人狼物語 三日月国


202 【ペアRP】踊る星影、夢現【R18/R18G】

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[彼女が食事を乞う。その言葉がとても嬉しかった。
 声はまだ弱々しいけれど]


  卵か……、鶏飼ってたりしねェよな?
  買ってこようか。


[小屋がこの有様では、ろくに食料が保存されていると思えなかった。
 村まで行って食料を買う生活が続けば、森の中に住んでいる人がいると知れる可能性は気にかかったが……。
 食べないわけにはいかない。特に今の彼女は。
 二人とも“狼”として食べたいものが別途あるとはいえ、ヒトとしての食事もまた生きるために必要なのだから。

 こうして、この地での彼女との二人暮らしが始まった。
 これは彼女が旅に出られるほど回復するまでの一時的なもの。楓はそう思ってはいたけれど、それが結構な長期間になりそうなことは予想できていた]

[共に暮らし始めて間もない頃、彼女が無理なく会話できるようになった頃合いに、楓がふと脈絡無く紡いだ言葉があった]


  なあ、椿……
  “いらないもの”なら後に残るはずねェよな?
  後に残るのって、それだけ重要なもの……、
  存在の核とか、柱や基盤とか……
  そういうものなんじゃねェのか……?


[それは確信というより、そうであってほしいという祈りだけれど。
 あの夢から覚めた後、彼女に思いを馳せる間に考えついたことだった。

 たましいを善と悪のふたつに分けて、悪を滅する。それが彼女が生み出された過程で、彼女は滅せられる側──不要物と扱われた側だった。
 それなら、どうして先にもう片方が消えたのか? どうして滅せられる側だったはずの彼女が後に残ったのか?
 真に滅せられるべきは向こうだったのか、それともどちらかを滅するという考え自体が誤っていたのか……そこまでは楓に理解の及ばないことだが。
 楓にとって、彼女は間違いなく『存在していてほしいひと』だ。それを補強する理屈がどうしても欲しかったのだ]*

[初めのうちは楓が食事を作ろうとしただろうけれど、そのうちに彼女が作ってくれるようになったのだろうか。
 彼女が歩けるようになったなら、短い時間でも共に散歩しようと誘っただろう。

 楓は彼女と一緒にできることが増えるたびに喜び、彼女が望むことを果たす助けであろうとした。寄り添い、支え、尽くし、触れ合った。連理の如く]**

[やわらかな温度が、いつもの温度が。
待ち望んでいたぬくもりが触れてまた涙が零れていく。
瞼を伏せていて気づけなかったけれど、それはきっと、アスルが零した想いとともに風に攫われ湖へ落ちるのだ。]

 なぁに、アスル。

[言えなかったこと。
不思議そうにも、予感しているかのようにも微笑む。
そうして彼の言葉にふわりと瞳に光が灯る。
たくさん見つめ、映し続けてきた群青色と空の色に近づいた瞳。
銀白色に憧れた月のような色の髪が彼の風をはらんで揺れる。

腕を伸ばして包むように抱きしめて。
まつげが触れ合うほど近くで見つめ、幸せを笑みにした。]

 私は、ペルラ・ルーチェは、あなたを愛し続けます。
 ずっと一緒ね。私のアスル。

[結婚し家族になって、寄り添いながら年を重ねていこう。
今、月明かりに照らされる姿も、ともに。]

[そうして抱きしめ合って。
ふと、目を瞬かせる。]

 アスル、やっぱり、随分待たせてしまったのね?

[前髪が伸びてる、と指先で額にかかる髪にそっと触れる。
彼に出会ってからなんとなく感じていたことだが、あの狭間の世界とこちらは時間の流れが異なっていたのだろう。

話したいことがたくさんある。
今の巫女はどうなっているのか、今の島の状況、お互いの家族の話、何より彼のこと――将来の話だって、したい。

でも、今は思うままに。]

 アスル、今夜はゆっくりしていても、いい?
 話したいこともたくさんあるし、あそこの小屋で。
 …………儀式のお役目の後みたいにも、ね?

