人狼物語 三日月国


45 【R18】雲を泳ぐラッコ

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[がたがた揺れるのも味方に付けて、
暴れまくって犯人から身を剥がしたのは良かったけど、
藁の薄い馬車の後ろから転げ落ちてしまった。

ああ!? 戻れ!って奴の怒声を聞きながら
落ちたのはどこかの庭の池。

水に落ちて怪我はなかったけど、濡れ鼠になってしまった。
水を吸った服が重くて泳ぐこともうまくいかない。
仕方ないので顔を出して周りを確認すれば、
広い麦畑の真ん中の池が着地点だった。
農道を走っていく馬車が見えるくらいに見晴らしがいい。
追っ手が来るのなら、馬車が向かった方向からだろう。

池の岩影に隠れて震えながら、
護身用のダガーに手をかけた。
刃物の存在がバレたら反撃の手段は無くなる。
仕留めなければならない。

人を刺したことなんてない震える手で束を握る。

怖い。怖いよ。たすけて ]


 たすけて   
リフル



[体温を奪っていく水から逃げることもできず、
一振りだけの反撃を頼りにきっかけを待って耐えていた。

到着したのは犯人だったか、それとも助けだったのか**]

【人】 アジダル


[ 寝覚めが悪いのは常たるもので、明晰夢に出会うことだって少なくはなかった。
 あれこれと自分の体を書き換えられていく感覚に晒されて同一の価値観を維持することが難しいこと、夢に浸る感覚と突然自我を取り戻すタイミングがあること、一見して普段通りを保てるこの場が基準だなど言い切れもしないこと。
 油断しているのか現実よりも幾らか緩い口はすらすらと状況を吐き出した。意味の有無はともかく。 ]


  少なくとも、さっきの場面はこっちの昔の思い出だからな。
  僕自身もなんか……昔の姿だったし。


[ ぽす、ぽす、と腰のあたりを叩く。三度目の接触で、何もなかったはずの場所にさっきまで使っていたガンホルダーがあった。四度目の接触で再び消える。
 ……融通は或る程度利くらしいな、と目を細めて。 ]


  だからお前も僕が頭で作ったシグマなんじゃないの?

  なんか僕の知らない事言ってみてよ。
  まだ話したことないようなこと。


[ 体を離して寝たと言うのに行き着く先が同じというのもなんとも奇妙な話だが。>>11
 どのみち不可思議な事象について熟考するよりも対面して応対する方が向いているのだ。選択を迫られる場面に何度も直面していれば自然とその思考時間は短くなる。

 先ほどまではつるりとしていた、今はあちこちを駆け回って傷跡が残る手を、一見して迷いも何も無いように、パーカーのポケットに突っ込んだ。 ]
  
(17) 2020/10/04(Sun) 8:17:12

【人】 アジダル


[ 薄明りしかない空間は相変わらず見通しが悪く、軽佻な風に歩めば迷いこむような印象がある。視界から彼の姿を外さないよう気をつけながら壁を探るも、触れられるような感触は一帯には存在しない。

 簡単に探索をしながら、投げられた言葉を今更のように捕らえて>>12まあそうなんだけどさ、と振り向きもせずに口を開いた。 ]


  そういうものに憧れてたんだよ。
  葛藤も躊躇もなく、
  正しく誰かを助けられるようなもんにね。


[ だが実際はそうはいかない。正しいことばかりを繰り返せば善人になれるわけでなく、手を汚さなければ守り切れないものは山ほどあった。

 その様を今しがた目の当たりにした彼だって、これまで出会ってきた仲間と同じように嘲笑してきたって構わないと思ってはいた。けれど想像どおりに通り抜けた言葉にふっと笑みが零れた。 ]


  どうだろう。別に家族や仲間じゃなくとも
  助けてやりたいとは何度も感じてたしな。
  無謀すぎるでしょそんなの。


[ 呟けば、奥の扉が薄く開いた音がした。
 語るか思い出すかすれば時間が動くような感触に、聊かうんざりしたような心地で溜息を吐く。 ]
  
