人狼物語 三日月国


65 【ペアRP】記憶の鍵はどこ?【R18】

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視点:


 

 ただいま! エン、調子はどう?もう起きれる?


[ちょうどよさげな広さの部屋を見つけたおれは元の部屋に帰ってきただけだけど、正直部屋は狭いほうが、エンとの距離が近いから部屋替えはしなくてもいいんじゃないかなって思ってるんだ。

扉を開けて、エンがいるだろうベッドの上に視線を向ければ──…]


 エン?


[布団の塊がそこにいるんだけど……あれ?デジャヴかな?]

[つい最近見た光景が目の前にあっても、前回おれが選んだ行動をおれはとらないんだ。

エンがなんで布団にくるまっているかはわからないけど、彼が落ち着くまで、おれはベッドサイドに腰かけて布団の上からぽふぽふとたたくとしよう*]

[ハチヤの声が聞こえる。

続いてベッドの端がぎしりと沈み、布団の上から宥めるみたいにぽんぽんとリズムよく叩いてくる]

 ハチヤぁ

[だから安心できる布団を押しのけ、安心できるやつにぎゅっと抱き着く。

あれはやっぱりハチヤだ。そっくりなだけじゃなくて、鱗のできる人間なんてそういる筈もない。それは分かったけれど]


 なぁ。俺のこと、好き?

[こいつの顔は分かりやすいから。これは質問だけど、確認でしかないもの*]

  
 ……うわっ! ……


[布団の中から飛び出して、おれにしがみついてくるエンにびっくりしはしたけれど、その体は少し震えてて、よっぽど不安だったんだなってことだけは伝わってきたから。
エンの背中に手を当てて、体を支えたんだ。
抱きついて不安が薄れるなら、好きなだけ抱き着けばいいって思うからね。


好きなのかって聞かれれば答えはもちろん決まってる]


 うん、おれはエンが好き。

元のハチヤ

[おれにも渡したくないくらい*]

 うん。じゃあ、俺が一番好き?


[その質問はいつかの夜と同じもの。それを、違う気持ちで問いかける……*]

[その答えがどちらだとしても、答えを半ば奪うかたちで唇を奪う。だって違うというのなら、その答えは聞きたくないから。


 技巧なんて元からない、ぎゅうっと押し付けるだけの唇と無理やりねじ込んだ舌は受け入れられるのか。力任せに二人分の体をシーツに沈める]


 一番だったら。条件は、満たすよ。だから

 
記憶を奪われ、何かを忘れたばかりの私にそれを言うか。

 ……嘘は苦手だ。この状況の今言い切るのは怖かった。]

 私の意思で、この約束を手放したりはしません。

[それが精一杯だった。

 手が頭に伸びてくる。
 どうしたって反射的に体がこわばる。出来るだけそれを見せないよう頑張る。
 そうしてその手を受け入れて

 また、違和感を感じた。

 怖くない。

 この手は大丈夫だ、と体が覚えている。
 苦手な筈の頭に触れられる行為は、なぜか心地よかった。]
  

 
 今のはガブリーシュという名の実ですわ。
 とある無人島に生えていたのですが、栄養価が高く味はほどほど、でも群生地が少なくあまり出回らない……ってある学者さんの受け売りですがね。

[ちょっと得意気に先生の教えを伝えた。]

 とれたては美味しかったですわよ。

[なんて、ちょっと悪戯っぽく笑う。当時はまぁ空腹だったのもあるが。思い出補正もかなりある。

 
ろくでもない思い出の品物に触れている時、特別追及がなかったのは助かった。
 流石にこれに関しては……人に言うには、嫌な記憶すぎる。

 

 
 誕生日については、因みに言っていない。
 言うと、連鎖で夜会の話になりそうだからだ。
 話題にしてしまえば……来てほしいと、言いたくなる予感がしていた。
 相手の気持ちを知る前に外堀を埋める行為はどうしたって出来ない。だから黙っていた。



 何かを書き記す音が耳に入る。
 何故か心地いい。

 その音はとても、耳に馴染んで響いた────…… ]
 

 
 申し訳ありません。
 少しだけ休んだらすぐ行きますので。

[目の前の景色に気合いを入れるアマミ殿の姿が見える。 ……やる気が高いな。]

 ……そうなのですか。
 今本当に記憶をアマミ殿が失くしてないか心配になったので。
 自覚がないだけというのもあり得ますし。

[バーバチカ島の再来、と呟いた言葉。
 記憶に対してやたら重く受け止めていた言葉。
 記憶を捨てる状況なんて早々ない。つまりは……。]
 
  それは、願いの為です?

[これはもうただの確認の質問だ。返答がごまかされても言葉を続ける。]


  ────……寂しく なかったですか?


[記憶は対価だ。
 対価になるだけの記憶が奪われる。
 私は喪失を理解した時寂しくなった。だからか。つい言葉がこぼれてしまったんだ。聞いたってどうにも出来ないのにな。]**
 



 んむぅっ!


[そんなの一番好きに決まってる。
でも、おれがそう答える前に、エンの唇と舌がおれの口を塞いだから、言葉は喉の奥に押し込められてしまったんだ。
力任せの拙い口付けにされるがままになりながら、おれはベッドに押し倒されて、エンの口から知りたかった条件を聞かされたけど]


 エン──…


[焦ってる?なにに?
ともかくエンの様子がおかしいってことはわかるから]

[二人で勢いよく倒れたシーツの上、宥めるみたいにぽふぽふ叩かれる。煮え切っていた頭がちょっとだけ冷静にはなったのだけど]



   大人、ねぇ。……中身はまだまだ子供ですよ。
   好きな人とられるとかまじ無理だし、
   仕事も出来るだけサボりたいし。



  くすくす笑って、彼女の同意を聞きながら、
  光り射す部屋の中へ入ってみた。
  そこは以上部屋のようで、
  時代も性別もごちゃ混ぜのような感じになっていた。
  彼女の興味は、何かに向いただろうか。

                      ]






   ……人の悪口は、気にする。
   めちゃくちゃ気にしてクソって思うし、
   ふざけんなって心の中でいろいろ言ってる。
   心の中で言って、行動で黙らせる。
   ってことばっかり会社ではやってるかなぁ…




  廊下でそんな質問をされていたなら、
  部屋の中に入って返事をしたはず。
  寧ろ、嫌と思うことほど頭に残る。
  だからムカついて、行動でどうにかしてやる。
  そんなつもりで、いつも会社にはいた。

  お陰様で、成績が良いのだけれど。

                      ]*




[
 くすくすと笑われてきょとんとしてしまう。
 好きな人を取られる…取られたことあるのかな
 なんて考えて……つい口に出た。
                       ]

    え、取られたことが…?