[耳元で囁く声に、彼しか知らない色。
これからもアスルにしか聞かせない声を紡ぐと、]




 ――愛してる。
  
 アスルは私だけの風で、自由な鳥で、ずっと大好きな人。


[それは永遠に。**]

【人】 黒崎柚樹


[実は、料理をしていて歌を歌うのは酔ってる時に限らないのであって。

母さんから教わった昔々のアニメ映画の主題歌をもじった"肉まんの歌"とかもあったりして。それはね、けっこうな長編だし品名連呼ではなくて、こう……サビの部分の感情の高まりをいかに表現するかがポイント……いや、なんでもないです忘れていいよ。

ともあれ、だから(?)、"とらの歌"もそのうちに出来るんじゃないかな。
長編系なのか名前連呼系なのか、それはその時の気分次第なので、楽しみにしていて欲しい。]

 うん、ありがとー。

 ……あ、おにぎりおにぎり。

[さっきから武藤は、おかしな鳴き声を出したり >>203 、動きが不審だったり >>204 、ちょっとおかしい。

酔ってるのかな。酔ってるんだな。

仕方ないなあ、と笑う私は、自分の方が余程に仕方ない状態な事には、最後まで気付いていなかった。]
 
(209) 2023/03/13(Mon) 20:28:22
 一生が何度もあるってすごいじゃないですか……

 ん……上手。
 タマの方も舐めて?


[まるで心が読まれていたかのように、ビデオカメラのことを言われて苦笑してしまう。
でもそれだからこそ一瞬を切り取ろうとムキになってしまう。
鎖でわずかばかりに余裕があるとはいえ、いつもよりも自由がきかない両手。
彼は唇、口腔、舌、吐息だけを上手く使って、彼の雄を制御する。
そんな彼の髪を優しく撫でて乱し、もっとして? と指先だけでねだろう。
自分に奉仕しているだけでも感じているのか、きついのだろうか、彼の腰が揺れているのが分かる。

彼の喉仏が嚥下するかのように動く。
真空をつくられ、硬くそそり立った箇所が彼の上顎裏のざらついた箇所をこすって。
軽いタッチでシャッターが切れるはずなのに、それがひどく重い。
はぁ、はぁ、と上がる息の中、目の前が白く飛びそうなのを必死にこらえながら、シャッターを切り続けて]


 んぅぅっ!!


[立ったままだから、思わず身体をそらして、彼の方に腰を突き出してしまった。
我慢しきれず、放つそれ。
思わず彼の口から引き抜いてしまって、その美しい顔にどろり、とかかった白。それは彼の口元のほくろを隠す。まるで化粧をしているかのように。
見慣れているほくろが、それが消えているのが自分が放った欲の多さを表しているかのようで。
彼を縛るボンテージのエナメルの艶にも白がかかり、光が反射している箇所すら自分の慾が飛んだように見える。
穢されてなお美しい人。
奉仕のせいでこすれて唇が紅くなっているのが、艶やかでますます色っぽい。
ああ、抱きたい。
このままめちゃくちゃに犯したい。
しかし、それは我慢だ]




 …………最高の一枚が撮れたと思います。



[そんな風に言って、自分の中の欲を押し殺して隠してごまかして。
しかし、今撮ったこの写真を見るだけで、何度でもきっと自分は一人寝の夜に困ることはないだろう。
そして己ばかり欲を満たしたが]


 要さんは、お預け、ですからね。


[片目をつぶって、ボンテージスーツの中の熱を持て余しているだろう恋人にそう言い放つ。
それは意地悪なつもりでもなく……いや、実際少しそういう気持ちがあったのは否めないが……彼が“欲しい”という飢餓感があった方がいい写真が撮れそうだから。
終わったら、いっぱい甘やかしてあげるから我慢して?
心の中で、ごめんね、と謝った*]

 ああ、三か月ほどな。
 っていうことはペルラはそうでもなかったのか?