(18) 2020/10/04(Sun) 8:17:18

【人】 アジダル


[ 誰だって見せたいもんや見せられるもの過去ばかりを生きてきたわけではないだろう。男にとって人生は取り繕えるほど安定したものではなかったし、秘密にしておくべきことは人より多く存在するはずだった。

 彼が記憶を誘発することを言わなければ、そして己が思い出しさえしなければ、あらゆることを闇に葬っておけるだろうか。
 忘れている記憶や忘れたいこと、蛆が湧いて今更どうすることもできない記憶どもにぶち当たりさえしなければいいが。]


  ……そうしなくちゃ覚めない夢なら
  入るっきゃないか。


[ ブラックボックスを開くのを躊躇うように彼の背に近づく。とりあえず血の匂いはしない光景を見てとり、撃たれはしないだろうなとその後を追った─── ]
 
(19) 2020/10/04(Sun) 8:17:23

【人】 Cucciolo アジダル



 [ ことを、けれど。次の瞬間すっかりと忘れている。
  人の背中を追って飛び込んだ昼間の路地裏だというのに、
  いつの間にか彼の視線の先に男はいた。

  曲がり角の石壁に両手をひっかけ、
  体を隠すようにしながら道の先を伺う様は、
  拙さが無いことを除けば隠れん坊遊びをする子供のようにも
  見えたことだろう。

  錆びた剥き出しの配管の上には土埃が積り、
  判を押したように並ぶ白抜きを追いかけていけば
  先には肋の浮いた猫が欠伸をしている。

  丸みを帯びだした煉瓦詰めの地面の随所には
  清掃されても血のような染みがこびりついていて
  人が一人横たわったような形をした日常風景を
  誰も彼も今更気に留める様子もない。


  ……だから正義など貫くのは馬鹿らしいことだと思い知る。
  しょうもない遊びに興じていると呆れ顔をされたが
  自己満足と言って認められるならそれでもいいと
  思っていた、筈だった。


───これは衝動の日。 
]


  
(20) 2020/10/04(Sun) 8:18:18

【人】 Cucciolo アジダル



 [ 点々と道を作るように並べられたパンや果物を
  今日は気に入ってくれるだろうか。
  身の丈に合わない良物の腕時計を眺め、
  そわそわと落ち着きなく様子を伺う。

  同じ場所を使っているというのにごった返さないあたり
  あの子がこの施しを口外してはいないのだろう。
  それでいい、自分の手の届く範囲だけ助けられれば。


  自分にはには路地裏暮らしの経験はなく
  一つの林檎を投げ込めば殺し合いが起こるほど
  飢えたり追い詰められた世界の存在は
  未だ納得することができない。

  けれど改めるには力も金も足りないことをよく知っている。
  定期的に行っていても酔狂と気紛れの域を出ない行為、
  余った食材や用意した医療キットを浮浪児の為に置くことは
  それでもやめようとは思わなかった。
  実際嬉しかったと言ってくれたし。


  誰が、だったか。 ]

  
  
(21) 2020/10/04(Sun) 8:18:41

【人】 Cucciolo アジダル



 [ 男は──少しばかり傷の青年は、
  ふと背中越しに見えた影が道に伸びるのを見て振り返る。
  そこに立っていた人物を、観測者を確かめれば
  慌てて手を伸ばしたことだろう。 ]


   あー、待ってお兄さん、
   今ちょっと取り込んでるからこの道行かないで!


 [ 焦燥を滲ませながら自分の後ろだか死角だかに導くように
  かくれてかくれて、と腕を引く。
  彼が何かしゃべろうとすればその唇に立てた指を近づけ
  しぃっと沈黙を要求しよう。

  風景に似つかわしくない素材の良いスーツの襟を開き、
  肩を埃っぽい壁に押し付けるまでしている事態だというのに
  妙に呑気な高揚を讃えた笑みは、
  大人びた子供のようにも見えたことだろう。

  実際ワクワクしている。 ]

