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【人】 田臥 志麻── *** ── [───そんな、蜜月は今もまだ続いている。 贈られた浴衣に袖を通すことに慣れた今でも、 着付けは威優に任せたままだったり。 弟からのLINEに翌朝になってから気づくほど、 威優とベッドの上で溺れたりして。 威優の三週間の長い長い出張も終えた今、 志麻は────、ダイニングのテーブルに テキストを広げて文字の羅列とにらめっこしている。 試験は来週末。 問題への予測も出来ているし、9割近くの正解率を 自己採点では出しているから多少余裕はあれど、 日が差し迫るとのんびりとくつろいでも居られない。 専属の家庭教師が、様子を見に来るまでは、 一人、ワイヤレスイヤホンを耳に付けて お気に入りの洋楽を流しながら、 シャープペンシルをノートに走らせていた。*] (0) 2023/08/28(Mon) 20:59:27 |
【人】 田臥 志麻[イヤホンを付けていても、 周囲の環境が聞こえるくらいの音量にしかしていない。 音楽に重なるように威優の声がすれば顔を上げ、 風呂上がりの彼に、んー……、と。 返答とも唸りとも取れる相槌を打つ。 威優よりも帰宅が早い志麻も、 彼より先にシャワーを済ませていた。 風呂から上がった後も、浴衣を身に纏ってしまうと ついつい、だらけそうになってしまう為に 外出にも使えそうなシープボアのカーディガンと ボトムスのセットアップを着ている。 一緒に風呂に入りたい気持ちはやまやまあれど、 ただ一緒に浸かって、だけで済ませられる気はしない。] (5) 2023/08/28(Mon) 22:34:23 |
【人】 田臥 志麻[自身に合わせてくれた威優のサポートもあり、 ページの進み具合は順調といえば順調だ。 複数ページについていたメモ付きの付箋も今は 随分と減って、ノートの厚みも薄くなってきている。 彼が手書きで書いてくれた付箋は、 もう見ずとも答えられるが、捨てられないまま 纏めてエシレのクッキー缶に詰め込んでいた。] ……順調といえば順調。 暗記ものは概ね覚えられたと思うし、 引っ掛けに躓くほうでもないから。 ……お、サンキュ。 [暗記する方法はひたすら書いて覚える方が性に合っている。 その話をすれば、数回読めば覚えると言った威優には、 出会った時のように、わぁ……♡と、感嘆を零してしまった。 このときばかりは地頭の良さに少しばかり嫉妬する。] (6) 2023/08/28(Mon) 22:35:01 |
【人】 田臥 志麻[濃茶色から甘い香りがする。蜂蜜だろうか。 一口、口に含めばふわりとアルコールが広がって。] ……あ、これお酒だ? うまい。 [蜂蜜の甘さにほっとして表情が緩む。 両手でグラスを包み込みながら、 ストレッチ代わりに頸をぐるぐると回しつつ。] (7) 2023/08/28(Mon) 22:35:13 |
【人】 田臥 志麻ほんと、焦ると計算する時にミスりそうでさ。 どうせ仕事じゃパソコン使うんだし、 試験でも計算機使わせて欲しい〜……。 [不安、というよりも半ば愚痴めいてしまう。 ちなみに英語も、法律も。 仕事で必要な箇所に集中的に絞って覚えた。 地理だけは好奇心が勝って得意分野となったが。 いずれ秘書室に就くのであれば、 英語は必須になるだろう。 今の会社でも使わないわけではなかったが、 スキルレベル的には格段に上がっていくだろう。*] (8) 2023/08/28(Mon) 22:36:29 |
【人】 田臥 志麻[威優の地頭の良さは出会ったときから感じていたが 生活を共にするようになり、家庭教師を任せた頃から より強く感じるようになった。 勉強法が違うのはもちろん、要点の纏め方や 教え方も相手に分かりやすく手法を変えている。 地頭だけでなく性格由来のものも多分にあるだろうけれど。 彼の好感が持てるところは能力をひけらかさらない点だ。 ここまでくれば妬むどころか尊敬を覚えてしまう。 まだ直接上司と部下の立場になったわけではないが、 威優なら間違いなく上司として、夫として、誇れるだろう。] そっか。 最初は見慣れない単語ばっかりだったけど、 新しいこと覚えるのって結構好きだから 調子が上がってくれば勉強も楽しいよ。 [肩肘張らず、強がらなくてもいい。 そんな環境下の中で集中できるのは有り難い。 それは他でもない威優が与えてくれたものの一つだ。] (12) 2023/08/29(Tue) 1:07:55 |
