人狼物語 三日月国


188 【身内P村】箱庭世界とリバースデイ【R18RP村】

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視点:


到着:XIV『節制』 シトラ

【人】 XIV『節制』 シトラ




  ────……う……ッ あ
  みんな、やめて…………っ



[ しんと静まり返った洋館の一室に、
 絞り出すような呻き声が響く。
 窓辺からベッドを見守るように一筋
 蒼く月光が射し込んでいる。
 
 持ち主の手で大きく乱された毛布は波打ち、
 床には草臥れ薄汚れた犬のぬいぐるみが転がっている ]
 
(75) 2022/12/11(Sun) 12:58:56

【人】 XIV『節制』 シトラ




 
『だから言ったろ!!
  とっととこの村から追い出しちまえば良かったんだ
  この疫病神め!!!』


    
 『うぇえぇえんこわいよぉおおお』



 『シトラがやった。だってあたし、みたもん』



  
 『全部お前のせいだ!! お前さえ居なければこの村は……!!』


  
  『あいつってなんかいっつもその場しのぎだよな』



          『またあの小娘か忌々しい』


    『でさ、結局あんたって誰の味方なの?』

 

     
    『だがこの娘にはまだ利用価値が有る』

 
  
(76) 2022/12/11(Sun) 12:59:02

【人】 XIV『節制』 シトラ



 『『節制』を司る天からの贈り物、
   胸元に刻まれし正三角の痣が何よりの証。
   神は我らを戒める為 この娘を遣わされたのでしょう

      山向こうの集落に生を受けられたシャルレーヌ様のように
      我らもこの子を聖女として護り育て
      謹んで敬わねばなりませ──グアッ』




 
『貴殿の与太話などもう聞き飽きたわ!!』

        
          
 『すまない、守ってやれなくて』



  『どうしておねえちゃんがなくの?
    ころんじゃったのはぼくなのに……』


     
   『……ちょっと!! うちの子に何をしようとしたの!?』


 
  
(77) 2022/12/11(Sun) 12:59:09

【人】 XIV『節制』 シトラ




   ……めん、なさい ごめ、なさい
   わた、わたし…………っ


 
(78) 2022/12/11(Sun) 12:59:15

【人】 XIV『節制』 シトラ



  
『申し訳ありません村長様、どうか』


  
 『私らはどうなっても構いません
    ですからどうか、せめて娘が大きくなるまでは……!!』



 
(79) 2022/12/11(Sun) 12:59:19

【人】 XIV『節制』 シトラ



    うぁっ……っく……ごめ、なさ……………


[『ごめんなさい』

 重ねれば重ねるほどに
 誠実さを失って響くその言の葉
 何千回、何億回と繰り返すうちに
 呼吸より易くなってしまった
 こんな身勝手な音の紡ぎはもう意味をなさないの。

 赦しを乞うことすら赦されないと識っている
 解放を願うそれ自体が甘えだと、理解っている

 それでも、
 それでも、わたしは

 ねえ 誰か教えて。
 どうしたらわたしは、

 ……わたしは、どうして、こうなの ]
 
(80) 2022/12/11(Sun) 12:59:22

【人】 XIV『節制』 シトラ




  ごめんなさい、ごめんなさい
  ごめんなさい、ごめんなさい……!!



[ ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
 ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
 ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
 ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい

 ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
 ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい

 息をするだけで軋む心の臓
 とめどなく押し寄せる罪悪感

 わたしにとって、
 死は、解放

 安寧を得るための唯一の手段。


 あなたがたが殺らないのなら
 わたしに、わたしを ]
(81) 2022/12/11(Sun) 12:59:28

【人】 XIV『節制』 シトラ




   ────……!!!


(82) 2022/12/11(Sun) 12:59:32

【人】 XIV『節制』 シトラ


[ ──遠く近く、何処かから誰かの声が聴こえた。
 ぱたぱたと軽やかに駆けてゆく足音>>@0
 この足音の主を、わたしは知っている。

 明るくはしゃぐ声を扉越しに聴いただけで、
 やわらかな春の陽だまりのような無邪気な笑顔が
 目に見えるよう ]
 


   ……ゆ、…………夢



[ きちんと設えられた清潔な寝床。
 窓辺から射し込むまばゆい陽の光。

 微かに鼻腔をくすぐる、甘い花の香り
 ──安眠に効果があるはずのその小さな花は
 誰かの手で掻き毟られたように枕元に落ちていた。

 草の匂いが染み付いた右手を、水桶の水で流して
 床に落とされてしまったらしいぬいぐるみを拾い上げる。

 手垢と涙ですっかりくたびれてしまった白い犬ローティカを抱きしめれば
 頬を伝った雫はふわふわの毛に吸い込まれて溶けた ]
 
