【人】 ]『運命の輪』 クロ―三年前― うぅ……あぁ……うわぁあぁん…… [悲しいことがあったんだ。 とてもとても、悲しくて、僕は一人で泣いていたんだ。 目が痛くなっても涙は止まらなくて、森の中で一人、隠れるように。 そうして泣いている僕に、声をかけてくれたのが君だったんだ。] (61) 2022/12/11(Sun) 5:24:55 |
【人】 ]『運命の輪』 クロ僕は、クロって言います! よろしくお願いします! 僕はね、黒い羊なんだよー。 [洋館に着く頃にはすっかり元気になった「運命の輪」は、無邪気に挨拶をしていた。証持ちという「仲間」たちと会うことに、内心ドキドキしながらも。 黒い羊とは、かなり低い確率で生まれてくる突然変異の羊である。その珍しさから、滅多に生まれぬ証持ちになぞらえて村でそう呼ばれていたのだという。農業と酪農がメインの村であるが、クロの家では羊が飼われていたから、という理由もあったらしい。 笑顔のクロであったが、ただ一人。 「節制」を目にした時、心臓が跳ねるような気がして、呆気にとられたように、表情が消えてしまったのだ。*] (62) 2022/12/11(Sun) 5:27:41 |
【人】 XII『吊された男』 ユグ[その少年は、北東の果ての古い村に生を受けた。 生まれながらにしてくっきりと、右の足首に痣を持っていた。 古い村の民というのは、互いの仲間意識が強く、生活においても自然と協力しあう。 そうした体制に慣れている彼らは、自身と仲間を守るため、少年を両親ごと、すっかり村の輪から追いやってしまった。 少年は一歩歩けば忌み子だ、悪魔の子だ、神の過ちだと口々に言われ続けて育った。] (64) 2022/12/11(Sun) 5:40:32 |
【人】 XII『吊された男』 ユグ[けれど、その少年は信じていた。 洋館の仕組みさえ伝わっていないような村で、それでもひとり、いつか神様の使いが迎えに来てくれるのだとひたすらに信じていた。 教会の教えに残ってもいないのに、証の子は神に愛されているのだと、だからいつか神様が見つけてくれるのだと言っていた。 つらく苦しい身の上から逃げたい一心の思い込みがそうさせるのか、魂に刻まれた記憶がそう思わせるのか、少年にはわからない。 どちらでも構わなかった。 自身が神に愛されているのであれば。] (65) 2022/12/11(Sun) 5:41:03 |
【人】 XII『吊された男』 ユグ[ 少年が十を迎えてから少ししたある日、家を出た両親はそのまま戻らなかった。 ]彼らはもう限界だった。 村の人々に祝福され、出産の無事を願われ、これから人生の一番幸福な時を迎えるのだと胸膨らませていたというのに。 その子供に証が刻まれていたが故に、仕事をしても金は満足にもらえず、口さがない言葉とともに石を投げられる。 薄いスープで腹を誤魔化して、ぼろの毛布に身を包んで眠る。 それを十年続けても、神の寵愛を信じて朗らかに笑い祈り信じ続ける息子が何より恐ろしかったのだ。 子ももう十だ。自分の世話くらいは自分でできよう。村人も鬼じゃない。子供を見殺しにまではしないだろう。 そう自分らの胸に言い聞かせ、両親は何処かへ逃げ出してしまった。 (67) 2022/12/11(Sun) 5:47:13 |
【人】 XII『吊された男』 ユグ[ 少年はたったひとり家の中で立ち尽くした。 ]それでも、神様が迎えにいらっしゃる日までは生き延びなくてはならない。 幸いにして海が近かった。塩と水だけは豊富に手に入る環境だった。 海水をすすり、木の根や実をかじり、時折誰だかが置いていった家の裏に落ちている腐りかけのパンを食べて生きつないだ。 腹を壊し熱を出しても、涙は見せなかった。 そこに不安も孤独もなかった。 自身が神に愛されているのであれば。 (68) 2022/12/11(Sun) 5:47:51 |
【人】 XII『吊された男』 ユグ[あれから季節が四度巡り、五度目。 小虫のわいたあばら家に、ひとりの使者がやってきた。 出迎える、どうにか生きつないだというだけの少年は、身体は痩せぎす、肉などほとんどこけてしまって、服はぼろぼろでひどく臭った。 それでも洋館から来たという青年に、ああついに待ち望んでいた日が来たのだと、神様は僕を見ていてくださったのだと、心からの幸福を目に浮かべ笑った。 ためらいなどない。何を憂う必要もない。 自身が神に愛されているのであれば。] (70) 2022/12/11(Sun) 5:48:38 |