【人】 田臥 志麻[こうして手渡してくれるさりげない労いも 心が温まる心地で表情が緩む。] ホットミルクはたまになら嬉しいんだけど、 実はちょっと甘過ぎて苦手。 ああ、でもミルクにも蜂蜜入れるな。 どうしても甘いものが欲しいときとか。 これはちょっと苦味もあって好きだな。 ……嬉しい。 [いつから用意してくれていたのだろう。 大げさでもない、優しい励ましが心地良い。 こくん、ともう一口飲めば、 紅茶の奥に蜂蜜独特の癖が広がった。] (13) 2023/08/29(Tue) 1:08:12 |
【人】 田臥 志麻[電子機器は脆い。故障すれば自力で解決する他ない。 威優の言い分も最もだけれど、小さく唸った。] そりゃそうなんだけどさー……。 [と、項垂れつつも続いた言葉には ぱっと表情を明るくしてマジ!?と声を弾ませた。 とはいえ来週末に迫った試験に間に合うかは別の話。] んー?教えること? [冷えたグラスを頬に添えて涼みながら、 軽い調子で答えつつ、隣の威優を見遣った。 「先生」の響きに、ふと悪戯めいた案が浮かぶ。] (14) 2023/08/29(Tue) 1:10:21 |
【人】 田臥 志麻[威優と話し始めた頃にワイヤレスイヤホンは 外して、脇に寄せていた。 今はスマホから細やかな音量の洋楽が流れている。 試験箇所のお浚いはとうに二順している。 追い込みと言っても切羽詰まった程じゃない。 だったら、今必要なのは──、] ……じゃあ、 『格好いい専務を骨抜きにする方法』 教えてくれる? 威優せーんせ ♡ [隣の"教師"に視線を合わせて、にやりと笑う。 グラスを頬に当てたままあざとく小首を傾ければ、 ガラスの中の氷がカランと、揺れた。**] (15) 2023/08/29(Tue) 1:12:14 |
【人】 田臥 志麻[試験勉強中のコーヒーの差し入れは、 どちらが決めたわけでもないのに威優の役割となった。 その時間を目安に休憩を入れる。 一度のめり込んでしまえば集中は切れることはなく、 威優が隣りにいても目の前の問題集に 意識が向いて、浮ついた気分にはならずに済んでいた。 もしコアントローを出されていたなら、 喜んで口にしただろう。 コーヒーとオレンジは相性がいいから。 スナック菓子などは最近は食べない。 代わりに、勉強の合間の糖分補給のために チョコレート掛けのオレンジピールや、 ドライフルーツを常備していることを キッチンにも立ち始めた威優なら知っているだろう。] (20) 2023/08/29(Tue) 17:48:06 |
【人】 田臥 志麻[試験までの家庭教師役が終わっても、 日常会話が通じるぐらいまでの英会話は引き続き 教わるつもりでいる。 そのことはまだ本人には確認していない。] ん、じゃあその時は威優の分も一緒に。 [美味しいと感じたものを二人で分け合うのも、 二人で暮らし始めて当然のようになってきた。 蜂蜜の香りがするお酒のように、 威優との会話は酩酊感があって癖になる。] (21) 2023/08/29(Tue) 17:48:22 |
【人】 田臥 志麻[世界で30億再生も流された結婚式の定番のラブソングが、 70歳になっても君を愛していると歌っている。 「先生」よりも詳しいと指摘された生徒は、 反応に笑いながら、少しだけ口を尖らせた。] だーめ、威優は今「先生」なんだから、 オレにちゃんと教えてくれないと。 [取り上げられたグラスを視線が追いかける。 間接的なキスでときめいているのが可愛らしい。 ふふ、と思わず声に出して笑い。 添えられた手の甲に甘えるように頬を寄せる。] (22) 2023/08/29(Tue) 17:48:42 |
【人】 田臥 志麻[今まで海外に大して興味が湧かなかったから、 英語も学校で教わった程度の知識しかなく、 英会話となれば実践での使い方の違いに驚いた。 まずはヒアリングからを意識して、 映画は字幕版を見るように意識し、 普段何気なく聞き流していた洋楽も 意味を調べるようになれば曲に深みが出てくる。 不意に威優から投げかけられる英語での呼びかけに 最初は「Please say it again」ばかりを 繰り返していたときもあった。] 今日はもう止めとこっかな。 マンゴーのドライフルーツまだ残ってるよ。 [一度途切れた集中力を再び湧き起こすより、 時間を置いたほうが気分転換にもなる。 短い夜の貴重な時間、 威優と共に居られる時間も、作っておきたい。] (25) 2023/08/29(Tue) 21:29:07 |