[そう聞くと時間の流れが異なっているという風なことを聞くが、プロポーズを受け入れてもらった熱い気持ちと再会できた喜びに、多少待っていた面での辛さなど気にも留めなかった。]

 そうだな…俺も話したいこともあるしな。

[彼女が去ったあとどう過ごしていたかとか、二人のこれからこととか。
それに…会えなかった時間と体温を埋め合わせる時間も必要だ。もう慌てなくていいなどといっても、急いた気持ちになるのは熱情故。]

 愛してる…ペルラ・ルーチェ…

[彼女だけを永遠に*]

[それから、彼女、元巫女であるペルラが帰ってきたことを伝えにいった。
力を使い果たしたら消えるといういわれる巫女が帰ってきたことへの反響などを考えてこっそりと、村のまとめ役の長老へと伝えにいったわけだが]

 「おぉ、新婚旅行から帰ってきたか?」

[第一声はそれであった。は?となったわけだ。
そこから色々と色々と話し合ったが、どうも色々と相違があったらしい。

一番の要因である、巫女が消える。ということに関しては―――だいたいが嫁入りしていく。ということらしい。]

[そこからは長い話が繰り広げられたが大雑把にいうと。相当前の巫女が役目を終えたときのこと、その巫女にちょうどいい年齢の結婚相手がいないということが判明した。
元々浮遊都市という閉じた世界。結婚適齢期から考えても過ぎており、そしてその時代、ちょうど奇数で余ってしまったのだ。
その頃の巫女はここまで特別扱いするという形ではなく、同年代の人と接触が多かったのも悪かったらしい、なんでも夫婦生活を自慢されたりしていたようだ。

そんな役目を終えた巫女の不満のため、婿探しに奔走したという大変な過去があったようだ。
そりゃまぁ巫女になって、自分の意志でならばともかく結婚願望や青春したい!と不満たらたらで人生を終えるなど悪いし、そんなことが広まっては醜聞になるので隠す必要があったようだ。次代巫女居なくなっても困るし、後の婿取りにも響くしな。ということらしい。

ちなみに先代巫女が消えたという件についても、行商人の人と結婚予定だったらしいが、力を使い果たした直後、旅立つ直前だったらしく、このままだと数か月は会えなくなるのが嫌になって飛び出していった、ということらしい。
ペルラとアスルもそれだと思っていて帰ってきたという認識でいたらしい]

 じゃあ…消えるってこう、泡になって消えるとか、死んでしまうみたいものじゃなくてってことなのか?

 「そんなおかしなこと起きるわけないじゃろ。」

[まさかの全否定であった。
だがまぁ、要するにペルラは戻っても特に問題なかったらしい。なんだったら自分もペルラの両親もこっそり知ってるとのことだ。
ちなみに守り人というのもそれっぽい理由をつけて巫女の退職後の付き合い先とかを用意していたという裏話も聞かされるが、非常に疲れた心地であった。

だが、あの現象って結局なんだったのか。という謎は抱えたものの、まさか現代側のほうが異世界と通じる原因になっていたなど二人には知る由もないのであった。]

[そして]

 準備できたか?ペルラ…

[アスルはやり残したことを遂げるために戻ってきた。そして今、それを叶える日だ。
彼は別れていた間、色んな島を巡り、そして他の島にある産物を持ち帰った。――それはゴムとそれを得るための苗木であった。]

 …いくぞ。

[蒼色に銀のラインが引かれたそれ鳥のような形に上部と下部に翼が広げられた、現代で言うところの複葉機に近い形のもの。操縦席の隣にペルラを乗せ、ベルトがまかれているのをチェックする。
エンジン音が響き、前部のプロペラがゆっくりと周り、異常の動きがないのを確認すると、発着所の面々へと親指をたてて合図を送り、固定されていた翼の支えが外される。
そして発着所からゆっくり走り空へと浮き上がっていく]

 …やっと…やっとできるようになったな。

[今回目指すのはペルラの故郷。高度が足りないからとすぐにはいけないといっていたあの山である。
時間さえかければ前からいくことはできたが、中心部から直でいけるようになりたい。とそう考えてしまっていた。

あれから月日が流れ形がつくられていったが、そして一番の問題となっていたのは着地の点。それを解決するのがゴムなのであった。]

