102 【身内RP】泡沫に消えし夢の随に
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[ 音が、聞こえる。
いつかの、詠うようなものではない。
それでも、嗚呼この声は。
]
ユー、ラ、
[ どれだけの悪夢を振り払ったか、もう数など
とうに分からない。
じわじわと身体を蝕む黒い痣に虫唾が走り、
言うことを聞かない己が左手を付け根から切り落とし。
ジリジリと鳴る嫌な音の海の中、
絹糸よりも細いあの声に向かって
バランスの取りづらくなった身体をゆらりと起こす。 ]
最期くらい、逢いたい人に逢いたいと
願うくらい、バチはあたらねぇ、よな
**
[ こんなことなら、恐れずに
もっとはっきりと伝えるべきだったのに。
そう、思っても意識を保つのさえやっとで。
あいたかった、と言葉にしたら
その音が形になりはしないか、などと
じりじりと迫る悪夢を横目に
夢想をしていた時。
瞳に映ったのは夢幻か、それとも―――――。 ]
――――― また、あえた。
[ どちらだったとしても、
掠れた音で、喜びを声にするのです。
]*
|
劇は大きなトラブルも起こらず 終幕を迎えることとなります。
テオドールが演じ歌った役は ただの街の子ども、ぱっとしないものでしたが 本人は満足そうに、カーテンコールでも 笑顔を振りまいておりました。
長い創世祭も、終わりへと向かっています。 空には星が瞬き、月が人々を見下ろします。
広場では火が灯っているでしょうか。 惜しむように未だ騒がしい様子なら 衣装を着替えて劇団員に声をかけ テオドールは再び、祭りの中へと 飛び出していくのでございました。** (17) 2021/10/23(Sat) 20:16:40 |
[ たしかに、きこえる。
今度ははっきり、詠うような、あの声。
遠ざかりかけた意識を、繋いでくれる。
聞こえた言葉に、己の声と精一杯の笑みを重ねよう。 ]
─── ああ、ユーラ。
また、あえた。
[ 気を抜けば崩れ落ちそうな足を叱咤し、
肉片と血錆がこびりついた剣を情けなくも
杖がわりに地面に刺しては身体を支える。
視界は赤に染まっていて、愛しい姿が
どのように変わっているのかはわからない。
けれど目を閉じれば、ふわふわと風に舞う柔らかな髪と
希少な宝石よりも煌めく葡萄色の瞳が
変わらずありありと思い描けるのだから。 ]
そこの、綺麗な、お姉さん、
そんなとこに立ったまま、迷子ですか……
悪いオトコに、ナンパされますよ……
[ いつかの台詞をなぞって。
ふふ、と微笑って手を伸ばす。
夢なのか、現なのか
ぼんやりと虚なその境界線を探るように
指先が、その人の熱を求めた。
触れられるだろうか。
間に合ったのだろうか。 ]
急いで駆けつける、て言うたのに、
遅なって、ごめんなぁ。
**
[ 彼の声を聞き間違えるはずはなくて。
近寄りたくて、一歩踏み出せば
ぐらりと視界が歪んで、血を吐き。
身体が鉛のように重く感じます。
髪は血と土に汚れて。
足には痣も見える、
決して綺麗と言えない姿なのに。 ]
――――― あのとき みたい……
[
いつかの台詞すらもう、なぞれない。
それでも、手を伸ばされれば
ふらり、と倒れ込むように。
二人の影が、重なるのです。
あたたかさが、伝わってきます。 ]
おそく、ない……です。
すきなひと
に…… あえて
しあわせ……。
[ あの時に言ったことを証明するように
たどたどしく詠えば、少しは傷を癒せたでしょうか。
出血を止めるくらいは……
もう少し、歩けるくらいには……。
そう永くは生きてこなかったけれど。
こんな時に限ってわたくしは
感情のままに、心のうちを声にするのです。 ]**
( 嗚呼、ユーラ。 )
[ 伸ばした手にたしかな温もり。
いつかとは比べ物にならぬほど辿々しい詠。
いつかとは比べ物にならぬほど気持ちの込められた詠。
すう、と視界が晴れた。 ]
─── ユーラ、
[ 間違いなく彼女のおかげ。
その詠で確かに癒された赤の双眸が、
彼女に残された時間がそう多くはないことを
映した。
]
[ 片方だけになった腕でそっと引き寄せれば、
その身を抱きしめることが出来ただろうか。 ]
運命、やもんな?