[
 ……心のうちにとどめておけないあたり
 私は子供だと思う。
 さっきだってだいぶ失礼なこと、
 忽那さんに言ってたしね……
 今の言葉も失礼?ま、まあ返事を強要はしてないから…。
 部屋に入れば、雑多なものが置いてある場所?
 みたいで。

 
なーんか見覚えのある乙女ゲームが

 
棚にある気がしますが…

 
あれはスルーしようそうしよう……


 目線が一瞬そっちにいったかもしれないけど
 とりあえずスルー。
                       ]

[
 部屋に入ってから質問に答えてくれた。
 ……言い方が面白くて少し笑ってしまう。
 でも、すぐ表情を戻して俯いた。
 やっぱり、考え方が大人。
 私はそんな風に考えられないし。
 嫌だなって思って、でもきっと私が悪いんだろうって。
 仕事に関することなら、自分が悪いか悪くないかは
 判別できるけど…そうじゃないことは……。

 行動で黙らせる、か……。
 私もそんなことが出来たら……。
                          ]

    ……凄いですね、黙らせることができるなんて。
    私は……
負けてしまうので。


[
 嫌って言えないわけじゃない。
 此方に分がある口喧嘩なら勝てないわけでもない。

 でも、言われた言葉は嫌って言葉じゃ消せないわけで
 私の中に残り続けて。
 ……それこそ学生時代の言葉がまだ、
 消せてなくって、どうしようもない。
                          ]**


気になったんだけど……ハチヤには、旦那さんとお嫁さんって違うのか?


[お嫁さんと旦那さんとで与える感情が違うように聞こえる]



   .........十分だ。


[外敵による不可抗力を責め立てやしないのは当然のことだ。
彼女に約束を手放さず、忘れないという意思があるのならば、アマミはそれでよかった。

体がこわばるクラヴィーアはかつての
トラウマを思い出したような様子に思えて。



   っと...すまない。
   ついいつもの調子でやってしまった。

   へぇ、君がそこまで言うのなら
   いつか俺も食べてみたいもんだ。
   

[バーバチカ島では3日間ほとんど何も食わずで生活していたアマミであったため、果実のことは全く知らなかった。

ところで学者と聞いてアマミが思い浮かべたのは船の上で寝ていた時に声をかけてきた青年だった。
彼は神になると言っていたようだが、果たしてなれたのだろうか?]



[相手の記念の日を知ろうとするのは、在り来りであるが相手への興味関心の第一歩に違いない。

彼女が言おうとしなかったのならば仕方が無いが、誕生日を知りたいと口にしなかったアマミも大概であり、そこはお互い様と言うべきだろうか。

ペンを走らせる音はいつも孤独であった。
それが彼女との時間を彩るバックミュージックに
変わったのは一体いつからの事だったのだろう。

書きながらアマミはこれまでの記録を残すように
過去に向けて思想を巡らせていた。




   いや、休息は十分にとれ。

   無理をして例えば倒れでもしたら
   それこそ問題だ。


[彼女は真面目な子だ。
こちらのやる気に対して彼女も合わせるようにともしかしたら考えているのかもしれない。

アマミは動こうとする彼女を暫しのあいだ静止しようとするだろう。

だがしかし、彼女から向けられる確信めいた問いかけに今度はアマミが静止を喰らってしまう。

振り向いた時に瞳に映るクラヴィーアの表情は、なにかに気づいていた者のそれだったから。
願いの為だと答えなくても、彼女の答えは出ているようなものなのだろう。


寂しいかと聞かれれば、アマミは驚き目を丸くして。過去を再び思い浮かべたのち、苦笑いのまま答えることにした。]

   



   寂しい、か。
   そういう感情には、慣れてしまったな。


[だからきっと、自分は彼女程寂しいと感情を抱くことは出来ないとアマミは信じて疑わない。

しかしそれだけに留まらず言葉を続けるのは、相手がほかでもない彼女だからだ。]


   しかしどうにも、俺は人に恵まれている
   ようでね。

   俺の寂しさを埋めようとわざわざ会いに
   来てくれる変人もいる。

   いつかその子には嫁に来てもらおうと
   思うんだが、これがまた前途多難ときた。



[肩を竦めてお面を被り直すと、時折彼女の様子を見つつ本の探索を始めるだろう。
本の背広を一つ一つ見ていくとタイトルを読み上げて彼女の反応を伺ってみたりもした。

タイトルだけを見る限り彼女の記憶に関連しそうなものはなさそうだが、それでも順番にただ探し始める。

たとえ非効率であろうとも、やるしかないのだ。]*


[エンにしちろの話をしている間、たくさんそれはもうたくさん口を塞がれた。
嬉しいけど、嬉しかったけど!エンはおれが我慢してるってわかってないよね!!

おれの話が終えたエンは、恋愛より親愛なのか?って聞いてきたんたけど]


 ごめん。親愛ってどんなのなのかよくわかってないんた。


[学園で親兄弟がーって話を聞いたことはあるけど、おれにはそんなのいなかったし、しちろの話をするとかわいそうって目で見られるからしちろの話をすることもなかったんだ。
たから、これが親愛なのかどうか、おれにはよくわからない。

もうひとつエンから質問が飛んできて。
こっちは大丈夫!ちゃんとわかる!]


 うん、違うよ。
 お嫁さんを大事にして守って、どんなときでも助けに来るのか旦那さん。
 居ると旦那さんが幸せになるのがお嫁さんだよ!
 居ないと幸せじゃないんだって!


[しちろがそう言ってたからね!]

[キスは好きだ。特にハチヤとするキスは胸があったかくなるから。

恨めし気な顔をするから、ちょっと笑ってしまった。だからひとつ教えてやろう、ほんとはキスはするよりされる方が好きだよ、ってね]



 ……っ!な……に、それ。
 それ、お前、それを俺にしたいのか?


 俺に、守られたい?それとも、俺と幸せになりたい?


[あの時。薬に苦しんでたのに、あいつ俺にお嫁さんになってって言ったんだよ。そう思うと……なんか、とても、恥ずかしい*]

 
[その言葉に安堵を覚えた。
 どうしようもない存在に対抗する力は持ちようもない。持つ存在になる気もない。身の丈に合わない願いは持つものじゃないさ。

 謝られればちょっと慌てて首をふる。]

 大丈夫でしたから。

[そう言って笑いかける。
 食べてみたい、という言葉にどこでなら手に入るだろうか、と考え出す。
 手に入るといいですね、と今は無難に返答しておいた。

  自分の誕生日を隠すため、私も相手の記念日を知らなかったのに今は気づくことは出来ない。
 本当にお互い様だ。

 アマミさんがペンを走らせる音を聞きながら、パイプのにおいに包まれるのが好きだった。
 そういえば、最近パイプが減ったな。 なんて思っていたな。
 言葉がない時間になってもそれが苦痛じゃなくて。
 愛しくて。この時間をずっと続けたいと何度願っただろう。
 それは、気づいたらそうなっていた。わりと早くからだった気もする。

 

 
 ……すみません。

[そう言われれば大人しく座るしかない。
 本物を見つけられるのは私しかいない。なら倒れない程度に動かないといけないしな。

 テーブルにあったシュガーポットの砂糖に目をつけるけれど、昔読んだ本に異世界の物を口にして帰れなくった物語があって。それを思い出すと手をだせなかった。
 その近くにあった鎖に手をふれれば、赤い髪の人を思い出して、消えた。あの人も今元気にしているだろか。なんてふと考えてしまう。


 私の言葉はぶしつけだったかもしれない。
 言ってからちょっと後悔をした。

  慣れてしまった。その言葉にわかりやすく眉を垂らす。……この人は独りぼっちなのだろうか。
 私はこの人と知り合いの筈なのに何をしているのだろうか。
 そんな苦い気持ちがうまれる。

 でも、言葉は続いた。
 ……『誰か』が欠けた記憶で私は何度も『誰か』の家に行っていた。
 嫁に、という言葉に目を丸くした。]

 ……そ、そうなのですの。
 苦労してますの? ですね……?
 