 
(22) 2020/10/04(Sun) 8:19:00

【人】 Cucciolo アジダル



 [ ほどなくして裸足の足音が聞こえてくる。
  待ちかねたように道の方へ意識を向けると、
  いつものように小さな人影が歩いてきていた。

  手入れの施されていない襤褸切れのようなものを着た、
  これまた手入れされていない長い髪の浮浪児だ。
  金色の毛虫みたいに見える少年は周囲を気にしながら
  並べられた物資に飛びつくように近づいていく。

  土で汚れた手で拾ったピカピカの林檎に笑顔が映り、
  それを大切そうに抱き締めてから
  纏っていたぼろに包んで他のものも集めていった。 ]


   可愛いでしょ。
   他に人がいると警戒して持ってってくんないんだよね


 [ その様子を楽しそうに眺めていた青年は
  乗り出しそうになるのを堪えるように
  側頭部を石壁に押し付ける。
  傾いた体の腰に吊るしていたガンホルダーが
  こつりと音を立ててぶつかった。 ]

  
(23) 2020/10/04(Sun) 8:19:25

【人】 Cucciolo アジダル



   公的機関が馬鹿になってるから仕方ないけど
   やっぱ子供は笑ってんのが一番だよ。


 [ そうは思わない? と振り返った顔は
  同じように柔らかく綻んでいた。 ]*

 
(24) 2020/10/04(Sun) 8:19:44
Cucciolo アジダルは、メモを貼った。
(a8) 2020/10/04(Sun) 8:28:40

[書きかけた言葉は、心の中にしまったまま。
 口やSNSだと勢いで言ってしまっても、
 手書きの文字だと考えこめる。

 勢いで、伝えちゃえればよかったのに。]



 クラスメイトに声をかけたの、頑張ったね……


[聞こえないのは分かっていても、自分の声も使う。


 多分、私は友君にとって、苦手な人種。

 クラスに一人や二人いる、物静かな子たち。
 そういう子から、私は怖がられる。
 話しかけても目を逸らされて、
 一刻も早く会話を切り上げたい、
 そんな意志をひしひしと感じる。

 だから、友君がクラスメイトに話しかけるとき、
 どれだけ勇気を振り絞ったかは、
 想像できる気がした。]

[友君の言葉は、どんなに温かい言葉も、
 消
えてしまう。
 
 フリクションのコバルトブルーを、
 黒板みたいに書いては消してを繰り返したから、
 紙面はすっかり毛羽だって、よれよれで、
 青いインクは染み込んで、少しずつ消えなくなっていく。

 SNSだったら履歴が残るのに。
 便箋がたくさんあったら、本だってできるのに。
 神様が与えてくれたのは、たった一枚のダサい便箋で、
 友君からもらった言葉がどんなにうれしくても、
 形には残らない。

 せめて黒板みたいに頑丈だったら、
 ずっとやりとりができたのに、

 本当に、神様は残酷だ。

 それでも、限られた条件の中でも、
 私が臨む景色を、見せてあげられてたかな。]



 ── あはっ!
 なあにそれ、

 

[私はわざと大げさに口元を抑えて、
 笑顔を伝えようとする。
 表情が見えなくたって、ボディランゲージなら見えるよね。]

[私たちも夜に塗られて、
 一つの大きな闇になった。]

[次の日も、その次の日も、私は図書室へ通い詰めた。
 少しずつ、私たちの世界の差に目を向ける。
 目をそらしていた溝の、絶望的な深さを知る。]

― 小さな事件 ―

[生まれ育った盗賊団での生活と違い、屋敷に住まわせてもらう様になって、ハラハラした事なんて数えるくらいしかない。
無理して大荷物を抱えているメイドに、持とうかって声をかけたのに断られて、最後に階段を踏み外しかけているのを目撃しただとか、飲み過ぎて荒れたユージーンを介抱していたら顔面に吐かれた事だとか、
まぁ、物騒とは程遠い。

