140 【身内】魔法使いの弟子と失われた叡智
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[蓋をしても、いずれ膨れ上がるもの。
留まり、濁す事は赦されない。
しかし男は、娘が留まる事を許した。
――生き続ける限りは。]
[親切で人助けをするような男ではなかった。
自分が住む森の秩序を守っただけの事。
人目には変化が無いように見える森にも、
大いなる循環の輪、自然の流れというものがあり。
季節が巡る度、生と死もまた巡る。
その境界はどこにあるのかと、かつて男は考えた。
運命など、地に生きる者の手に負えはしないが。
時にそれを絶ち、時に引き寄せるものがあるとすれば
それは意志の力だと。そう結論付け。
手負いの動物が、力強い目で見つめてくるのなら
それを助ける事もあった。
男にとっては同じ事。
光
を見た。だからこそ。
――例え、初めからその場に居たとしても
光の筋が空に伸びなければ、
引き揚げた遺体を埋葬して
そこで終わりにしただろう。]
[それだけだったから、感謝を求めはしない。
文句があっても、知った事ではなかった。
側に置くために拾ったわけでもないから、
居着かれたのは予想外だったが。
娘が自分で選んだのなら好きにすれば良いと、
邪魔にならない限りは放っておいた。
野良猫に愛想を求める気質でも無かったので、
威嚇されるよりも、擦り寄って来られる方が
奇妙な表情をしただろう。
そもそも、城の主の方が
野良猫よりも愛想の無い男である。
見せる顔といえば、笑顔よりも不機嫌顔、不満顔、
それから困惑した顔といった所か。]
[堆く積み上げられた本を、
綺麗さっぱり片付けられて
「あれは分かり易いように並べてあったのだ」と
娘を睨みつけた事もあった。
それでいて、片付いた本棚が
案外使い勝手の良い事に気付けば、口を噤み。
文句も言わなくなったが、礼の一言もないままで。
嫌々ながら、所用で人里に出る事もあった。
その時買い込んでくる食材に、
以前は無かった甘味などが紛れ込んでいたのも
理由を語るわけがなく。
城が綺麗になるにつれ、
美しい花を咲かせて見せる城にまで
「私に対する当て付けか?忌々しい奴め」
などと悪態をつくような男。
その声色に険があるかないか、
よくよく観察していなければ
わからなかった事だろう。]
[さて、千年も経てば人の世も変わる。
それは魔法使いにとっても同じ事。
男が生まれたのは千年よりも更に前。
魔法を受け入れる人々が
今よりもずっと少なかった時代、その頃である。
男の場合は少々極端だったかもしれないが。
当時、人目を避けて
隠れ住む魔法使いも珍しくなかった。
記された魔術書も、時には暗号のように難解で。
男には、歌を嗜む趣味は無かったものの
娘が来る前、音楽と魔術の関係について
研究していた時期があったので。
参考に集めた蔵書の中には、楽譜も数冊。
魔法使いと噂された音楽家の書き残した楽曲は、
魔力を持つ者が歌にすれば
何か
が起こる代物だった。]
[
紅
い光を見た時から、
娘に魔法の才がある事はわかっていた。
しかし、男に弟子を取るつもりなど無かったので。
積極的に何か教える事はせず――
強請られる事もあっただろうか。
ただ、歌に魔力の乗った時か、それ以外でか、
ふいにその力が溢れるような事があれば、
魔力の扱いだけはしっかり覚え込ませた。
魔法を教える事は無かったものの、
書物を漁ったり、見て覚える分には咎めなかった。
無論、危険があれば叱る事もしたが。
それ以前に、遠ざけようとした。
]
[世捨て人として暮らせば、外への興味も薄れる。
だから、娘の身の上について
不要な詮索はしなかった。
しかし、その魔力については。
――自身がこの地に独り生きる事を選んだのは、
持て余す程の魔力が原因だったから。
今はここに居る事を選んだ娘が、
いつか別の道を選ぶのならば。
彼女が
それ
に、煩わされる事の無いようにと。