 
[……お嫁さんに貰いたい人がいるのか、アマミ殿は。
 
 「君の大切な人の記憶を──」
 その言葉を今更思い返す。
 明日必ず会えるような言葉。
 私が誕生日にパートナーになってほしい、と願う相手。
 今まで貰った言葉は、よくよく思い返せば知人や友人に対するにしては……

 ……────


 待て、ちょっと待て。
 いや、今はそれどころじゃないだろう!
 それこそ思い出せば分かる事だ! うん!

 うっかり染まりかけた頬を軽くたたく。

 タイトルを聞いては記憶にあるかどうかで判別していく。]

 そういえば、さっきは記憶にないものも鍵かもって思ったのですよね。
 万年筆だったのですが。
 ……そう思うと今の私が覚えているものが必ず該当するか自信がないのですよね。

[うーん、と悩む。こうなったら端から順番に触っていくか?]
 

 
[そう悩みながらも考える。

 無事の帰還の方が大事に変わりはないけれど。
 記憶の中にいる『誰か』を悲しませる事になるのは……いやだな。
 何度も何度も会いに行っていた。共に過ごしていたはずだった。
 それがこの人だったのなら……。

 ……うん。記憶をちゃんと取り戻さないとダメなんだ、私は。

 死にたくなんてない。自分が歩いて来た道を失くすなんてしたくない。
 自分の人生の欠片一つたりとも、悪趣味な相手に渡す道理なんてないじゃないか。

 そう決意すれば力が戻ってくる。勢いを付けて立ち上がる。]

 よし、やってやるか!
 アマミ殿、私を助けて貰っていいですか?
 片っ端から試してやるとも!

[そう言って、笑いかけた。]
 

[するよりされる方が好きなんて、聞いたらしないなんてできないよ!
大丈夫、キスだけにするから!おれがおれで選ばれなきゃしないって決めたからそこから先は我慢する!

噛みつくようにキスをして、それからエンに答えるんだ]


 うん、おれはエンがいると幸せだなって思うから、エンと幸せにになりたいよ。


[だからおれはエンを守るんだ。
あっちのハチヤもそうなんじゃないかなっておもうけど、代弁してやるきなんてないんだ。*]

 
[夢というのは長い時間経過したようで現実ではほんの一瞬という事もある。
 その逆もしかり──── 

 色々触れて始めてから ふと、感じた。

  
 目覚めが近い、と。 
  ]

 ……!!

 あ、アマミ殿!
 どうしよう、どうしたら……。

[慌てて手当たり次第触れてみても正解を奇跡的に引き当てる事はない。
 そもそもこの部屋になかったら?
 それだけでもう詰みになる気がする。]

 目覚めそうな気がするんです。
 全部見る時間が足りない!!!

[悪趣味な笑いに目の前が滲む。
 兎に角急いで手あたり次第物に触れては選択肢を消していく。

 読んだり触れたりした事がある本はそこそこある。
 それがまばらにちりばめられててそれを見つけるだけでも時間をとられる。
 焦る。
 そもそも調べるのが本で本当にいいのだろうか?
 そこの判断すら焦ってうまくつかない。]
 

 
[どうしよう、このまま目覚めてしまったら。
 私は記憶を失ってしまうのに──…… 



 私の記憶の鍵はどこにあるのだろう?



 ただ当たる事を願ってひたすら目の前の物に触れ続けた。]**
 

[エンにキスした瞬間に、しちろの泣き顔が写った。

もう一度、エンに唇を重ねたら、今度は一瞬じゃなく、おれの鱗食べながら戦うしちろの姿が見えた。
これは過去の映像なんだなってことはわかってしまって、エンはこれを見せられてたんだなっていうのもわかってしまった。

だから、きっと、これのことも、エンは見ているんだろう。
おれはエンが不安にならないように、その手をぎゅっと握ることにしたんだ]


 ん……ふ、ぁ…


[荒々しく落とされるキスを受け入れる。やっぱりこいつとするキスは好きだなぁ]


 ふ。ふふ、それじゃお嫁さんじゃなくて、やっぱり旦那さんになるしかないんじゃないか?
 それに、一緒にいてお互いに幸せになるなら、どっちがお嫁さんだか分からないな?


[そう、笑って意地悪を言ってやろう。それからもう一度の口づけをねだるように顎を持ち上げ唇を開いて──流れる映像に、目を見開いた*]

[また見えた]


 ──。


[微かに不安がよぎるけれどここにはハチヤがいるから。ちゅ、ちゅと音を立てて落とされるキスの合間、見せられる過去の愛情の残滓に一瞬泣きそうな顔をするけれど、強く手を握られて目線をハチヤに向け直す。励ますつもり、なのだろうか。ならば]


 ……もっと。キス…守って、くれるんだろう?


[諦められないようにしてほしい*]

[ねだられるままにキスをする。
おれの視界は過去のおれと重なって、まるであのときの戸棚の中でキスをしているような感覚に陥った。

しちろが命懸けで戦ってくれているのに、
戸棚の中でこんなことを続けるのは、過去の映像とわかりつつ後ろめたくはあるんだ。
けれど、エンに守ってとすがられた今、おれが選ぶのはエンだから。

飛び出していきたい衝動を抑えるようにエンの体を抱き締めて
肉が裂けたのだろう音を聞きながら、
おれの鱗を噛み砕いているのだろう音を聞きながら、
吐瀉音に混じるしちろの詠唱を聞きながら、
おれはそれらを振り切るようにエンの唇を貪ったんだ]

[映像が終わりを迎えると、おれは再び元いた部屋の中にいて。
エンがここにいることを、あの場所に置いてきていないことを、
再度抱き寄せることで確認したんだ]


 ………エン


[エンはちゃんとここにいたから、おれはエンに抱き付いたまま息を吐く。
吐いた息と一緒に涙もこぼれたけれど、この涙がエンに対してのものか、しちろに対してのものなのか、ちょっとおれにはわからなかった]


 ん。ん……


[ハチヤの唇が俺の唇に落ちる。

時折背中に回した指先がぴくりと動くのは、戸棚の外に飛び出したいのだろうか。
けれど唇は一度も離れず、角度を変えながら何度も食まれる。咀嚼音に合わせるように唇を動かすのは、偶然?
縋りつくみたいな腕は、俺が縋っているのかこいつが俺にしがみついているのか分からない。




ハチヤ、ハチヤ。ハチヤの名前を呼びたいけど、唇をぴたりと塞がれているから呼べないんだ]

[映像が終わると、唇がゆっくりと離れた。



覗き込んだこいつの顔は泣きそうな、いや泣いてるな。ハチヤの肩に顔を埋めてぎゅっと抱きしめてやる。今だけは、その涙が俺のためのものじゃなくても怒らないよ]

 ハチヤ……俺も、好きだよ。

[俺の人生にハチヤは不可欠なんだって、分かる*]


    ん?……あー、あるといえばある?
    実際にって感じでもないんだけど。



  彼女に推しがいることはまだいいけれど
  推しに傾倒してるのが嫌だ。
  だから、子どもっぽいのである彼は。
  何かないかな、と探してみると
  奥のほうにワンピースがあった。

                    ]

   美鶴さんのワンピース……
   なんや、ちょっと前に着てもらったのに
   懐かしい思い出みたいになってまう。



  記憶のない彼女に当ててみるけれど、
  やっはり可愛くて。
  彼女がもし、どういうものなのかと
  聞くのなら、夏の思い出話でも。

                   ]