それらに比べれば、暗がりの中でも顔色を悪くしてたシャーリエとの庭での出来事も、目に見える被害者がいなかっただけあり、事件としては記憶にも挙がらない。

何か途中、頭を抱えてしまった彼女が転がったけど。
笑わないでほしいとか言われたけど、笑ってないぞ。
顔を伏せていたから、言われる前に手を差し出していた事に彼女は気付かなかったんだろう。まぁ急に転がるから少し驚いたけれど、恥ずかしい事だとは思わなかったし、女って大変だなと同情したくらい。

難しい事はわからないので、
彼女の言う事も鵜呑みにして、言われた通りの仕事をこなした]


  ご褒美とか、別に。


[言われるまま動いただけで、褒美とか気が引けた。
何だかすごくご機嫌な彼女に首を傾げながら、
賞賛ならユーディト様に、と、謙遜でもなく譲っただろう]

[特定の人をつけろなんて仕事はおそらくそう無かったから、
覚えていないではない事件。
けれど小難しい事は理解していなかったし、
今のこの状況と結び付くのもきっとずっと後になるだろう]


  お嬢様……?


[突然の暗闇の中で、主人を探して喚く。
少し離れたところで、どこか意図的に作られた様な、食器の音がした。返事の様に聞こえたなんて、おかしいだろうか。

暗闇の中でも、又、灯りが戻っても素早く動く事の出来なかった自分を詰りたい。
彼女の姿がそこに無い事なんて、これ迄の状況から予想出来ただろうに。
復旧した灯りに店内が余計にざわついている中で、
己だけが茫然と立ちすくんでいる]


  ───……


[不自然に片方だけ転がった女物の靴。
拾い上げて、どこぞの御伽話の王子の様に見つめる。
彼女が履いていたものと迄は記憶していなかったが、
彼女のものと思いたくないのに、心臓が身体から突き出てきそうなくらいにうるさい]

[暗闇の中で己に注がれていた視線の数々は、
灯りが点いた事で散って行ったが、
席に案内してくれた女性店員が恐々と声を掛けて来た]


 「あの……裏口から、
  たぶん誰か出て行きましたよ……
  お連れのお姉さんじゃ?」


  ………


[どうやら彼女は裏口へ続く道の傍に居たらしい。
先程の己の錯乱を気に掛けて教えてくれた様だ。
人の厚意に触れて、少し冷静さを取り戻せたのか、
ツケといてくれ、と彼女に告げて、裏口に走った]

[外はまだ真っ暗とはいかなかったから、
傍に出来た新しい馬車の轍を見付ける。
こんな所に馬車?
止まった跡があったから、余計に引っ掛かった。
あたりに居た人間に聞いている間も惜しんで、地面の目印を追った。

無我夢中で走って、遠くにその後姿を見たのは、
彼女が濡れ鼠になって震えていた頃か。
エンブレムは見覚えがある様なない様な……そんな事はどうでもいい。
あの馬車の中に彼女がいるかもしれないと思って、]


  お嬢様!!


[叫んだけれど、何やら男が近くの岩の方へ歩いて行って、手を伸ばそうとしている姿が見えたから、

持っていたシャーリエの靴を、思わず投げた。
当てるつもりだったけれど、
男のデコに当たって自分でもちょっと驚いた]

[男が怯んだ隙にぐっと距離を詰めて、
男の前に割って入った]


  お嬢様……


[驚いている男から目を逸らすなんて愚かだったけれど、
後ろを見遣って、そこにシャーリエがいる事を確認する。
ずぶ濡れだったけど、酷く怯えている様子だったけれど、
彼女がそこに居て、生きている事に救いを見た。

よかった、とか、下がって、とか気の利いた言葉が出て来ないまま、男が振り上げた拳を避ける為に腰を屈めた。
ひらりと身をかわしたその流れでジャケットを脱いで、
びしょ濡れの彼女の肩に貸した]


  お嬢様、隠れてて


[それだけ言って、腰の後ろの方に仕込んでいたナイフを抜いた。彼女の護身用のナイフよりずっと安物で、けれど同じ様に刀身が綺麗なのは、手入れが行き届いているからではない]


  ………


[抜いたはいいけれど、
これだけでビビって引いてくれる気はあまりしていない。
予想の通り、男は刃物すら持ち出して、躊躇いもなく振るって来た。……オレとは違って]