(83) 2022/12/11(Sun) 12:59:36

【人】 XIV『節制』 シトラ



  ごめん、ね


[ もう一度強く抱きしめてから
 ベッドを整えてローティカぬいぐるみを寝かせた。
 顔を洗い、紅く腫れた目元が落ち着くのを待ちながら
 編みかけのカーディガンの最終工程に入る。

 ぬいぐるみ……は、きっとわたしよりも
 ずっと素敵に作れるひとがいるし
 紅茶もお菓子も、わたしよりずっと
 美味しく作れるひとがいる。

 大層愛らしい彼女によく似合う
 晴れの日に相応しい靴を見繕えるひともいるし、
 わたしには目利きの腕も学もないし、
 お祝いにどんな歌を歌えば良いのか、わからないし
 どんな言葉を掛けたら喜んでもらえるのかも、わからないし


 あのひとは、
 ……あのひとは、こわい。
 
 
 不意に脳裏に蘇ったわたしを見る硬い表情に>>62
 また目の奥が熱くなって、振り払うように手を動かす ]
 
(84) 2022/12/11(Sun) 12:59:43

【人】 XIV『節制』 シトラ


[ 何もできないわたし、
 何ひとつうまくできないわたしがたったひとつ
 「すこしは役に立てるのかも」なんて思えるのは
 編み物くらいだったから、贈り物は自然とこれになった。
 
 サイズは勿論のこと、
 毛糸の手ざわり、色、網目の模様、ボタンに至るまで
 着る人のことを思い浮かべながら今日まで編んできた作品が
 どんな風に受け止められるか知る日まで、あと一週間 ]**
 
(85) 2022/12/11(Sun) 12:59:59
XIV『節制』 シトラは、メモを貼った。
(a16) 2022/12/11(Sun) 13:28:46

【人】 XIV『節制』 シトラ

──
廊下・『隠者』の彼女の部屋の前



  ──アリアちゃん
  いつものお薬……もらっても、いい……?

  ……うまく、眠れなくて


[ 繰り返す悪夢に魘されて眠れぬ夜が続くとき
 わたしは、決まってあの子の部屋の扉をたたく。

 お薬自体の効果は勿論あるのでしょう。
 『隠者』の証を持つ彼女の作るお薬は特別なもので、
 その効力のほどは、実際常用しているわたし自身が
 身をもって噛みしめているところ。

 けれどよく眠れるのは、きっとお薬だけの力じゃない。
 あの子の顔を見ると、あの子の声を聴くと
 ひつじたちの毛に頬を埋めたときみたいにほっとするの。
 それを口にしてしまえば彼女はどう思うか、
 きっと、……悪いようには取らないと思うけれど
 言葉にはせず心の内にしまい込んだままでいる。

 もう一度、扉を叩く。返事はない。
 程なくして、玄関の方から
 よく通り明朗に弾む、澄んだ声が響く。>>111
 一日半ぶりにチェレスタさんが帰ってきたのだ。]
 
(132) 2022/12/11(Sun) 16:38:00

【人】 XIV『節制』 シトラ


[ アリスさんのお誕生日パーティーで
 お祝いの歌を歌わないか、との
 彼女の提案を、わたしも部屋の隅で聴いていた。
 誕生日には祝いの歌を歌うものなのだと
 わたしが知ったのは、この洋館に来てからだった。

 皆で同じ曲を、この世に生を受けた日を祝う詞を
 同じ旋律で、或いは異なる旋律で歌い
 それらが交じり合ってひとつの調和を織り成す。
 チェレスタさんの提案はわたしにとっても
 この上なく素敵な提案に思えた。

  でも、

 わたし、歌えるの?
 わたしが参加しない方がきっといい歌になる。
 メロディーも歌詞も一から覚えないといけないわたしは
 みんなの足手纏いになっちゃうんじゃないかな。

 参加しないべき……じゃないかしら。

  ──そんな想いが
  挙げかけた掌を背中へと引っ込ませる。

 おずおずとみんなの反応を窺えば
 少なくともアリアちゃんは参加する方針のようで>>112
 迷うわたしの心を見透かすように、
 そっと寄り添うような視線を送ってくれた ]
 
(133) 2022/12/11(Sun) 16:38:24

【人】 XIV『節制』 シトラ


[ 『あなたがしたいことをするのが一番』
 アリアちゃんはいつだって、
 やわらかな優しい声でそう言ってくれる。

 わたしがしたいことは何なのか、
 この洋館に来るまで改めて意識したことはなかったし
 それを疑問に思ったことも、ほとんどなかった ]

 
   わ、……たし
   わたし、…………も

   歌、って、みたい
   チェレスタさん、構わない……ですか……?