 





   だって、負けたくないやん?
   好きなんやから、なんでも。



  好きなものは本気で取り返す。
  取り返すっていうか、なんというか。
  好きなものを好きといえずして
  生きる意味を成すものか、と。
 
                   ]*




[たっぷり休んだおかげか、もう立って歩けるようになっていた]


ハチヤ……ハチヤ。俺……鍵、探しに行きたい。
まだ選べないけど……考える為にも、見つけておきたい。使うかどうかは後で考えるとしてさ。ハチヤを選ぶにしても、ちゃんと考えてから決めたいんだ。

[ハチヤは命がけで守ってくれた旦那さんではなく、俺をずっと守ろうとしてくれた。その気持ちに応えたい気持ちはあるんだ。でも

ハチヤは…今のハチヤではなくずっと一緒にいたハチヤ。あいつは俺を好きではないと思ってた。けど、あいつは、あいつも、ひょっとすると俺を好きだった?あいつは俺に旦那さんになれ、じゃなくて嫁になってと言ったんだ。嫁と旦那の定義が俺とは違うのだとしたら


あれを、薬で苦しい中、どんな気持ちで言ったのか。それを聞いてみたい気がするんだ──*]


[採れた場所を教えるのではなく、採れるといいですねという言葉で締める。
アマミは彼女の言葉に、もしかしなくともガブリーシュの実はすぐには開けないところ、即ちあの島にあるのだろうという結論に至る。

彼女とバーバチカ島の出来事を共有しすぎるのは危険だ。腹立たしいことにあの館の主と思しき声を真に受けるなら、そんなきっかけを作ったところで彼女の記憶は戻らない。


鍵を見つける以外に道はないのだ。]




   いや、謝ることは無いよ。
   君は誰よりも当事者だ。

   焦る気持ちは分かる。


[こんな状況だから当然だ。
むしろこんな状況であるのに謝る程冷静に己を戻せる心力は、賞賛すべきものなのかもしれないとアマミは思う。

そんなクラヴィーアは何故か目を丸くしていた。]


   苦労はしてるけど、嫌なもんじゃない。


[嫌じゃない幸福な苦労がこの世界にはあるのだと、アマミは彼女から学んだ。
何故か頬をたたき気を引き締めるような彼女にどうしたのだと頭上に疑問符を浮かべたりもしただろう。]
   


[手当り次第本へと触れていくクラヴィーアに向かって]


   はずれだったってわけか。


[と肩を竦めるようにアマミは呟いて。
決意に満ちた彼女の笑みに頷きつつ、頭の中では彼女の記憶の鍵がどんなものなのか、考えを巡らせていた。]



[そもそも彼女がなくした記憶は、己のことだ。それは間違いないはずだった。

一般的に、記憶を思い出すきっかけとなり得るのは無くした記憶の中に現れる何かであるが。

ひょっとしたら彼女もそうなのだろうか?

推論の末に、この書斎に置かれているものの中にアマミは一つだけ心当たりがあった。]




[あの小説は彼女との記録のようなものだ。
その『心当たり』に視線を向けていると、クラヴィーアの切羽詰まった声が聞こえる。

彼女は酷く焦っているように見えた。
目覚めが近い。それだけでアマミは彼女の様子に納得が行くもので。
落ち着け、と目の前の彼女の肩を掴み。]


   記憶を無くしたくないと思うのは当然。
   その為に頑張るもいい。

   だが、無くした後の最悪の展開は
   考えたりするな。


[考えるだけ意味は無いと諭すのだが彼女には届くだろうか。
それからアマミはあの小説を片手に持って彼女に言うのだ。]





   安心しろ。
   結果がどうなろうとも、俺は君の傍にいる。

   君を独りになどさせない。**





[
 あるといえばある、という言葉は
 よく分からなかった。
 まさか二次元に嫉妬してるなんて
 わかるわけもない。

 当てられるまま、ワンピースを当てられて。
 小さい時の記憶がよぎって、苦い顔になった。
 ……着てたなんて、ちょっと信じ難かったから
 聞いてみることにした。
                      ]

    どんな、思い出ですか…?

[
 ……。よっぽど好かれてたみたいだけど
 “私”は何をしてそんなに好かれたのか。
 今の私にはその理由が全然わからなかった。
 恋人だったって言うのは信じることにしたけど
 一目惚れって言うのは…
 まだ信じ切れてないというか。

 でも、わかったこともあって。
 “私”が隠し事してた理由、
 それはきっと……
                    ]

    忽那さんは…素敵な人ですね。
    私と違って。

[
 そう、素敵な人過ぎて、
 素敵じゃない自分を隠したんだろうって。
 少し話してるだけでも、
 好かれやすそうな人だなあって感じるから、
 きっとそうなんじゃないかと思う。
 もしかしたら他にも理由があるかもしれないけど
 でもきっとこれも理由の一つのはず。
                      ]*



   付き合って初めての夏、
   これを着てくれたんです。
   元々は、買わない予定だったけど
   同じアパートの人に会って
   一期一会なんだから、って
   言われたとかで購入を決意したらしい。

   2人にとって思い出の詰まった海に、
   これを着て出掛けたんですけど、
   白い砂浜が反射して心の中で何度シャッターを
   押したことか……




  彼にとっては、とても大切なもの。
  でも、彼女にとってどうだったか。
  それは多分、彼女が手に取ったときに
  分かることなのかもしれない。

  話しながら彼女に手渡して、
  受け取ってくれたらいいのだが。

                   ]






   素敵?こんな欲まみれが?
   ……貴方も素敵なんですよ。
   だって、純粋に物事を楽しむって
   こんな欲にまみれた人間だと
   できることじゃないですし。
   万人と仲良くできるからいい。
   なんてことはなくて。



  私と違って、なんて言われれば
  彼は首を横に振って否定を露わにした。
  人それぞれ素敵なのであって、
  それは他の人しか見つけてくれない。
  自分では分からないから、
  周りが声をかけてあげなければいけないと
  彼は思っていたのである。

                     ]*




アマミ殿から見て私は焦っているのだろうか。
 ……普通の状態ではないよな、流石に。
 自分の事なのに巻き込まれた人だけ動かすのにも地味に罪悪感がある。
 大人の対応に頭が下がるばかりだ。]

 ……へぇ。
 その相手はきっと、幸せなんでしょうね。

[そう素直に思えれた。
 この人は誰かを幸せに出来る位、優しい人だってもう十分伝わっている。]
 

 
 そうですわね。
 ……こうも多いとなかなか難しいですわね。
 
[そう言いながらも外れを増やしていく。
 ……正解があるかも不安になってくるぞ、これ。
 見つけられるものなら見つけてみろ、と言われているようで気分が悪い。


 タイムリミットを感じて慌てだす私の肩に手が置かれた。

 ……はい。

[その温度と言葉に、少し冷静さを取り戻す。
 ……最悪を考えたりしたら、恐怖と不安が一気に溢れそうな気がする。だからその言葉は有難かった。

 アマミ殿の手には一冊の本がある。
 それは───…… 

 

 
 ……っ。


           
あまみ、殿……。


[今度こそ顔を熱くするのを留める事は出来なかった。
 心臓を掴まれるような感覚。
 目の前が滲む。

   
 ……それなら、どうなっても怖くない気がした。
  ]


