人狼物語 三日月国


209 賢い狼さんと生意気な子猫の小旅行

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視点:


[どっちも、と落とされた言葉の意味を掴めない。
 少なくともツァカリにとってはどちらかしかなかった。

 僅かな嘘も見抜けない程の浅はかな千里眼しか
 持ち合わせていないから、彼の機微を拾うことも
 興味が向いていたことにも気づかずに機嫌を損ねるだけ。]


  …………――、


[それでも、脱衣所から扉を開け、洗い場に向かう前には
 背中からの視線を気にするぐらいの
 いじらしさはあったかもしれない。]

[自身の思い通りに事が運ばなければ興味を失くす。
 それでも、放っておかれてしまえば尻尾は揺れる。

 自由に気ままに生きてきたが故に、主張は強く、
 気位も高くなってしまったものだから。
 
 つれないと言いながらも旅行に連れ出し、
 付き合ってくれる恋人には甘い顔をしたいのに。
 素直に求めることもできなくなってしまった。

 否、寧ろ関係に名前がついてからのほうが、
 いくらか動きにくくなってきている気がする。

 互いに『遊び』と称しているほうが、
 相手を気遣うこともなかったけれど。

 いつからか、甘やかす腕を覚えてしまってから、
 窮屈でも居心地がいいと思えるようになってしまったから。]


[これでも存分と自分は素直だと思う。
思っているだけなのかもしれない。
でも、嘘は含有していても全てを偽る事は少ない。

かつては自由が少なかった分、自分なりの自由の中で
流れるがままに遊ぶしかない為、意志は軽かった。
故に物事を曖昧に表現し誘い込むタチがある人狼は、
人を騙して抱き抱える事ばかり。
気儘に楽しんでみせて、弄んでから手放して、
気軽に手を出してみせて、貪欲に遊んで、
それから取っ替えるようにして食っていた。]


 (そんなに薄情に見えっかねぇ…?)


[…求められる事は割と多かったかもしれないけど、
大体は相手の事なんて考えた事があっただろうか。

──間違いなく、身体も心も欲しくなったのは
黒猫であるからこそなのは確かだがね。
燻るほどに、君が欲しいと願っているのだから。
(関係ができれば出来るほど、難しくなっていく話だとしても)]

[──それはそうとしても、
これが遊びか、遊びじゃなかろうが、
『誘われた以上』は気遣うつもりはないが。]

[気ままに遊んできたのはどちらも同じか。
 そんな話を互いにしたこともあったかもしれない。

 寧ろどちらもそういう気質であったからこそ、
 馬があったというのも事実。

 彼が薄情かどうか知るのはこれからのこと。
 『欲しい』と言われた夜に戸惑い、
 受け入れたのはいつの話だったか。

 それから少し時間が経った今も。
 彼が同じように思っているかどうかは、預かり知らぬ所、
 疑り深い猫は、時に飼い主の気持ちを推し量る。]

 
 

  そりゃ、まあ。
  オレだって旅行をそれなりに楽しみにしてたしな。


[ぽたり、濡れた前髪から水滴が雫となって落ちる。
 良い顔、の自覚はなかったから、少し気恥ずかしい。*]