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人狼物語 三日月国


82 【身内】裏切りと駆け引きのカッサンドラ【R18G】

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【秘】 愛される"天使" ナフ → 飢えた狗 ムルイジ

重い足取りで同期の姿を探す少年の姿がある。

どんな顔をして会えばいいのか分からなくて。
(-6) 2021/07/10(Sat) 11:54:46

【秘】 飢えた狗 ムルイジ → 愛される"天使" ナフ

廊下を、死人のような速度で歩くその姿を見て、眉根が寄る。

途端、凄惨な現場がフラッシュバックして、
近づこうとして鎖に繋ぎ止められる。
あらかじめ今日の鎖の長さを
身動きの自由を制限する長さにされていたのは、
この面会のためかと歯噛みした。

「……ナフ」

掛ける声の色がわからない、そんな声色で呟いた。
(-7) 2021/07/10(Sat) 15:38:49

【秘】 愛される"天使" ナフ → 飢えた狗 ムルイジ

相も変わらず、鎖に繋がれたあなたの姿を見つけて。
ゆっくりと自分から近付いていく。

触れられるほどの距離まで近付いて。
やつれた顔の少年は、笑みを―――浮かべようとして、悲痛の色は消し去れず。
今にも泣き出しそうな顔で、口を開く。

「……ムルイジ。おれ、やっぱり―――家族に、会えないかもしれない」

掠れた声で、翼の生えた天使は ごめんなさい。と続けた。
願ってくれていたのに、と。
(-8) 2021/07/10(Sat) 15:56:08

【秘】 飢えた狗 ムルイジ → 愛される"天使" ナフ

壮絶な叫びを、痛みへの拒絶や忌避を、
目の当たりにしているからこそ。
今のこの空虚な状態のナフに合点がいく。
何もかもに疲れた状態の少年は、
自分と共に堕ちてきた最初の彼とは――まるで違う。

これが一度、救われることを願った者の末路か。

腕を失い、翼に変えられた少年が。
あれだけ、何もかもを犠牲にしてでも
家族に会いたいと言っていた少年が。
泣き出しそうな笑顔を見せて、何もかもを諦める表情に。

奥歯が音を立てて鳴った。
(-10) 2021/07/10(Sat) 16:05:49

【秘】 飢えた狗 ムルイジ → 愛される"天使" ナフ

多分他のやつなら。
自分で選んだやつなら。
己の生き方に納得しているやつらなら。
いつも通りの言葉を掛けられたかもしれない。

この不自由を与えられた少年は、
自分にとっては、まだ年端も行かない15の少年で。

心が。
大きく軋む音がして、全く同じような泣き出しそうな顔で。

「悪ィ……」

繋がれたまま、笑った。情けない、情けない笑顔で。

「同情しすぎて。
 ……簡単な慰めが、出てこねェよ」

それでも希望はある、まだ家族にも会えるかもしれないなんて、
無責任で残酷に前を向かせる大人の言葉が。
……どうしても、どう頑張っても、出てこなかった。

こいつの前では。
こいつだけの前では。俺は、ただの弱かった、
亡くした者を必死に探していた――。
金と運命に振り回されていた、15のガキに戻っちまう……。
(-11) 2021/07/10(Sat) 16:08:03

【秘】 愛される"天使" ナフ → 飢えた狗 ムルイジ

「何が、悪かったんだろう」

自分が、人目のある場所で迂闊なことを言わなければ。
あの時救われることを望まなければ。
そもそも、仕事を受けなければ。

不自由でも、幸せに暮らせていたのだろう。

でも、それを選べなくて。
少年は、間違いを重ねてここまで来た。

「ムルイジ……」

泣きそうな顔を浮かべた、あなたを見て。
そんな表情をさせてしまったことも申し訳なくて。

一度堕ちた時の、あの時の少年だったなら。
従順に船の従業員としての職務を、こなしていたのだろう。

「……この後、客に呼ばれてるんだ。
 部屋に、いるだけでいいって」

負担はない仕事が増えたけれど。
酷く気持ちが悪い。

「……ムルイジや、他の皆は…帰して、もらえるのか?
 おれ、このクルーズが終わった後の事…全然、知らない」
(-13) 2021/07/10(Sat) 16:31:27