そう思ってしまったのは、
隠者になり切れない愚者に未だ
人間らしい感情が残されていたためだろう。]
[何の因果か。
終わりが訪れるまで、たったの二年。
百年よりも長かった気のする、二年だった。]
[花咲く城で過ごした二年間。
いつの間にか眉間の皺が解けていたように、
娘に対する物言いも幾分和らいで。
結局、根負けしたのか、絆されたのか。
好きに解釈すれば良いと、
最後まで理由を告げようとはしなかったけれど。
二年の間に、男は娘と約束を交わしていた。
叶う事の無かった約束。
大嘘付きと罵られても構わなかったが、
それでも。]
[残してゆくつもりはなかった。
押し付けるつもりも。
何の枷も無く、ただ自由に、あるがままに在れと
それだけを思って。
――願いを口にするのが下手な男だったが
それでも、振り絞った一言は。]
『ルービナ。
お前はまだ、ここに居る事を望むのか?』
[最後の最後に。
男は、娘の意志を尊重した。]
[そうして、全ては引き継がれ]
[川を渡る前。
最後だからと、男は少々
我儘になって。
お喋りに付き合えないから、歌でも歌っていろと
そんな風に言ってきた、二年の建て前も取り払い。
「あの歌を聴かせてくれないか」
穏やかにそう言って、
少し物悲しくも聞こえるような、
優しい子守唄を所望した。]
[それから。
長い時を過ごした、城の声が聞こえなくなる前に。
娘の居なかった頃のように、一人きりの時を選んで。
「あいつがここに居る間、
お前が見守っていてくれ。
きっと泣くだろうから。」
と、言葉を残した。
赤くなった目を何度も見てきたのだ。
指摘などするわけがないから、
気付かれていないと思ったのだろうが
予測するのは容易い事だった。]
[そうして川を渡った男は、この世の秩序を守り通し
後ろを振り返りはしなかったから。
その子守唄、咲いた花、
紡がれる言葉の意味を知る事も無く。]
[輪廻の輪は巡る。]
[それは美しい物語――ではない。
生きる事に疲れ、
死に抗う気力も失くして、
涙を拭ってやる事もできなかった
情けない男の末路である。]**
[長く生きてきた師とは裏腹に。
経験の浅い少年だった自分は
授業≠フ一環として話を聞いていた。
――だからこその、無思慮。
]
それではやはり、溜まったものは
見えずともそこにあり続けるのですね。
…綺麗に見えるけれどな。
この湖の底には、
何が降り積もっているのでしょうか。
[飲み水にするには汚れているという湖。
そこに一体何があるのかと、
純粋な興味で師の顔を見上げれば
……あの時、どんな表情をしていたのだったか。]
[私の義眼は黒蛋白石でできている。
それは使用者の魔力と馴染ませるためなのだけれど、
宝石を使っていても、左右の見た目に違和感はない。
宝石魔術師は、その魔力の波長のせいか
宝石と似た色彩を持つ者が多いと聞く。
私の場合は魔眼持ちだったからか、
よく見ると黒い虹彩の上に
青
や
緑
が散っていて。
さながら黒蛋白石の遊色効果のように見える、
普段はそんな目の色をしていた。
…それだけでも珍しいかもしれないけど。
もっと珍しいのは、魔眼の力を使う時
別の色が混ざること。
赤
、
黄
、
橙
。
その色が今、仮面の下で煌めいている。]
| ─ 下準備後 ─ [ あら、もしかして ……気付いているのかしら? 全く、抜け目がないというか しっかり周りを見ているというか >>16 お見通しのようなその言葉に にっこり笑顔を顔に貼り付けたまま固まる。 わかるでしょう? 気を使われ慣れてないのよ。
だから、そう気遣って貰うと くすぐったいというか 照れ臭いというか……
貴方の弟子時代には よくあった光景だったかもしれないわね。 私は気がついていないけれど もう!私は今何歳よ!! 教えられないけれど 今更恥じらう歳でもないわ! ] (40) 2022/04/13(Wed) 23:26:03 |