【人】 田臥 志麻[ふと威優が歌詞の一部を口にした。 プレイリストに入れていたお気に入りの一曲。 彼も気に入ってくれたなら、嬉しいけれど。] 毎日君に恋してるってやつ? 聞いてると落ち着くんだよね、この曲。 [彼が口にしたフレーズを和訳で繰り返し、眼を細める。 翻訳するまで意識していなかった音楽は、 つい口から溢れてしまうほどの愛の歌だった。 「先生」を強調し続けていれば、 生徒の悪ノリに威優が乗ってくれる。] 先生の教え方が上手ければね? [などと、挑発めいた言葉を口にして。] (26) 2023/08/29(Tue) 21:29:25 |
【人】 田臥 志麻[英会話を話すときには無理に単語を探すより、 知っている英語で会話を続けられるように。 威優にそう教わってからは随分と気が楽になった。 知識量とのしての単語はまだ足りないけれど 伝えたいことを優先する為に、 ボディランゲージや表情を変えてみたり。 時には食事中は日本語禁止にして遊んでみたりもした。 苦戦しつつも伝わったときの嬉しさを覚えてからは、 英語でのコミュニケーションも増えている。] そう? じゃあお酒だけもうちょっと飲もっか。 ……サンキュ。 [気にせず食べてもいいのに。と勧めるけれど この台詞は大抵の場合威優が言うものだ。 何しろエンゲル係数は高いのはオレの方なので。 テキストを片付ければ威優が後片付けを手伝ってくれる。 つくづく気の回る男だと感心してしまう。] (30) 2023/08/30(Wed) 3:00:09 |
【人】 田臥 志麻[英会話の中で確認し合ったのは、日常会話だけではない。 ベッドの上で試してみた日本語禁止は、 喘ぎが演技じみていて、普段の喘ぎの方がいいと クレームをすぐにもらって腹を抱えて笑った。 自身も威優の言葉をオートで脳内変換するのに 時間がかかり、そんな余裕もないので、 10分と続かなかったのもエピソードのひとつになっている。] (31) 2023/08/30(Wed) 3:00:48 |
【人】 田臥 志麻[毎朝毎夜のように交わすキスはまだ忘れる間もないくらい 威優の愛の味を覚えている。 今し方もその味を味わったばかりだ。 70歳になるまでには知らないことなどないぐらいに 威優の全てを知りたい。 何で悦ぶのかも、どこが好きなのかも。 どうされると嬉しいのかも、全部。] (32) 2023/08/30(Wed) 3:01:16 |
【人】 田臥 志麻── 式に向けて ── [海外旅行に行ったことは一度もない。 興味がなかったという点も理由の一つではあるが、 他にも理由は二つある。 一つは仕事で多忙な両親の為に 年の離れた弟を一人放っておけなかったこと。 もう一つは、旅行先で偶発的なヒートに 見舞われたときの対処法が思いつかなかったこと。 懸念材料を理由に足が遠ざかっていたけれど、 その二つは威優がいとも簡単に取り除いてくれた。 彼との日々の英会話も重ねてきた今では、 実際に試したいこともあり積極的になっている。 初めてのパスポートはつい先日手に入れた。 記載されている名前は自身の名字も 今では威優と同じ大守に変わっている。] (37) 2023/08/30(Wed) 22:03:17 |
【人】 田臥 志麻[転職に合わせて籍も入れたものの、 披露宴やメディア自体にはまだ発表されていない。 新しい職場はモラルがある人達ばかりで、 口の前に戸を立てずとも 自身の立場は対外的に漏れていないようで感謝しか無い。 入社したばかりなのに休暇も申請受理されて、 今から上等なお土産を考えるばかりだ。 その旅行でのメインであるウェディングドレスの準備は、 旅行準備よりもずっと前から始まっていた。 威優に連れられて大守系列の服飾メーカーに赴き、 全身のサイズを測られた後は、 生地の素材や、デザイン、全て。 一からオーダーメイドで作るという。] (38) 2023/08/30(Wed) 22:03:43 |