【秘】 飢えた狗 ムルイジ → 愛される"天使" ナフ

首を垂れ、長い緑髪を前に落とし
あーーーーーー……と、長い声を出す。

何が悪いかは、俺だって分からない。
急に理不尽に奪われることに折り合いをつけるのは、
15の自分には無理だった。
半身ともいえる相手と引き裂かれたことを、
何か正当に悪かった選択の結果だと思うことも
何も悪くなくてただ運が悪かっただけ思うこととすら
――当時の自分にはできなかった。

両腕に搔き抱く温もりを奪われた自分と。
温もりを搔き抱くための両腕を失ったナフが。
どうしても、どうしても重なる。

「……そうか。
 ………ここから先のことは、オレも分かんねェんだ。
 悪ィ……」

あの時も、15の自分はここから先が見えなくて、
何も信じられなかった。
今も、それと同じような状況だ。

きっとナフはこれから、その客に"天使"と呼ばれる。
自分が"賭け師"と呼ばれてきたのと同じように。
(-14) 2021/07/10(Sat) 16:59:14

【秘】 飢えた狗 ムルイジ → 愛される"天使" ナフ

「……ナフ。
 一個だけ、頼みがあンだよ」

それは、ギャンブラーとしてではなく、
ただ一人の男として、まるで懇願するように願われた言葉だった。
欲しいモノは勝ち取り、必要なものは奪って来た彼が、
たった一つだけ他人に懇願するように願ったもの。

「辛いなら。
 辛いって言って。
 
……泣いてくれねェか

 オレの前でだけでいいから。

 ……オレの代わりに」

愛する者を失ったあの時から。
ずっと泣けなかった自分の代わりに。
泣くことすらできなくなるくらい
運命に翻弄されて汚れちまった自分の代わりに。
まだ子供で、涙を零せるうちに。
今も胸の中で涙をこらえている。餓鬼のオレの代わりに。

誰かが許してくれたら、きっと泣いていた自分の代わりに。

誰かの涙を目の前で見ているくらいしかできないけれど。
それでも、こいつが……"ムルイジ"にならないように。
(-15) 2021/07/10(Sat) 17:01:25

【秘】 愛される"天使" ナフ → 飼い狗 ムルイジ

「…せめて、他の人には早く戻ってほしいと思ったんだけど」

分からないのであれば、しょうがないか。
と、少しばかり落胆した様子を見せる。

尤も、船から降りることで幸せになるかどうか分からない人もいるのだが。
少年は、そこまで深い話を聞いたことがないのだ。

鎖、外れたらいいな。と 見慣れてしまったそれを見て。
心から、そうあればいいと。

(-18) 2021/07/10(Sat) 20:49:24

【秘】 愛される"天使" ナフ → 飼い狗 ムルイジ

「………」


それは、頼みというよりは―――


少年は、辛いことや嫌な事を我慢してきたから。
誰にとも限らず"素直に感情を表に出すことを許してもらえる"と、弱くて。


「……辛い。
 まだ、痛い。変な目で見られるのも、嫌だし 気味の悪い"翼"(コレ)を崇めたりされるのも…」

気持ち悪い、と 貴方にまた近付いて。
姿勢をゆっくり合わせて 胸に、頭を預けるような形になる。

じわり、涙が目尻に溜まって。
ぽろ、ぽろと 言葉と共に、零れていく。
(-19) 2021/07/10(Sat) 20:49:53

【秘】 飼い狗 ムルイジ → 愛される"天使" ナフ

「………」

顔を、寄せる。
相手が手を腕を使えないのならば、
自分も動く範囲で顔だけを寄せて、
お互いの髪を絡ませる距離で、静かに呟く。
一粒、二粒、零してくれるナフの涙は、
年相応のもので……それでも、もっと壮絶な痛みや苦しみ、
離別の悲しみや先の不安さを抱えているはずで。

