人狼物語 三日月国


167 【R18G】海辺のフチラータ【身内】

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視点:


【秘】 墓場鳥 ビアンカ → エースオブ―― ヴィオレッタ




「だあって、現実的に考えたらそれしかないでしょ?
 うちの会社・・・・・は国外の伝手が弱いからさあ」

濡れた唇の前で匙を無作法に揺らしながら、非現実的な話を語る。

籠の鳥が空を望むのは、道理に合わないことだ。
誰しもが持っているありきたりの現実すらも
決して叶わない夢になる。

たとえこの食卓がどれほど和やかで温かくとも、
女たちが生きているのは、そういう場所だった。


「……お金は平気。 って、言いたいトコだけど、……
 ………。
 
 ……………ガキひとり、
大学にいれるのって、いくらかかるか、ってわかる?



ああ、これは非現実的だ。
叶うはずのない話を、彼女はしたいのだ。

[2/2]
(-376) 2022/08/23(Tue) 4:14:06

【秘】 墓場鳥 ビアンカ → 家族愛 サルヴァトーレ


「ヤ」

一言だけ、微笑って。
赤い舌が、悪戯気にまた揺れて。

「ちゃんと送りだして、カタギに戻してやらないと気持ち悪いったら、ないでしょう」

ビアンカは、寂しい、なんてめったに言わなかった。
あなたが口にするならば、それを慰めるように抱擁するし。
――商売中は、寂しい、会いたかった、と何度も言ったけれど。

本当の意味での寂しさを、口に出すことはなかった。

それが多分、彼女がここで生きていくために必要なことだったのだ。

↓[1/2]
(-377) 2022/08/23(Tue) 4:23:09

【秘】 墓場鳥 ビアンカ → 家族愛 サルヴァトーレ



「そうして。
 ……ん、……うん。 まあまあ楽しかったよ」

靴音が止まる。
彼女は微笑う。

楽しい時間は、早く過ぎる。
たとえそれがまぼろしでも、それを確かめるすべなどない。
――だから、やっぱり。ビアンカは、そのくだらないまぼろしが、



「はあい、よろしく。 ──……愛してまあす」

                     
わりと。自分自身ほどには、きらいじゃなかった。

わざとらしくそう言って、手を振った。
――あなたが去るまでは、そうしている。ここは、店の前だから。

彼女は娼婦だ。
望まなくても、苦しくても、寂しくても辛くても──……そう生きてきたことを否定できるほど、器用な女ではなかった。
[2/2]
(-378) 2022/08/23(Tue) 4:23:51

【秘】 花で語るは ソニー → 墓場鳥 ビアンカ

まだ、朝も明けたばかりの早い時間のうちだった。
花屋に顔を出して、草木の準備をしながら電話を取る。内容は、娼館からの伝達だった。
ソニーが努めているのは何も知らない表の店ではなく、裏稼業のものとのやりとりもある店だ。
資金洗浄の窓口であったり、連絡役との伝達だったり。仕事に事欠く立場ではない。
だから直接組織の人間から店に対して連絡が来るのだって、不思議な話ではなかった。

「……カテナ? なんでこんな時間にウチに……」

電話先の女性の声は、まくし立てるような速さで喋る。焦っているようだった。
従業員の一人が、不穏当な話を小耳に挟んだということ。
まだ、組織の方との橋渡しとして顔役を請け負っている女性と連絡が取れていないこと。
不安を掻き立てるような噂の実際が、確認出来ていないということ。
焦燥のせいか脈絡もなく前後してまとまらない話を、頭の中で整理して、
息を、呑んだ。

宥める言葉もそこそこに電話を切り、店主に短く事情を説明して店を出る。
通報とどれだけ前後したのやら。いずれにせよ朝の街はまだ、呑気な風景を広げているだけ。
ひょっとしたらこの街の中で何人かが消えたということも、耳にしてはいるのかもしれないけれど。
死んだマフィアの人間のことなんて、市井は気にしてやくれなかった。