【人】 田臥 志麻……一度しか着ないのに? 既存のものでもいいけど……、 [と、最初は戸惑ったものの威優の考えは違うらしく、 最終的には良いドレスを着たい気持ちを 上手く唆されて首を縦に振っていた。 マーメイドドレスや、ミニドレス、Aライン。 どれもメディアで見たことがある憧れのデザイン。 レースやドレープがたくさんついたものもあるが、 自身の見た目的にはシンプルなものが 似合うのではないかと思い至り、 デザインよりも、生地に拘っていくようにした。] (39) 2023/08/30(Wed) 22:04:11 |
【人】 田臥 志麻[フィッティングルームの前に並ぶ、 数百着以上のドレスの間を、渡り歩いていれば 目移りしてしまう。 女性用の服、ましてやドレスに関しての知識もない。 一生に一度、と反芻しつつ。] ……色は白一色、が、いい。 トレーン?を長くするなら デザインはすごくシンプルなやつで あと……、 やっぱり、ちょっと照れくさいから、 ヴェールで顔隠したい…… [ウェディングドレスは憧れが詰まっている為に、 はしゃぐ気持ちもあれば、 腰が引けてしまう思いも、少し。*] (40) 2023/08/30(Wed) 22:05:18 |
【人】 田臥 志麻プレ……、なに? コルセットも着るの?ガーターも? ガーターベルトはなんかエロい感じがする……。 [そんなもの弟の漫画でしか見たことがない。 下着と合わせると良さそうだなという邪念が過りつつ、 いやいや、と首を振った。 説明を聞きながら自身よりも前のめりになって 威優が意欲的に聞いている。 まるで威優が着るみたいだ、と笑いつつ。 ヒールは履き慣れないのでフラットシューズに。 可愛らしいレース素材の透けているものを選ぶ。 ヒールを履いて同じ目線になるのもいいが、 威優を見上げる角度が好きだから。] (44) 2023/08/30(Wed) 23:20:49 |
【人】 田臥 志麻[ありのままの姿を好きだと言ってくれたから、 胸元もそのままに。 白を選んだら威優も賛同してくれる。] うん、長い方がいい。 靴がレースっぽいものだから、 ヴェールもレースを足して……チュール? 光が反射するのはいいかも。 [威優の手が伸びてきて頬を撫でる。 人前だとどうにも面映ゆくて視線を伏せてしまう。 こんな状態でメディアの前に出る頃には 対応できるだろうか。 以前ならもっと慇懃無礼な態度を取れていたはずなのに。 威優の所作一つにこんなにも心が跳ねる。] (45) 2023/08/30(Wed) 23:21:17 |
【人】 田臥 志麻あと、……どこかは一つ。 威優とお揃いがあると、嬉しい。 [ウェディングドレスとタキシード。 作りや素材も違うだろうから、そういった注文が 罷り通るかは分からないまま口にする。 もし無理な注文であれば、 薬指で光るものが同じであるからそれも問題ない。] (46) 2023/08/30(Wed) 23:21:48 |
【人】 田臥 志麻[オーダーメイドというものは 何から何まで自分で決められるらしい。 威優が普段着ているスーツも確かそう言っていたか。 だから、慣れている部分があるのかもしれない。 こちらは初めての体験に戸惑いつつも、 一緒に悩んでくれる人が居たから胸を撫で下ろせた。 初めて尽くしのことに質問を重ねながらも、 希望を汲み取ってくれるところが嬉しい。 式場も自宅でもタブレットを二人で駆使しつつ、 絞っていき、何度か相談した上で 彼が指し示した資料を横から覗けば、 ガラス張りの教会の写真が目に飛び込んでくる。] (47) 2023/08/30(Wed) 23:22:37 |
【人】 田臥 志麻どれ? ……へえ、綺麗だな。 夜なら海に来る人も少ないだろうし。 式が終わったあと、砂浜歩けるかな? [子供のような提案をして少しはしゃいでしまう。 十字架まで続くヴァージンロード。 夜になれば南半球の満天の星も見れるだろう。 聖域に相応しい場所で、愛を誓えるのなら。 それは夢にまで見た光景だ。*] (48) 2023/08/30(Wed) 23:22:54 |
【人】 田臥 志麻[コルセットと聞けば中世の女性が苦しそうに 着ているのが印象深いから、耳にしたときは "痛いのでは?"という想像が真っ先に浮かんだ。 威優と自身の話を聞いていたスタッフが、 ご覧になってみますか?と声をかけてくれたので、 少し挙動不審になりつつ、はい、と頷いた。 普段履いているランジェリーは 全てネット通販で購入している。 だから女性の前で女性ものの衣類の話をするのは 今回が初めてだったりする。 少数精鋭のスタッフに絞ってくれているとは、 威優から聞いていたがまだ気恥ずかしさが残り 声をかけられた時も咄嗟に、 傍に居た威優の裾を掴んで背中に隠れてしまった。] (54) 2023/08/31(Thu) 2:38:07 |