「……よく我慢したな。
 すげェよ、オマエは……。
 痛かっただろ……辛かったよな。
 これから先、どうなるかもわかんねェのは、
 気が狂いそうなことも、知ってんだ」

それは。
目の前の少年に。
涙を零す少年に向けた言葉。

「……救うことはできねェ。
 助けることも、できねェよ。
 人は、そう簡単に救われるもんじゃねェのも、
 オレは……知ってるからな」
(-21) 2021/07/10(Sat) 21:18:25

【秘】 飼い狗 ムルイジ → 愛される"天使" ナフ

互いの頬を擦りつける。
そこには温度があり、感触がある。
相手がそういう形でしか触れられないのなら、
こうやって触れるのがいい。
対等な勝負に拘る男のなかには、そういう美学がある。

「だから、辛くなったらそのたびに上手に泣けよ。
 ……我慢すんのは、大人になってからでもいい。
 痛ェって口にしたらまずいなら、
 辛ェって口にしたらまずいなら、
 ここにきて全部吐き出していけよ。

 オレは、そういう弱いやつを、
 絶対笑わねェからよ。
 それまで、ここに無敵の"ムルイジ様"としていてやるよ」

負けたことも弱かったこともある男は、
穢れた躰と傷だらけの肌と罅割れた心で囁き。
最後に、こつ、と額同士を付けて、
ニッと、鎖に繋がれたまま笑った。

「……ああ、今の笑顔はノーカンで」
(-22) 2021/07/10(Sat) 21:19:56

【秘】 陶酔トリッパー バーナード → 飼い狗 ムルイジ

「よう!一番最初に景気よく拉致られたっぽいムルイジ!元気にしてるか?一番頑張って抵抗してるヤツお前って聞いたけど本当?」

さて、貴方の部屋はどうなっているだろうか。
一応室内は動けるくらいの鎖の長さで鍵がかかっているなら礼儀正しく3回ノックをして待つし、鍵がかかってないならノックの後普通に勢いよく乗り込んでしまう。

色々【研修】を見ていたなら、2日前に割とえらい目に遭ってた記憶の男が、元気そうに乱入してくるだろう。
(-26) 2021/07/11(Sun) 1:29:13

【秘】 飼い狗 ムルイジ → 陶酔トリッパー バーナード

鉄格子で囲まれている以外は普通の内装の部屋を訪れた男に
壁に鎖で繋がれた滑稽な男は怪訝な顔をする。

――ああ、こいつは、地上でも見た。
そしてモニタ越しにも、何をされたかを見ている。
その上で。

「……お前、よくその感じで来れたな。
 他人の事言えるほど、こっちも気落ちしてねェが」

呆れ半分共学半分といったところで、
相手を上から下まで眺めた。
(-30) 2021/07/11(Sun) 2:39:00

【独】 飼い狗 ムルイジ

4
(-41) 2021/07/11(Sun) 3:06:32

【独】 飼い狗 ムルイジ

「――終わっ、た」

4。
(-44) 2021/07/11(Sun) 3:08:00

【独】 飼い狗 ムルイジ

「最高にアガる賭け場で会心の手を上がって、
 観客に喝采を浴びてきたギャンブラーのオレが……
 12年間、飲んでたのが……
ソフトドリンク
……」

2ダビーはもう四捨五入したら0なんだよ。
(-51) 2021/07/11(Sun) 3:12:48

【独】 飼い狗 ムルイジ

「(気ィ遣うな!大勝した後にバーで一人高い麦茶飲んでるギャンブラー嫌だろ……!)」
(-56) 2021/07/11(Sun) 3:30:38

【秘】 陶酔トリッパー バーナード → 飼い狗 ムルイジ

「うわすげぇ本当に鎖で繋がれてやがるすげぇ面白い光景」

気落ちしなさすぎる奴は、真っ先にその光景がシュールで指をさして笑った。如何せん部屋が明らかに監獄だったら逆に面白かったのだが、半端なので「ラブホみてぇ」とか最低な感想を述べつつのそのそ寄って来る。

