「俺がいるんだから無礼講中くらいいても不思議じゃないな！」

割と現実的な数字を言ってきたので、
マイノリティの自覚はきちんとあったらしい。

「それそもそも相手も改造人間連れてこないとだから、シェルタン二人じゃないと高難易度すぎないか？俺合わせられる気はするけど本家じゃない上に、多分改造の方向性が違うんだよな……」

真面目に検討している。でも　それ　高度だよ。

「んー…サービスされたくなったというよりは、これが『サービスって思うようになった』瞬間、『M向けにSをするの楽しくないな』って気づいた感じ？


うん、そう思う時点でシェルタン。俺のお墨付きあげる。はなまる」

「あっはっは。それは君は単純に犯罪を外でやっちまったせいだな！いっそ看守に就職して、こっそり「改造していい？」って同意を求めて同じように好き放題してみたらどうだい？

話題がついにおしまいしかなくなってきた。

「流石に改造欲がぶつかるとは思ってないよ、万一ぶつかったらそれはすごく嬉しいけど。すごく。
　妄想でならこっちだって好きにされて構わないし……聞いてみたくない？相手が自分をどうしたいと思ってるのかってさ。あ、ラサルハグはどう？仮に俺の事好きに出来るとしたらどうしたい？」

検討を考え出してたので、ちゃっかり聞き出そうとしている。どう？ではないのよ。

「成程……？誰かの為ではなく自分の為でありたいとか、そういう事？


　ラサルハグ印のお墨付きはなまる貰っちゃったな。わーい？……そこまで言うならペット探しとかしてみようかな？」

「あれでも見つからない様にしてたつもりなんだけれどね、一度割れると難しいね。……看守になって好きにする発想は無かったな。検討するのもありかも……

『処刑』後から一晩明け、後でログを見れば都合のいいタイミングになる頃の時間。
君の元に声を掛けてくる囚人が一人。

「すみません、エルナト様。少しお時間宜しいでしょうか」

「あら。あなたは……シェルタン。どうかしましたか？」

看守に用があるなら自分より他の者に声を掛ける方がいいのでは、と思うが。一体自分に何のようだろうか。
もっとも、囚人には塩対応とはいえ声をかけてもらえる分には大歓迎だが。

そこまで邪険に扱われなかったので一先ずは安心。

「思えばあまり話す事がなかったと思いまして。看守様方へこう……熱烈な視線を送っている事しか知らないなと。
　……どうでしょう？もし話にお付き合いいただけるならば、それなりの報酬もお渡ししようと考えていますが」

言いながら端末を操作し、とある写真を貴方に見せる。それは何と──

『処刑』後から一晩明け、後でログを見れば都合のいいタイミングになる頃の時間。
君の元に声を掛けてくる囚人が一人。君を処刑台に送り、最期に言葉を根付かせた囚人が。

「……少し、時間大丈夫かな。」

もしも君が拒否するならば、それ以上追う事はしないつもりだが。果たして。

「はい、シェルタン様。時間大丈夫です。」

少女はあなたの返事に素直に応じる。

少女は死に間際の記憶は、直接はない。だからあなたの事を拒否しない。まだ素直だ。完全に無いわけではないのだろうけど。
その証拠に、彼女の処刑後、蘇生後には彼女の少し落ち込んだ様子も見られたはずだ。『悪夢を見た』などと言い。

「そっか。なら、少し話でもしない？」

君が了承するのであれば、適当な休憩室を借り。
ココアか何かを二つ分注文して、片方を君に渡す。

落ち込んだ様子は知っていた。『悪夢を見た』と言っていた事までは、果たして聞いていただろうか。
だが、あの時の様に手を伸ばしたりもしなければ、拒否されることもない。感情を隠す程器用でない事は知っているから、"今は"覚えていないか、恨んでいないのだと思った。

「あれからどう？調子は戻った？」

確かに、今までの自分は囚人に興味を向けてこなかった。

「そんな、お話ぐらいで報酬だなんて……　はっ、」

断ろうとしたが、見せられた写真に飛びつく。かと思えば次の瞬間さっと画面から目をそらし



小声で何やらぶつぶつ言い始めた。
放っておいて話を進めてくれて大丈夫です。

「でしょう？ご自身の魅力を非常によく分かっていらっしゃる、とても良い写真ですよね。」

貴方が写真にしっかりと食い付いたのを見て、にっこり。


「エルナト様は元囚人との事でしたが、何故そんなにも看守様方にご熱心なのかと思いまして。囚人時代に良いきっかけでもありました？」

「はい、話しましょう。」
素直に休憩室へと応じる。隠す感情もない。
元より話すのが楽しいと思ってきた頃である。警戒心などは見られず、彼女にとってあなたは良くしてくれた人の一人だ。

「調子、戻りました。はい、あれからどうです。」
実際あれから気分を戻してはいる。パフェを食べたり楽器で遊んだりお話したりしたのだ。

「ええと、でも身体は動かせたので、処刑は楽しかったです。」
あなたが気にしてないかななんてちょっと考えたりまでして彼女なりに気を遣った。

「……。」

調子が戻ったのはいいとして。楽しかった、とまで言われて瞬きを数度。……気を遣っている心算なのだろうか。
罪悪感という訳では無いが（それを感じる程の精神ならば、そもそも本心を隠し近付いてなどいない訳で）少々拍子抜けした様に。

「俺も楽しかったよ。
　……いや、元より。本当は君を楽しませる為ではなく、俺が楽しむ為に。君が『処刑』に向かう様に提案した。」