[ たった一言の意志を示す為に掛かった時間は
 現実にはほんの一瞬だったのかもしれない。けれど、
 わたしにとっては、途方もない挑戦とも呼べるものだった ]
 
(134) 2022/12/11(Sun) 16:38:56

【人】 XIV『節制』 シトラ


[ たった一言の意志を示す為に掛かった時間は
 現実にはほんの一瞬だったのかもしれないけれど
 わたしにとっては、途方もない挑戦とも呼べるものだった。

 あれから毎日、時間さえあれば
 お庭の花畑の隅、人気のない木陰で、或いは自室で
 こっそりと歌の練習をしている。
 みんなの前で歌うのはまだ恥ずかしくて
 ごく限られたひとにしか、聴かせられていないけれど。

 チェレスタさんに教わったところ、
 すこしは綺麗に歌えるようになったと思う。
 荷解きが終わって、身体を休めて
 落ち着いた頃合いを見計らって、また見てもらおう。

 今はまず、「おかえりなさい」のお出迎えを。
 そう思って玄関の方へと足を向ければ
 探していた彼女の姿もそこに在った ]
 
(135) 2022/12/11(Sun) 16:39:34

【人】 XIV『節制』 シトラ

──
玄関前


[ 声を掛けるタイミングを見失って
 もごもごと、言葉と視線が宙を舞う。

 わたしが口を開けたのはきっと
 チェレスタさんと、はっきりと目が合ってから ]


  お、おかえりなさい……!
  お疲れさま、です

  あっ、あの、わ……


[ 『わたしもお手伝いします』
 そう言いかけて唇を噤む。

 触れられたくない荷物が入っているかもしれないし
 長旅で疲れているだろう彼女に
 余計な気を遣わせてしまうかもしれないし、
 第一、手伝いの申し入れはアリアちゃんが既にしていて。

 けれどチェレスタさんの荷物は、
 一人で運ぶにはどう見ても大変そうで ]
 
(136) 2022/12/11(Sun) 16:40:22

【人】 XIV『節制』 シトラ



  ……わたし、にも 何か
  できること、ありませんか……?



[ 消え入りそうな声で紡ぐ。
 荷物持ちの手が足りそうなら
 お茶の準備をしに行こうかな。

 と言っても、わたしにできるのは
 売店でフォルスさんにお願いして
 疲れを癒すお菓子と飲み物を用意してもらう、くらい ]*
  
(137) 2022/12/11(Sun) 16:40:57
XIV『節制』 シトラは、メモを貼った。
(a22) 2022/12/11(Sun) 16:46:36

【人】 XIV『節制』 シトラ



  ──あ……っ

  
[ ヒナギクさん、とわたしが呼び掛けるより早く
 太陽より眩しいオレンジが、
 わたしを通り越して一目散に玄関へと駆けてゆく。>>148
 
 チェレスタさんの声が美しい清流のような音色なら
 ヒナギクさんの声は、軽快に弾けては咲う花のよう。

 はい、そうです。わたしも居ます。居ました ]


  そ、そう、……ですよね
  そう、ですか……?

 
(177) 2022/12/11(Sun) 21:09:30

【人】 XIV『節制』 シトラ


[ 彼女の『お手伝い要らないね?』に、おろおろと
 返事になりきらない独り言のような声が零れた。

 わたしは頭数に要らないかもしれないけれど
 ヒナギクさんは要るかもしれないし、
 それを決めるのは、チェレスタさんだ。

 自然と「どうですか……?」と
 答えを窺うように彼女を見てしまう ]
 
(178) 2022/12/11(Sun) 21:09:40

【人】 XIV『節制』 シトラ


[ 政府の広告塔として活動に励んでいる
 ヒナギクさんのお仕事の一端は、
 わたしも、洋館の広間のテレビで見たことがある。

 聴き慣れた声でくるくると表情を変えながら
 笑顔で証持ちについて語るヒナギクさんは
 薄い板越しにもやっぱり眩しくて、
 一挙手一投足がキラキラと輝いて見えた。

 ただそこに在るだけで場を暖め照らす『太陽』
 洋館でも、ヒナギクさんが居るところには
 楽しげな明るい空気が流れるように感じる。
 直接の会話を交わすことは少なくとも、居心地の良さゆえに
 そっと日常の一幕の隅に身を置こうと試みる
 そんなひとときは多々あったでしょう。

 その天真爛漫な煌々としたまばゆさに
 時折、ほんのすこし、目が眩むけれど ]*
 
(179) 2022/12/11(Sun) 21:10:03
XIV『節制』 シトラは、メモを貼った。
(a31) 2022/12/11(Sun) 21:14:41

【人】 XIV『節制』 シトラ

──
回想・生まれ故郷の村


[ どんな些細な物事であっても
 村民みんなで話し合いをして決める。
 それが、わたしの故郷に古くから伝わる慣習だった。

 今年の放牧はいつからどこで行うか
 どんな毛織物をどれくらい、いつまでに、誰が作るか
 誰かの罠に偶然掛かった獲物を、どうするか
 祭祀を執り行う日取り、段取り、捧げ物の内容

