人狼物語 三日月国


203 三月うさぎの不思議なテーブル

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[ 約20cmの身長差、平均より華奢な骨格の大咲。
  普段好んでいるだぼついた袖も今だけは気恥ずかしく、
  何食わぬ顔でお風呂を借りた礼を言おうとしたのに
  いざ対面した時の大咲は、
  風呂上がりとは言い訳出来ない顔の赤さ。 ]


  …………ぁ、あの、……
  まだあります、か。
……したごころ……



[ 声は紡ぐにつれか細くなっていく。
  いやでは、ない。こわいとも思わない。
  ほんとに自分と「そういうコト」がしたいと考えているのか
  窺うようにちら、と見上げて。 ]

 

 


  ……その。
  なんだろう、えっと、…夜綿さんになら わたし
  別に、どんなことされても、いいんですけど。


[ 寧ろそんな欲を抱くくらい好きでいてくれているなら、
  うれしいとも、思うのだけど。
  せっかくなら 最高に可愛い自分でデートして
  その思い出のまま、とかは、贅沢でしょうか。

  そんな風に言葉を途切れ途切れ、続けてから。 ]

 

 

[ 近寄って、くい、と控え目に彼の指先を引いた。
  乾かしたばかりの髪がさらりと肩から流れて
  微かにシャンプーの甘いにおいがする。 ]


  
…… "すこしだけ"、は、だめですか。



[ キスしたいですと、明け透けに言えない代わり。
  リップが落ちてもなお薄桃に色付くくちびるを、
  そ と貴方へ指し示したけれど。

  ……果たして、結果は。* ]

 

メモを貼った。

[痛みはなくとも、一生残るであろう傷跡は。
 見る度に過去を思い出させるだろう。

 それは、例え今の生活を気に入っているとしても。
 途切れた輝かしい未来の先を、
 きっと一度は想像しただろうから。

 みっともないとは思わない。

 けれど演じる者としては、
 役を制限されてしまうであろうこと。

 その言葉を選んだことから、分かる。
 負い目と感じていること。

 今も演技に関わる仕事を続けているのだ。
 出来ることなら、消したいだろうに。]

[その場では掛ける言葉が見つからなくて、
 押し黙ってしまった。

 彼のように言葉を尽くせるような俺じゃない。
 言葉にするにはどうしても時間が掛かってしまう。

 だから、代わりに。
 先に伝えたかったリスナーであることを話せば、
 僅かに見開かれた目に笑った。

 微かな動揺が、はっきりと見えるぐらいに。
 徐々に見えていたとしても。

 今は、それよりも。
 掌から伝えられる温度を分け合いたかったのと、
 此方からも言いたいことがあったから。
 揶揄うこともなく、目を細めただけ。]

[一瞬だけ、時を止めたように落ちた沈黙。
 彼との間の沈黙が苦しくないことは、
 今までにも何度か経験したから知っている。

 問い掛けに返された応えは、
 何故か、敬語だったから。
 ふ、と息を吐き出すようにまた、笑って。

 顎に指をかけられたなら、見上げる角度が変わる。
 瞳に相手の姿しか映らない程の距離。

 身を引くことはしないまま。
 溜息にも似た吐息と共に零された言葉に、
 小さく歯を見せたなら。]


  文句はないですけど、

  
[春を運ぶ風が吹く。
 さらりと揺れた前髪は、彼のものと重なって。]



  さっき言いかけたこと、言っていいんで。
  ちゃんと、聞きたいです。


数多のリスナーに向けてではない。
 誰かにリクエストされた訳でもない。

 他の誰にも真似できないものを。
 彼自身が選んだ言葉で。俺だけに。
 文句の代わりに、まずは最初のおねだりを一つ。]



 
   
聞かせて。



[吐息が掛かるほどの距離。
 囁く声は、甘く蕩けるデザートのように。

 いつもの優しくて落ち着いた声を待ちながら。
             視界を
に、染めていった。]

