203 三月うさぎの不思議なテーブル
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行きたいとこ、先聞きたい?
サプライズがいい?
[探り探りのデートになりそうだし。
行き先は決まってるけど、進行の好みは聞いておきたい。]
[返り咲くことのない花。
彼自身がそう決めたと言うならば。
もう名残惜しいと口惜しむこともない。
言葉を飲む込むようにゆっくりと瞬いたら。
向けられる視線に、目を見合わせて。]
じゃあ、『ヒーロー』はもう卒業ですか?
[無名のヒーローは残る。まだ暫く。
画面に映し出されたままのブラックも。
配信され続ける限り。
またいつか、誰かの心に残るかもしれないけれど。
『ヒーロー』が素の姿になったのを
知っているのは、隣に並ぶ自身だけ。*]
―― 先輩の惚気 ――
名前知らないまま話し込んだりも、
ここだとよくあるよね。
はは、言っといて。
スカウトマンでもなんでもないけど。
[ その気なら口利きからのスカウトも
考えるけど、そんな事したら先輩にシメられて
しまいそうなので、言わなないまま。 ]
や、無駄にならずに逆によかったよ。
どういたしまして、じゃ、
一番高い酒ください。
――冗談だから、一番キツい酒持ってこないでね
お願いします。ビールで。
[ 本気にしたところで、ここで一番高い酒とは
なんであるかなどは、知れない。
し、別に度数の高い酒を飲むつもりもないので
ほんと、ビールでお願いします。 ]
このご時世、当人同士の問題に
そこまでうるさくないでしょう
[ うるさく言われるような人物なら
そもそも、話はしないのだけど。
先輩のことは、それなり信用するのが
後輩でしょ。 ]
それは最近、すごい実感してる。
どっか他人事みたいに、俺心狭ぁとか
しょっちゅう思う。
[ 恋して新たな自分を知るには
大きく頷いた。 ]
そうだね、消滅とか考えた事もないけど
逃げようとされたらみっともなく
縋ってしまうかも
[ プライベートな部分に
深入りすることがなかったのは、お互い様
であるが、これほど上機嫌で饒舌な彼女は
今までに見たことがなく。
軽い気持ちで聞けば、ご機嫌でつらつらと
語りだすので ]
あ、ビールお代わりください。
[ まずは追加の酒を注文した ]
ファンと。そりゃまた。
あぁそれは………嬉しいね
俺たちみたいなのには、特に。
[ イチコロの殺し文句だろう。
素の貴方を、向き合って知りたい、なんて。
彼女にこの顔をさせる彼氏に、ますます
興味が湧いてくる。 ]
あぁ………、うん うん
[ アイドルを辞めた後の、
普通の生活の中で過ぎ去った日々
の話には、こちらにも通じるものがあり
一つ一つ、丁寧に頷きながら聞いた。 ]
アイドル時代の、壁は大きいよね
勝手にそういう顔、作っちゃう時
俺もある。
[ 普通の女の子をしたくて、過ごした日々のなか
うまく行かず、悩む日々もあっただろう。
ただ、その日々があったからこそ、
彼女は出会うことができたのだと、思った。
なにせ、相手の理想とする偶像を
演じるのは、我々の得手とするところ。
そうせず、諦めなかったからこそ ]
そっか。
[ この人ならと言える相手に
ただの人間、ただの女の子として
迎えて貰えたことには、 ]
うん、良かった。幸せそうで。
[ 心から祝福の言葉を送った。
好きだと伝えることも、
本当の自分を差し出すことも、
その本気を受け取ることも
受け取られないと知りながら、伝えることも
等しく、勇気ある者にしかできないこと。 ]
[ 頑張ったね。
あくまで俺は後輩なので、
その言葉を投げかけることはない。
頑張れと背を押したとて、
行動に移したのは紛れもなく、彼女だから。 ]
え゛っ 俺?
[ うんうん、良かった。
この中々に頑なところもある先輩の大事な
彼氏にいつか会ったらなら後輩ヅラして
先輩をよろしく、などと挨拶しなければ
とか、考えていたので突然水を向けられて
濁音で反応してしまった。
友人が幸せを報告してくれた素敵な夜
お代わりしたはずのビールも残り僅か。 ]
いや、いいよ 俺のは
恥ずかしがり屋なんで。
[ 降参するように両手を上げたが
追撃されるようならぽつぽつと
話し出すかもしれない。* ]
[アイスショップに着けば、ショーケースには色とりどりのフルーツ。
イチゴもあるし、ブルーベリーもある。チェリーは残念ながら。]
なにか入れたいのある?
