえ、今はお喋りよりもオーダーの方が先。 栗栖からの追加のお肉もう一品 >>97も把握してはいたが、そちらは他のスタッフに任せて、まずは鴨のローストを仕上げてしまう。 進捗を問う遠藤 >>122には、「あともう少し」と短く返答を。 実際、もう少しで出来上がり、といった調子で順調に進んでいる >>124>>125。] (166) 2023/03/10(Fri) 8:50:30 |
| [鴨を手掛ける間にも、新たにお客様が『うさぎ』の穴を潜るのは把握している。 いつかの日と違って、その程度の余裕はちゃんと持てていた。] いらっしゃいませ、ハヅキん! [気まずいことなんてない、といった明るい笑顔で葉月 >>134に挨拶を。 泥酔事件があったゆえに、告白絡みの件とは別の意味で気掛かりもあった訳だが――仕事疲れはともかくとして、アルコールの件では一先ず大丈夫だったようで >>136、ほっと一息。] (167) 2023/03/10(Fri) 8:50:54 |
| [で、その葉月の、美澄宛てのオーダー >>138に、イヤーマフの下の耳がぴくりと動いた。 端から聞いている立ち位置の速崎まで若干神経質になっていたのは――まあ、そういうこと >>17である。] タイガー。 監修ちゃんとやってもらえば大丈夫。 Okay? [美澄 >>141を軽く睨んでから、大咲にも目配せを。 先ほどのメロンシャンパンソルベはつい率先して自分が作ってしまったが、大咲の手に余裕があるなら、監修役は率先して引き受けて貰おうと。 イギリス帰りのアリスブルーの新人の葉月への応答 >>146>>148を見るに、調子には乗らないだろうとは思えたけれども。] (168) 2023/03/10(Fri) 8:56:23 |
| [さてこの通り、大咲とはこの日きっちり厨房で顔を合わせられた訳なのだが、交わすのはキッチンの応答と連携。 飛び出したあの夜に残した気掛かりのことは、無し。 何故、今こうなっているのか。それは暫し時を遡り――。]
(169) 2023/03/10(Fri) 8:56:56 |
| ― 過日:置き手紙 ― [瑞野と速崎のトレードカラー交換に、店長は惑わされなかった。流石だ。 ともあれ、呼び止められて託されたもの >>99を手に取り、キャスケットを被ったまま頭を小さく下げた。] ……ありがとう、ございます。 [折りたたまれた手紙の中身はその場では見えなかったから、お客様からの何かしらのクレームの可能性も頭には過った。 法事前日の一件といいこの日の業務態度の危うさといい、最悪クビでも文句は言えない。 この呼び止めも店長からのお叱り、の心算で、手紙を受け取った。 この置き手紙は、まだ業務が残っていたこの時には開かず、バックヤードに置いておくことにした。] (170) 2023/03/10(Fri) 8:57:16 |
| [終業後のバックヤードで、後片付けを終えた後にその手紙 >>n4を開いた。] ――――…マシ、 [思わず名を紡ぎかけた口を止め、文面を読み進める。 話し合えたのを、ちゃんと見ていてくれたこと。 その人からも、話したいことがある、と。 けれども、まだ、今はその時でないということも。 綴られた文字の、そのひとつひとつに―― 記された約束に、目を落とす。 璥は、長く、長く息を吐いた。 その溜息は罪の意識のようでもあり。 けれども、確かな安堵もあった。 簡易なメモ用紙なんかではないレターセットは、この時、速崎の手に届くところには無かった。 だからこの手紙への返答は、文字通り、一旦家に持ち帰る。] (171) 2023/03/10(Fri) 8:57:47 |
| ― 過日:置き手紙の翌朝 ―
[アパート自室の小さなちゃぶ台の上に、空になったシュネーバルの包装がひとつ。 卓上に不格好にぼろぼろと零してしまっていたチョコレートがけの雪玉の欠片はちゃんと払い落し、卓上の油痕も綺麗にふき取ってから。 レターセットから一枚の便箋を取り出し、ペンを手に取る。]
『 マシロ
ありがとう。 待ってる。ゆっくり、待ってるよ
ケイ 』
[B5サイズの便箋に綴るにしては、あまりにも短すぎる文面。 それでも、あの手紙をくれた今の真白を受け止めていることを示そうと、きちんとした手紙に返事を書いた。] (172) 2023/03/10(Fri) 8:58:21 |
| [この便箋は四つ折りにし、次の『うさぎ』への出勤時に携えていった。 大咲本人の手で手紙が届いてこなかったことも鑑みて、速崎もまた、バックヤードの御堂にこの置き手紙を託すことにする。]
店長。この前はお手紙の件、ありがとうございました。 その、また店長にはお手数掛けさせちゃいますが、 この手紙、マシロに渡していただけますか。
それと……、もう次からは、お客様の目の前で あんな風に取り乱したりはしません。
[今の自分はもう大丈夫、と示すように口角を上げてみせてから]
だからこれからも、私をここに、居させてください。
[いつものオレンジのイヤーマフを被った頭を下げて、願い事、ひとつ伝えた。**] (173) 2023/03/10(Fri) 8:58:42 |
[「荒れていた」と彼女自身がまとめた時代に彼女にどんな経験があったのかは知らない。
友達はその頃からの子が多いらしいが、どういった会話をしていたのかも知らない。
恋を知らずとも、誰かと過ごす夜は、と気になった一瞬もあったけれど。
どうやらその心配はしなくて良さそうなのかなと思うことが時々ある。
「全部食べて」もそう、
「寝る時」も、純粋に何の計算もなく言っているのだろう。
これまで実は危険だったことも結構あったのでは?
