【人】 天原 珠月[このコテージにはちゃんとキッチンまであり、外でのバーベキュー以外にも食事には困らなさそうで一安心。 材料面というより幼馴染が使える設備という意味で。 キッチンを探りたくなる気持ちを抑え、その奥の窓へ。 カーテンとガラス窓を開けるとほんのり涼しさを増した風が頬をかすめて部屋の中へと入っていった。 森の方は木々の影が長く伸び、複雑に交差している。 深い森の恐ろしさというよりは森のざわめきに癒やされる心持ちの方が強いが、迷子になりやすいかもな、とは思った。 ふと思い出す記憶がある。>>54 幼い頃にまだ見知らぬ土地をひとり彷徨っていたとき。 全部が嫌で、全部が怖く見えて、近づいてきた大人たちからも逃げ、びーびー泣くしかできなかったとき。 『だいじょうぶだよ』と言ってくれた声。 見上げた顔。表情。一緒に進んでは止まる足音。 あの頃から自分より大きかった手。] ……。 [あの時って幼馴染は、雅空は幾つだったんだっけな。] (139) 2023/03/01(Wed) 19:09:07 |
【人】 天原 珠月……いやいや、この年で迷子はしないから。 [なに思い出してんだか、と自分に突っ込む。 ええーそんなの記憶にないし。私幾つだったと思ってんの、といつだったか幼馴染に抗議した覚えがある。 実はめちゃくちゃ思い出せるとか、あの後数年は懐きに懐いていつも後ろをひっついて回る勢いだったとか、保育園じゃなくて小学校に着いてく!と母親を困らせたとか、お兄ちゃんと呼んでた時期があるとか……覚えてないったら覚えてない。 最後は中学に上がるまでの話だから無理がある嘘だが。] 昔のこと思い出すって、年かなぁ。 雅空兄ぃのじじくささが移ったかな……。 [なんて呟いた。*] (140) 2023/03/01(Wed) 19:09:20 |
【人】 天原 珠月[やっぱり幼馴染はキッチンが気になる様子。 そういえば色々持ってきてそうだったなぁ。 予想通りというわけで、キッチンを素通りした>>139のは正解だったと頼まれたリビングの窓を一通り開けていく。 さすがにちょっと寒い気もするが少しは我慢である。] こたつ入りたい〜。 [こっそり寄り道して手を突っ込んでみる。 まぁ当たり前だけれどスイッチが入っていないため中はひんやり冷たく、子供っぽく眉を下げてしまう。 風呂場へ突入すると幼馴染の言っていたチェック項目に加え、備品にしっかりドライヤーがあるのを確認する。 しっかり使い付けのシャンプーや化粧品は持参していたが、コテージにもセンスの良いアメニティグッズが準備されていた。 幼馴染はこういうのは持ってきていないと決めつけていたが、自分のものを貸してやる必要はなくなったわけだ。 ……良い香りの選んできたし、せっかくだから旅行の間くらい分けてあげないこともないけれど。] (166) 2023/03/01(Wed) 21:19:51 |
【人】 天原 珠月[そしていよいよ2階である。 屋根裏部屋は永遠の憧れであり、そのためにアルプスの少女になりたいと願う時代があったくらいなのだ。 幼馴染も部屋を誕生日にねだられた時には驚いたはず。] 階段は意外と急だね。 [さすがに一軒家のようには広くないから仕方ない。 今日はパンツスタイルなので、遠慮なく先を登らせてもらうと、上に着いてから手を差し出した。] ……天窓だ。見て、ほらっ! [干し草で出来てはいないちゃんとしたベッドが二つ並び、間のテーブルには小さなランプが置かれていて。 寝転がるとちょうど夜空が見上げられる位置に窓がある。 片方のベッドに駆け寄り手をつくと窓から空を仰いだ。 夕暮れの気配のする空に薄い雲、悠々と鳥が飛んでいく。] 夜は静かそう。森の中だもん。 [いつもの家とは全然違う環境に来たのを実感する。] (168) 2023/03/01(Wed) 21:37:57 |
【人】 天原 珠月ふぅ、さすがに少しは疲れたかなー。 [そのまま大きく伸びをする。 屋根裏部屋だけあって下の部屋より大分狭く、ベッドだけで精一杯な空間でもあり、必然的にそれぞれの距離は近い。 上にやっていた視線を下ろすと幼馴染が、いる。 数秒の間さえ開けず、子供のように笑う。 さっきの幼馴染につられたみたいに。] ……ベッドの間越えて蹴ってきたら枕投げるからね? [多分蹴られなくても投げる。確定事項の笑みだった。*] (169) 2023/03/01(Wed) 21:38:02 |
【秘】 天原 珠月 → 月島 雅空― 別世界の話 ― [ペルラは幼い頃に祖母から聞いたことがあった。 自分たちの暮らす島を浮かせる力を持つらしい巫女と、その巫女に仕え守り続ける守り人の伝説のようなお話。 生まれ育った場所は浮遊する大地の端っこで。 険しい山ばかりの島にしがみ付くように存在する小さな村。 住民は少ないけれどみんな家族のようなところ。 物心ついたときには羊や山羊を犬と一緒になって追いかけ回し、小さな妹や弟をおんぶして家を手伝った。 適齢期になれば村の男性と結婚し、家業を継ぎ、子供を生み育てていく。それもまた幸せだ。 でもきっと、この高い高い山の向こう側に行くこともないのだろうと、時折ひとりで空を見上げながら思っていた。 ――ある日突然やってきた、島を治める長老たちの使い。 彼らに『次の巫女になって欲しい』と言われる時までは。] (-106) 2023/03/02(Thu) 0:59:02 |