[ 背を、髪を、頬を、撫でようと手を動かす。
ギリギリのところでさえ、人を気遣って詠う
強く愛しい温もりを。
エルフェリール様のところまで、間に合うか。
彼女が救われるのなら、
生きてくれるのなら、
それが例え彼女の願いだとしても
己の命などどうでもいいと、心から思った。 ]
ユーラ、ユーラ。
聞こえるか、わかるか……?
いい子やから、聞いてくれるか、
創造主様のとこまで、がんばれるか───?
[ 囁いて、答えを待って。 ]
……独りで生きる人生は味気ないもの。
おれ、は、ふたりがいい、けど、な。
─── ほんま、ごめんなぁ、
[ 届くかどうかはわからないけれど。
大切なことは、はっきりと、言葉に乗せた。
それだけで、もう、充分
俺は幸せだと思った。
あとは、彼女が。
ジリジリと鳴り響く、嫌な音に
全て飲み込まれてしまう前に、
最期に願うことは、
愛しい人の幸せでしかなかった。 ]
**
| 始まりの時と同じように 創造主の挨拶が始まります >>30 今度はきちんと広場まで来ていたので その涼やかな声を聞くことが出来ました。 空から薄緑の光が舞い落ちる様子は まるで未来を祝福しているかのように見え。 周囲に混じって歓声を上げて 創造主の気持ちへと応えました。 (38) 2021/10/25(Mon) 12:52:12 |
|
長い創世祭も終わり、また新しい朝がやってきます。 後片付けを済ませたなら、出立のときはすぐそこです。
記憶を振り返るように白亜の神殿を眺めます。
「 では、またどこかで! 」
誰に対してか、ぺこりとお辞儀をすれば 団員の中へと紛れていきました。 (39) 2021/10/25(Mon) 12:52:22 |
|
この幸せな夢はいつまで続くのでしょう。 人の生は短く、老いは早く 悪夢が来るよりも先に 命を終えているかも知れません。
けれど、其の人生が輝きに満ちているのなら 怖いものなんてきっとなく。
いつものように満足気に 笑っていることができるでしょうか。** (40) 2021/10/25(Mon) 12:52:34 |
[ 意識が時々飛びそうな、
限界に近い状態でも、気持ちが乗った詠は
確かに効力を発揮したみたいです。
癒せたことを辛うじて確認は出来ましたから
よかった……
と小さく呟きました。 ]
[ 抱きしめられて、彼のぬくもりを感じて
あぁ、優しいな、こんな時まで、
と思うのです。
運命、と聞いてもただ黙ってうなずいて。
もう十分です。
さいごに会えたから。
もう、後悔も何もなくて。
わたくしのことなど打ち捨てて
このままあなただけでも逃げて欲しいと
彼の気遣いを無碍にするようなことだけが
頭の中をめぐっていました。 ]
―――――……。
……ごめんな さい、 もう、……
[ がんばれない、と口にした後。 ]
いきて、おねがい……。
わたくしは……、
もう、いいから
[ 考えていることが同じだと分かってしまっても
わたくしは譲りたくありませんでした。
連れて行ってもらうまでに
二人倒れることになる可能性だって
確かにあって、それを思えば
もう動けない自分よりも…と思うのは。
我儘、でしょうか。 ]
[ 魔族のあなたには耐性が人よりあって。
こんなちからに左右されなかったとしても。
大切な人に想いと願いを伝えられたから。
それだけで満足でした。
意識をどうにか保とうとしつつ
身動きできないわたくしは
あなたの決断に、
身を委ねるしか出来ません。 ]**
私の、
愛
しい……――ストル、
どうか……生きて、繋いで……いって、くれ
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