[写真は普段から映る方ではなかったけれど。
 記念、と言われたら応じただろう。

 静かな湖畔は、
 ゆっくりとオレンジに移り変わっていく。
 
 手先が器用なことを昔、褒められたこと。
 その従姉妹が杏であること。
 彼女を慕って、Madam March Hareを選んだこと。
 好きなものはサーモンと苺だということ。

 少しずつ、自身のことを話して。
 互いを、知っていく。
 これからまでも。そして、これからも。  **]  

 ― そして、朝 ―



[ 仕事柄、朝には強い──つもりだったのだけれども。
  急遽の休日出勤や速崎への蟠りへの疲労ゆえか
  それとも好きな人と手を繋いで眠ることへの、安心感か。
  今日も夜シフトだということもあって
  結論を言えば、大咲は盛大に体内時計が狂っていた。

  起こしてくれる声がする。
  夢心地の中──というか実際に夢だと思い込みながら
  寝ぼけた顔でのんびりと起き上がった。 ]


  ……ん、む……?


[ 無意識に繋いで寝たはずの手の温もりを探し、
  数瞬だけ指先を彷徨わせ。
  あれ、私今起こされた? と思い至った瞬間

  大咲の意識はすぐさま覚醒した。 ]

 

 

  ── … お、はよ、ございます
  ぇと もう起きます……。


[ お願いしてお泊りしたことは覚えている。
  だから思わず声に滲んだ戸惑いは、この状況にではなく
  誰かが一緒にいる朝の慣れなさへ。
  顔を洗い、まだ眠りたいと訴える頭も起こし
  朝食が並べられたテーブルを見ては、ぽかん、と。 ]


  …………作ってくれたんですか?
  私のために、……一緒に食べるために……?


[ 結んだ約束がまたひとつ、叶えられていく。

  朝起きた時、ひとりじゃなくて。
  昨日作ったままの状態で残されたご飯ではない、
  特別な人が、自分の為に用意してくれた、温かいご飯。 ]

 

 


  はじめて、です
  朝起きた時ひとりじゃないのも、朝ごはんがあるのも
  一緒に食べてくれる人がいるのも。

  ……それが、夜綿さんで、うれしい……。
  ありがとうございます、夜綿さん。


[ 気付けば目元が熱くなって、頬が濡れていた。
  揃いではない食器が何故か逆に愛おしく映って
  そこからは少しだけ、泣き止むのを待ってもらう時間。

  彼の家、彼のスウェット、彼が作ってくれたご飯。
  程無くして泣き止んだ大咲は照れたようにはにかみ
  いただきます、と一緒に手を合わせた。 ]

 

 


  ─────── …おいしい、


[ いつもの、静寂で空虚な味ではない。
  玉ねぎと新じゃがという素材に、春、を感じたり。
  ……それに、いつか聞いた速崎の
  スターゲイジーパイ伝説が頭を過るお味噌汁。
  敏い彼にはきっと何かしら悟られている、と分かっては
  けれど"料理"で示すことへの心遣いも理解っている。

  ふわふわの、真っ白な卵白も用意されているとなれば。
  ──導かれた脳内での答えに、また滲みかけた涙を
  さっぱりとした味付けのきゅうりを噛んで、
  どうにか泣かないよう努め また「おいしい」と咲った ]

 

 

[ 彼のように豊富な語彙も、表現する言葉もない。
  何せ自分の感じていたことさえ碌に形作れない体たらくだ。
  代わりに、彼の想いとこころと温もり
  全てを受け取るように、愛おしさを声音に込めて。

  今日の更新されたSNSのことは知らずとも
  目に見える今が、大咲にとっての全てだ。 ]


  ……好きな人がいて、美味しいご飯を作ってくれて。
  なんか、そんなの一度経験しちゃったら、
  帰りたくなくなっちゃいそうです。


[ なんて。
  でも、いつか、帰る場所が同じになればいいだとか。
  そんな話は気が早いと思われてしまうでしょうか。 ]

 

 

[ けれども今日は夜からシフトがあるし、
  フリーのライターとはいえ彼にも納期やらがあるのでは?
  突然我儘で泊まらせて貰ったのもあって
  あんまり長居するのも気が引けた。 ]


  夜綿さん、あの
  一着だけ……スウェットとか、貸してくれませんか。

  家で、ひとりで寂しくなった時とかに
  ……夜綿さんを感じられたら、いいな、とか……
  その あの 思っちゃった、というか……


[ もちろん、余裕があればで良いんですけど!!