……その本、
『鍵』かもしれません。
**


 

    
    ……似合って、たんですね…?
    そういえば買った記憶だけはあるけど…
    私、そういう服似合わないって前に言われたし…
    似合わないかなって着てなかったはずで…

[
 手渡されてとりあえず受け取ろうとして……
 そのワンピースは手に触れてすぐ消えてしまった。
 ……なんで、だろう。
 
 不正解、ってことなのかな。

 ああ、でも。鍵が思い出の何かだったとして。
 自分で買ったものじゃない気はする。
 “私”が大事にしそうなもの……
 たぶんそれが、鍵になる、気がした。
                       ]



    ……わ、たしが…?
    だって私は…………。
 
    好かれる人じゃ、なくて……
    中学の時だって…

[
 そこまで言って口をつぐんだ。
 こんなこと言ったって仕方ないって、
 今更なにか言ったって変わらないって
 踏みとどまってしまった。
 ……踏み込まれなければ、
 きっと私はこのまま、何も言わない。
 
 それは“私”がしたことと同じだと
 記憶のない私にはわからない。

                    ]



[

 
踏み込んでほしいけど


 
でも、その結果嫌われるくらいなら……。

                    
]*

 
 



   一期一会って背中押してくれた
   同じアパートの人にその後お酒あげたよ。
   何かの時に聞いたんだ。
   だから、夏になったら着てほしいって
   お願いをしたんだよ。




  彼女の目から消えていくそのワンピース。
  答えとしては違う。
  でも、思い出としては正解。
  気にしすぎず、次を探そうと
  彼女に促せばまた手を握ったはず。

  でも、その部屋を出る前にすこし止まって。

                       ]
  
   …………中学の時、何かあったん?
   なぁ、そこまで言われたら…
   聞きたくなるやん。歩きながらでもええから、
   何があったのか聞かせてや。


    *


   …確かに勧めてくれた人は
   かなりのお酒好きでしたけど…

[
 消えていた記憶の話を聞かされるたびに
 私から
大切なもの
が欠けていると
 感じさせられてしまって。

 もし記憶が戻らなかったら
 この人はそれでも私の傍にいようとするんだろうか。
 私はこの人に――――……。
                         ]

[
 過去を聞かれて、手を握り返す。
 ……この人は私の話を聞いて、なんて言うんだろう。
 気になってしまった。
 
 今の私は記憶がなくて
 恋人では、なくて。

 だから、もし嫌な顔されたとしても…
 “私”より失うものがない、というか
 既に失ってるから……。
                      ]

    ……貴方はどう思うのか
    それを正直に聞かせてくれるなら。

[
 彼が了承してくれるなら、中学の頃の話を。
 ……正直こわい、けど。
 たぶん記憶を取り戻せたなら、
 “私”はまた隠すだろうから。
                      ]

   ―過去の話―

[
 中学生の時。
 クラスにすごくかっこいい男の子がいた。
 別に私はその人に特段興味はなかった。
 乙女ゲームにはまったのがこの時期だったこともあって。
 
 そんな私と彼は、偶々隣の席になった。
 まあ事務的なやりとりしかしなかったし、
 親し気な雰囲気とか出てなかったはず、だった。
 それなのに、面白がった誰かが変な噂を立てた。
 
 彼が、私の事を好きっていう噂。
 そんなの、根も葉もない噂だったのに
 
 ……信じた人が出てきてしまって。
 別に彼には特定の彼女とかいなかったのに
 ……いなかったから。
 嫉妬した女子が私に陰口をたたくようになった。
                       ]
    「なんであの子が?」  
    「あんな地味な子が?」  
    「釣り合わないのに」
 

[
 もっと…口にするのも嫌な言葉だって言われた。
 言い返そうかと思った。
 でも、“彼が”と言う噂だから私が何か言えるわけでも
 弁明ができるわけでもなくて。
 それに…彼がすごく嫌がる言動をしていたのもあって
 それのおかげで噂は収まった。

 
私だから嫌がったんだろうって思った。

 
 ……私は、何も言えなかった。
 友達には心配されたけど、
 巻き込むのも悪いって思ったから。 
 
 “大丈夫”って言ったんだ。

 友達も私に似た子だったから、
 無理に深くは聞いてこなかったっていうか。
 その方がありがたいな、なんて思ってたから
 別にその子をとくに恨んだりとかすることもなく。
 今でもいい友達。たまにメッセージやりとりはする。
 最近は会えてないけど。
                        ]

[
 私が悪かったのかな。
 私が…………。私が、悪いんだろうな。
 可愛くなくて、美人でもなくて
 特に好かれるような人でもなくて。
 そんな私はきっと、人気がある人と関わったら
 誰からも注目されるような人と関わったら
 ろくなことにならないんだろうな。
 ……関わる人は選ぼう。
 今度はこんなことにならないように
 勘違いなんて起こさせないくらいに
 関わって来られても嫌われるくらいに
 素っ気なくしてしまおう。
 
 面倒はもう、ごめんだ。
               ]



    ……もう、面倒は嫌だったんです。
    異性がいないところならと思って選んだ
    女子大でも似たようなことがあって
    同性が苦手になって。
    
    貴方みたいな人とも関わるといいことない、
    そう思ってましたから。
 
    *

[
 この館があるのは夢の世界。
 そこは、どの世界に属してはおらず
 どの世界にも属しているともいえる、
 狭間にある世界。
 
 人が夢を見る限り存在し続ける場所。

 そんな場所に居続ける館の主は、
 当然、人ではない何か。
 霞を食って生きる、なんて言葉があるが。
 それを体現できる存在だった。
 館の主は形のないものを喰うことが出来た。
 
 例えば記憶や感情。
 人にとって大事なそれを奪うことに何の躊躇もなかった。

 館の主は退屈していた。
 様々な世界を覗き見ることは出来る。
 人を夢に誘うことは出来ても
 目を覚ませば“客人”はいずれ帰る。

 時間をただ、持て余していた。
                      ]

[
 ある日のこと。
 退屈で退屈で仕方なかったから、
 とある思いつきを試した。
 
 大切に思い合っている二人の片割れから
 「相手に関する記憶だけ奪う」
 ことで、もう片方の反応を見る。
 
 錯乱?困惑?絶望?

 どんな反応をするか興味本位だった。
 最初は、それだけだった。

 ひとしきり反応を楽しんだら、
 元に戻してやってもいいと最初は思っていた。
 記憶を食べたくて奪ったわけではなかった。
 別に何も食べなくとも
 存在が揺るぐわけでもなかったから。


 
だが、気が変わった。



 奪った記憶の味が気になった。
 食べてしまえば、記憶を返してやることは叶わなくなるが、
 それでも…興味に負けた。

 結果は――
                            ]


[
 人の不幸は蜜の味なんて言葉があるが。
 あれは嘘だ。
 所詮人が作った言葉。
 記憶の味なんて知らない人にわかるはずもないが。

 幸せな記憶は、それこそ蜜の味、だった。
 
 もっと食べたいと、そう考えた館の主は
 退屈凌ぎも兼ねて“客人”を館に招くことにした。
 幸せに過ごしている二人の片割れの記憶を奪い
 
 その反応を見て楽しもう、と。

 一方的に奪うだけでもいいが、
 記憶を取り戻そうと足掻く姿も見ようと
 “鍵”に記憶を閉じ込めて
 それを探させて、鑑賞して。
 
 退屈凌ぎにちょうどいい遊戯だった。
                    ]

[エンよりちょっと早く目覚めたおれは、果物籠からリンゴを取り出し櫛切りに切っていく。
素材そのままで食べればいいやから料理をしたことはないけれど、素材そのままで食べにくいものだってあるから、包丁くらいは扱える。

あ、エンが起きたみたいだ。
寝ぼけ半分に誰かを探すよう手をぱたぱたと動かすのを見てると、その相手がどちらかなのかはさておいてハチヤだってことだけはわかるから──…しあわせだなあって思うんだ]


 おはよ、エン。
 リンゴ食べる?


