人狼物語 三日月国


205 【身内】いちごの国の三月うさぎ

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[ そうして溶けるように眠ったため、
 夢を見ることはなかったかな。

 起きるか起きまいか、悩んでいると
 側に在ったぬくもりが離れたことに、
 気づいたのか、僅か数センチの隙間を
 埋めるように、ぴたりと擦り寄ってくる君は、 ]

 ん?起きる?

[ まだもう少し、眠っていたいようで。
 体を起こすどころか、微睡みのなかへ
 落ちていきそうだが。一応声を掛けて、
 振り返ると――。  
うわ、絶景。

 声なき声で呟いた。 ]

 そうだね、もう少し寝よう。
 こっちおいで。

[ 浴衣で寝ると、そうなるだろうと昨晩
 予測はしていたけれど。

 寝乱れて肩からずり落ち、緩んだ合わせから
 腿まで露出していて。

 実際目にすると、大変悩ましいお姿で。
 眠たげな姿もまた、あどけなさの他に、
 壮絶な色気を感じて、長いため息をついた。
 
 ――これ以上見ていると、昨晩の反省すら
 吹っ飛んでしまいそうなので。
 あと三秒、と決めて、眺め終われば

 布団の中に招き入れるように寄り添って。 ]

[ ――それが間違いだったと気づくのは
 慌ただしく、着替えを済ませた朝食の直前。

 布団の中に招き入れて、擦り寄ってくる
 ぬくもりに、僅かな眠気が勝てるはずもなく。

 と、いうか――、自分の節操の無さに、
 呆れてしまわれても、致し方なく思う。

 触るだけ、一回だけ。

 それを遵守はしたけれど、今までにはない
 起こし方をしてしまったことは、否めない。

 朝の光を浴びて、浴衣の合わせから覗く
 赤が鮮やかで、とは言い訳に違いないだろう。 ]

 ――ええ、とても

[ 浴衣を着直そうとしたところで、
 それでは見えてしまうからと、慌ただしく
 私服に着替えたところで、ドアノックの音がして。

 布団の上げ下ろしと、朝食の準備に
 伺いましたという仲居さんが、
 よく眠れましたかと、問うのでそう答えたあと。

 ――……あら、と小さく零した仲居さんが
 恥ずかしげに目を逸らしたところで、

 頬のそれ、に気づいたけれど。
 朝食を終えて、合流する際には、
 マスクをつければ、隠れてしまうだろうから

 特に何を言うこともなく、ごゆっくり、と
 彼女らが去れば、何食わぬ顔で、熱いお茶を啜った。* ]

[ぬくもりを求めるみたいに擦り寄った時、
 彼が起きているのかどうかは、確かめていなかった。
 眠っていたなら問題なかったし、
 起きていたら、もう少しと布団の中を長引かせたかも。

 だから、降り掛かる声には、]


  ……んー…… 、


[ぐずるように返事とも否定ともつかない反応を返して、
 身体はより、近づけるように額を擦りとぶつけて。

 絡めた脚を、もぞ、と動かして。
 脚に挟んでもらって、ぬくもりを求め。
 もう少し、うとうとと船を漕いでいて。]

[誘いの声に、ン、と寝ぼけたまま頷いて。
 眠ったときと同じように向き合う形になれば、
 もぞもぞと、胸の内に身体を落ち着けた。

 包まれる温かさが好ましい。
 身じろげば尚更、浴衣がずれて肩を露出して。
 腰元には帯が纏わりついている程度。

 邪魔な裾は後ろに残した分、
 顕になった腿でぴとりと片脚を挟み込んで、
 抱き枕のようにすれば。

 瞼を下ろしたまま、夢見心地にふにゃりと、笑んで。
 抱き込まれた安心感に満足して、
 くぅ、とまた眠りに誘われていく。]

[揺蕩うようにゆらゆらと、眠気に誘われるまま。
 しばらくの間、寝息を立てていた。

 もぞりと、動く手は抱き直すものだろう。
 その手が、悪戯に動くのに気づかないでいたら。]


  ……ン、



[鼻から抜けるような甘い声が溢れる。
 一度だけじゃなくて、数度。
 胸元がすぅすぅして、くすぐったくて。
 
 顕になった腿の間に彼の太腿が割り入れられて、
 朝の兆しを見せていたものを、下から押し上げられて、
 吐息混じりのあえかな声が、喉を突く。]