[風を受け揺れる隣の月色の髪は美しく、高度をあげていった飛行機はハンドルを引くことで角度を変えて身体が真後ろに倒れるような圧を受けながら、中天まで伸びやか登り詰めていく。
この高さならば中央部から真っ直ぐにペルラの故郷へと迎えるだろう。]

 はぁ…無事いけそうだが、これからペルラの両親への挨拶のほうが緊張しそうだな。

[そんな軽口を叩くような余裕はあった。それは隣に彼女がいるという精神的な余裕でもあっただろう。まだ着地が残っているけれど、自分ならやり遂げられる。
翼が雲を引くように少し機体の制動を確かめるためのテスト飛行をいくつかこなし――というのも建前にして、彼女と空を楽しみながら、ペルラの里帰りへと向かうのであった**]

  ……どうかしら。
  元々の“わたし”は、知っていたのかもしれないけれど。


[彼女も全てを知っているわけではない。自分のことのはずなのに、まるで知らない他人のような気がするのだ。]


  たぶん、いなくなろうとしたのね。“わたし”は。
  ——本当に、お馬鹿さん。


[伝わりそうにはない、曖昧な言葉で語る。
 はじめにいた“彼女”が何をどう考えたのかは椿にはわからない。
 ただ、“彼女”は“自分”を消して正しく生まれ変わろうとしたのだと思う。それに従って、片割れは正しくあろうとした。
 しかし、人間の存在なんて、そう簡単に根本から変えられるものではないのだ。だから、失敗した。もう少し考えるべきだったのだ。古い書物にすでに“それは禁術とされている”と記されていた意味を。]


  でも、いいの。
  いまの私は、ちゃんとここにいるから。
  貴方が、ここにいていいと言ってくれるから。


[そう言って、椿は楓の頬に両手を伸ばす。今では随分、おねだりが上手になった。]**

[彼女の答えを聞きながら、考えた。
 元々の“彼女”──その人が男か女かさえ知らないのだけれど]


  自分が……嫌いだったのかな。


[『たましいから不要なものを取り除きたい』
 その欲求はつまり、自己否定から生じるものだろう。誰か受け入れてくれる人がいたら、そんな考えは抱かなかったのではないか。
 もっとも、その結果やっと椿が生まれたのだから、その行動を否定できはしないが。

 自分の存在を許さないような自己否定は、かつて夢の中で彼女が思い悩みながら伝えてくれた言葉の内容に通じるものがあった]

[だから今の彼女を見ているだけで楓は幸福だった。
 頬に両手が伸びてくると、彼女の腰に腕を回して抱き寄せた]


  うん。
  ……傍にいてくれ、椿。


[甘える彼女に甘え返して、くちづける。

 愛など、もうわかりはしないと思っていた。
 全て食欲に塗り替えられてしまったと。

 けれど“食べたい”という衝動にはいくつか種類があって、彼女に抱くのは特別なものだった。

 もしかしたらこの先、他にも見つけることがあるのかもしれない。失くしたと思っていた人間らしい感情を。
 見つけたところで人間に戻っていいと思える日は来ないだろうが、長らく感じていた絶望は少しずつ和らいでいくだろう。大切な人たちに抱く思いを噛み砕くにつれて]**

[お得やろ。と彼へ返す上目は告げて。
彼に褒められ、唇は小さな息を吐いた。そうして言われたとおり、双玉を舐めれば、甘噛みをして柔らかく射精欲を育っていこう。あまり自由の利かぬ手が彼のズボンを掴む。髪を撫でて乱す手に気をよくして、奉仕の大胆さは増していった。咥内いっぱいに広がる味は彼の存在を確かなものにしてくれる。硬くそり立つそれが、上顎を擦るのが心地よく、興奮が身体を貫いた。

窮屈な周りが、性を訴える。
見上げればシャッター音が聞こえ
自分の奉仕が彼のカメラに収まることを意識して、喉から嬌声が漏れた。彼の息づかいがすぐそばで聞こえる。自分の唇で、喉で、咥内で興奮してくれているのだと嬉しく、吐息を重ね。

その雄を育て、口で扱いた]