【人】 田臥 志麻[少し二人の時間があった後、 何種類か広げられたコルセットもガーターベルトも、 正直、「可愛い」と思わず声に出そうになるほど 興味を惹かれてしまった。 やはり威優は自身好みを知り尽くしている。 これが似合う、と提案されたものは どれも頷いてしまうもので 正直に言って、早く着てみたくてそわそわした。 シューズも、小物から一つずつ決まっていく。 自分たちで選んだものが細部まで拘られて。 ヴェールに選ばれるチュールも 派手過ぎず上品な光沢に近く、好ましい。] うん、良いと思う。 オレもそっちの方が好き。 [オーダーメイドに関しては格段に詳しい威優に まるで光源氏に育てられていく若紫のように、 彼の好みに育てられている感じがする。] (55) 2023/08/31(Thu) 2:38:56 |
【人】 田臥 志麻[シルクサテンのリボンと同じタイ。 シンプルな肩口に「可愛い」と「好き」が増えて、 威優とお揃いになる。 ポケットチーフとヴェールも重ねれば、 お揃いがもう一つ。 彼が出したアイデアに、 みるみると瞳を大きくして輝かせ。] それがいい。 どっちもしたいっ。 ははっ、最高。絶対可愛くなる! [借りてきた猫だった表情が破顔する。 こくこくと頷いて賛同を示し 浮わついた心を抑えきれずに手を取ってはしゃぐ。 重ねた手に嵌っている「お揃い」のリング。 大好きな瞳と同じ色をした石がきらりと煌めいた。] (56) 2023/08/31(Thu) 2:39:24 |
【人】 田臥 志麻[ブーケは花の種類が分からないから 色を決めてから、選ぶことになった。 白いウェディングドレスに映えるように、 「可愛い」の代表のピンクの花がいいと告げて、 可愛らしくなり過ぎないように ピンク合わせる色にはクールな青系統を選ぶ。 白いチャペルに白いウェディングとタキシード。 ブーケは夜に輝く差し色になるだろう。] 南十字星、初めて見るな。 夜の海ってちょっと怖いイメージあるけど、 灯りがない分、空見上げたら星がたくさん見られそう。 [威優と出会ったのは夏の頃。 オーストラリアに行く時期にはちょうど、 あちらが夏と同じ暑さぐらいの季節。 きっと、出会った頃を思い出すだろう。**] (57) 2023/08/31(Thu) 2:39:48 |
【人】 田臥 志麻[仕事として接してくれている女性スタッフたちは 例え可笑しいと思っていても プロだから態度に出すことはないだろう。 Ω性の男性であっても大半は揃えてタキシードを着る。 披露宴の時に自身も対外的に着るみたいに。 LGBTやトランスジェンダーの問題は今や、 公言しても蔑まれることは少なくなってきているが、 志麻が消極的なのはそういった根本的な問題以前に、 骨格が細いとはいえ女性的な丸みのない成人男性である 自身が可愛いものを着ても似合わないのでは、 と、誰よりも自分自身が思ってしまうからだった。] (61) 2023/08/31(Thu) 21:28:04 |
【人】 田臥 志麻[威優の可愛いを切っ掛けに視線が上向けば、 接してくれる女性スタッフたちの表情も良く見えた。 話を親身に聞いてくれる様子は決して嘲笑うものではない。 そう気づいたら、随分と気持ちが楽になった。 最初から拘っていたのは自身だけだったかも知れない。 そう思えば、少しずつ相談に前向きになれた。 二人で一から作っていくウェディング。 ドレスから小物、式場、時期まで。 たった二人だけで挙げるために。 話が進んでいくにつれて一生に一度のものが、 最高になると確信していく。 リボンのアプローチも一度じゃなくて、 正式な発表の場でも「お揃い」に拘れるように。] そうしたい。 挙式の気持ちを持って披露宴に挑めるなら、 緊張しないで済みそう。 [もう一つの予定が組み込まれるからには、 素材選びはまた慎重になりハードルが上がりそうだ。] (62) 2023/08/31(Thu) 21:29:57 |