[約束していた朝風呂は、予定していたよりも、
 少し短く、慌ただしいものになったかもしれない。

 寝乱れた布団を仲居さんに直してもらうのは、
 とても居た堪れなくて。
 対応は彼に任せてしまって、少し長めに湯に浸かり、
 脱衣所でそのやりとりを聞いていた。

 何食わぬ顔で対応しているその人。
 朝から悪戯を仕掛けてくるような人です。

 仕事慣れから来ているのか、そもそもの性格なのか。
 今はその対応に助けられながら。

 彼女たちが部屋を後にしたタイミングで、
 ようやく脱衣所の扉を開けて、
 様変わりした部屋の眺め、タオルで口元を抑えながら。]


  ……上がりました、


[湯気を立ち上らせつつ、彼の向かい側に
 腰を下ろして、朝食を共にする。

 いつもとは、少し、――――違う朝。*]

[自分としては意地が悪い自覚はまるでない。
ないのだが、自分が求めたことで真白が恥ずかしそうにして
そしてここが重要なのだが――

 
結局拒否しない


というシチュエーションに相当興奮するタチだということがわかった。

「いまはだめ」のような取り置いてくれという願いは大体聞き入れるが
恥ずかしさが枷になっているだけならば、自分の言葉で視線で手で
それを外させたいという慾は留まることを知らない。

甘えん坊はどちらなのだか。]

[ここが外ということは咎められてもどこ吹く風で、
それならせめて挿入のタイミングは真白に任せようとしたものの、
限界まで育てられた刀身が子宮に会いたがって我慢ができなくなった。]


 ンぐぅ…………っ


[肩に鋭い痛み。
その衝撃も飛んでしまうような内壁の締め付けに、唇を塞いでいながらも喉奥の声が外に出る。

真白が達したことは痙攣から明白で、それでも止まれない。
抗うように抜き挿しを繰り返す。

いつものセックスのように肉と肉がぶつかる音は聞こえないが、
水音は派手に起こり、深くキスで互いの声を飲み込もうとする二人の頬にも飛び散った。]


 ・・、 ……ッ、 ッッ、


[段々外が暗くなり、岩風呂の周りの照明がつく。

どこかの部屋から聞こえるはしゃぎ声。
隣は高野と那岐なのだから、もう少し遠くの部屋から。

ただでさえ真白は体格の割に声がよく通るのだ。
甘く濡れた声だけは絶対に自分がすべて飲まないといけない。]

[ドドドドと間断なく注がれる湯は湯殿の温度を下げてはくれない。
何度か揺すっている内に頭がぼうっとしてくる感覚がある。
耳で響く鼓動だけが強く。

高まる射精感。]


 っん!


[唐突に、ここで射精してしまうのは障りがあるのではと思い至った。
内風呂の浴槽ならば栓を抜けば良いが、ここはいくらかけ流しとはいえ、循環にどれだけかかるかわからない。
零れてしまったら、その白濁をすべて掬えるか、自分には自信がない。

腰を支えている手を片方離し、背後の岩に手を掛けた。
繋がったまま湯から出ようと腰を浮かせる。

浮力によって水面付近までは難なく真白も持ち上がったが、
何せピストンの最中、そこから完全に持ち上げるのが難しい。
試みている間に何度か彼女の悦い場所を外して突き上げてしまい、焦らしているみたいになった。]


 
ふぐ……っ!



[力を入れて持ち上げる。
拍子に先端が臓器にめり込む感覚があった。
自分のものはそこまで長大ではなかった筈だが、
とにかく真白のポルチオを掘り当てたのは確かだ。

搾り取られる動きに目を強く瞑って。]

[尻を岩肌に強かに打ち付けた。
視界に火花が飛ぶ痛み。
弾みでぶるりと剛直が真白の裡から飛び出た。
くぱりと開いた洞の肉色が目に映る。]


 くっ……!