これから他の人がその無防備な可愛さを知る機会は全部自分が摘み取ることにする。]
[季節それぞれにおいしいものはたくさんあるから、食べ物に紐づいた好みで言えば、好きな季節は「全部」となる。
敢えて言うなら冬には自分の誕生日があるものの知り合いから忘れられがちなところもあるので、後で気まずい空気になるくらいなら誕生日はなくても良いかなと思っているので冬はなくて良いかもしれない、くらい。
店で誕生日を祝われる人がいればいつだって周りと一緒ににこやかに歌う自分の誕生日は、彼女以外はスタッフも客も誰も知らない。
けれど彼女の誕生日も冬ならば、これからは冬がたくさん来ても良い。
祝いたい。
祝われたい。
好きな人が出来て、好きなものが増えるのが――
相手の好きなものを増やせるのが自分であることが嬉しい。]
[胸板に彼女の身体が飛び込んでくる。
眼下でポニーテールがふわり揺れ。
その身体をぎゅっと抱き締めた。]
うん、お疲れ様。
……うん。
うん。
[零された言葉は具体的な内容ではない。
「私なりに解決出来たら」という言葉に強い意思が籠る。
解決したい、
解決するために頑張りたい。]
応援してる。
[腕に力を込めた。
どういうことかよく知らないのに、頭から「自業自得じゃないよ」なんて全肯定する言葉は出さない。
彼女にとって自分が自罰感情の沼から救う存在と認識されている、その信頼が嬉しい。]
疲れたらこうしてぎゅっとして、
「大丈夫」に戻してあげる。
踏み出す足が震えそうだったら思い出して。
「マシロちゃんが好きだよ」
[頑張りたい時にも頑張れない時にも傍に居る。
話すこと、また話さないことで「壊れたりしない」。
この腕は物理的には特別強くはないけれど、
彼女にとって一番最適な止まり木だという自信がある。]
[ケトルの中で湯が湧きたつ音がし始める頃、真白が「リセット」と言葉にした。
それを合図に少し腕の力を緩めて、少し下にある彼女の顔を見る。
お願い?と小首を傾げて]
[ケトルより先に、自分の体温が沸点に達した。
ここで!
名前呼びは!!
ずるい!!!!!]
[今日だけで何度この無防備な可愛さにやられたことか。
ああもう同じ角度に首傾けちゃって!!
かわいい!!!!!!!!!!
]
だめなわけないでしょ。
布団くっつけて、くっついて寝よ。
――ずっと手繋いでる。
[その想定が友人同士のお泊り会の感覚だということはわかってはいるんだ。
今から食べるマンゴー杏仁タルトに、理性を強く保てる材料は入っていますか、ねえナギちゃん―――――*]
| (a36) 2023/03/10(Fri) 12:21:58 |
[微笑みを交わして、返ってきたのは同じ言葉。
行きたいと言ったのはこちらの方。
だから、ゆっくりと首を振り返して湖へと視線を移す。
海よりも穏やかな波。
漢字は違えど、凪とはこういうものかと感じながら。
昼食の話になれば、同意するように一度、頷いて。
彼が座れば、水際から戻って隣へ並ぶように腰を落ち着けた。
話を切り出す声に、視線を一度交えた後に、また湖へ。
隣合うから、自然と同じ方向を向いた。
聞いて欲しいという時だけは目を見合わせてまた頷きを。
ゆっくりと紡ぎ出される話に、耳を傾けていく。]
[メッセージで聞いたような
自己紹介から始まったその話は、彼の過去。
改めて彼の口から語られる職業と事故の話。
知っていたことと、初めて耳にすること。
先程、通ったばかりの道で
彼の人生を変えてしまうほどの
出来事があったと聞いた時には、
目を瞠り、思わず指を指し示した身体を見つめて
顔を見合せた。]
[バイク事故に遭った人の話を聞いたことがある。
その人は、バイクの怖さを知って、
もう二度とハンドルを握ることは無くなったけれど。
彼と同じように九死に一生を得たのだと言っていた。
今でもバイクに乗る彼は、
恐れよりも愛しさの方が勝ったのか。
幸か不幸か、まだハンドルを握っているようだけれど。
身体で感じれる風の気持ちよさを、
教えてもらったばかりだから。
否定することも危険だと伝えることもしない。
それは、彼自身が誰よりも知っていることだろう。]
[不意に、話の質が変わる。
ペットボトルの開封の音が妙に響いて、
水を嚥下する横顔を見つめて。
遅れるようにしてつられるように、缶を開けて。
コーヒーを一口。
砂糖もミルクも入っていないコーヒーは、
彼を同じブラック。
苦さを口に含んで、腹の底に押し込んで。]
[俺の好きな人を気にするように、伺う視線。
伸ばされた指が、自身の手に触れ、捉えられた。
少し、冷たい中に、確かに伝わる温度が残っている。
彼が、生きている証。
熱がゆっくりと覆われた掌から
伝わってくるのを感じながら。
向けられた視線を受け止めるように、
手元に落とした視線を上げる。
自身と同じように異性が好きだった人。
戸惑う心に、少し共感するように微かに微笑んで。
やがて彼の視点から話される自身の話になれば、
少し面映ゆかったが、
握り込まれたままの手を振り払うことはしない。]
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