[もうしばらく見ていたい気はするけれど、意地悪はやめておこう。
ベッドサイドに腰かけて、彷徨うエンの手をにぎって、おれはあと何度言えるかわからない「おはよう」を口にした]

[ぱたりぱたりと手がシーツの上を辿る。その手をきゅっと握られて眉間に刻まれていた皺がゆるむ]



 …食べ、る……


[もごもごとはっきりしない声が漏れるものの起き上がる気配もなければ目も開かない。代わりにきゅうっと手を握り、自分の方へと引き寄せようとわずかに力が入った]

 おこ、して…

[もごもごと呟いた声は聞き取れるぎりぎりである]

[鍵?鍵ってなんだろうって思ったけど、エンが言ってることを考えると、あっちのハチヤを選ぶためのものみたいだ。

選べないってエンは言うけど、
選べないなら、きっと、おれは、選ばれない。そんな気がしている。


でも今は、どうしてだろう、エンを渡したくないと思うのに、
エンがあっちのハチヤを選ばないのも嫌だなとも思うんだ。

記憶を見たんだ。
エンが見たのと同じハチヤの記憶は、確かにおれの記憶だから、
つまりあっちのハチヤもやっぱりおれだってことで。

エンの記憶を失ったから生まれたおれは、おれはエンがいる世界に本来いないはずのハチヤで──…うまく纏まらないや。


癪だけど、エンと一緒にいるべきなのはあっちのハチヤなんだろうなって思うんだ]

[鍵の話をする前の、エンが寝ぼけている時。

手を握った瞬間にエンの表情が緩む。
かろうじて音として拾える言葉を口にしながら、エンはおれの手を引くから。

引かれるままで引き寄せられて望まれるまま、おれはエンを起き上がらせる為、その背中に手を回したんだ]

[いつもの調子でハチヤに体をぐいと持ち上げて起こしてもらって、しばらく小さく唸っているうちに目が覚めてきた。無意味にシーツにぺしりと八つ当たりをしていたら口にリンゴを放り込まれた。しゃくしゃくしゃく……と咀嚼音が響く]


 …………。

 ……??


 !!ハチヤ?!


[あわあわと焦ってきちんと座り直した。完全に無意識だった。ハチヤはハチヤだけど、彼はいつものハチヤじゃなかった。というかこっちのハチヤは出会って間がないのに行動を読まれすぎではないだろうか]

[起きてもむにゃむにゃしてるエンはなんだか寝起きの猫みたい。
シーツにぺしぺし八つ当たりをするエンにリンゴを食べさせたら、無言で食べ始めた。かわいいなあ。

しばらくの咀嚼音の後、エンがおれの名前を呼んだから]


 うん、おれだよ。
 おはよう、エン


[って、もう一回おはようって言ったんだ。
にこにこしちゃうのは仕方ないよね!

行動?読んでないよ? おれがしたいことをしただけだもん]


 お、おはよう……


[ダメだカッコ悪い。ばっちり見られていた。だから寝起きはダメだと言ったんだ。視線を泳がせるけれどにこにこと見守られるから、話題を逸らしがてら鍵の話題を持ち出した]

 
 
 鍵ってどんな形なんだろう?
 
 この屋敷があの時の屋敷そっくりだってのはわかるけど……それってヒントなのかなあ。
 鍵っていうくらいだから鍵箱にあったりとか?
 あと金庫とか?


[鍵探しって言われて考え付くのはそんなところ。
ああ、あとは──…]


 おれの記憶って話なら。
 あのあと、おれが棚の中で目覚めたとき、あの建物ほとんど焼けてたんだ。
 おれが入ってた棚だけは、しちろが守ってたから無事だったけど……


[鍵がどんな形かはわからないけど、記憶って聞いて思い当たる場所なら、そこかなあって気がするんだ*]

 うーん?たしか…記憶の鍵を探せ、って言ってたな。それで…………っ、な人の両手に握らせれば記憶は戻る、って。

ここ、そうなのか?俺は作りが分からないから、お前の記憶頼りになるけど。

[ちょっと言いにくい一言は誤魔化しつつ、いつかの声を思い出して伝えておく]

 記憶……それっぽいな。じゃあ、まずはそこから探してみようぜ。なかったら金庫とか鍵箱とか適当に探していけばいいだろ。



 ……それまでには、考えておく、から。

[エンがごにょごにょ言いながらなにかを誤魔化そうとしたけれど、記憶を戻す対象はおれってことで、それがハチヤのことなんだなっていうのはわかるし……
誤魔化されたものの性質は、顔に出ちゃってるよね。

だから、おれがなんか嬉しそうにしちゃうのも、仕方ないってことなんだ!]


 そうだね。
 あ、館は廃墟の記憶のが強いから、はっきり言えるのは一階だってことぐらいだよ。

 

 うん……
 ……あ、そうだ。

 ね、エン。
 おれ、あっちのハチヤの話聞いてみたい。


[エンの言葉にちょっぴりしんみりした空気を吹き飛ばすように、おれは話をそらすんだ。
あっちのハチヤがどんな奴なのかもちょっと気になってるのもあるからね!**]


[流石に妬きはしない、というよりも妬きようがないか。
アマミは彼女の反応複雑な気分になってしまった。彼女を責めるような話でもないが、あわよくば妬き募ってはくれまいかと。]


   さぁね。俺が彼女を幸福に出来るかと
   いわれればあやしいところだ。

   女を泣かせるのには慣れてるんでね...。


[とどのつまり自信があんまり無いのだとは言うまい。実際そう言っているのに等しいが。

彼女が冷静に戻ったことを確認すると、改めて気を引き締める。
この本が何か。
もしも聞かれるのならば、「ある少女の軌跡」だと
答えるが、聞かれなければ何も答えまい。

一刻を争うのだから余計な情報で混乱させたくはない。




[今の彼女を自分は前にも見た事がある。
怪我をした彼女を助け、運んだ時。
月に彼女の幸福を願った時。


どうやら、彼女のことをまた泣かせそうになってしまっているらしい。]


   ............
悪いな。



[小さく呟いたその一言は果たして彼女に届くだろうか。
嬉し涙であろうが悔し涙であろうが、彼女が涙を流すきっかけを作ってしまったこと。
それはアマミにとっては複雑な心境を抱かせるものだ。]



[沈黙の後、語られる可能性にアマミは驚くことはなく。
自身の推論を彼女が肯定してくれたような気がして安堵すら覚えるのだ。]


   これが......。
   .........可能性はある。


            読んで.....みるか?