[もう一度挿入したいというのは叶わなかった。
外れた衝撃で堰が切られ、先端から しろ が勢いよく噴き上げる。

真白の腹に、そして胸元にも。唇の近くにさえも。

図らずも練乳を零した時に一瞬過った真白の姿を現実に見てしまった。]



 うあぁ……やっちゃった……ごめん……


[何とか湯舟には入らなかったが、真白の身体には2度目とも思えない量が散っている。
汚したことよりも]


 ……ここに、飲ませそこなった、


[腹を撫でて。
白兎のオーダーを完遂できなかったお詫びを。**]

[ あたたかさを求めて、擦り寄って
 いるのは知っていたし、眠たげな声が返ってきたから
 二度寝にしけ込む、つもりだった。のに。

 ぐずるような反応をして布団の中へ入ってきて。
 脚を絡めてくるのも、ぬくもりを求めての
 行動だとは分かっていた。

 寝ぼけたままで、頷いて、胸にぴたりと
 張り付いて、ほとんど意味を成していなかった
 浴衣が更にずれ込んで、布団の中で
 剥がれていく。露出した腿が、挟まるように
 脚を割って、抱き枕よろしく抱き込まれれば

 あちらはほっとしたのか、ふんにゃりと笑うから。 ]

[ 一方的ではなく、共犯に興じるつもりに
 なってしまってからは、だいぶ手が早かった筈。

 なにせ、たっぷり寝て、目覚めもすっきり
 してしまって、こちらも兆しが見え始めていたから。

 赤い花のほど近くにもう一輪、それを咲かせて
 撫でさするだけでも、摘める程度に尖ったそこを
 きゅう、と摘めば、愛らしい声があがって、
 漸く状況を察した君が、焦ったように名前を呼ぶ。 ]

 うん?なに、おはよう。

[ 不釣り合いな挨拶を投げやって、そっと勃ち上がった
 それに手を伸ばしたところで、ばか、と
 可愛く罵られただろうか。

 ――可愛い文句を聞いていてもいいのだけど、
 焦らされる前に、その口をあまく
 塞いでしまうことにして――。 ]

[ 昨晩に比べれば、さっくりと事が済んだとしても
 半分布団の中で、事に及べばどうしたって、
 熱は籠もるし、汗もかく。

 時計を眺めて、彼女らが来る前に
 風呂へ促して。

 あたかも、そういうことがありました、
 という風に見えない程度に布団を畳み、
 着替えを済ませて、彼女らを迎え入れた。

 無論、窓を開け放ったままで。

 彼女らとのやりとりを聞いていたのか、
 準備が整った段階で、脱衣所から
 出てきた彼に、おかえり、と声を掛けて。 ]

 朝食も、美味しそうだね。
 いただきます。

[ 穏やかな時間を始めようとする。

 ――つい一時間前まで見せていた顔とは
 別人みたいに、にこやかに。 ]

 朝からこんなに沢山の種類があるって
 贅沢だよね。

[ 夕食もそれは見事なものだったが、
 朝食とて、引けは取らない。

 朝採りであろう野菜をたっぷりと使った
 和え物、炊きたての御飯、温泉卵。

 貝柱で出汁を取ったであろうスープは
 お茶漬けのようにしても、良さそうだ。

 普段であれば、これほどの量を食べることは
 ないけれど。諸事情で、なかなか空腹だったので。 ]

 お味噌汁、おいしい。

[ 今日の予定はどうだったか、昼食はどこかで
 取る予定だったかもしれないけれど、ぺろりと
 平らげてしまいそうだったし、 ]

 ご飯もうちょっと いこうかな

[ 炊きたてのつやつやした米があまりにも
 美味しくて、おかわり、も視野に入れていた。* ]

[共犯と呼ぶにはすっかり熱を上げられて、
 緩やかな高まりが収まらなくなっていたのは、
 すっかり彼の手によって、作り変えられて
 甘く柔らかくなってしまった身体のせい。

 おはよう、なんて平然と挨拶を交わしていても、
 手は布を押し上げる下肢に伸びていて、
 そっと握り込まれたら、息を詰めて、
 ぴくんと跳ねるみたいに、腰が疼いてしまった。

 かろうじて返せた言葉は、悪態一つ。

 腰がぶつかって彼も兆しているのが分かったら、
 小さく唸りながらも、降りてくる唇を受け入れて、]