【人】 XII『吊された男』 ユグ[少年の名はユグと言った。せめて加護ぞあれと、月桂樹から取られた名だった。 だが呼ぶ人もいなくなって久しい。 なにせ自身を人とも思わぬ村人たちには証持ち、悪魔の子とだけ呼ばれ、怯えながらも震えた声でその名を繰り返してくれた両親は、とうの昔に戻らなくなってしまっていたのだから。 故に『吊された男』と証の名で呼ばれた際には、名を知られていなかったかと思い、ユグとお呼びくださいと名乗ったりもした。 けれどはじめて証の名を知った少年は、喜んでもいた。 それこそが、自身が神に愛されている証なのだから! ] (71) 2022/12/11(Sun) 5:49:08 |
【人】 ]『運命の輪』 クロ……これは、何の絵? [洋館に来たばかりの頃、文字がずらりと並ぶ売店のお品書きを見て、首を傾げたことがある。田舎の小さな村では文字を学ぶ機会は少ない。大抵の家の子供に求められる物は労働力である。学習は重要視されていなかった。 まして、それが「証持ち」ならばなおさら。 働く時間が減る無用なものでしかない。 しかし、発音を表せる文字というものが存在することを知ったクロは興味を持ち、フォルスの教え子の一人になった。>>36 今では、簡単な単語や自分の名前くらいなら書けるようになった。**] (74) 2022/12/11(Sun) 5:53:57 |
]『運命の輪』 クロは、メモを貼った。 (a11) 2022/12/11(Sun) 5:56:24 |
XII『吊された男』 ユグは、メモを貼った。 (a12) 2022/12/11(Sun) 6:04:17 |
XII『吊された男』 ユグは、メモを貼った。 (a13) 2022/12/11(Sun) 6:07:50 |
]『運命の輪』 クロは、メモを貼った。 (a14) 2022/12/11(Sun) 11:56:37 |
【人】 XIV『節制』 シトラ────……う……ッ あ みんな、やめて…………っ [ しんと静まり返った洋館の一室に、 絞り出すような呻き声が響く。 窓辺からベッドを見守るように一筋 蒼く月光が射し込んでいる。 持ち主の手で大きく乱された毛布は波打ち、 床には草臥れ薄汚れた犬のぬいぐるみが転がっている ] (75) 2022/12/11(Sun) 12:58:56 |
【人】 XIV『節制』 シトラ『だから言ったろ!! とっととこの村から追い出しちまえば良かったんだ この疫病神め!!!』 『うぇえぇえんこわいよぉおおお』 『シトラがやった。だってあたし、みたもん』 『全部お前のせいだ!! お前さえ居なければこの村は……!!』 『あいつってなんかいっつもその場しのぎだよな』 『またあの小娘か忌々しい』 『でさ、結局あんたって誰の味方なの?』 『だがこの娘にはまだ利用価値が有る』 (76) 2022/12/11(Sun) 12:59:02 |
【人】 XIV『節制』 シトラ 『『節制』を司る天からの贈り物、 胸元に刻まれし正三角の痣が何よりの証。 神は我らを戒める為 この娘を遣わされたのでしょう 山向こうの集落に生を受けられたシャルレーヌ様のように 我らもこの子を聖女として護り育て 謹んで敬わねばなりませ──グアッ』 『貴殿の与太話などもう聞き飽きたわ!!』 『すまない、守ってやれなくて』 『どうしておねえちゃんがなくの? ころんじゃったのはぼくなのに……』 『……ちょっと!! うちの子に何をしようとしたの!?』 (77) 2022/12/11(Sun) 12:59:09 |
【人】 XIV『節制』 シトラ『申し訳ありません村長様、どうか』 『私らはどうなっても構いません ですからどうか、せめて娘が大きくなるまでは……!!』 (79) 2022/12/11(Sun) 12:59:19 |
【人】 XIV『節制』 シトラうぁっ……っく……ごめ、なさ…………… [『ごめんなさい』 重ねれば重ねるほどに 誠実さを失って響くその言の葉 何千回、何億回と繰り返すうちに 呼吸より易くなってしまった こんな身勝手な音の紡ぎはもう意味をなさないの。 赦しを乞うことすら赦されないと識っている 解放を願うそれ自体が甘えだと、理解っている それでも、 それでも、わたしは ねえ 誰か教えて。 どうしたらわたしは、 ……わたしは、どうして、こうなの ] (80) 2022/12/11(Sun) 12:59:22 |
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