| 久しぶりすぎて 楽しさの方が強いかしらね 貴方とこうして話せる時間が 大切だから 疲れてることを今は体がわからないみたい [ 寝落ちしないように気をつけなくてはね。 机の下で 「よしっ」と小さく両の拳をグッと握りしめて 気合いを入れ直したわ。 ] (41) 2022/04/13(Wed) 23:26:46 |
| [ これは…… 役得ね! 一度ならず二度までも 撫でることを許された手は >>17 調子に乗って わしゃわしゃとしたい衝動を 抑え込んで、堪えて…… 優しく撫でるに留めたわ。 こんな一時がとても嬉しくて暖かいのよ。 ヴィスマルトセラピーの誕生かしらね? もう少しだけ この時間が長く続きますようにと
願ったのは内緒よ? ] (42) 2022/04/13(Wed) 23:27:30 |
| [ 私の依頼を受けてくれたヴィスマルトへ >>19 にっこりと微笑みを向けて。 ] 楽しみだわ [ と一言。 そして─────…… ] (43) 2022/04/13(Wed) 23:27:55 |
| おかえりなさい 無事かしら!? 手とか足とか無くなってない?! [ リアントの肩や腕があるかを触って確かめながら オペラには頭を少し強めに撫でて (それでも加減はしっかりしてるのよ) 無事を確かめられれば ふーーー、と大きく息を吐いて 視線は目的の花、ジュエルへと移る。 ] (44) 2022/04/13(Wed) 23:28:53 |
| 無事で何よりよ 楽しかったかしら? なんて疲れているわよね 入ってお茶を飲んで休むといいわ ここからは私達と一緒に 万能薬作りをしてもらうわ 貴方達は見届けること 出来る限り覚えて欲しいの そして引き継いで欲しい 私たちの を (45) 2022/04/13(Wed) 23:29:45 |
| 今は下準備 本番は夜よ 月光と魔力と私達だけに与えられた宝石の力 それらを合わせて完成させるの だから夜には貴方達も出番があるわ (46) 2022/04/13(Wed) 23:30:01 |
| 月光と宝石は相性がいいの 月が宝石を浄化し 宝石がより力を発揮できるわ
それと共に草や花、水といったものを 全て浄化してもらうのよ 私の浄化と月の浄化 二段階構えであり それこそが万能薬を作る秘訣
そしてそれらを合わせ 奇跡とも言われる薬を作り出せるのが ヴィスマルトの力 なの 時間は0時がタイムリミット 0時を過ぎれば 邪の時間 となり 真逆の薬ができるわ (47) 2022/04/13(Wed) 23:33:37 |
| [ 万能薬の真逆……それはつまり 救いようのない毒 が出来てしまう。 0時までに浄化をしているのだからこそ 邪を全て吸収し 出来上がる毒は 解呪のできない呪いのよう……。 とはいえタイムリミットよりも 早く完成しそうではあるので 安心して欲しいと付け足して。 ] (48) 2022/04/13(Wed) 23:34:18 |
| ヴィスマルト 幻の花ジュエルは貴方に託します 私は夜の儀式の準備をするわ 各自夜までに 禊 は済ませておいてね 湖はすぐ近くにあるわ [ パチンとウインクをして まず私が行ってくるわねと出ていった。 ] (49) 2022/04/13(Wed) 23:34:41 |
| ─ 夜 ─ [ 夕日が沈む頃 月の光を取り入れる為 最低限の蝋燭の明かりが室内を照らす。 浄化の儀式。 禊を行い、身を清め、ヴェールを纏う。 ] 祈りの謳 今此処に 宵の静けさ 生命の調べ
遥かな時 古からの恵みよ
聖なる祈りよ
声を合わせ 魔力を一つにし
月の力よ
原始の欠片よ 浄化の光を 与えたまえ [ 月に手を伸ばし、言の葉を唱えれば 己の宝石が 光り出す。 ] (50) 2022/04/13(Wed) 23:36:22 |
| さあ、一緒に謳いましょう [ 4人の声が重なれば 月の光は一点に降り注ぎ それは、万能薬の素となる。 ]* (51) 2022/04/13(Wed) 23:37:40 |