「あーやっぱそう思う?色々弄られたせいか自分で感情がぶっ飛んでよくわかんねぇの。さておき、ああ言うのって壊れるまでが楽しいのであって、壊した後は価値がなくなる。しっかり再利用の方法考えられてたらしいので、すぐそれやって叩き起こされたわ」

「で。どうすんのお前。一緒に居た奴らは順応性が高すぎて普通に生きてるけど、お前だけ鎖じゃらじゃらじゃん。薄々察してると思うけど、お前絶対“気に入られてる”だろうから簡単には逃げられねぇだろうし。“将来の目標”とかあんの?」

この状況でその言葉ほど皮肉めいた物も無いし、実際半分は皮肉だが、残り半分は真面目な顔で尋ねている。
(-65) 2021/07/11(Sun) 10:00:53

【秘】 飼い狗 ムルイジ → 陶酔トリッパー バーナード

「………。
 すげェな。全人類テメェだったら、
 戦争とかなくなンじゃねェのか……」

そこそここの世界に居ると、たまに居る。
二つあるものの一つが亡くなったとき、
失った一つを想うのではなく、
もう一個あるからまあよしと考えるやつが。

「鎖で繋がれてるやつに将来のこと聞くの、
 かなりブッとんでんな。鎖で繋いだ奴に聞けよ。
 まァ。そうだな……。
 逆転の目がありそうなら、そーするってだけだ。
 逆に"気に入られ"てんならやりようもあるって話だ」

そのためにベットを釣り上げてきたというのもある。
賭け台に十分な金子を載せることが出来るようになれば、
ここに居る理由ごと買い取ることだってできる。

「っていうのを、テメェに漏らしたんで、
 多少計画が遅れるかもしんねェけどな。
 それとも何か、テメェがランプから出てきた魔人様で、
 カワイソウなオレの願いを聞き届けて外に連れてってくれんのか?」

相手がこの調子で従業員にオレの動向を探れと言われた、
情で絆すスパイではないとは言い切れないので笑った。
別にそれも関係ないと、豪胆に。無思慮に。
(-71) 2021/07/11(Sun) 12:17:03

【秘】 飼い狗 ムルイジ → 凶つ"嫉妬"の悪狼 サダル

「よォ」

――こんなところで、奇遇じゃねェか。

信じられないことに両手同士を鎖で繋がれた状態で、
あなたの入れられた部屋に『男が訪ねてくる』。

幾分薄汚れた顔で、その薄汚れの顔にした張本人に、
軽薄な笑みを浮かべながら、無思慮に、無遠慮に。
今度は鍵の掛かってない部屋に侵入して、笑う。

「随分とまァ、大きく張ったじゃねェか。
 ……お陰で、こんなところで逢えることになって、
 心から嬉しいぜオレは。
 どうだよ、気分サイコーだろ。
 独り占めするには、勿体ないくらいによ」

皮肉気に言うが、幾分相手への当て擦りは少ない。
同じ立場になった以上、どうしようもない現実が、
否応なしに互いの周囲を取り囲んでいるから。
(-74) 2021/07/11(Sun) 13:48:16

【秘】 凶つ"嫉妬"の悪狼 サダル → 飼い狗 ムルイジ

来た。

「……、やあ」

ほんの僅かに反応が遅れたものの澄ました顔で言葉を返す。あれだけ汚してやったのに、この船で会った頃と変わりない調子で。
やっぱりこの男は心が折れてなんかいなかった。
ダブルアップの件は、私の負けだ。

「……まあね。欲しいものを手に入れるにはあれくらい賭けなきゃいけなかったから。反吐が出るくらい"サイコー"だった。
…………それで、何しに来たの。って言っても。私と君がやる事なんて、決まっているだろうけどさ」