【人】 田臥 志麻[「愛情」が意味として含まれる花々達の中に 「かわいらしさ」と「信じ合う心」が含まれる。 自身が選んだピンクに、彼の好みを足せば 「恋の誓い」が生まれた。 互いに初めての恋を知った二人によく似合う。] 知ってる? 星座の中で一番輝く星って"α星"って言うんだって。 南十字星には二つもあるらしいよ。 [十字架の前で愛を誓った後、見られるであろう 夜空の十字に思いを馳せる。 その中には、威優と同じ意味を持つ星がある。 自身の中でもたった一つだけ、 誰よりも輝く一番星が────すぐ傍に。*] (63) 2023/08/31(Thu) 21:30:31 |
【人】 田臥 志麻[威優が居なければ相談もまともにできないまま、 既製品でいいと言っていたかもしれない。 「志麻さま」と呼ばれ続ける中で、 たった一度だけ「ご新婦様」と言いかけた スタッフが恐縮して名前に呼び替えた。 「大丈夫です、呼びやすい方で。」 と、照れくさいながらもそう答えられるくらいには 余裕も生まれて、打ち解けていく。] 無理。 リボン見たら絶対ニヤけちゃうもん。 その時は一緒に笑って。 [どんな思い出になっても 威優となら良い思い出になることは間違いないから。 挙式も、披露宴も、笑顔で迎えられたら良い。] (68) 2023/09/01(Fri) 1:46:26 |
【人】 田臥 志麻[街灯が綺麗に並ぶ中を手を繋いで歩く帰り道。 海の近くのように星は見えないけれど、 その代わりに冬のライトアップが美しい。] Ω星はないんだ。 オメガ星雲ってΩの形をしたやつならあるけど。 星雲は星じゃなくて、塵やガスの集まり。 ああ、でも恒星の光を反射するんだよ。 [冬の空気に冷えていた手が彼の手で暖かくなる。 自身の星はなくとも、一番星の。 彼の光を受けて、光ることなら出来るだろうか。] (69) 2023/09/01(Fri) 1:46:35 |
【人】 田臥 志麻── 来たる挙式当日 ── [初めての海外に戸惑いながらも、 現地の天気は心を映し出すように晴れやかで。 一人前の食事の量の多さに感動しながら、眠った翌日。 最終調節のためになんどか試着を重ねた 完成されたドレスをお披露目するときがきた。 ウェディングドレスを着るのなら、 素っぴんとは行かない。 ドレスに見合うようにメイクを施されて。 ベイスメイクはもちろんのこと、 薄いのチークにマスカラ、色づいたピンクのリップ。 鏡の中の白いドレスにメイクをした人物は まるで自分じゃない、ドラマの中の人みたいだ。 憧れていた『お嫁さん』の形になっている。 想像していたよりも遥かに美しく、 立派なドレスを纏っていた。 メイクを施された後も、 鏡の前から離れられずに入れば、ノックが響く。] (70) 2023/09/01(Fri) 1:47:00 |
【人】 田臥 志麻どうぞ。 [威優かと思い、促して扉の先を見てみれば。 威優と共に、父の姿がそこにあった。 みるみる志麻の目が見開かれていく。] ……と、うさん……、? え、なんで。 ……えっ、…… [二人だけと聞いていたからその姿を見たときは、 本当に驚いて、咄嗟に声も出なくて。 説明を求めるために父と現れた威優を見つめる。] (71) 2023/09/01(Fri) 1:47:17 |
【人】 田臥 志麻[彼の前では穏やかな父がにこやかに笑顔を浮かべて、 綺麗だね、と感極まったように呟くから。] そ、それは威優の言うやつだろ……!? [嬉しいけど、…… 嬉しいけど! 混乱と照れ臭さと嬉しさでつい親子の素が出てしまう。 だって二人きりだって!言ったから! その台詞は威優から先に聞きたかった。 その父から母と弟も一緒に来ていることを伝えられ、 更に困惑を広げながらも、 最終的には威優の方へと眉尻を下げて。] こ、こんなの……聞いてない……、 [と、気恥ずかしさを浮かべながらも。 複雑な表情を浮かべて、花嫁とは思えぬ動揺を見せた。**] (72) 2023/09/01(Fri) 1:48:17 |
【人】 田臥 志麻[エステもマッサージも綺麗になる為の準備。 一人で受けるのではなく、二人で施術を受けたから、 気分も楽ですっかり気持ちも解れていた。 その時も威優は全くいつも通りに話していたのに 裏でこんな下準備をしていたとは驚かされた。 「連れてきてくれてありがとう、威優くん」 なんて、嬉しそうに感謝を伝える父。 父の傍らに立った威優が、 期待していた言葉を口にする。 (しかもさらっと奥さんって言った!)] …………〜〜〜〜〜ッ、 あー、もうっ……! 二人共ありがとっ! [ヴェールを下ろした後では 乱雑に髪を掻き乱すこともできない。 頬に触れるのもメイクを崩してしまいそうで。 二人の視線から逸らすみたいに顎を逸らして 上を向く天に投げかけるみたいにお礼を告げた。 そうしないと瞳がまた潤んでしまいそうだったから。] (77) 2023/09/01(Fri) 21:35:51 |