 村に新たに生を受けた子の名前、
 死にゆく誰かの魂を鎮める葬送の儀

 そういう文化を持つ村だったから、
 『証持ち』のわたしの誕生以来
 その処遇を巡る話し合いは連日執り行われていたようで
 記憶にある限り、いつも揉めていた。]
 
(409) 2022/12/13(Tue) 0:08:35

【人】 XIV『節制』 シトラ



 『この娘は災いだ。一刻も早く村から追い出すべきだ』

   『ですが、一説には『節制』の証を持つ者には
    不老不死の妙薬を生み出す力があると……』

 『神より遣わされし聖女を私利私欲の為に利用するなど』

      『子は宝じゃ。たとえ証を持とうと、なかろうと
       大切に守り育ててゆかねばならん』



[ まだ幼かった頃は、会話の内容はよくわからなかった。

 それでも、
 時として罵声や怒号が飛び交う『話し合い』が
 他ならぬ自分のせいで行われているのだということだけは
 向けられるまなざしや表情で、幼心に理解していた。]
 
(410) 2022/12/13(Tue) 0:08:41

【人】 XIV『節制』 シトラ

 
[ お母さんもお父さんも、物心ついた頃から
 いつだって腰を深く折っては誰かに謝っていた。
 『話し合い』に連れ出される度に胸が苦しくなった。
 
 わたしと同じくらいの歳の子を連れたおじさんが、
 眉を吊り上げて声を荒げるのを見た。
 あのひとは、わたしの顔を見るまでは
 穏やかで優しそうな顔をしていたのに。

 顔にも手にも深い皺の刻まれた小柄なおばあさんが
 可哀想じゃないか、と顔を強張らせるのを見た。
 あのひとも、話し合いが始まるまでは
 わたしに微笑みかけてくれていたのに。

 わたしの、せいなの。

 村のみんなの表情が、声色が
 それまでとは比べ物にならないくらい一変するのが
 怖くて、怖くて、ただひたすらに怖ろしくて
 幼いわたしは抑えきれない感情のままに泣き叫んだ。
 すると話し合いは中断せざるを得なくなって、
 翌日に持ち越される。

 そんな日が、何日も何日も続いた。]
 
(411) 2022/12/13(Tue) 0:08:54

【人】 XIV『節制』 シトラ

 
[ ごめんなさい。ごめんなさい。
 おこらないで。なかないで……

 最初は、両親を真似るように。
 心身に刻み込まれた罪悪感は涙になって
 いつからか、とめどなく溢れ出るようになった。
 
 わたしが歳を重ねて成長するにつれて
 お母さんの泣き顔を見る回数も
 お父さんの身体の傷痕も、増えていった。]


  おかあさん、どうしてないてるの?

     ──ごめんなさい
     大丈夫よシトラ。必ず貴女を護ってみせるからね

  

  おとうさん、どうしていつもけがをしているの?

 
    ──ごめんな
     シトラ、お前は何も気にしなくていいんだ。
     俺がもっとしっかりしていれば……!

 
  
(412) 2022/12/13(Tue) 0:09:22

【人】 XIV『節制』 シトラ

 
[ ……そう言ってわたしの頭を優しく撫でてくれた両親も
 わたしを寝かしつけた真夜中、扉の向こうで二人
 何事か激しく言い争っているのを、一度ならず耳にした。

 『シトラ。貴女はあまりお外に出ない方が良いわ。
  母さんと一緒に、お家で編み物をしましょうね』

 それはきっとわたしを守るために
 両親が話し合って導き出した最善の道。

 わたしはただ、泣き腫らしたまま小さく頷いた。
 幼い我儘で両親をこれ以上困らせるより、
 聞き分けの良い子になるべきなのだと、そう思った。]
 
(413) 2022/12/13(Tue) 0:09:33

【人】 XIV『節制』 シトラ

 
[ そうしてわたしは、進んで部屋に籠もるようになった。
 朝から晩までアルパカや羊の毛を紡いで、
 紡いだ糸で無心に何かを編んでいる間は
 何も考えずに安らいでいられたの。

 証持ちわたしが編んだことを伏せて
 野菜や果物と交換された毛織物を、
 どこか遠くの誰かが着てくれている。
 それだけで、心が温かくなる気がしたの。

 もう随分と長く、青空を見ていないことに気付いても
 センパスチルの花に太陽を懐かしんでも
 幼い頃両親がよく遊びに連れていってくれた、
 山間に流れる小川への行き方を忘れてしまっても。

 危ないからと、台所に入らせてもらえなくても
 読もうと手に取った本を、取り上げられても
 紛糾する話し合いだけが村のみんなとの繋がりでも
 友達がぬいぐるみローティカしかいなくても。

 わたしが、わたしを、我慢することで
 みんなが、笑顔でいられるなら
 わたしはそれでいいの。]
 