  ……そんな必死の補足は
  照れ隠しなのは、多分、もうきっとバレてしまうかも。* ]

 

[二人きりの部屋にケトルが沸騰間際にがたがた揺れる音。
駅にも程近い自宅には、遠く電車の音も聞こえる。
それよりも小さな筈の彼女の呼吸音が耳に絡んでくらくらする。

「神田さん」と呼ばれた時には、名前呼びの約束のことは頭から抜けていた。

だから完全不意打ちで、心の準備もあったものでもない。
身体の内側に真っ白な閃光が走り抜ける。]

 ……心臓、もたないから、不意打ちは控え目で。

[此方がこんなお願いをすることになろうとは。
大げさではなく早鐘を打つ鼓動は、離れ切っていない胸板から伝わるだろう。]

[懺悔しよう。
杏仁マンゴータルト、食べた筈なのに味を殆ど覚えていない。
カメラロールを見返してみたら写真は残っているから食べたのは確かなのだけれど。

薄い素材は心許ないだろうと自分にも少しオーバーサイズのスウェットを準備したら、入浴後の彼女はワンピース姿だった。
狙った訳ではないとわかっていても、余った袖や裾から伸びた足にぐっときてしまうのは赦してほしい。

真っ赤な顔、ああ漸く気づいたのかな、と苦笑する。]

 「まだ」って何?
 今日だけでもー何回も理性ごりっごりに削られてるよ。

[リュックからはまだドラッグストアの不透明袋を取り出していない。
一応、と自分に言い訳をして買うくらいには、抑えておく自信なんてなかった。

けれど。]


 ……すっごい殺し文句だなぁ。
 うん、そう思ってくれてるの、嬉しい。

[続いた言葉の最初は、とんでもなく煽られるものだったけれど。
「それ」を前提として、彼女には希望があって。]

 僕はね、マシロちゃんを幸せにしたいんだ。

[自分を一番幸せにしてくれる彼女に、一番の幸せを。]


 今日が「その時」じゃないって思ってること、
 教えてくれてありがとう。

 割と、こう、ぶっちゃけ、
 今の格好だって最高に可愛いから正直グラグラしてるけど、
 僕が君を一番幸せにする日は今日じゃないって、
 ちゃんと言ってくれたからね。

 嬉しいよ。


[所謂「据え膳」のシチュエーションであることに気づいても、「嫌われたくないから」と男の意のままになることを選ぶ子ではなくて良かった。
「今は違う」と言っても、自分が彼女を嫌わないと信じていなければ出ない言葉だと思う。
こんな甘え方を彼女が他ならぬ自分にしてくれるのが嬉しい。]

[宣言通り手を繋いで寝ようと手を差し出そうとしたところで、指先が引かれる。

ああその「少しだけ」で終われると思われている自分の信頼が首を絞める音がする!]


 ああもう、敵わないな。
 なんでこんな可愛いかなあ?!

 

[勇気を長引かせるつもりなんてない。
瞼を軽く伏せながら顔を近づける。
シャンプーの香りに喉が鳴ったのは気づいても気づかない振りをしていてほしい。

合わせた目線でそっと同時に閉じるように合図をして。]


[触れた先の柔らかさを、自分はきっと一生忘れないだろうと思った。]

 


 ……マシロちゃんのうさぎクッキー、
 粉砂糖が白くて、「白うさぎさん」だなって思ったら、
 キスしたくなったこと思い出した。

[触れ合わせた後の空気がくすぐったくて、くつくつと笑ってしまう。
数秒触れていたのに離したら寂しくて、何度かつい啄んでしまった。
先程より赤味が増した唇に、「味見が大口でごめんね?」と親指で触れて艶を拭う。

おやすみ、と手を繋ぎ直して布団に入った。
眠れたかは、自分だけの秘密だ。*]

メモを貼った。

 ― ところでうさぎのじゃれ合いは続く ―



[ アリスブルーの新人うさぎと事故物件(疑惑)の話は横目。
 
すみません白状します、混ぜてほしかったです。
  だって私、そんな風に言われたことないもん!


