77 【ペアRP】花嫁サクリファイス 弐【R18/R18G】
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ッ……
[だが、立っていたのは待ちわびた鬼ではなく
大鉈を携えた中年の男、招かれざる客。
男が薬屋の店主であるともその娘達に起きた悲劇も、鬼に引き合わされず語られもしなかった千は知らないが
開いた瞳孔や発した言葉、生き物としての本能の警報が危険をありありと伝えてくる。
戸口は相手に塞がれている。後退るしか出来ない。
台所にある戸から外に出られる、逃げる隙を見つけなければ──]
あ゛……
あ゛あ゛、あ゛ぁぁっ!!
[振るわれるのは想像したまま。
避けようと身を逸らせた時、起きたことは想定外。
嫌な音を立てて失われた視界の半分。
叫びに近い悲鳴を上げながら蹲り、たまらず熱と激痛を発する部位を手で抑える。
千はただの人間だった。良い家に生まれ、閉じ込められてもその中にいた。
こちらに殺意を持った相手との戦いの術など、持っていない。
伯父に振るわれる暴力は拳か足で、気絶すらしない程度のものだった。]
「鬼の子がのうのうと生き延びて、
何故うちの娘達が死ななければならなかった!」
[その腕を男が掴み剥がし、床へと引き倒す。
最早千に出来るのは、呻き叫びながら罠に掛かった獣より惨めに無意味に身を捩り続けることしかない。
そこからはされるがままに、激情を吐き出され引き裂かれてゆくばかりだった。]
[やがて声すら潰えてゆく。
陸に上げられた魚のように振り下ろされる大鉈の動きに重なり身体を跳ねるばかりの、獲物。
獲ってきた獣を見て喜んでくれた記憶が過ぎったのは、走馬灯なのだろうか。
紅鉄坊との日々は、やはり鬼の子なぞには過ぎた幸せだったのだろうか。
こんなことになるなら、やはり喰らわれたら良かったのだろうか。
男の憎悪の叫びも与えられる痛みも、今は遠い。]
[鬼子の残る左目から流れた涙は、すぐに紅に混ざって分からなくなった。]
[がらりと色彩を変えた空間、動く者は何処にもあらず
誰もいなくなった部屋で虚しく音を立てる火鉢の熱は、開かれたままの戸から吹き込む風で意味を成していない。
横たわり、その寒さに晒されている男の上下する胸の動きは眠りの最中よりずっと微かなもの。
老人のような白髪は身体や部屋と同じく斑に紅で汚れ、乾き始めている。
命がかき消えるまで、残る時間はもう僅かだろう。*]
なんだ、この匂いは……
[ 酷く食欲を唆る。濃すぎる血の芳香だ。
門に到達する前から、強く鬼の鼻腔へと届いた。
ほんの一時、指から流れる一筋を舐めただけの
千の血を思い出すことは、流石に無い。
だがこの状況で嗅ぐそれは、不穏を煽るに充分なもの。 ]
千!!
[ 開かれたままの戸が、淡い希望を握り潰す。
それでも、それでも、どうか応えてくれと名を叫ぶ。
何も、返ってはこない。
駆け上がった石段の先で、見えたもの
───季節外れの梔子が、紅い世界に散っていた。
]
千……ああ、千!
何故、どうしてお前が……
[ 衝撃でぐらついた視界、なんとかよろめきを堪えて戸を潜った。
込み上げる本能への嫌悪で、胃酸がせり上がる。
抱き上げよく見れば、片目から顔に掛けて傷つけられている。
外套の前を開けば、白い着物が無残に色を変えている。
まるで自分と対照にされたような傷の他にも、
酷く虐げられた跡が身体中に存在していた。
刃物を使ったのだろう。同胞の所業ではない。
これはやはり──薬屋の店主からの、村人からの報復だ。 ]
お前は何も悪くないのに
全て、これからの筈だったのに……
[ かつて同じであった人の子を喰らい続ける同胞と、
彼らを見捨てられず約束を取り付けた自分に罪はあろう。
それでも千は無関係だ。
村で千が何をしていても、鬼子と呼ばれるに相応しい悪人でも
花嫁たちは彼のせいで死んだわけではない。
報いを受けるべきは自分だ。
村人を飼い殺すような契を押し付け、長きに渡り花嫁を送り
今更全て捨てて千と外の世界へ向かおうとしていた鬼だ。 ]
千、死ぬな……
私を置いて行かないでくれ……
[ 微かに息があることに気づいても、鬼の声は絶望に震えている。
血が足りない。傷が多すぎる。
収穫した実は全て薬屋に渡した。
対価は後日、寺まで届けられる筈であった。
約束の傷薬も、“これからの為”求めた止血の生薬
──梔子の薬も此処にはない。
血に塗れた愛しい唯一に、何も出来ない。
命が、消えてゆく。このままでは、千は死ぬ。 ]**
彼が生贄を逃している村と、
多少なりとも交流があるのなら
私が彼の元で生活するための道具は
そこで揃えることになるだろうか。
神様への嫁入りに、道具を村から
持たされることは無かった。
それは意味がなかったからか
それとも価値がなかったからか。
彼は村との契約を切ることにしたようだが
今のところ、村にそのことを伝えていないらしい
神としての立ち位置を考えると
簡単に話に行く、というわけにいかないのだろう。
次の花嫁が来た時に伝えるのかと思っているが
さて、実際に彼はどう行動するのか。
村と神の行く末はわからないけれど
穏便に事が進めばいいと思う。
木の上に立つ彼を呼べば