(414) 2022/12/13(Tue) 0:10:06

【人】 XIV『節制』 シトラ


[ 本当は1日でも早く村を出て行くべきだとわかっていた。
 わたしさえ居なければきっと村の人たちも
 両親も、あんなにも苦しまずに済んだ。
 
 けれどこの村で生まれて育って
 外の世界を何ひとつ知らなかったわたしには、
 村から出る伝手も、知識も、勇気もなかった。



   彼女が──アリアちゃんが、
   4年前、わたしを迎えに来てくれるまでは。]*
 
(415) 2022/12/13(Tue) 0:10:53

【人】 XIV『節制』 シトラ

 
[ ──4年前のあの日のことは、
 昨日のことのように鮮明に憶えている。
 奇しくも彼女の瞳と同じ、
 
の毛糸を編んでいた。

 昼夜問わず締め切られたカーテン越しにも
 窓の外の異様な空気は伝わってきた。
 言いつけを破って、ほんの少し窓を開けて
 村の様子を窺おうとした、そのときだった ]


  …………っ

 
(416) 2022/12/13(Tue) 0:11:14

【人】 XIV『節制』 シトラ

 


    う、ぁ…………っ
      あああ、ああ


     ああああああああああ………………!!!


   
(417) 2022/12/13(Tue) 0:11:21

【人】 XIV『節制』 シトラ

 

 逢いたかった。
 ずっと、ずっと逢いたかった。


             ……これは、


 ごめんなさい。ごめん、ごめんね
 心優しいあなたをわたしが変えてしまった。

 大切なあなたを置き去りにしてしまったわたしに
 あなたよりも死を選んでしまったわたしに、

 それでも、あなたはこうして
 逢いに来てくれたのね。



                    誰の、感情?
 
 
(419) 2022/12/13(Tue) 0:12:04

【人】 XIV『節制』 シトラ

 

 [  もう二度と、苦しませたくない  ]


  
(420) 2022/12/13(Tue) 0:12:14

【人】 XIV『節制』 シトラ

 

  よう、かん…… せいふ
  な……なんの、こと……です、か…………っ


[ 昂る誰かの感情を抑えつけて、嗚咽交じりに
 初めて耳にした単語について問い返す事しかできなかった。

 彼女の緑色をただ見つめているだけで
 己の感情とは無関係に滾々と溢れ出す涙。
 たしかに初めて出会ったはずなのに、
 遥か遠い昔からよく知っているような不思議な安心感。

 見えない糸に導かれるように
 玄関から飛び出したわたしの周りで、
 村の人たちや両親が口々にそれぞれの主張を叫ぶ。

 そのひとつひとつを聴いて呑み込もうとしたわたしの喉が
 息苦しさに詰まって圧し潰されてしまう前に、
 感情の濁流を割るような凛とした声が響いた。>>0:258]
 
(421) 2022/12/13(Tue) 0:12:57

【人】 XIV『節制』 シトラ



  そ……んな、場所が…………
  

[ わたし以外の「証持ち」が居る場所が。
 「証持ち」が暮らすために用意された場所が。
 そんな場所があるなんて、それまで知らなかった。

 知らされていない可能性にすら
 思い至らないほどに、無知だった。 ]


  わ……たし、が
  決めて、いい …………こと


[ その頃には、着るものも、食べるものも
 手仕事も、一日の過ごし方も
 ほとんど全てを誰かに決められて
 決められた通りの日々を送っていた。

 わたしの選択はいつだって「正しくはない」から
 わたしは何も決めない方が良い。
 自分でも心の底からそう思ってしまうほどに。

 だから突然与えられた自由は、
 わたしを戸惑わせ、悩ませ、混乱させるには十分すぎた ]
 
(422) 2022/12/13(Tue) 0:13:34

【人】 XIV『節制』 シトラ


[ 道を敷かれ 手を引かれてばかりだったわたしが
 自分の足で一歩を踏み出すのには
 それこそ崖から飛び降りるくらいの、覚悟と勇気が必要で ]


  わ、わた、し


[ けれど彼女はただじっと、わたしの
 わたし自身の導き出す答えを待ってくれていた。


 目元の涙を袖で拭って、深く息を吸い込んだ。
 高原のつめたい空気と、
 枯草と花と獣のにおいが肺を満たした。

 おずおずと、首を伸ばして
 天を仰げばどこまでも高い青空。
 雄大な山麓の頂上をかすかに覆う雪。
 流れ落ちる滝と清流、点々と建てられた家々。
 草を食むひつじたちの群れ。

 わたしの、生まれた小さな村は
 たとえ悲しい想い出の方が多くても
 言葉には言い表せないくらいに、美しくて ]
 
(423) 2022/12/13(Tue) 0:14:37

【人】 XIV『節制』 シトラ



  …………わたし、


[ 黙り込んでしまった村の人たちの表情を一人一人、見つめる。
 このひとたちは、こんなに小さかったかな。

 ……違う。わたしの方が大きくなったのね?