【人】 田臥 志麻[バージンロードの意味は威優の口から語られるまで 調べたことはなくて、初耳だった。 ドラマや映画ではそのシーンを何度も見てきたけど。 父親役の人と腕を組んで、 新婦が新郎の元まで送り届けられる意味。 それは、家族のバトンを受け渡す意味があるのだろう。 ────家族から新しい家族へ。 そのバトンをちゃんと受け取りたいと 考えてくれた威優と、役目を担ってくれる父に。 堪えていた涙腺がまた瓦解しそうになってしまって。 唇を噛み締めて二人の話を聞き、 彼らの言葉が途切れた後、 自身の返事を待つように少し沈黙が、落ちた。] (78) 2023/09/01(Fri) 21:36:35 |
【人】 田臥 志麻[今日は笑っていたいから。 深く、息を吐きだして感情が落ち着くのを待つ。 それから、二人を見て。] ……威優のところまで、 父さんが、エスコートしてくれる? [頷く代わりに目尻に皺を作ってみせれば、 やっぱり、少しだけメイクが崩れてしまった。] (79) 2023/09/01(Fri) 21:36:51 |
【人】 田臥 志麻母さんも、莉久も呼んで。 ……うちの家族が来るなら、 威優のお義母さんも呼べばよかったな。 [最後は威優にそう言って笑った。 赤く燃えていた空が夜空に変わっていく。 青と緑に囲まれた中で白いチャペルが一層映える。 立ち上がると威優と拘った トレーンの刺繍が綺麗に床に広がった。*] (80) 2023/09/01(Fri) 21:37:23 |
【人】 田臥 志麻[二人だけの挙式にしたいと言ったのは、自身の方。 威優もその意図を汲み取ってくれていた。 人に見られるのが恥ずかしいというところから 始まった挙式への準備。 二人で作り上げてきた計画は ウェディングドレスの素材から式場、 どれもこれも拘って選んできたものだった。 威優が「可愛い」と言ってくれたことは、 己を卑下していた自己肯定にも繋がる。 当初からの計画が二人で、だっただけに。 家族には見せることはないと思っていたけれど。 いざ目の前に家族が現れたなら、 見て居て欲しいという想いに繋がっていく。 苦労や心配をかけてきた自身が、 自ら選んで番となった人と手を取り合っていく瞬間を。 小さい頃からの夢であった 「およめさん」になった姿を──。] (86) 2023/09/01(Fri) 23:16:10 |
【人】 田臥 志麻わかった。 威優とオレが一番気に入ったやつを送ろう。 [長男の門出の涙につられて涙腺が緩んだ 父の背中を撫でて微笑む。 威優と父を送り出したら、 母と莉久が入れ替わりでやってきた。 メイクを直してもらいつつ鏡越しに莉久と視線が合えば、 父と全く同じセリフを口にしたので また笑ってフェイスパウダーがよれそうになった。 フラワーボーイなんて出来るのか?と揶揄えば、 威優から聞いたのだろう役目を誇らしげに語る。 「威優さんの元に辿り着くまでしっかり護るよ」 庇護の対象だった弟からそんな言葉が出てくるのが感慨深い。] (87) 2023/09/01(Fri) 23:16:51 |
【人】 田臥 志麻[元の唇がほんのりと色づくくらいのピンクのリップ。 最後に仕上げてもらえば、鏡に映るのは最高の自分。 祭壇で待つ彼の隣に立っても恥じない姿で、 胸を張っていられるようになりたい。 母が目の前に立ち、ヴェールを両手に取った。 「志麻、夢が叶って良かったわね」 レース越しに見える母が口にしたその言葉に、 覚えていたのかと僅かに目を見開いた。] ……もう、メイクを直したばかりなのに。 [外で待つ威優と父を、 更に少し、待たせることになってしまっただろう。] (88) 2023/09/01(Fri) 23:17:41 |
【人】 田臥 志麻[荘厳な音と共に扉が開けば、 真っ直ぐ続いていく真っ赤なアイルランナー。 莉久が散らしていく「清め」の花が絨毯に落ちる。 隣に立つ父と目線を合わせ、 腕を添えて、一歩、一歩、進んでいく。 人生を歩んできたみたいに。 十字架に近づけば母の姿が見える。 また、震えそうになる唇を引き結んだ。 愛している家族に見守られながら、 愛しい番の元へ、導かれて。 祭壇の前、白いタキシードに身を包む威優と目が合う。] (89) 2023/09/01(Fri) 23:17:53 |