花の積まれていない配達車を走らせ、目撃情報を精査して。
その間に、通報された下半身の話も耳に入り、車が通ったのだろう道筋を精査する。
ひとりきりで探しているのでよかった。みっともない顔を誰かに見せずに済んだから。
最終的に車を走らせた先は街の漁場、何度か訪れていた埠頭のすぐ傍。
おそらくは、きっと。"使いで"のない上半身は、下半身よりひどい状態なんだろう。
探し出してやっと対面した頃には、元の形を想像するのも難しいのかもしれない。
それでも、ジャケットで包んで、震える手で、持ち帰った。
……誰にも見せず、荼毘に伏そうかと。そう、わずかに頭をよぎった。
(-423) 2022/08/23(Tue) 18:03:02

【秘】 花で語るは ソニー → 墓場鳥 ビアンカ

/*
お疲れ様です。諸々連絡が遅れてしまい申し訳ありません。
上半身についてなのですが、ひとまず提示のあった漁場で発見することにしました。
あともう一往復で終わるとは思うのですが並行して確認したく、

・上半身はどんな状態でしょうか(これはロールで返答いただいても構いません)
・他の方々に見せず、こちらで処分することは可能でしょうか
 (想定される今後の話もあると思いますので、誰かに渡す予定があれば従いますし、
  ふつうにクリスティーナのところに持ち帰るのでも構いません)

手が空いたときにでもご返答いただければ幸いです。
(-425) 2022/08/23(Tue) 18:06:30

【秘】 墓場鳥 ビアンカ → 花で語るは ソニー

いつも海辺を通るたびに耳にする海鳥の声が、空々しく埠頭に響く。

港に身を寄せ合うようにして停泊する小型の漁船の一艘。
その舟艇に引っかかるように、彼女だったものは漂っていた。
いつも外出する時は結っていたはずの髪はばらばらに解けて、波にさらわれた海藻のように髪の毛だけが水面に浮いている。

朝早く動く漁師たちが騒いでいないところを見れば、まだ放り込まれてそれほど時間もたっていないのだろう。
絶望の中に希望を見つけることにどれほどの意味があるかは分からないが、
幸い、死体の状態は水死体としてはそれほどひどいものではなかった。

衣類はない。両手首はダクトテープで何重にも締め上げられ、いつも気を使っていたネイルは根本から剥がれ落ちていた。
全身の肌は、悍ましい程に白い。そこかしこに痣や煙草を押し付けたような痕があり、右腕はあらぬ方向に曲がっている。
腹部から電動の工具かなにかで荒々しく寸断され、血や内臓はほとんどが流れ落ちてしまったようだ。

その顔だけが、まるで武装するかのように施された耐水性のメイクが意地をはるように残る。
歯のいくつかが折れ、左頬が醜くはれ上がってはいたものの、少しだけ、見慣れた顔色をしていた。

内蔵を損傷するような負傷を何度も負ったせいか、鼻や口元にはどろどろとした血のかたまりがこびり付いている。
血の気の失せた唇を、どす黒いルージュが彩っているようで。

そのありさまは、不器用な娼婦の死に様、そのものだった。


海鳥たちの声が、悍ましさすらもなく埠頭に響く。


力の抜けきった顔の中で、瞳だけが力いっぱい閉じられている。
――死の間際、彼女はどんな顔をしたのだろうか。
↓[1/3]
(-439) 2022/08/23(Tue) 19:28:06

【秘】 墓場鳥 ビアンカ → 花で語るは ソニー

死体を引き上げるならば、まず目に入るのは乳房の間に書きなぐられたメッセージだろう。

『女の穴で金稼ぎする、名誉ある男たちへ。
 下だけあれば続きができるだろ? 返しておくよ、チャオ。

 ↑下も不良品だ、9mmを一発挿れたらもう壊れた!』

ビアンカ・ロッカの直接の死因は、下腹部に打ち込まれた弾丸による大量出血とショック死だったという。
下半身にも、同じメッセージが描かれていたらしい。
それは彼女とファミリーを、著しく侮辱するメッセージだった。

――そんなものを生前書かれたなら、もっと怒りちらしていただろうから、
  きっとそれは彼女が死んで、物になったあと描かれたのだ。

↓[2/3]
(-440) 2022/08/23(Tue) 19:29:59

【秘】 墓場鳥 ビアンカ → 花で語るは ソニー

/*
お疲れ様です、ご配慮ありがとうございます。
上半身はこのような状態です。
処分していただくのも問題ありません。店の娼婦たちはみな見つかったら教えてくださいとは言いますが、彼女たちには埋葬の伝手などもないので結局はファミリーに泣きつくことになるでしょう。