[ふたりで好きなフルーツを選んで、それをミックスしてもらって、今日しかできない味を分け合う。
今更ながら恋人っぽいんじゃない、と思ったら、味がわかんなくなりそうになったけど。
冷たいソフトクリームはありがたいことに、そんな緊張も冷まして、舌を起こしてくれる*]
[ プロである誰かが、
自分の作ったものを食べると聞けば
多分作ることからしていなかったと、思う。
けれど今日訪れてくれるのは、
プロであるが、恋人。
作るという楽しさを教えてくれたのも
君だったから。そういう気持ちで作ったものを
きっと、食べてくれるだろうとも、思って。
合間に摘まれたピクルスが口に
運ばれるのを、思わずじっと見てしまった。
美味しい、と言われればまた一つ、
君がいつも感じている気持ちに、
近づくことが、出来ただろうか。 ]
結構な年だし、不器用だけど
馴染んで欲しかったんだと思う、現場に。
俺は自分のことでいっぱいいっぱいで
声掛けられても、素っ気なかっただろうし
限度を知らなかったから、断れなかったけど
それからは断ってたよ、ほどほどで。
[ 苦笑いを浮かべる彼
には、そう答えた。
知りたくなかった事を、いつか教えてくれるなら
ご機嫌取りに伺いたいと思います。
]
[ これからの事でもあり、これまでのことでも
ある話を、君は黙って聞いてくれていた。 ]
そうだね、そうなる。
がっかりした?
[ 卒業ですか?と問われたなら
すぐに肯定の返答をした。
投げ返した問い。
浮かべる表情に、悲しさは寂しさはない。
人の思いの中にだけ、生きているであろう
ヒーローは、今もう、君の隣には居ない。
君の隣にいるのは、少し駄目になってて
君のことが大好きなだけの、ただの男だ。* ]
| えっそうなの!?全然知らなかった。
[大河くんの言葉に、絶賛手酌中のおじさんはそりゃもうびっくりしちゃう。 けどまあ、冷たくないビールもこんなに美味いんだからそりゃそんな世界もあるか]
……なんかアレだな。 大河くん、俺の知らない世界のことめっちゃ知ってるんだな。俺の方が遥かに年上のはずなのに。
[美味いつまみを頬張りながら、そんなしょうもないことを仕事中の青年に投げかける20代後半男性がひとり**] (48) 2023/03/14(Tue) 2:02:04 |
してみたい
それもしてみたいね……昼抜いて調子を整えて……
[アフタヌーンティーはしたことない。料理はする側で、味見をするもの。
作ってもらう側、まして客としては]
ショートパンツの王子?
[それ私が着ても大丈夫なのかな、と思考には浮かんだが口にはしなかった。
少なくとも、その格好をチエは好きなのがまちがいない。
そしてその「きれい」「にあう」に信を置いている
チエが店の外にいる自分の姿を思い浮かべて衣装を考えてくれる、という想像は胸を熱くする]
じゃあまた、今度ね
[ロッカーに入る花束を見て思った。
先達の受け売りが正解とは限らないな。と。
花屋で、色や花の名前を見て、やけに細かい花言葉だの産地だのを聞かされながら選ぶのは楽しかった。
サンザシの花(買わなかったけど)をみて、あの実に花があったことを知ったりだとか。
けれどたぶん、花を捧げるよりも、一緒に見にいく方が自分は好きな気がする。
あるいは手渡すよりは、摘んだ花を彼の髪に挿す方が好きなのでは]
そうだな……じゃあ、まずサプライズかな
この服装で行ってもいいところなんだよね
[一つずつ試していこう]
[アイス!]