  ……ぅ、 
ンッ、 ……



[とろ、と眠気よりも彼に溶かされるように、
 瞼が降りていく。瞼の裏に浮かぶのは、彼の姿。
 
 その後は、もう、――――言うまでもないだろう。]

[仲居さんたちが朝食を用意する間に、
 ドライヤーを使う時間は十分にあったから。
 半分以上乾いた髪は、軽く水気を残したままだった。]


  ……ただいま。


[おかえり、というから反射で応える。
 やっぱりその表情にさっきまでの艶を帯びた姿はなくて。

 ギョーカイジンってみんなこうなのかな。
 みたいな、余計な考えた浮かんだけれど、
 それを口にするのは辞めておこうと思う。

 知ったところで、俺の知っているギョーカイジンは、
 彼の一人なので、何の役にも立たない。]

[並んだ朝食の前に腰を下ろせば、
 ほわりと仄かに炊きたての御飯の香りがした。
 食事を目の前にしてしまえば、
 そんなことも忘れて、表情が綻ぶ。]


  いい匂いですね、……美味そう。


[自身でも朝食はそれなりに作るけれど、
 これほど数は多くはない。

 手抜きでピザトーストにする日もあれば、
 休みの日には時間を掛けてブレックファーストも。
 
 彼と朝を一緒に過ごすようになってからは、
 和食が好きな彼に合わせて、
 朝食を日本食にすることが増えてきている。]

[ほうれん草をツナを和えたものは
 砂糖と醤油で甘くもさっぱりとしていて好みの味だった。

 それだけ食べても美味しいけれど、
 炊きたてのご飯に乗せて米と一緒に食べれば、
 熱さと甘さが相俟って、より美味しく感じる。

 一般的な味噌汁ではなくスープなのは少し珍しい。
 昨夜の海鮮も美味しかったし、貝柱が使われているなら、
 海もそう遠くはないのかもしれない。

 スープを一口飲んで、ご飯を運んで。
 貝類の出汁が十分に効いている味を堪能する。

 焼きたての魚は、焼き鮭。
 温泉卵の他に、定番の厚焼き玉子。

 鮭の身をほぐして、口に運べば程よい塩気が
 口内に広がって、鮭の旨味を引き立てる。]


  旨い。


[シンプルに、一言。それだけでいい。]

 

[ まさか"結局拒否しない"ということへ相当興奮する、なんて
  そんなタイプだとは思いもしていない。
  彼も知らなかった彼自身のことなら、それも当然か。
  羞恥や照れだけで「だめ」と言いながら、
  プレゼントの包装を紐解くように 彼の言葉、視線、指先で
  導かれるままに受け入れるのが最近の定石。

  ────甘え、甘えられ、食卓は出来上がる。 ]


  ……〜〜ッふ、…ぁッ、ん、……ン…っ


[ 喉奥から唸り声のように聞こえる、彼の声。
  媚肉の収縮と締め上げへ抗うように挿入は止まらず、
  水音が派手に鳴っては頬へ飛び散った。

  意識して声を殺し、深いキスで呑み込んで。
  それでも零れ出てしまう甘い喘ぎはきっと、
  この水音が掻き消してくれるはず。 ]

 

 

[ 外が薄暗がりの幕が下りるにつれ、照明で肌が照らされる。
  ───もうすぐで、瞬きの間に夜になるのだろう。
  夜でさえない時間からこんなえっちなことをして、
  こんな風に、外で彼自身のモノを受け入れる、なんて。

  ……──仕事柄か、或いは元々の声質なのか
  声がよく通ることの自覚は少しくらいはあるからこそ
  必死に我慢しようとしていたのに。 ]


  ッンん、っぁ、 ひァ、ぅ……っ


[ 温泉の熱と、ナカを満たす慾の双方で全てが茹る。
  思考回路が焼けて、ぼうっと輪郭を失って、
  ……どうして声を我慢しないといけないのか
  一瞬理解らなくなってしまうくらい。

  何を思ってか、彼が片手を腰から離して腰を浮かせた。
  せめて律動を止めてくれれば手伝えたのに、
  腰の動きを続けたまま移動しようと試みるものだから
  上手く意図も汲めなくて、気持ち悦い場所を突いて貰えず
  「やだ、ぁ、」と焦らされていることへ泣き言を。 ]

 

 

[ そこも微温湯のような快感を与えてはくれるけど。
  ──もっと悦くなれる場所をもう知っているから。


  還ってきて、と ねだる前に。 ]


  ──────〜〜〜〜っ、……ッッひ、ん ン…!!