ほかは、ご自由に。
なにとぞよろしくおねがいいたします。
(-441) 2022/08/23(Tue) 19:31:43

【秘】 天使の子供 ソニー → 墓場鳥 ビアンカ

引き上げた体を腕の中に抱く。タオルでも持ってくるべきだったろうか。
こうなってしまった貴方を見てすぐに、どうするべきかなんて考えられるほど男は冷静じゃなかった。
せめても彼が大事にしていた彼に見せることにはならずに済む、それが幸運か幸いか、なんて。
彼らひとつひとつの末路を考えれば一概に言えるものでもないのだということさえわからないほどに。

引き上げた体は、濡れたままジャケットに包まれた。それだって十分じゃない。
人目をはばからずに配達車まで引き上げると、助手席に渡すように彼女の上半身を寝かせた。
顔に這うように固まった血をアルコールの入っていない使い捨てのウェットタオルで拭いた。
メイクの上からでも使えるリフレッシュシートだ。香水みたいな、いい匂いがした。
ダッシュボードの中から櫛を取り出して、あの綺麗だった髪にいつも通りに通そうとして。
海水でからまった髪は、無理に引っ張れば柔い皮膚ごと離れてしまいそうだったから、やめた。

少しずつ、少しずつ丁寧にきれいにしていった。無心で、無言のまま。顔貌には表情も無い。
ただ、それだけが出来ることであるように、出来る限りのことをした。
クーラーを効かせた車の中に満ちていた花の残り香は次第に死臭に追いやられていった。
時折通りかかる漁師が車の中を覗いている気配があっても、気にもとめないまま。
ベルトに着けた隠しポケットから、Tハンドナイフを取り出して肌の上にすべらせる。
書き殴られたメッセージを、ナイフで削いだ。それは彼女には相応しくなかったから。
刃を通しても、血が出ることはなかった。

外の気温の安定してくる頃には、最初よりはずいぶん見栄えするようになった死体を見下ろす。
あの日相談を受けたその日に、彼女と彼を外へ逃がせばよかったのだろうか。
呆然と考える。合理性や確実性を加味する余裕もない、思考の逃避でしか無かった。

「……綺麗に、……しなきゃ」

働かない頭のままに考える。誰かに、こんな彼女は見せられない。ただ、それだけの考え。
何度も体を合わせた彼女との間にあったのは友情に近いもので。果たさなければならない義理があって。
だから、彼女のことを。誰よりも死体に対して礼儀を向けてくれそうな彼に、託すことにした。
マフィアの烏に渡したなんて言ったらきっと夢で悪態をつかれるのだろう。力なく笑いながら、配達車のエンジンを掛けた。
(-452) 2022/08/23(Tue) 20:25:41

【秘】 どこにも行けない ヴェルデ → 墓場鳥 ビアンカ

美しく繕われた澄まし顔。
いつも通りの表情。
ほかに知っているのは、機嫌を損ねた顔。結構口が悪いところ。
少年が知っていることは、多くない。

「……ふぅん」
「ほかにどうしようもない、か」

これまで、あなたの過去を尋ねることはなかったし、あなたも話さなかった。
同様に、あなたが少年の過去を尋ねることはなかったし、少年も話すことはなかった。
けれど、ふと。こぼれるのは。

「どうしようもなくて、それしかできなくて」
「嫌なことでもそうするしかないの、おれを生んだヒトあの女とおんなじだ」

翠の瞳が瞬く。
すこしだけ、遠くを見るように。
どこかへ行くなら早い方がいいと言うなら、多分、クローゼットから出るのが遅かった。
遅かったけれど、だからここに、今があって。
それでもあんたは行かないんだろ、とよぎった言葉は胸に仕舞う。
少年は今この瞬間、すこしだけ、いい男であろうとした。

「……ん」

だからそう、短く頷いて。
あなたの手を離さないまま、家路を辿る。
(-456) 2022/08/23(Tue) 20:38:19

【秘】 エースオブ―― ヴィオレッタ → 墓場鳥 ビアンカ

>> ビアンカ

一夜の夢を見せる。
そんな騙し文句を、女はよく口にした。

ディーラーはそうやって客に夢を見せ、
客から夢を奪う仕事だ。
そう、見せられるのは一時の夢だけ。
いくら己の仕事に誇りを持っていても、
夢破れて去る背中を見送るのは、いつになっても苦しかった。

