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![]() | 【人】 トラジコメディ フカワ「叶、さん……」 頭痛と吐き気が身体を苛みつつも、 どうにか貴方を救う手立てを考え続けて。 しかしぽろぽろと涙が流れ落ちるばかりで、 それ以外には何も出てこない。 手遅れだということを認めたくないのに、 悪癖となった諦観が身を包んで離してはくれない。 「なんで……オレで、よかったの、に…… 全部……持って行かないでくれよ……! ひ、二人の……二人で抱えるもの、だったでしょうが」 這う這うで近づいて行って、 投げ出された掌を両の手で握ると、 急速に失われていく体温が痛いほどに伝わってきた。 (38) 2022/06/08(Wed) 0:44:30 |
![]() | 【人】 トラジコメディ フカワ「オレは……貴方がいたから、 立ち向かう勇気を貰えたんです。 オレが頑張らなければ、 いつか叶さんがそうなってしまうと、 ───貴方が貴方を害してしまうことを、知っていた」 それを止めたかったのに。 あるいは、どうしても助からないというのなら、 オレも共に、そこへ連れて行ってほしかった。 何もかもが上手くいかないのは、 己がやはり弱者に過ぎないからなのか、 それとも、罪に対する罰がこの形になったのか。 「貴方の、せいで─── 貴方のせいで、無事になっちゃいました。 許さないです。これから、ずっと」 至らなかった自分と、勝手な貴方を。 許したところで、貴方が助かるわけじゃない。 (39) 2022/06/08(Wed) 0:57:19 |
![]() | 【人】 トラジコメディ フカワ「どうして全部事後報告なんですか……貴方って」 思わず、溜息のようなそれが出た。 そういえば近頃は心中で呟くばかりで、 直接愚痴を吐いたりするようなことを忘れていた。 血の混じった裾で目元を拭えば、 頭がどんどん冷めていく。 リアリティに欠けた感覚が、胸の内を満たしていく。 「そうと知っていたら、 貴方の力を借りようだなんて思わなかった。 無理させようとか、そんなの御免ですし、 ねえ、もっと別の方法を考えられたんです。 オレ達はマジで、どうして……こうなるんですかね」 言った所で全部無駄なことはわかっている。 そもそも他に方法があったかさえ定かじゃない。 けど今は、ありったけの恨み言を言わなきゃ気が済まない。 (40) 2022/06/08(Wed) 1:05:30 |
![]() | 【人】 トラジコメディ フカワ「……頼まれて、あげますよ。 他でもなく、誰にも頼らなかった貴方が、 初めて俺に対してくれた、“頼み”ですからね」 本当に、どこまでもどうしようもない似た者同士だ。 「オレだって」 「オレだって、何もできなかったんです。 だからオレも貴方の頼みを叶えてあげられなかったら、 ちゃんと怒ってください。じゃないと不公平です」 置かれた環境からしてどうしようもなく絶望的で、 自分の力にしか頼れなくて、何かが狂ってしまった。 そうでもしなきゃ、生きていけなかっただけの。 身に過ぎた物を持たされてしまっただけの、人間だ。 (42) 2022/06/08(Wed) 1:19:08 |
![]() | 【人】 トラジコメディ フカワ『───だからいまは、ゆっくり休んでください。 私も……もう一仕事してから、そちらに行きますから。 叶さんは、もうひとりじゃないです』 もう音が届くか分からないから、 頭に直接話しかける。細胞レベルの仲間意識があるのだ、 いっそ音にするよりこっちのほうがよく伝わるだろう。 『ひとりじゃないなら───怖くないですよ』 日 はやがて西に沈むから。それが今貴方に与えられる、一番の救いになればいい。 (43) 2022/06/08(Wed) 1:23:23 |
フカワは、些細な秘密と罪しか、この身に持ち合わせていない。 (a56) 2022/06/08(Wed) 1:26:27 |
フカワは、貴方と自分が死後行く場所があるとしたら、地獄に他ならないとは思っている。 (a57) 2022/06/08(Wed) 1:27:35 |
フカワは、それで満足だ。 (a58) 2022/06/08(Wed) 1:27:44 |
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フカワは、端末へ事の顛末を送って。 (a65) 2022/06/08(Wed) 4:00:14 |
フカワは、しばらく、呆然とその場に座っていた。 (a66) 2022/06/08(Wed) 4:01:11 |
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