 辛く当たってくるひと、なにかに怯えているひと
 けれどまるで実の娘か孫か、妹のように
 慈しんでくれるひともいた。

 太陽の下、あらためて両親の顔を見る。
 ふたりとも、焦燥と疲労と安堵の混じったような
 複雑な表情をしていて
 実際の歳よりもひどく老けて見えた。

 きっとこれが、わたしにできる最後の親孝行 ]
 
(424) 2022/12/13(Tue) 0:14:54

【人】 XIV『節制』 シトラ

 

  ──おねがい

   わたしを、……洋館に
     連れて、行って **

 
(425) 2022/12/13(Tue) 0:15:22
XIV『節制』 シトラは、メモを貼った。
(a64) 2022/12/13(Tue) 0:33:36

【人】 XIV『節制』 シトラ


[ アリアちゃんに連れられて洋館へと向かう道中
 わたしはずっと、肩を丸めてきょろきょろしていた。
 目に映り耳にするほとんどすべてのものが、
 わたしにとっては初めて経験するものだった。
 
 山を下った先にも、
 ずっとどこまでも道は続いていて
 故郷の村の家々と似た作りの家も
 まったく違う作りの家も並んでいた。
 故郷が遠ざかれば遠ざかるほどに道は整い幅は広がって、
 立ち並ぶ家々の数も、すれ違う人の数も増えていく。
 
 軒先ではしゃぐ子どもたちの笑い声。
 庭に干された、知らない色の洗濯物。
 長い椅子に座って外で食事を楽しむ人たち、
 記憶にある小川とは比べ物にならないほど大きな川。
 空の色も、村のものとは心なしか違う。
 
 これまで自分の生きてきた世界が、いかに小さかったか
 カーテンの向こうに広がる世界が、いかに大きかったか

 そう長くはなかったはずの旅路の間に
 こんなにも未知の世界が広がっているなら、
 もっと北や東の彼方には一体何があるんだろう ]
 
(583) 2022/12/13(Tue) 18:38:32

【人】 XIV『節制』 シトラ


[ 初めて口にした我儘を叶えてくれた彼女に
 わたしは、できるだけ迷惑を掛けまいと思っていた。
 けれどいざ洋館に辿り着いてみれば
 どう過ごして良いのか、それすらもわからなかった。

 結果、無意識のうちに、あるいは意識的に
 気付けばいつもアリアちゃんの後を追っていた。
 このひとの傍に居れば何も怖いものはない、
 このひとの傍から離れてはいけない、って
 魂が訴えかけているみたいだった。

 洋館で暮らし始めた最初の頃は、特に
 完全にひっつき虫状態だった。
 アリアちゃんの隣で過ごせる時間が
 一番、ほっとしていられた。 ]


  できなくても、いい……


[ メイドさんにお世話になってしまう度
 先住のみんなに世話を焼かせてしまう度に
 心の底から感謝しながらも
 申し訳なさでいっぱいになってしまうわたしに、

 自分の無力さを思い知って泣いていたわたしに
 アリアちゃんは、そう言ってくれて>>261 ]
 
(584) 2022/12/13(Tue) 18:39:53

【人】 XIV『節制』 シトラ



  失敗しても、いいの…… ?


[ 仕損じれば間違いなく誰かを
 困らせたり怒らせたりしてしまうから、と
 何かをする前から立ち竦んでしまうわたしの、
 背中をそっと押そうとしてくれて ]


  わたしが、やってみたい、ことを
  するのが、一番…………


[ そんなこと、
 そんな風に言ってくれるひとは
 今まで、身近には誰もいなかったよ。

 与えられる惜しみない優しさに返せるものを、
 わたしは何も持ってはいないのに。

 それどころか、
 わたしは、あなたを置いて死へ逃げたのに。
]
 
(585) 2022/12/13(Tue) 18:40:07

【人】 XIV『節制』 シトラ



 [ あなたが、そう言ってくれるなら── ]

 
(586) 2022/12/13(Tue) 18:41:03

【人】 XIV『節制』 シトラ


[ それから一歩ずつ、毎日すこしずつ
 わたしはわたしの心に耳を傾けて
 やってみたいことをしてみるようになった。

 文字をきちんと学んで、書けるようになりたい。
 お菓子を作れるようになって、お礼に渡したい。
 お金の使い方が、わかるようになりたい。
 洋館に書庫があるなら、本を読んでみたい。

 アリアちゃんにばかり頼るのは申し訳なくて
 教えてくれそうなひとを見つければ>>36
 希望が叶うか否かは別として
 すれ違うたびにじっと見つめてしまったり

 故郷の近いらしいシャルレーヌさんには
 どこか懐かしい空気と親近感を勝手に覚えて、
 実際に会話が成り立つかどうかは別として
 お話してみたい、と思うようになるのも早かった。