  とは、問われない限り出て来ない本音だが。
  時折スタッフ同士で飲みに行くことも、
  グループチャットで会話することもあった三年間の中。
  茶化さず、素直に心情を吐露したのは
  そういえばこれが初めてのような気がした。

  数度瞬いて自分を見つめる瑞野に返す視線は、
  完全に兄を取られた妹気分の拗ねた色。
 
じきにその対象はひとり増えることになる。
 ]

 

 

[ ぽん、と置かれた手の先は。
  あの騒動の時みたいに肩ではなく、今度は頭。 ]


  ……えへ。
  はぁい、瑞野お兄ちゃん。

  代わりに妹の大咲にも、相談とか
  してくれていいんですからね?
  例えば…………恋とかの……?


[ 速崎から既に話を聞いているとは知らないけれど。
  「オニイチャン」という自称へ満足げに笑い、
  お返しとばかり投げた言葉は
  つい、MVを何気なく見せた時の瑞野の顔を思い出して。

  言い詰まったのは、わざとじゃないです、本当に。
  大咲はしれっとした顔を貫き通しました。えらい。 ]
 

 

[ 続けられた言葉と、流された視線の先。
  入社早々、既にある意味大物の気配がする新人うさぎ。 ]


  ……もしかして、カクテル教育係、私ですか?
  ちょっと……いや、うん、頑張りますけどね……?
 

[ 足すか掛けるかじゃなく割ることを覚えて頂きたい。
  早速頼られますよ、ええ、任せてくださいお兄ちゃん。

  しかし大咲も谷底に子ライオンを落とす親ライオン。
  教育方法はしっかり兄の背を見て育つので
  後日、 徹底指導した後輩くんの縋りには
  にこにこ、教育の成果を見せて貰うことになった。* ]

 

メモを貼った。

[ 傷も過去も、あるから今がある。
 なかったことにするなんて、
 自分で自分を恥じているようで、
 嫌いになってしまいそうだったから。

 自分自身がそこそこ気に入っている
 俺という人間を、選んでほしかった。

 見てくれとか、よそ行きの大人ぶった
 気さくな青年、ではなく。
 
 言葉をかけられることはなくとも
 がっかりしているようでなければ、良かった。

 代わりに返された情報については
 後ほど、詳しく聞くとしよう。

 言葉を交わし合うように、
 触れ合った指先から熱が伝わり合えば
 目を細める君につられ、微笑んだ。 ]

――「いただきます」――

 あは。ちょっと寝惚けてる?
 初めて見る顔だ。
 可愛いけど、顔は洗いたいよね?
 行っといで〜。

[朝からハイなのはお察しというやつだ。
彼女の方は初めての家の慣れない布団でもぐっすり眠れたようで良かった。
来客用の布団、浮かれて買った甲斐があった。

洗面所に彼女が向かう間にお茶を入れる。
湯呑はないのでマグカップだ。]

[ 肝心なときに、決まらない俺を
 君が笑う。

 格好付かないけれど、君が笑うなら
 今はそれでよかった。

 のに、な。

 逃げも止めもしないばかりか、
 小さく歯を見せて
 ねだるように言葉を口にする
 鼻先が触れ合うほどの距離、
 囁く声が、鼓膜を震わせ、心臓まで
 蕩かせそうに、甘く。 ]

 すきだよ 那岐くん
 ずっとずっと、俺の隣にいて。
 友達じゃなくて、恋人として。

[ 紡ぎ終わると同時に、
 二人の距離はゼロになる。 ]

 


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