  ん、グッ……


[それはナイフで受け切る事が出来ない強い力で、
吹っ飛ばされるかと思った。
地面から足が離れなかったのは、刃物が義手の隙間に入り込んだから。
そこに痛みはないが、
受けた振動と、義手が壊れる感覚にぶわっと汗が浮かぶ。
男は腕の硬さに不思議そうにしながらも、ギリギリと義手の中で刃物を動かしている。
男の動きが止まっている今が好機なのに、
ナイフを振るえなかったのは、義手へのダメージを考えたからではない]


  、はぁッ、はぁっ……


[人を、斬った事がない。
こんなロクでもない奴相手でも………怖かった]

[バキン、と音がして、男の刃物が抜けた。
ばらりと部品が落ちるのがわかったけれど、
左手がうまく動かせない事もわかったけれど、
今はそんな事どうでもいい。

男は御者の他に仲間はいただろうか。
最低でも一人の仲間が増えれば、とうとう覚悟を決めなければいけないと思った。

シャーリエの方を振り返ってはいられない。
彼女の顔を見たら、決意が揺らぎそうだ]


  お嬢様、


[だから、
己の後ろにいてくれるだろう彼女に声だけ掛けた]

[すぅ、と息を吸った]


  ………お前を殺す。


[小さく呟いた。
彼女へ優しい声で願った己は一旦黙ってもらう]


  お前を殺す。


[もう一度、さっきよりはっきりと口にする。
言霊というものを信じている訳ではないが、
言葉にすると力が湧いてくる様な錯覚を手にした。
足に芯が出来て、簡単には吹っ飛ばされないと思える。
震えが隠せなかったナイフを持つ手は、今はぎゅうと握り込まれている。
ナイフで人を斬る自分の未来を見る。


人を斬った事がない弱い己は、
彼女を守る為に、少しだけ強くならなければいけなかった]



  オレが、殺す。

  お前を殺す。


  殺す………


  殺して やる !!!


 

[殺さずに撃退できるなら良かった。
でもそうするには、己は弱過ぎた。

何度も「殺す」と声にして、時に叫んで、
同じ命と肉体を持つ人間を斬った。
弱い心が恐ろしさを感じそうになれば、
自らを洗脳する様にまた「殺す」と言葉にした。
そうすれば、何度でもナイフを振るえた。
二人でも三人でも立ち向かって、
斬り返される痛みにも、肉の感触にも決して怯む事なく、
道を赤に染めた。

今怖い事は、
斬られる事より、死ぬ事より、
彼女が傷付く事だった。

だから一人残らず殺すしかない。

一人が怯んで命乞いをしかけたが、
聞き入れずに喉を裂いた。

崩れゆく男の手の刃物が己の右手を滑って、お返しの様に深く裂いた。思わず呻いたが、連中を一人残らず始末する迄、この手は動いてくれた]



  ───ぶじ、ですか

  お嬢様……


[斬った男たちの安否は……わからない。
多分殺したと思うけれど、しっかり確認できた訳ではない。

立っている人間が自分だけになって、
ようやく血に染まった顔で彼女を振り向いた。
怖い思いはさせたくなかったが、
無事を確認しないと倒れられない。

彼女がそこにいてくれたなら、
その場に崩れ落ちるだろう。

彼女が恐ろしいものを見る目でこちらを見ていても、
軽蔑のまなざしを向けていても、
気にしなかった。

生きていればそれで。
それだけでいいんだ。

流石におおごとになって周辺から人が集まって来ただろうか。
薄れゆく意識の中で、そんな喧騒を聞いたかもしれない。**]

[卵60個食べて筋骨隆々になったのは
 確か町一番の変わり者に恋した力持ちだっけ?
 本ばかり読む変わり者には
 ぴったりかもしれないけれど、それはさておき。

 滑るペン先を見つめる瞳が
 じっと紙に注がれているのを感じながら
 俺はくるりとペンを回す。]


  嘘なのかよ。


[聞こえてないだろうけどノリツッコミ。]

 




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