 植物の知識は、アリアちゃんから教わろうとした。
 お薬の調合はさすがにできなくても
 素材集めならもしかしたらわたしにも
 役立てるんじゃないかって、そう思ったから。]
 
(587) 2022/12/13(Tue) 18:41:19

【人】 XIV『節制』 シトラ


[ そうした小さな挑戦と失敗、
 失敗を重ねた先の成功が積み重なって
 ほんの少し自信が持てた今があるからこそ
 「歌ってみたい」なんて言い出せたのだ。

 かつてのわたしなら、とてもじゃないけれど
 そんな大それたことは言えなかったと思う ]


  ひぇ……っ
  そ、そう……です、けど

  ま、まだ、ぜんぜん 練習中……で
  でもあの、が……
がんばる、ので…………

  

[ 心底驚いた様子なヒナギクさんの声に>>375
 反射的に身体がびくりと強張った。
 こちらを二度見する視線から逃げるように
 アリアちゃんの方へと一歩、後退る。

 そ、そんなに……意外だった? 二度見するほど??
 
 とはいえ改めて日頃の己を振り返れば
 当然ではある。何せ、
 表舞台と称されそうな場には
 とことん出たがらない自覚は一応あるもので ]
 
(588) 2022/12/13(Tue) 18:42:19

【人】 XIV『節制』 シトラ


[ けれど何やら感慨深そうな様子の彼女は>>377
 わたしが参加しようとしているのを
 喜ばしく感じてくれているよう、で。 ]


  あの、えっと、えと……


[ エーリクさんやプロセラさんや
 ユグさんやゼロさんが歌ってくれる姿を
 一瞬思い浮かべてみてからはっと我に返った。

 勝手に想像しちゃうなんて、申し訳ない。
 おねがいしたら歌ってくれないかな
 なんて思うのは、心の内だけに留めて ]
 
(589) 2022/12/13(Tue) 18:42:59

【人】 XIV『節制』 シトラ



  ……そ、です ね
  歌えるなら、全員で……歌えたら

  ──素敵、です


[ ほんとうに素敵だと思った。案そのものも、
 そういう発想が自然と生まれて
 それを実際に言葉として発することのできる彼女も。

 わたしが出逢う前 彼女にも
 笑わなかった時期があったなんて
 目に見えるものしか視えないわたしは、想像もしない
]
 
(590) 2022/12/13(Tue) 18:43:46

【人】 XIV『節制』 シトラ


[ チェレスタさんが荷物持ちの申し出をやんわり断って
 代わりにお茶の準備を頼んでくれたのが>>216
 彼女の思慮深さゆえだったとも、気付けない。
 わたしより早くすらすらと必要事項を
 全部言ってくれるアリアちゃんの言葉に>>427
 隣でこくこく頷くのが精一杯だ。

 『一緒に歌も見てもらえると心強い』の一言には
 特に大きく首を縦に振ってみせた ]


  まっ、また、あとで……っ


[ チェレスタさんにぺこりとお辞儀をして
 食堂か売店か、
 何処かへと向かうアリアちゃんの後を追う。>>428
 
 振り向きざま、
 既に荷物を奪わんとしているヒナギクさんの姿が>>379
 ちらりと視界の端に映り込んだ。

 ……まったく大丈夫ではなかったのに
 『大丈夫』が口癖になっていた母さんの声を、
 不意に思い出したのは
 チェレスタさんたちからすっかり離れてからだった。]*
 
(591) 2022/12/13(Tue) 18:45:29
XIV『節制』 シトラは、メモを貼った。
(a88) 2022/12/13(Tue) 19:10:03

【人】 XIV『節制』 シトラ

 ──回想・三年前の誕生日


[ 誕生日を祝う歌は、わたしの村にはなかった。
 贈り物をする風習は、一応はあった。

 毎年じゃなくて、5歳の誕生日にだけ
 その歳まで生きられたことを祝って
 親から子へと、ぬいぐるみをひとつ贈る風習。
 洋館まで持ってきた数少ない手荷物の中
 鞄のほとんどを埋めていた白い犬ローティカ
 5歳のわたしが両親から受け取ったもの。
 
 わたしの村では誕生日は、幸運の訪れる日で
 その人個人の持つ力が
 一年で最も増幅される一日だと信じられていた。
 新しく始めたい物事、
 どうしても成功させたい挑戦は特に
 誕生日に行うのが最良とされていた。

 だから、だったのでしょう。
 わたしにとって誕生日は一年で一番
 村のみんなを不必要に警戒させてしまう日で、
 そうと判っていたからこそ
 特別なことは一切せずに、
 普段と変わらず過ごそうと努める日だった。]
 