だから目の前の女にだけ、その言葉を零していた。
自らを嫌悪して、嘲る様に。



くすり、小さく笑いを零す。

ヴィオレッタはその下手な笑い方が、好きだ。
には決して見せない微笑み。
そこにあなたの”ほんとう”を見た気になって。

いつもは少しずつしか見れないあなたの素直。
今日はそれがたくさん見れることに、
少し驚いて、楽しくて、とても嬉しくて。

だから、見逃してしまったのかもしれない。
助けを求めるサインなんて、たくさんあったのに――

[1/2]
(-460) 2022/08/23(Tue) 20:47:43

【秘】 エースオブ―― ヴィオレッタ → 墓場鳥 ビアンカ

「そこは否定しませんけれどね」

少々のお行儀の悪さを咎める事はなく、ただ頷く。
ノッテあちらのような伝手があれば、違ったのかもしれない。
でも、それは逃がしてあげられないということで――
だから、アルバうちが外は弱かったのは、良かったのだろう。

自分が逃げられないからこそ。
逃げる事をとっくに諦めていたたからこそ、
せめてこの美しい鳥には空で自由を得て欲しかった。
似た者同士の、でも抗い続けるあなたにこそ。


言い淀んだ答えの続きを待たずに、
オムレツを切り分けて、小さく口を開く。

ぽとり

手元の皿にケチャップが落ちた。
それにも気付かずに、口へとオムレツのかけらを運ぶ。
数度の咀嚼は口の端が緩んだままで。

「料理学校ならわかるのですが、大学ですか。
 正直なところ、総額は分かりません。
 ……が、入学費用くらいなら、工面できると思いますよ」

にまにまと緩んだままの口元を傾けたワイングラスで隠す。
水面に映りこんだ緑の瞳も楽し気に細められていた。

[2/2]
(-465) 2022/08/23(Tue) 20:52:26

【秘】 墓場鳥 ビアンカ → 天使の子供 ソニー

死体は何もしゃべらない。
死体は何もうったえない。

寂しさも、哀しさも、
苦しさも、嬉しさも、
悔しさも、愉しさも、

怒りも、
幸せも。

彼女はいつも全てを内包して、あの店先に立っていた。
そんなすべては流れ出してしまって、
もうどこにも残っていない。あなたが最後に施した死化粧が、醜い死体を僅かに彩る。

もし、彼女が生きていたのなら。

――なんだかやと喜び、けれど余計なことをするなと唇を尖らせたかもしれない。

もし、彼女が生きていたのなら。

――綺麗でしょう、こんなになっても? なんて、冗句になっていない冗句を飛ばして、子供のように笑ったかもしれない。

もし、彼女が生きていたのなら。

――ありがとう、ごめんね、最後まで迷惑かけて。 けっこう、あなたのことは嫌いじゃかったの、なんて、ほんとうかうそか最後までわからないことで微笑んだかもしれない。


もし、彼女が生きていたのなら。
もし、彼女が生きていたのなら。


――君の前で、笑顔以外をうかべることはなかっただろう。 彼女は、意地っぱりだから。

だから、彼女はもう死んでいた。
くしゃくしゃになった髪がぺとりと肌に張り付いて、
がたごとと揺れて、眠っているように傾いた。
(-467) 2022/08/23(Tue) 20:56:20

【秘】 墓場鳥 ビアンカ → どこにも行けない ヴェルデ


「……」

足が一度だけ、止まる。
あなたの、どこか大人ぶった態度に、ぱちぱちと瞬きをして。



「――誰が、あんたの母親なんかになってやるかっつうの」


そんなこと、言ってない。
あなたはそんなこと、言ってないのだ。


それなのにそんなことを言って、
ビアンカは手を揺らした。

家へ帰ろう。
あの狭苦しくて、不自由な籠の中に。
過去も未来も現在も、私たちをぎゅうぎゅうと押し込めてくるのだから、
せめてそこだけは心安らぎ、雨風をしのげるようにしよう。


「ん」


「ヴェルデ、あのね──」

(-468) 2022/08/23(Tue) 20:59:11

【秘】 墓場鳥 ビアンカ → どこにも行けない ヴェルデ





「いっしょにかえってくれて、
 ありがと、ね──……」



彼女は、さびしがりやだ。
(-469) 2022/08/23(Tue) 20:59:46