【人】 田臥 志麻[自身の人生の数だけの歩幅を歩む。 十九歩、二十歩、 ──まだ藻掻いていた時期。 二十一歩、二十ニ歩、──妥協を知った。 二十三歩、 ──全てを諦めたようとした。 威優が少し立ち位置を変える。 そして──、] (93) 2023/09/02(Sat) 1:53:51 |
【人】 田臥 志麻[少しだけ足を止めて、目を見合わせて微笑む。 レースの手袋に包まれた手を彼の腕に添えて。 二十五歩、二十六歩、その先も。 これからの人生のように、威優と並んで歩いて。 たった三人しかいない参列者。 静謐な空気の中で、儀式が行われていく。 威優が誓いを立てれば、自身の名前を呼ばれた。] "Will you love him, comfort, hornor and keep him so long as you both shall live?" (94) 2023/09/02(Sat) 1:55:10 |
【人】 田臥 志麻[同じ方向を向いて、同じ言葉を並べて。 神に誓いを立てる。 十字架の奥に海から顔を出す月が見える。 いつかの日にも見た丸い形をした満月が 太陽の代わりに、細やかな明るさを齎していく。 神父の言葉が終わり、彼と向かい合う。 威優の手がヴェールを持ち上げれば、 倣って視線を上げ、愛おしい翠緑の瞳を見つめた。 少し、潤んでいただろうか。 気づきはしたけれど、自身も同じくらい。 それ以上に、視界が滲んでいたから笑うだけに留める。] (97) 2023/09/02(Sat) 21:12:48 |
【人】 田臥 志麻オレも、──愛してる。 [何度もつっかえた言葉を、 今はもう澱みなく伝えられる。 距離が狭まっていくのに、そっと瞼を下ろして。 誓いのキスを交わす。] (98) 2023/09/02(Sat) 21:13:14 |
【人】 田臥 志麻[月が海から完全に顔を出して、空に浮かぶ頃。 教会を出て、ガーデンを歩く。 夜でも写真が撮れるように照明が点いている。 家族との記念写真を威優に促され、] ……うん、そうだな。 せっかくだし。 [頷いて両親と弟に声をかけた。 三人とも笑顔で喜んでくれた。 ブーケを手にしたままアーチの下に立つと、 傍らに母が、その隣に父が。 そして、自身を挟んで反対側に弟が立つ。 プロのカメラマンが撮ろうとする前に、 莉久がスマホでも撮りたい!と新郎である 威優にお願いしに行ったことには、 こらっ!と兄の顔をして叱った。] (99) 2023/09/02(Sat) 21:14:04 |
【人】 田臥 志麻[少し気恥ずかしい、一生に一度の記念写真。 何枚か納めた後は、家族の代わりに威優が喚ばれる。 スマホを威優から受け取った莉久が、 ちゃっかりカメラマンの横を陣取り、 自身もカメラマン気取りでレンズを構える。 「ほらもっと、威優さんの傍に寄って。 新婚らしく、ほっぺにちゅうとかする? 大丈夫、ここ海外だから!」 ポーズまで指定してくるはしゃぎっぷりに、 呆れながらも、誓いのキスとは違う写真用は 些か嬉しさよりも、照れ臭さのほうが前に立つ。] (100) 2023/09/02(Sat) 21:14:17 |
【人】 田臥 志麻……ごめん、莉久が浮かれてる。 [隣に立つ威優を見上げつつ、 指定通りに隣の距離を詰めながら、 何とも言えない表情を浮かべて眉根を寄せる。 「せっかくだからリングも見せて!」 更にもう一つ、注文がついた。] お前ね……プロの人に任せなさいよ。 [言いながらも注文に答えるように、 左手を胸元に持ち上げながら。*] (101) 2023/09/02(Sat) 21:17:38 |
【人】 田臥 志麻[撮影会は弟の注文のお陰で賑やかになった。 お姫様抱っこは自宅でもされているが、 人前で、しかも家族の前とあっては さすがに照れが勝ってしまう。 けれど、腕の中で暴れたらドレスを汚してしまいそうで、 莉久を睨みつけながら渋々大人しくした一場面もあった。 翌日からは家族は観光に回るという。 ガイドも威優が手配してくれていたらしく それならば、と安心もした。] (105) 2023/09/02(Sat) 22:17:38 |
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