(635) 2022/12/13(Tue) 22:23:21

【人】 XIV『節制』 シトラ


[ だから、洋館に来て驚いたの。
 誕生日が毎年当たり前に祝われていたことに。

 一年目は、一方的に受け取るばかりで
 二年目になって職員さんを頼れるようになり
 三年目になって初めて
 唯一の特技を生かせるようになった。

 事前に欲しいものが尋ねられていたならそれを、
 尋ねられていなかったなら
 消耗品やお菓子を小さな箱に詰めて。

 拒絶されたり、遠慮されたりしない限りは
 誰にでもおずおずと。
 誕生日のわからないひとには、年の初めに贈ろうとした。

  ──けれど、
  あのひとの誕生日だけは
  あのひとが来た一年目は、お祝いできなかった。

 前日まで悩んで、悩んで、悩み続けて
 肝心の誕生日当日に、わたしは
 ひどい高熱を出して寝込んでしまったのだ。]
 
(636) 2022/12/13(Tue) 22:24:21

【人】 XIV『節制』 シトラ


[ 紙製の品を贈れば
   肌を傷つけてしまうかもしれない


 筆記具を贈れば
   滑り落ちたそれが目を突くかもしれない


 毛糸を紡いだ品を贈れば
   絡まって首を絞めてしまうかもしれない


 ぬいぐるみを縫って贈れば
   内から針が出てきてしまうかもしれない


 お茶やお菓子を手作りして贈れば
   混入した毒に気付けないかもしれない


 植物や動物を贈り物とすれば
   それが原因で病気に罹ってしまうかもしれない


 ガラス、陶器? もってのほか。]

 
(637) 2022/12/13(Tue) 22:24:46

【人】 XIV『節制』 シトラ


[ 何を選んでも、わたしが彼に贈ろうとするものを
 わたし自身が誰より信用できなくて、

 すっかり熱が引いた頃には
 渡す機会を完全に見失ってしまった。


 初めて彼の姿を見たとき、
 わたしを見るその表情に心臓が跳ねた。

 わたしが少しでも彼に近付いてしまえば
 取り返しのつかない災いが起こる、
 そんな怖ろしい予感がした。

 
         ごめんなさい。ごめんなさい。
         どれほど謝っても償えるものではない。

         たとえ故意ではなく
         混乱の中で起こした過失だとしても、

           わたしがあなたを
           この手で殺めたのは
           紛うことなき事実なのだから!



 わたしを見て笑顔を失った彼と時を同じくして
 わたしも、すっと血の気が引いてゆくのを感じた。]
 
(638) 2022/12/13(Tue) 22:25:12

【人】 XIV『節制』 シトラ


[ 自己紹介もそこそこにその場から走り去って
 得体の知れない恐怖と寒気に襲われること一週間、
 漸く落ち着いて部屋を出られるようになったとき
 わたしの方から彼に近付く勇気はもうなかった。

 姿が見えれば、自然と距離を取った。
 わたしたち、きっと、離れて暮らした方がいい。

 彼が──クロさんがどう思っているかはさておき
 わたしの方はそう思っていたものだから、
 他のみんなに贈られるのと同様
 わたしの元へとやってきた羊のぬいぐるみに>>529
 わたしは驚きを隠せなかった。

 まるくて、白くて、
 可愛らしく掌に乗るもふもふのひつじ。

 ただただ愛らしさを振りまくそれは純粋に贈り物で、
 『誕生日祝い』以上も以下もないのでしょう。
 ひょっとすると、
 わたしにだけ贈らないわけにもいかなくて
 やむを得ず贈ってくれたのかもしれない。]
 
(639) 2022/12/13(Tue) 22:25:47

【人】 XIV『節制』 シトラ


[ けれど、どんな気持ちで彼が贈ってくれたのかも
 直に訊くのは怖くて尋ねられなかった。]


  ぅ、あ……っ、あり、がと……ござい、ます
  大切に…………しま……す、ね


[ 歓喜と恐怖、驚嘆と自戒
 相反する二つの感情が押し寄せて勝手に声が震えた。

 やっとのことでお礼を述べて受け取ったその子は
 部屋の隅、チェストの上で
 今日に至るまでずっと、わたしを見張っている。]
 
(640) 2022/12/13(Tue) 22:27:46

【人】 XIV『節制』 シトラ


[ 彼が洋館にやってきて二年目の誕生日
 わたしは、贈り物に一冊のノートを選んだ。
 考え抜いた末、それが一番実用的で
 かつ安全なように思えたの。

 ただ、わたしの手で直接渡すのは
 やっぱり怖くて、こわくて。

 彼の師でもあるフォルスさんに、
 わたしの代わりに手渡してもらえるよう
 お願いさせてもらったのだった。

 接客もお茶の用意も、わたしには難しいけれど
 棚出しや陳列やお掃除ならきっと、できます ]**
 
(641) 2022/12/13(Tue) 22:28:18
XIV『節制』 シトラは、メモを貼った。
(a96) 2022/12/13(Tue) 22:34:14