[そのため、むしろアマミは可能性を高く見ていた。
それを言わなかったのはもしも違った時に彼女の落胆や精神的不安を少しでも減らすためだ。

本を差し出すと、しばし彼女を見守ろうか。]**


 

 歩きながらでもいいし、鍵を見つけてからでもいいよ


[なんとなく知りたいだけで時間稼ぎなんかじゃないから。
おれは今すぐじゃなくてもいいって念押しして、外に出る準備をしたんだ。

エンが今話してくれるなら、もちろん聞くけどね!*]



 ………。


[なんかニコニコされてるんだが。なんかあったかいものを見守る目をされてるんだが?!ムカついたのでにこにこするハチヤの頬を引っ張っておいた。実際バレバレなのだろうが本人に向かって大切な人とか言いづらいんだし仕方ないだろう?!]

 あー。じゃあ一階なんだろうな。



 ん?あっちのハチヤ?

 あいつは犬だな。なんか見えないのにめっちゃ尻尾と耳が見える。寮は同室だけど取ってる授業違うんだけど、遠くから見かけたら全力で走ってきて飛びついてくるし嬉しくなると人を持ち上げてぐるぐる回すんだよな。あれ目ぇ回んだよ。いくら言っても聞きゃしねーし。

料理美味いんだけど、材料に錬金術の材料使う。マンドラゴラの根っこできんぴら作ったりとか。ゴルゴンの蛇は結局から揚げになったんだったか……そんでたまーに腹壊してたりするな。気が付いたら妙な料理仲間ができてんだよ。なんか……プリンの見た目と質感を胸にそっくりにしようとしてる先輩とか…造血剤の味を改良するのに血道あげてるやつとか……まぁなんか楽しそうにしてるよ。


 あとはたまに寂しくなるのか夜人のベッド潜り込んできて、目が覚めたらくっついて寝てたりするからびっくりする。


[思い出そうとするまでもなくぽろぽろと溢れてくるものを零す。なんせずっと一緒にいたのだから覚えていることはたくさんある。あとは、と考えかけて──エン君、と耳元で囁かれた声を思い出して、言葉が止まった]

[

 
     
──エン君、エン君、すき。すきだよ




 なんで今思い出したんだ。あの夜俺を抱きながら、あいつはずっとそんなことばっかり言っていた。薬に浮かされているものだと思っていたけれど……あれは、本心なのだろうか。

 必死で俺にしがみつく腕は、それでも必死で俺を傷つけないように抑えていた。もういいって言ってるのに、辛いだろうに俺が怪我しないよう丁寧に溶かされて。記憶が飛ぶほど、一回ずつが長いのに何度も何度も──]



 ……っ、そ、れ、くらいだよ!!!覚えてるのなんて!!!ほら、行くぞ!!!



[赤くなった顔を隠すように立ち上がったけど、こいつ俺の顔をずっと見てくるからきっとバレている気がする。思い出しついでに自分もあの時必死で、俺も、なんて言ってたのを思い出した。俺も好き、もっと俺を好きになって、ってなんだよ俺。思えばそれで激化した覚えがあるからもっとの部分しか聞こえてなかったのかもしれない。この場合は両成敗?いや俺はちゃんと言ったから悪いのはあいつだ。



 必死で顔を見られないように部屋を飛び出してズカズカ歩いたら、道を訂正された。けど、そっち向くのはまだしばらく勘弁してほしい*]

 

 ……犬


[ぎりぎりと伸ばされた頬を擦りつつ、エンの話を聞いたんだ。
そっか、あっちのおれ、犬なのか……なんてお持ちながら聞いてたら、あっちのおれ、犬だった。
エンの足元でぐるぐる回ってる茶毛の犬の姿が浮かぶくらいには犬だった。

料理上手は意外だけれど、それ以上に先輩に心当たりがありすぎて、仲がいいのはかなり意外だ。
『お前にはおっぱい様への敬意が足りない!お前がスプーンを突き立てない逸品をつくってはじめて俺は誇りを取り戻せるんだ!!』って、おれを修行道具かなんかだと思ってるの先輩のことは、おれはちょっと苦手だし。
造血剤の先輩は、そもそも心当たりがない。

ベッドに潜り込むって聞いて、おれは──…]

[
それで好きじゃないわけがないってわかっちゃうんだ。


 名無しは籍も責もなし。
 補充は他より難しいけれど隠蔽を考えなくていいから、死ななきゃ何をしてもいい。
 名有りは籍あり責もある。
 補充は楽だが、探される可能性がある以上、死体になった場合の状態を考えて扱え。

おれはなにをしてもいいヤツだったから、誰かのベッドに潜り込むなんて今でも考えられないし、しちろでさえ番うまで共寝することがなかったんだ。しちろとは普通に眠る余裕なんてなかったけど。
エンだって、お嫁さんって知らなかったら潜り込むなんてできないよ。
今だから、あっちのハチヤはズルいって思っちゃうけどさ]

[エンからこぼれたあちらのハチヤを拾い集めてたら、エンの顔から湯気が出た。
何を思い出してるのかなんて一発でわかるよね、わかっちゃうんだけどね。
エンは本当にかわいいなって思うけど、ちょっと居たたまれない気持ちにもなる。

……据え膳口にしときゃよかったなんて、思っちゃうのも仕方ない]


 なんで、好きじゃないなんて……なるんだろ。


[赤い顔を誤魔化すように部屋を飛び出したエンの背に聞こえるか聞こえないかくらいの呟きをこぼして。
それからおれはエンを追いかけたんだ。あ、そっちの道は遠回りだよ**]


流石に初対面の人相手に嫉妬まではしようもない。
 その前に私は嫉妬以前の気質をしている。

 本気で好きな人が別の人を思うのなら、傷付ついて、泣いて、そして背をおす。好きな人の幸福を一番に願うんだ。 それだけの覚悟がある。
 単なる好意なら、自分にも出来る事なら全力でその好む要素を取り入れる。恋敵が現れるのならどんな相手でも
戦う覚悟もまた、ある。


 そうなのです?
 ……なんか、わりと最低な言葉を聞いた気がするのですが。

[若干半目になった。
 自ら女泣かせと言うか。
……うん、
素質は十分あるな。


 ……どう返答するべきなんだ? これ。
 その彼女が私の可能性は……まぁそこそこある。
 でもまだ違う可能性もある。
 そもそも今の私は恋愛経験値がないと当然だ。

 ……少し考えて口を開く。]
 

 
 アマミ殿のその“彼女”は、アマミ殿といてどんな顔をしているのです?

 それが幸せでないのなら、ただ泣かせてるだけならば話し合って何を望んでいるのか問うべきかと。

 それが幸福だったのなら
 それを信じてあげたらどうです? 
 
 結婚は一人でするものじゃありませんわ。
 どんな多難と戦っているかわかりませんが、相手と相談してみたらどうです?

[相手が幸福な顔をしていた場合、それを信じて貰えなかったのなら、私だったら……きっと辛いな。

 ……というかこの人そういう人がいて私にあれだけの事を言ったのか。
 ……今までの事を総合すると私がその相手だと考えるのが一番自然に感じるんだが……。いや、待て。これ違ったら相当恥ずかしいぞ。まぁ違っていたらとりあえず
女たらしと呼んでやろう。
それ位言っても許される気がしてきたぞ。本当に!!


