255 【身内RP】猫様としもべのもしもの夢【R18G】
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「あんたほんと相変わらずだな」
ぼそぼその中に羅列されている諸々を聞きながら。
「……けど、うん」「そうだな」
「全部が全部、あんたの望み通りになってるのなら」
「こんな事言わない、な」
困った様な表情で、それで先程の答えになってるか、と付け足してから暫くそのままでいたが。
勝手に上着かシャツを奪って何処かに行こうとしたなら「あっ、おい」とは言ったかもしれない。
追いかけるべきか、と身を起こした所であなたが戻って来る。
▽
「…………」
そのまま。ゆっくり、ゆっくりと。あなたの語る話を聞く。
少しだけ長い間を置いた沈黙の後。
「分かってる」「分かってるよ」
「少なくとも俺は、だけれど」「あっちの方が、ずっと苦しい」
「……でも、な」
「これだけは破れない、破りたくない」
「そんな約束を、向こうに残しているんだ」
――目を、伏せる。
「ごめんな、マオ」
「…………謝るな!」
必死で縋りつく自分が哀れで、惨めじゃないか。
マオは突然あなたの胸に飛び込んで、ひしと抱き着く。
「人間はなぜ苦労するほうを選ぶのじゃ?」
そういうものが美しいとでも思っているのか。
信念かなにかなのか。マオにはよくわからない。
愚かだとマオは思うが──
今自分がやろうとしていることのほうがよっぽどだろう。
「都合の悪い事、嫌な事、思い出したくない事がある世界に
わざわざ戻る必要なんてないのではないか?」
「そんなに、その約束が……だいじなのか?」
すり、と胸元に頬をすりよせる。甘えるように。
手を背に回した、袖の奥でなにかがきらりと銀色に光っている。
──ナイフだった。
マオは引き剥がしでもしなければあなたには見えないだろう。
しがみ付く様に抱き着かれる。
抱きしめ返しは……しなかった。
伏せた目をそのままにして、考える。
まるで自分の事を、ひとではない何かの様に言うんだな、とぼんやり思った。
「……ああ」
「とても、大事なもの、なんだ」
「都合の悪い事が、嫌な事が、思い出したくない事があっても。
苦労する道だとわかっていても、これだけは」
「例え相手があんたでも、譲れない」
きっとこれは、綺麗ごとで、愚かで、どうしようもなく自分勝手な考えだ。
それを他者に対してまで押し付けようとした自分は、本当に"悪役"でしかなく、そしてそうあり続ける事すら叶わなかった。
――それでも救いたかったんだ。
「そうか、レグナがそこまで言うなんて思わなかった。
本気なのじゃな。おまえのことだからきっと
やさしい願いを抱えているのじゃろう……」
「レグナはえらくて、いい子じゃ」
そっと、鼓動を確かめるように背中を撫ぜる。
慈しみにも、最後を惜しむようにも似たやさしい手つきで。
そう言いながら笑む表情は、あなたの胸にうずまり見えない。
「わしは、おまえのそういうところもすきじゃ」
あなたに幸せになってほしいと願ったのは遠い昔。
今やあなたに依存しきってしまったマオにはもう及ばない考え。
自分よりも大事なものがあることに妬ましさすら覚えた。
マオは顔を上げて、
若草色の瞳
であなたを見つめる。
狂おしいほどの愛欲と
憧憬
の炎をその奥に宿して。
「わかったのじゃ。譲れないというのなら仕方ない」
ひどく穏やかな声で囁いた。
諦めにも、悟りにも聞こえるような声色で。
マオは逆手で持ったナイフをぎゅ、と強く握りしめた。そして──
すぐに死んでしまわぬよう、急所からはややずらして
▽
「それなら、奪うまでじゃ」
あの頃のレグナが悪役だとするのなら。
今のマオはあなたにとって悪魔の使者に違いない。
やさしげな手が背を撫でる。
重ねられる声に、その言葉の内容に。
少しだけ、赦される様な、救われる様な。そんな心地がした。
投げだしていた手を、片方。ぽん、と、あなたの頭に置いて、撫でる。
見慣れた若草色が、蜂蜜色とかち合った。
「マオ、」
――その瞳の奥に、声色に。しらない、何かが混じっている。
「…………。マオ?」
▽
撫でていた手が止まる。