[ ぐにゅ、と最奥に先端がめり込むように突き上げられる。

  ばちばち音が鳴るくらい、視界が白んで
  力が抜けていたはずの脚が快楽の衝動で水面を蹴り上げた。
  ばしゃり、音が鳴ると同時に熱杭がナカから抜けていく。


  強すぎる快楽に腰が抜ける。
  ぺしゃりと膝から崩れ落ちているうち、
  もう一度ナカへ入って来ることなく、彼の熱からは
  勢いよく、あつい しろ が噴きあげて、肌へ舞い散り
  腹や胸元──顔にも飛び散って。
  まるで外からもやけてしまいそう。 ]

 

 

 
[ 思えば彼の白濁を肌で浴びたのは、
  これが初めてであるような気がして、ぽかんと呆けた。
  練乳を胸に零した時の再来みたいだ なんてこと
  考えられる思考の余地もない。 ]


  …………ん、む


[ 唇の近くについた慾の残滓を指先で掬い取り、
  熱に浮いた思考のまま、咥内へ運び入れる。

  苦いような、何とも言えない味が舌の上へ滲んで
  ──それなのに彼のモノだと思えば
  その苦味さえ甘いような気がするのだから、不思議だ。
  練乳の時はお行儀悪く舐め取らずティッシュで拭ったが、
  今回は、白うさぎも少し、お行儀が悪い。 ]


 

 

[ 飲ませ損なった、と謝ってくれるのであれば。
  ──そんなところも可愛いと思ってしまったので、
  別に 気にしなくたって構わないのだけれど。 ]


  ……ね、まだ できますか?

  からだ、あらった あと。
  ……へやでもういっかい、ここにも、のませて。


[ オーダーのやり直しは無事に通ったかどうか。
  ──きっと通してくれるという自信はあるけれど。

  どちらにせよ白うさぎと狼の夜は、帳が降りたばかり
  ここはフィクションではなく二人の現実。
  月が見守る夜に、互いを白へ染め上げる時間は
  まだまだたくさん残されているのだ。 ]

 

【人】 高野 景斗

[ アラームの音で目が覚める。
 昨晩も遅くの帰宅になり、コンビニで
 出来合いのものを買って、酒を飲んで
 眠りについて。

 僅かに酒焼けした喉に炭酸水を流し込んで
 無理やりこじ開けても食欲など湧きようもない。

 それでも何も口にしないままだと、
 体も脳も覚醒を拒否するからネットスーパーで
 箱買いした野菜ジューズを流し込み、
 シャワーを浴びて出社する。

 通勤ルートの途中に、パン屋があっても、
 定食屋があっても、心惹かれる事はなく。

 出社して雑務をして、殺陣の稽古をして
 昼近くになり漸く、何か腹に入れる余裕が出てくる。

 田舎から飛び出してきて、無我夢中で
 夢への道をひた走り、寝る間も惜しんで
 生活のため働く研究生の面倒見る振りをして
 昼食に連れ出し、勢い良く平らげるのを見て
 自分も、食事に手を付ける。 ]
(4) 2023/04/03(Mon) 14:26:35

【人】 高野 景斗

[ この恩忘れません、別にそんな言葉が
 欲しかったわけじゃない。手を差し伸べたい
 気持ちがない訳では無いが、

 誰かと共に食事に来て、
 自分だけ食事をせずにいれば相手に無用な
 心配や不安を与えてしまう。

 その状況を作るために連れ出していた、
 それを知るものは既に、デビューを果たし
 テレビ、ラジオ、舞台の中だけの人間になっている。

 ――それでも時たま、感謝や弱音を口にする相手に
 自分を選ぶような後輩もいる、人への感謝を
 忘れない。それもまた業界人として成功するために
 必要な事だと思う。天狗になった瞬間に、

 その椅子は
音もなく
、消えていくものだ。 ]
(5) 2023/04/03(Mon) 14:27:02
 




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