水の目はこちらを視界に入れ、軽々と飛び降りてくる。
最初は高いところから落ちる様子にハラハラとしたもの
今は慣れたように笑みを見せて
「 幸せならよかった。 」
初めて味を感じないと聞いた時は驚きを表した
幼い頃、「美味」と書いてくれたのは覚えているし
人型を取っているから味覚はあるものだと
そういう先入観を持っていたから。
必要も無い、味もしない、それなのに
彼に食べてもらう意味はあるのか、
考えたこともある。
けれど、幸せだと彼が笑ってくれるから。
嫌な思いをしないのならばと
共に食事をすることにしている。
あの日、嫁入りする時の気持ちは
暗く沈んだものだった。
どうなるのかわからない未来。
今までの、そしてこれからの犠牲。
どうしたって、明るい気持ちにはなれなくて。
でも今は、これでよかったと思っている。
生贄制度の流れが変わったこと、
今までの人達がどうなったのか知れたこと、
……彼と再び出会えたこと。
村に閉じこもっていたらなにも知らないまま
私は生を終えていただろうから。
世界は緩やかに時を刻む。
怪物だろうと、人間だろうと
自然の摂理には逆らえないのが世の理。
いずれ私たちはまた離れ離れになる。
けれど、……その時が来るまで。
[蟻となったかんぅが分からず、ぷちっと潰してしまうかもしれないのに。
でも楽観的なところが嫁の大好きなところなのだけれど。
こんなに優しく抱かれているのに、中に熱いものを感じれば、中を焼かれるような気持ちになる。
元々水の生物のヤオディは、体温は低い。
かんぅの熱は自分には熱いはずなのに、それが心地よくて。
彼の手が髪を避けてくれる。それすらも愛しい]
もう、おしまい……っ
あんまりして、飽きられては困るでの……
[中をどんどん開かれて汚されて。おしまいと言っているのに傍若無人にまだ中を抉るかんぅ。敏感な雄を握られ、先端の弱い場所を押されて。
高い声をあげて啼いては、かんぅにすがりつく]
もう、感じすぎて、死んでしまう……っ
[かんぅではなく、自分の方で命数を減らしてはどうしようもないではないか。
まだ続く悪戯に、さすがに体力の限界を感じて、ヤオディは昨晩から何度目だろう。意識を失った*]
[力を与え深くで繋がった天狗にはわかる
茅の足元から広がる妖力の波紋は静かに村中に広がっていく]
ほぉ
[この村を好いていた茅らしい方法と、関心の声を上げる
自ら手を下すのではなく、それは]
こわいのぉ
こんなもん抱えて、よくまあ今まで平然としていたもんよ
それを解き放ってやったんじゃ、茅はようやった
[躊躇いも憂慮もない笑顔で寄り添う子天狗を、褒めるかのように頭を撫でる]
成る程、揺れが大きいと
痛みが出るもの……と
それならば、なぁ冥桜
天狗は走れば鼻が痛むだろうか
[ 残念ながら己は会ったことがない
ただ、天狗の鼻は大きいと聞いている
もし走れば痛むものならば
褌のような何かで顔を覆うのだろうか
その光景を想像すれば抑えきれぬ笑いが漏れ ]
我を知ろうというならば
そこばかり触れる必要もないのでは?
だいたい、他の方法もあるだろうに
いかんのか?
なぜだ?強くはしとらんし
大事というに丁寧に調べてるが──
[ 調子に乗って、より一層撫でていく
気づけば相手の腰が引け
ずるりと湯船に落ちかける羽目になり ]
ぶっ、ふぇ!?!
おぼ……おぼれ、るっ
こ、これ!冥桜!
その姿勢はいか……っ、ん。ん
[ 湯船自体にさほど深さはない
とは言え、横抱きにされ
足を持たれたならばまた別である
足の裏を指がくすぐる度
大きく手足をばたつかせ暴れ回る
そうこうするうち、飛沫が鼻に入り ]
ん、んん?!??
けほっ……っ!ごほ
──んっ、かはっ
[ 見事にむせこけ、目を白黒
じたばたした際全てが見えていたかもしれないが
その辺を確かめるつもりは特にない* ]
[かつてヒトであった青年は、何も知らなかった
村のヒト達からどう思われていたか、真実にはまるで気づいていなかった
村のため、皆のため、と言われれば諾々と従い
嫌と言わずとも恩着せがましく今までの世話を口にされた
青年には何もわかっていなかった
醜い人々の胸の内、ヒトならざる力の一片を得て初めて
一度たりとて、青年を大事になど思っていなかったことを知る
知ってしまった
ああ醜い、ヒトというものはこんなにも醜い
そして愚かだ、ヒトであった自分を含め──
だから
それならば
いっそ────、]
[かんぅ(蟻)は踏みつぶされた。
いや、この心臓は生は彼にもとより捧げられていた。胸にある確かなものが与えてくれる彼との生。それが確かな熱をもつ。もうおしまい、という彼の言葉に続く飽きられて困るという気持ちに、ふっと笑ってしまった。]
飽きる訳がなかろう。
[愛おしい婿殿に
何度も心を奪われているのだ。交わるごとに色を増す彼の事を堪らないと思う。啼いて縋る彼を抱きしめて、それから頬を寄せた。婿殿が死んでどうする。と意識をなくした彼を見つめて、それから密やかな接吻をした。
初めての接吻は救命活動だった。
あのときは照れ隠しされてしまった(かんぅ談)けど
今は違う。今はこうして触れ合う事が出来る]
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