 どんな本なのか聞いてみれば端的な答え。
 その内容に興味が出た。]
 

 求婚予定の女性がいると聞いた直後に
本当なにしてるんだ、自分。
とわりと本気で思わなくもないのだが。
 小さな呟きがわずかに耳に届き、首をただ振る。
 嬉し涙でも、複雑になられるなんて想像もつかない。


 ……これ、本当……相手が自分じゃなかったら
 戻った後本気で傷付いてしまうんだろうな……。そうわかっていても、自分の心は思い通りにはなってくれない。 

  差し出された本を見る。
 『όργανο』そのタイトルに見覚えはない。ないけれど……筆者はもう知った名前だ。
 目の前の人の名前だ。

 この本がどんなものか今の私は知らない。
 覚えていない。

 でも、差し出された以上何かしらの思い出があるものなんだろう。そう確信出来る。]
 

 
……これが違っていたらどうしよう。

 そんな不安や、迷いも一瞬だった。不安になる必要なんてないんだから。

 読んでみたい。
 でもこれが違っていたら読むまでもなく、触れたら消えてしまう。
 そうでないよう願う。]

 はい。

[緊張しながらもそれに手を触れた。]
 

 
 

[ その本が消えることはなかった ]



 

 
[……頬に涙がつぅっと流れる。両手で触れないよう気を付けつつ大事に片手で抱きしめる。]

 ……これです。

これが、私の記憶の鍵……です。


[ みつけた。

 私の鍵はこの人が持っていてくれた。
 見つけてくれた。私の事を

 ……それがどうしようもない位嬉しい。
 心が震わされる。

 なんか、もう
本当ダメかもな……。

 そう思うのが二度目なんて今の私はわからない。

  

 
[目が覚めるまでそう長くもない。長編のそれをじっくり見る時間がないのが残念だ。出来るだけ急ぎめのペースで本に目を通していく。

 一人の少女が過酷な道を生きていき、成長をするお話。
 筆者の目線が、気持ちが、少女への見え方が段々変わっていく。

 ……その少女はどこか、昔の私を思い出す。


 最期の方のページにたどり着く。
 少女を未熟なリンゴと例える言葉に目が入れば、いい表現だな。これ。という感想を持つ。

 そうして、最後の頁には…… ]


   ……─── ばかっ    


[嬉しかった。考えが当たって、違わなくて嬉しい。
 ……こんな短い時間なのに、これだけ心を掴んでくれた人だ。
 きっと元の私も同じなんじゃないかって思う。]
 

 
 目が覚めたら、約束の答えちゃんと聞かせて下さいね。

[そう言って本を自分でしっかり両手で握りしめた。

 本物の鍵もまた、役割を終えればその存在が消える。
 ……あの文字が消えてしまったのだけは惜しい。



 本が私の中にあった記憶を、欠けたピースを埋めてくれる。


 鍵に加わっていた文字は、

    
 私の心に優しく 入り込んだ



   言葉以上に気持ちが直接私に刻み込まれた。



──……これ、もうきっと忘れる事は出来ないだろうな。 
 


[……暫しの沈黙。
 色々な情報を自分の中で処理するのに少し時間がかかる。]

       
・・・・・

 ────……
アマミさん


[違和感の正体にたどり着けた。
 そうだ、この呼び方が私の呼び方だった。

 なんか。色々突っ込みたいというか
 聞き捨てならない発言を聞いたな? 私。


 ……でも今はどうしたって泣いてしまう。止めれない。
 衝動のまま、感情のままアマミさんに抱きつこうと側に駆け寄る。
 それが叶わなくても近くに寄る。

 どうして忘れることなど出来たのだろう。
 どうして、こんなに、こんなに好きな気持ちを失っていられたのだろう。
 記憶がなければ思いは生まれない。当然と言えば当然だ。それでも、自分が信じられない。

 奪われていたものの重みは、帰ってきてその心に深く深く刻まれる。
 言いたいことも、聞きたいこともある。

 あるけれど……
 やっぱりこれをまずは言っておかないとな。
 涙をこぼしたまま、それでも笑顔を浮かべる。私は幸せだと伝えるように。]
 
 
ただいま


        
好きだよ 
**

 




  中学生というのは、多感期であり。
  そうやって冷やかすことも多々ある。
  そう、1番ではないけれど
  死ぬほど厄介で、しょうがないとき。

  だからこそ、彼女は傷ついた。
  胸が苦しくて、おかしくなりそうだったけど
  彼女の方を向いてギュッと抱きしめた。

                      ]


   もし、そのときに沢山傷ついていたとしても、
   今は、俺がいる。
   過去のことをこうやって聞い、て……




  彼は当然彼女を抱きしめてそのまま
  部屋の奥へと戻っていった。
  そして小さく、見つけた、と呟いたような。

                      ]*



[
 大丈夫って言って誰にも言ってなかった。
 言ったって変わらないと思ってた。

 こんな話面白いわけがなくて
 嫌な気持ちにさせるって思った、のに。
 心がいたくなる話なんて、好き好んで聞きたいわけないのに。
 それなのにこの人は、どこまでも……

 
やさしくて。

                    ]

    私、ずっと私が悪いって
    私の所為だから仕方ないって……

[
 本当は違った。
 貴方は悪くないって言葉をどこかで欲しがってた。
 でもその言葉はどうせもらえないと諦めてた。

 貴方の腕の中はこんなにもあたたかくて。
 ……そんなこと言われたら、されたら。
 私は――――……。
                       ]

    
なにを…?


[
 小さくつぶやく声に、掠れた声で返した。
                    ]*



   …………これは、俺が美鶴さんにあげた
   1番最初のプレゼント。
   美鶴さんは、何も悪くないんだから……
   それでも思うものがあるなら、
   これからは俺と一緒に
   辛いことも苦しいことも乗り越えて行こう?




  彼の手は何かを掴んで、
  彼女の目の前で見せてあげる。
  なんで雑多なところにあるのかと
  ヒヤリとしたけれどとても大切なネックレス。
  つけてもいい?と見せた後に
  首を傾げて聞いてみたと思う。

                    ]*



    
    プレゼント……最初……

[
 大事な人から貰った初めてのプレゼント。
 ……“私”なら絶対大事にする。
 確信があった。
 だから、もしかしてと思うことがあって。
                    ]

    貴方は……こんな私でも
    傍にいてくれるんですか……?

    ……そのネックレス、少し見せてください。

[
 付けてもらってもよかったけれど
 手に取ってみたくなった。
 かしてほしいと頼めば
 差し出した手に載せてもらえただろうか。
                     ]*



   こんな、とか言わんといてや。
   ……貴方だから、好きやねん。

   勿論、どうぞ。
   105に住んでた茜さんと一緒に
   これを選んだんですよ。



  見せてほしい、と言われると
  彼は彼女の手にネックレスを置いた。

  そんなに冷たくはなかったと思うけど、
  少しくらいひんやりとした感触が
  彼女に伝わっただろうか。

  それをみた彼女の反応は、
  どんなものだっただろう。
  良ければ、嬉しいのだけれど。

                   ]*




    ……っ、私…。

[
 ずるいな、この人は。
 
 私の心をすっかりとらえてしまうんだから。


 見せて、といったら手にネックレスが。
 ……ひんやりとするどころか、
 
 何故だろう、温かく感じる。

 これ、もしかして……。
                   ]

[
 ネックレスにただただ見入っていた。
 私でも付けられそうなシンプルなもので、
 私の好みに合わせてくれたと分かるもの。
 
 そのネックレスを片手に載せて
 もう片方の手で包むようにして
 
 
ネックレスを握った。

 
 ――――。

 かけていた記憶が、戻ってくる。
                    ]