242 『慰存』
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[乳房をひしゃげさせていた手が離れれば、指は秘部の中へと押し進む。
拒絶どころか悦びさえ示すように溢れる蜜を指先に塗ると、潤滑剤など必要ないほどに濡れていた。
自分を慰める道具がパソコンの横に置かれていれば七海の普段の行いも少しばかり想像がついて、玩具と指はどちらが良いのかと、まるで問いかけるように七海の肉襞を責めていく。
たとえ快楽に耐えられなくて溺れようとも、彼女の都合なんて一切慮ることはせず、ただ自分が満足いくまで責め立てていくだけ
欲を誤魔化すことをやめてしばらく、音のない静かな部屋で、荒い息遣いだけが響き渡っていた。]
[七海の耳元で囁きながら膝裏に手をかけて。
背中を丸めた七海に添い寝するようにその背に寝そべると、足を持ち上げて秘部の入口を広げて、ズボンの中から意気揚々と出てきた淫棒を入口に充てがうとそのまま擦り付けるように腰を揺らす。
このまま挿入ってしまったらその先には想像しえない快楽が待っていることだろう。それでも今はその快楽には手を出さず、葉山は七海を嬲っていく。]
[何時間にも及ぶ愛具遊びの中、絵の具を馴染ませるように重ね合わせ続けた秘部と淫棒が赤く色づき、白濁を吐き出したいという欲望が段々と精巣から湧いてくる。
とても耐えることは出来そうにない。
万が一にも逃げられないように抱きしめると、絶頂を目掛けて段々と腰使いが荒くなっていき、水の音も大きくなっていく。
もしも七海が起きてしまったのなら、抵抗はおろか抗議させないと口元を手で塞いでしまおうとさえしてだろう。]
[放出の瞬間、足を閉じさせると太腿の間に白濁を吐き出すその行為はまるで犬が臭いをつけるかのようで、太股と入口、足のつけ根に自分の臭いを染み込ませるとそのまま残り火を差し出すかのように淫棒で入り口に白濁液を擦り付ける。
しかしそれだけで終わるはずもなく、子種としての機能を果たせるか怪しくなった透明な体液を指で掬うと、そのまま肉襞の中にまで塗りつけてしまって、それからまた優しく髪をなでてやるのだった。]
[落ち着いてきた頃を見計らうと、七海の指を借りて勝手に開いたスマホの画面のメモ欄にメッセージとして残していく。
その言葉の意味はそのままの通り。
葉山は七海にお預けをすると衣服を整え、道具を外してあげて。
スマホのデータを複製して抜いてしまうと、部屋を後にしてしまう。
他人として外から見つめるストーカーと、特別な人間として簡単に中へと踏み込むストーカーが溶け合い一つの愛と狂気が産声を上げた。]
[その日を境に、相互監視という名の求愛は始まった。]**
[思えば、小さい頃からそう。
小説を読んで目を閉じて眠ってしまえば
私はその本に出てきたキャラクターとして
夢の中で物語を追体験していました。
それは、ジャンルが官能小説であっても同じで。]
っく、ふぁぁっ……!
やっ……ゆ、び…………!
[嫌がるように首を振っても
指の動きは止まってくれなくて。
ぎゅっと指を締め付けている様は
欲しいと浅ましくねだっているようにしか見えません。]
[誰も受け入れたことのない秘部。
誰かの指を飲み込んだことなどないくせに
待ち望んでいたと言わんばかりに
抵抗なく受け入れて。
快楽を強請るように指を締め付けて
その締め付けは少女の身体を追い込んでいく。
快楽に溺れそうになる少女への配慮など
微塵もない指先が襞を擦るたびに
好い場所に当たったのか、びくびくと身体が跳ねて。]
ま……って、んんっ……!
いっ……いっちゃっ……!
[絶頂の予感から逃げることは許されない。
譫言のように制止を繰り返しても
それが聞き入れられるはずもなく
少女は嬌声をあげながら、快感に溺れてしまう。]
[実際は起こるはずがないから。
本の中のキャラクターと重ね合わせて。
拘束されて逃げられない状態で
責め立てられる快感を夢の中だけで―――――。]
[耳元で囁かれる声にびくりと反応して
身を捩らせても拘束されているせいで
まともな抵抗なんて出来ません。
……力が入らないから、抵抗にすらなっていない。
ぼんやりと意識が戻ってきても
寝起きの頭では何が起こっているかよくわからなくて。
ただ、わかるのは、硬いものが秘部に当てられることと
それがたまらなく気持ちいいことだけ。
もうすこし、もうすこしで中にはいるのに。
疼く中に欲しくて、熱を埋めて欲しくて
押し付けるように腰が揺れて
その動きがもどかしくてたまらなくなるのです。
熱が陰核に擦れる度に蜜が溢れて
すっかり受け入れる準備は出来ているのに。
本当に欲しいものは与えられないまま。]
[何時間も焦らされ続けて
夢なのかどうかなんてどうでもよくなりかけるほどに
中への快楽を欲していた私は、
激しくなっていく動きと水の音にイヤイヤと首を振って]
これいやっ……!