凪いだ水面のような、静かな調子で言葉を紡ぐ。
かつて見せた剥き出しの怒りや嫉妬も見当たらない。
……今のところは。
(-75) 2021/07/11(Sun) 14:08:31

【秘】 飼い狗 ムルイジ → 凶つ"嫉妬"の悪狼 サダル

部屋のあちこちに、これ見よがしにカメラがある。
ここも自分の部屋と同じように、プライバシーなどない。
環境としちゃ、どっちもどっちだなと口の端を持ち上げた。

「そうかよ。そりゃ重畳。
 熱狂も怒号も侮蔑も嘲笑もありゃ、
 勝負師冥利に尽きるってもんだな。

何をしに来たかと問われ、
やることは一つと言われると鼻で嗤い。

「……だよなァ。
 狭い密室に、互いを知らないわけじゃねェ男女が二人、
 ヤるこた、いつだって一つだな」

適当に椅子を取って、座る。
ようやく、目線が合う位置まで、辿り着けた。

「……約束を果たしに来た。ほら客が席に座ったぜ。
 何でキメるよ……ディーラーさんよ」

オレの、こいつとの賭けは。
――まだ終わっていない。
(-76) 2021/07/11(Sun) 14:24:45

【秘】 凶つ"嫉妬"の悪狼 サダル → 飼い狗 ムルイジ

「……」

一歩分、さらに距離を詰める。手を伸ばせば触れる距離。
近づいてきた緑色が、かすかに揺れる。

「……せっかち。
女を急かす男は嫌われちゃうよ。君は気にしないかもしれないけど」

男に呪いを掛けられた。忘れる筈が無い。
自分と男の勝負は、まだ続いている。

──でも、その前に聞きたいことがあった。

「何で勝負するかは決めてる。でも……でもさ。
君、"私を見て"勝負してくれるの?君が救いたかった女と重ねたままじゃないの?」

どろり、胸の中に重たいものが渦巻いて。

「私は今まで一度も、君をどんなギャンブラーとも重ねて見てなんか、いないのに。
私は君しか、見ていないのに」
(-77) 2021/07/11(Sun) 14:46:02

【秘】 飼い狗 ムルイジ → 凶つ"嫉妬"の悪狼 サダル

言っとけ。じきに強請るようになると言いかけて、
微妙な、本当に些細な言葉尻の変化に眉根が寄った。

「………」

相当に。
自分の打ち込んだ楔が効いたとみた。
……こんな女だったか……? 
いや……こんな女だったんだろうな。
だからオレは――。

「卓囲んで目の前の相手以外の別のモン見てる暇あるかよ。
 少なくともテメェと向き合ったとき、
 オレにそんな余裕は一匙もねェ。
 ディーラーを前にしたギャンブラーはそういうもんだ。