 ……んっ ぁ …ぁ 


[びくっと身体が震えたのは
腰を突き出され、一瞬喉の奥に彼の雄が入ったから、生理的なものと深い場所を愛される事への感激に涙が溢れ、引き抜かれた其れにより、肌は濡れた。白がかかったのだと理解したのは、香りと熱さから。どろっとした白を被った顔が鏡に見える。

黒子を隠す化粧のようなそれに
最初、目をぱちくりさせ]

 はぁ …ん
  いっぱい出たなあ。

[可愛いわ。と微笑み。
そのまま唇に乗った白をぺろりと舐めた。
苦みが広がる中、被った白がボンテージにもついていると気づけば、指で其処をなぞり。奉仕の笑みを赤く浮かべて見上げて、彼の褒めを待っていれば、欲を押し殺した声が聞こえ。

すごく――興奮した。
暴きたいとぎらつく視線が言う。
それなのに、それを律する彼が愛おしくて、たまらずいよいよ窮屈さは増して腰周りがきつくなった。吐く息が熱い。そして、薫る雄にくらくらとする。濡れたままの顔で彼を見つめながら]



 最高の一枚か。
  ええなあ、やけど

   ふふ……、お預けか。


[いじわる。と笑う声は言う。
抱いてほしいと彼にいう身体が火照るのを感じながら、言い放つ彼をじっと見上げて、手は浴室の床を撫でた。腰を下ろし、見上げた姿勢で白濁に濡れた姿は彼を煽るのを意識してのこと。『欲しい』という飢餓は、何も自分だけではないだろう。

一度精を吐きだしたとしても
まだ足りへんやろ。と彼に信頼を向け。]


  あのな?

   我慢するから後でいっぱい
           抱いてな?


[僕のこと、愛してや。と
オネダリをした。其れはこころの中で謝る彼に応えるよう。沢山甘やかしてと身体を起こせば、そのまま栗の香りのする唇で彼の口にキスをして、濡れた箇所を拭うようにオネダリしただろう。手錠に阻まれてうまくできへんねん。やなんていって。
彼が拭ってくれるのなら、その手を舐めて。

もう一つ、オネダリを]



 ……
ほんで、いっぱい好きって言ってや。達也



[僕は自分の好意があれば
我慢できるんやから。と囁き、耳に息を吹きかけた。
その顏は少しばかり赤かっただろう*]


[古く、古く。

 夢が辿る回顧]
 

[生まれはただの狐だった。

 のどけき春に生まれて兄弟と共に育ち、稜線が赤黄に染まる頃には巣を立った。山を駆けて鳥や虫を食らい、凍える冬を越した次の春にはひとつ上の雌と番った。生まれた内の二匹は死に、残った三匹が秋には巣立ち、役目を果たした番いとも自然と別れた。

 そうしたことを幾度か繰り返して、季節を何巡も重ね、生きるために食らい続けた。その日々には、鷹に襲われたか啄まれて体中に穴を開けたかつての番い、狼に喉元を食い破られだらりと足を揺らす幼い我が子、老いて弱り虫に集られた臭いを放ついつかの我が子の骸があった。

 彼らを数多く見送り続けて、己が“ただの狐”を逸していた事実に気づいてしまった。本来とうに死を迎えている筈の体は、生まれて数年の頃と殆ど相違なく衰えを知らない。生気を奪う術を得てからは更に頑健な体を手に入れ、縄張りとした山で恐るるもの無い主となった]

[唯一危ぶんだのは山に踏み入る人間だ。
 爪も牙もろくに持たぬくせに、獣を狩る術を持つ彼らは異質で、何をしでかすか読めない。

 かかずらうこともないと放っておく方が多かったが、怯えるのも癪なもんで、山を汚すような奴らは襲って喰らった。無謀にも己を殺さんとする馬鹿も同じ。飯を奉じる奴らが出てきた時には目こぼしをしてやることもあったし、虫の居所が悪ければ殺しもした。
 飯の中で最も腹にたまり力を増せるのは人だったし、奴らの持つ“もの”は面白い。姿を真似、言葉を真似、知識を吸うのは存外悪くない趣味になった]