ほしい、
ほしいのにっ……!
んんーーーーっ!
[抱きしめられて逃げられなくなって
抗議さえ完全に封じられてしまえば
部屋に響くのは水音と、荒い息遣いだけ。]
[待ち望んだ深い絶頂は味わえないまま
太ももに吐き出された液が垂れていく感覚。
お預けをされたまま、入り口をつつかれれば
欲しい、欲しいとはしたなく腰を動かして
勝手に入れようとさえしてしまいました。
でも、中に侵入してきたのは濡れた指先。
擦り付けるような動きから
きっと白濁を入れられているんだと察して。
直接注いでほしいのに、なんて
普通なら有り得ないことを考えている私は
妊娠するかもしれない、なんて
一般的な恐れなどありませんでした。]
[もともと疲れ切っていた私は
何時間にも及ぶ責めに体力を使い果たしてしまって
ふっと意識が途切れていくのでした。
勝手に私の指を使ってロックを外されていることも
メッセージを残されているのも
……侵入者の顔も、見ることは出来ないまま。]
[中途半端に昂った身体を宥めながら
好きな人を監視し続ける生活は変化を遂げて。
ただ、監視するだけではなくなっていくのです。]**
[起きたときにはもうすっかり辺りは明るくて
カーテンの隙間から陽が差し込んでいました。
昨日の出来事が夢ではなかったと証明するように
身体の内側に残る違和感と
体液で濡れたまま乾ききっていないシーツ。
そして……スマホに残されたメッセージ。]
[どうやって部屋に入ってきたのかなんて些細な事。
スマホを手に私はにっこりと笑っていました。]
[―――――つまり、デートの日まで我慢していれば
極上のご褒美をあなたからもらえる。
そういうことですよね?]**
―――――………。
[大学に着いてすぐと講義が終わって帰宅する前。
近くの公衆電話から葉山さんの携帯に
電話をかけては、5コール数えて切る。
葉山さんが出てくれたとしても何も喋らないのは
話すのが目的じゃないから。
ただ、一瞬声が聴きたくて
電話をかけたのが誰なのか考えてくれたなら
その思考さえ私のものにできると思うから。
電話をかけたのが私だと気づくなら
それはあなたは私を見ていてくれてる証だから。]
[あの日あなたがスケジュールを見せてくれたおかげで
忙しい日が続くと知っていましたから
少しでもあなたに元気でいて欲しくて
あなたのためを想ってあなたが好きな料理を作っては
いつものように開いている窓から部屋に置いてくる、
そんなことを繰り返すようになりました。 ]
[食べてくれてるかどうかはカメラで確認すればいい。
捨てられていても関係ない。
食べてくれるまで置くのはやめないし
食べてくれたなら置き続けるだけ。
料理には何の細工もしてませんし
きっとあなたなら食べてくれる。
―――――食べて。
]
[お礼?そんなもの要らないですよ?
勝手にもらっていきますから。
洗濯カゴに入ったまだ洗っていない服を
持ち去って、次訪れるときには新品の同じ服を
買ってきて戻すことを繰り返しました。
持って帰った服を抱きしめて眠る姿を見られても
別に構わないんです。
むしろ見ていて欲しい。
]
[だから私、いい子にしてデートの日を待っているんです。
いつも自分を慰めていたのに
それをやめて何度も、何度も寝返りをうちながら
無理やり身体を宥めて眠りにつく日々。
不燃ごみの日に玩具だって捨てたんですよ?
部屋に会ったら手を出してしまいそうだったから。]
[あの日から変化は目まぐるしい頻度で起き始めた。いつも決まった時間にかかってくる電話は要件も伝えずに切れ、当初は悪戯かとも思っていたのに、窓には好物だったものが置かれている。
もう隠れる気がないと言いたげな熱い想いを持ってなお、直接渡してこようとはしない。
何かに怯えているのか、それとも目的あっての事なのか。]