強く抱きしめられる、それと同時に、背から冷たい何かが入って来る。
「……――ッ、」
何が起きたか認識した瞬間、その温度は一気に熱く、熱く。変わっていく。
小さく呻き、置いていた手がぐしゃ、とあなたの髪を掴んだ。
マオはナイフを引き抜く。
溢れてきた温かい液体が真っ赤に手を汚した。
すぐには殺さない。あなたがどこにもいかないように。
痛みで縛りつける。放っておけばいずれは出血多量で死んでしまうだろうが。
「レグナ、」
マオは、あなたの瞳をじっと見つめたまま愛おし気に微笑む。
あなたはまだ動けるだろうか?逃げようとするだろうか。
動く様子がないようならそのままベッドに押し倒し
動こうとするのならもう一度、逃げる気が起きなくなるまで
赤く、銀色に光るナイフが腹へ向けて突き立てられる。
引き抜かれれば痛みに呻く声がもう一つ。
それから、冷や汗と混じった血が背を伝っているのを感じた。
髪を掴んでいた手はずるり、落ちる様に肩の方へ。指先が痺れ、酷く震えている。
「…………、」
「そう、か」
諦観の様な、覚悟の様な。そんな呟きと共に、あなたの表情を見る。……視界が少しだけ、揺れている。
動こうとする様子はなく、そのまま押し倒され。ベッドに沈み込むと共に、じわ、とシーツに赤い色が広がった。
「えらくて、いい子のレグナはずっとわしのじゃ
どこにも行かせないのじゃ……」
そのままあなたの上に跨るようにして乗っかり、うつ伏せになる。
ぎし、とふたりの重さでベッドが軋んだ。
血まみれの手であなたの髪や頬をそっと撫でてやる。
マオが夜中に勝手にあなたの布団に潜り込んだ時のような光景。
──血みどろなところ以外は。
「レグナ……震えているな。
大丈夫じゃ……痛くて苦しいのは今だけ」
震えるその手に指を絡めてぎゅっとにぎる。
ナイフを持ったままの片手を、自分の首元に宛てがう。
「……おまえとさいごまでいっしょなら
さみしくないから良いのじゃ……」
ああ、でも。
夢の中で死んだら……どうなるのだろう。ぼんやりそう思ったときにはマオは既に自身を斬りつけた後だった。
▽
「……っぐ………」
鮮血が、あなたの服を、マオを染める。
ナイフが傍らに落ちて。マオはあなたの上に倒れた。
「…………どうせ……わしがおまえといっしょに……
かえっても…………
長く、ないし…………
」
だって、年老いた猫なんだから。
「……がっ……げ、ほ……っ……」
年老いた猫を夢と同じように愛してくれる
ニンゲンなんていないだろう?
血に濡れた手が自身に触れる感触。腹にのしかかる重み。
それに、いつかどこかの記憶が重なった様な気がした。
……夢の中で死んでも、走馬灯は流れるものなんだろうか。それにしたって、覚えのない筈の記憶なのだけれど。
痛い。苦しい。握られた手が上手く握り返せない。
警告音が鳴りやまないのに、少しずつ体温が奪われていく、気配がする。
霞んでいく視界の中、あなたが自身の首元にナイフを宛てがい、引く様子が映った。
▽
どさり、先程より重い音がして、身に体重がかかる。
哀しいほどに綺麗な赤が、二人を染めていく。
「……ほんっ、と、」
「しょうがねえなあ、」
遠のいていく意識の中。
下手すると、自分の考えを全て破られていた事態にも関わらず。
何故だろうか、不意に。少しだけ、笑みがこぼれていた。
「……っ……ぐ、な……」
もはや、声よりも血の出る量が多い。
もうどくどくと溢れる血は止まらない。
それでも、マオはあなたの名前を呼んで、さいごの力を振り絞って顔をあげ、あなたにへたくそなくちづけをする。
もう、血のにおいしかしなかった。
「……、…………」
あなたの声はまだちゃんと聴こえた。
こんなことをしても、ゆるしてくれるのだろうか。
涙が溢れてくる。
あなたと同じように口元を笑みのかたちに歪める。
やがて、血の気が引いて、意識が朦朧として
握った手に力が入らなくなってゆく。
自らの意思で死を選べる生物は人だけと言われている。
だからマオにはこの行為は夢の中でしかできない。
最初で、最期のレグナへの愛情表現。
▽
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