 ああ、ただ……そうじゃねェとき。
 賭け台に向き合ってないときまで、
 全ての時間の視線や思考を釘付けにしたきゃ……。
 お前しか見えねェようにしたきゃ」

舞台の上で、お前がやったように――。
(-79) 2021/07/11(Sun) 15:46:07

【秘】 "賭け師" ムルイジ → 凶つ"嫉妬"の悪狼 サダル

「――賭け、勝ち、奪うしかねェだろ。
 オレ達は、そういう生き物なんだから。
 ただ、正式に、言葉にしてほしいなら、
 ちゃんと言ってやる」

軽薄な笑みが、スと消える。
それは恋人には絶対向けない表情で、
恋人に向けるよりも強く、濃い感情。


一人のギャンブラーであり続けた男が、
その人生全てをテーブルの上に乗せる、
熱病に似た灼熱の感情と妄執の"告白"。

「――サダル。
 お前と勝負がしたい」


一人の賭け師と、賭け師として。
(-80) 2021/07/11(Sun) 15:47:43

【秘】 凶つ"嫉妬"の悪狼 サダル → "賭け師" ムルイジ

「……ッ」

ぞくりと肌が粟立つ。

こちらを食い殺してしまいそうな、正真正銘掛け値なしの鋭い感情。
煌々と燃える炎を点けられたように体の奥が熱くなる。

──嗚呼、これだ。私はこれがたまらなく好きなんだ。

「私に昔燃えるような勝負の心地よさを教えたのは君。
私に誰より一番重たく狂おしいほどの妬みを抱かせ続けたのも君。
私をとっておきの話で傷つけたのだって勿論君。

……ずるい。ずるいよね。
私、ずっとずぅっと、君にめちゃくちゃにされてきたんだよ?」

気付いてしまった。
嫉妬の炎の底にある欲望を。
騙し傷つけ、自分と同じ場所に堕とすだけじゃ全然足りない。飢えて飢えて、決して満たされるなんて事がない。

欲しい。
欲しい。
君の全てが──
たまらなく欲しい!


(-83) 2021/07/11(Sun) 17:00:12

【秘】 "賭け師" サダル → "賭け師" ムルイジ

「──やってやろうじゃないか。巻き上げるのは得意だもの」

燃え広がる炎に身を委ねる。
もう我慢しなくていい。仮面を被る事なんてしない。

自分の生きる為の薪であった、自分の業とも言うべき"嫉妬"を剥き出しにして。
恋なんて生温いと思わせるほどの炎を燃やし。
自分の全てを、相手に叩きつける。


身も心も焼き尽くすような激情に身を委ねながら、勝負師は隠し持っていた"ゲーム"を用意する。

「──ムルイジ。これが正真正銘、最後の勝負だ。
勝ったら相手の全てを貰う。分かりやすいオールイン。

用意したゲームはロシアンルーレット。
実弾を込めたその銃で──私を、撃てる?」


指先一つで相手の命を攫える鉄の塊。
噛み付くように睨め付けて、賭け師はそれを差し出した。

文字通り、命を賭けてやろうじゃないか。
(-84) 2021/07/11(Sun) 17:02:49

【秘】 "賭け師" ムルイジ → "賭け師" サダル

余りにも温度の高すぎる焔に触れると、
人は肌に冷たさを覚えるという。

このディーラーを前にしてオレが覚えていた、
絶対零度の透徹した思考と理論はやはり、
その奥に潜む情念の緑色の炎の裏返しだった。
皮膚の表面を炙られるような緊張感に、
己の中の賭け師としての血が騒ぐ。

差し出された鉄の塊。
引き金を引けば弾が命を奪うそれを見て。

――ああ。成程確かに。
これなら、どんな結果が出ても、
二度と忘れることはできないだろうな
と思った。

このディーラーの。
この賭け師の。
この女の執着と執念を、鉄の温度で感じた。

「………」

――命を。――間違いなく、乗せてきやがった。
それは、自身がめちゃくちゃにされてきた
可愛い女の稚気のように。意趣返しのように。
オレ自身を――オレの心を、めちゃくちゃにするために。
(-85) 2021/07/11(Sun) 17:47:51

【秘】 "賭け師" ムルイジ → "賭け師" サダル

必要な情報は与えられない。
必要な幸運に縋りつくことも許されない。
選ぶのは自分で、それを選ばせるのが目の前の"賭け師"だ。

選択肢は山ほどある。

――弾が込められているのか。
 ――引き金を引いたとき銃の挙動は。
  ――撃った後に起こることは何だ。
   ――これ自体が罠の可能性もある。
    ――イカサマが含まれているか。
     ――この"賭けの真意"は何だ。

――真の、勝利条件とは。

――どこに向けて。何を撃つかが――オレの手の中にある。

ニアの言葉が脳裏をよぎる。
『……だから、次からは賭ける前から。
 それがギャンブルかどうか、よぉ〜く確かめるっすよ』
分かってる。
今度はしくじらない。
だけどな……ニア。

本当に勝ち取るためには、
先に賭け金をテーブルに置かなきゃいけねェんだ。
(-86) 2021/07/11(Sun) 17:49:05