凍らせて……となると時期さえあえば洋梨あたりが優勝な気がするけど
[季節感、大事。
やはりあれは秋の気配を感じ始めた頃に食べるのがおすすめ]
あ、キウイ
キウイにする
[ショーケースを覗き込み、ゴールドでないキウイ・グリーンを指差した。
ミックスフルーツの氷菓子。
冷たい、甘いソフトクリームに小さなスプーンを差し入れて、溶けてダメにしてしまう前に。
この他愛ない買い食いが、大きな冒険の一歩であることをチエには、はっきりと伝えてはいない]
美味しいね
果物のソルベは作るけど、これだけの種類を常時提供して専門店として成り立たせるのはすごいな
チエの作った、ヨーグルトのシャーベットも美味しかった。あの賄いの
[春の陽気に触れて表面から柔らかくなっていくアイスを見ながら、呟くほどの音量で]
あまり、作りたくなくなってしまったのは
私が原因だった? 自分が力不足だと思って
[あのぬいぐるみを、身代わりのようなぬいぐるみを渡された時、間違いなくとても嬉しかったのと同時に、
諦めろと言われたような気がした。身代わりを渡されて*]
[アルハラと称した返答に、
擁護のようなものが入れば、少し苦味が交じる。
そういうコミュニケーションの取り方も
あるのかもしれないけれど。
手にした缶を指先で持て余しながら、
視線が手元に落ちてしまう。]
それでも、他にやり方はあったと思います。
高野さんが、それを厚意と思うならいいですけど、
断れない人間に酒を勧めるのは、あまり。
[店でもほんの少しだけ、稀にある光景。
酒は百薬の長とはいえど、時には毒にもなる。]
[アルハラと称した返答に、
擁護のようなものが入れば、少し苦味が交じる。
そういうコミュニケーションの取り方も
あるのかもしれないけれど。
手にした缶を指先で持て余しながら、
視線が手元に落ちてしまう。]
それでも、他にやり方はあったと思います。
高野さんが、それを厚意と思うならいいですけど、
断れない人間に酒を勧めるのは、あまり。
[店でもほんの少しだけ、稀にある光景。
酒は百薬の長とはいえど、時には毒にもなる。]
[そんな現状はもう、あまりないだろうけど。]
無理しないで、くださいね。
[伏したまま、ぽつりと言葉を落とす
そんな、一場面もあったかもしれない。]
[問い掛けに逆に問い掛けられて、少し戸惑う。
がっかり。そういう言葉で表現するには、違う。
空いたピザのケースを眺めながら、
また、ぽつりと零し始める。]
俺は。
まだ、高野さんが
続けたいんじゃないかって、思っていたから。
答えが、少し予想と違って驚きました。
がっかり。
……は、正直なところ。してないです。
ラジオは聞いていても、
実際に見るのは、今日が初めてだったし。
[視線をテレビに移せば、
変身を解いていくヒーローたち。
彼らもヒーローの皮を脱げば、普段の姿になる。]
今が良いっていうなら、それでも構わない。
俺が、見てきた人に変わりはないから。
俺が知ってる人は、ラジオの向こうと、
店で食事を楽しむ姿ぐらいだけど。
その日常をいいとあなたが思えるなら。
それでいい。
もし、まだ心残りがあるのなら
……背中を押したかもしれないけど。
[言葉を区切り、弄んでいた缶を置いた。
距離を詰めるようにソファに近づく。
彼が手にしたままのコーラを取り上げたら、
そっと床に置いて、覆い被さるみたいに
正面から両腕を回して、抱きついた。
ソファと俺の間に挟んでしまって抱き竦めて。
まだ酒も飲んでいないのに、
妙に甘えくなる気持ちが勝って、肩口に頭を乗せた。]
……今のままでいいなら、いいんです。
後悔がないなら。
『ヒーロー』じゃなくてもいい。
デザートを宝物みたいに写真を取って、
バイクに乗るのが気持ちいいって、
駄目にしたいからって、ソファを二つ買うような、
――――そんな、貴方だから、
[向ける視線の先、横顔に手を伸ばして。
頬に手を添えて此方を向くように。
先延ばしにしていた、
ずっと言葉にならなかった想い。
そっと首を伸ばして、
唇
を触れ合わせる。]
…………――、そんな貴方だから。
好きなんです、景斗さん。
**
ごめんね、この頃の俺も
心配させたね。
[ 視線が下方に落ちる。
当人にとっては、そんなこともあった程度の
昔話。けれど、今だってよくある話。
酒類の提供をしている店に勤めている彼には
思い当たる事もあるのだろう。
片手を伸ばし、抱き寄せるようにして
頭を撫でる。もう一度ごめんね、と告げた後 ]
大丈夫、もうそういう事、ないよ。
心配してくれて、ありがとう。
心配させたくないから、
しないよ。
[ ぽつりと落とされた言葉に、
また一つ愛おしさが生まれてきたから。
やさしく、やさしく、頭を撫でた。 ]
[ 聞けば答えてくれた、自分のことも
そうじゃないことも。けれど、己に比べれば
口数の多いほうでない彼が、零す言葉の数々に、
ああ、いつか。そんな風に言ってもらえる人を
見つけたかったのかもしれない、と思い当たる。
続けたいんじゃないかと思っていた
その言葉に、瞳を伏せた。
退院してからの日々、続けられなくなってしまった
現実と直面し、すぐに気持ちを切り替えられた
わけではなかった。
諦めるのか、諦められるのか。
一度手にしたものは全て、こぼれおちて、
粉々になって、気づいたときには拾い集めたところで
元に戻る事はないほどの砂粒になっていた。 ]
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