【秘】 天原 珠月 → 月島 雅空[まず思ったのは、巫女って本当に居たんだということ。 今の巫女が自分を占いのようなもので見つけ出したらしい。 長老の使いは丁寧に分かりやすく説明してくれた。 この世界には不思議な力を持つ者が珍しくはあるが当たり前に存在しており、それぞれ能力を生かして生活している。 巫女もその中のひとりとも言えるが、力の及ぼせる影響が人々の暮らす島の浮力の維持であることから、なくてはならない存在、決して途切れさせてはならない存在である。 巫女は見習いから始まり、今の巫女が役目を終えたと同時に後を継ぎ、定期的に島の様々な場所で祈りを捧げて過ごす。 巫女はこの島のために在る。 この島には巫女がいなくてはならない。 だから特別視され、ある意味、神聖視されている――と。] (-107) 2023/03/02(Thu) 1:00:00 |
【秘】 天原 珠月 → 月島 雅空私、巫女になります。 大丈夫、ちゃんと、頑張ってくるから。 [両親は自分とは別に巫女の説明をしてもらっていた。 父は険しい顔をして母は泣いていたが、何かに納得し覚悟を決めたかのような瞳もしていて、ただ何度か頷いた。 賛成もしない代わりにぎゅっと強く抱きしめてくれた。 巫女見習いになると決めたのは10を数える頃。 すぐに生まれ育った町を離れることになる。 長老の使いたちが乗ってきたのは古めかしい飛行船だった。 大きくて丈夫そうだけれど、ギシギシ耳に痛い軋む音がして、窓が少なくて外は見えないのに風の音ばかり響いていた。 山を越えるのをきちんと眺めることは出来なかった。 すでに丁重に扱われはじめているのは気づいていたからこそ何も言わず、ただ、はいと頷くのを繰り返していた。 島の中央が栄えた街というのは噂で聞いていたが、本当に建物ばかりで溢れ、人がたくさん行き交い、夜になっても明かりが灯っている、田舎者には目まぐるしい世界で。 修行などはここで、と街の中央に建つ、塔のある石造りの高い建物に案内された後は、自室もそこに与えられた。] (-108) 2023/03/02(Thu) 1:01:32 |
【秘】 天原 珠月 → 月島 雅空[自分には不思議な力がある。 というのをあっさり認められたのは、物心つく頃からそれらしい経験をしており、村や村に訪れる行商人にも時折そういう力を持つ人が居て、話題だけなら僻地の村でも交わされていたために、そういうものなんだなとふんわり理解していたからだ。 さて、それがどんな力かというと、だけれど。 実は内容はよく分かっていなかった。 なんとなく物を浮かせられる気がしたり。 なんとなく手をかざしたら人の怪我が早く治る気がしたり。 なんとなく水に景色らしきものが映ったり。 そんなひどくあやふやで説明しがたいものだったのだ。 でも、たしかにこの中に巫女の力が潜んでいるらしい。 ここから巫女として島の浮力の助けとなる力へ全部を集め注げるようにならねばならないと言われ。 街に来た翌日から、もう厳しい修行の始まりだった。 身を清めるための泉に浸かるときだけはひとりで、震えをおさえてまっすぐ立ち、ため息にならないように息を吐いていた。] (-109) 2023/03/02(Thu) 1:04:38 |
【秘】 天原 珠月 → 月島 雅空[巫女見習いとして真面目であれば何も言われない。 表情が固かろうが、必要なとき以外は無口であろうが。 この島のため。この島のため。 きっとお父さんもお母さんもみんなも応援してくれている。 必死な日々は過ぎてゆこうとしていた。 ――そんなある日。 巫女見習いさまの守り人候補だと連れられてきた彼は。 たくさんの大人たちに囲まれているのに、なんだか堂々として臆する様子を見せない年上の少年だった。 石造りの部屋の中、窓は閉まっているのに。 何故だろうか。ふわりと風が吹いたような。 彼の周りにだけ感じる澄んだ気配に目を瞬かせる。 そして次に発する台詞もまた、予想外すぎるものだった。] (-110) 2023/03/02(Thu) 1:05:28 |
【秘】 天原 珠月 → 月島 雅空[ちびちゃん、と彼は呼んだ。 しゃがんで目線を合わせる仕草は自然で、でもここの大人たちのように畏まっていなくて、距離が近い。 彼の瞳はうつくしい青色をしていた。 いや、ただの青ではない。 泉の清らかなばかりの色とも、深い湖の少し怖い色とも違う。 空みたいだ、と思った。 周りの大人たちが見えなくなった。 気づいたら、ただひとつ頷いていた。 それだけではどちらへの返答か分からなかったかもしれないが、じっとまっすぐ見つめる紫がかすかに潤んでいた。] (-111) 2023/03/02(Thu) 1:08:14 |
【秘】 天原 珠月 → 月島 雅空私も、あなたの名前が知りたい。 ……ちゃんと、呼びたい。 [視線が交われば、風に水の香りが添えられる。 それは水と親和性の高いらしい自分の力の影響か。 おそるおそる手を差し出す。 優しくも不器用な問いへ、震えながらも強い答えだった。*] (-112) 2023/03/02(Thu) 1:09:51 |
【秘】 天原 珠月 → 月島 雅空― 巫女見習いの日常 ― [守り人候補との出会いを経ていくらか。 石造りの塔に一日中こもる生活は変わっていなかった。 自らの力と向き合う修行がメインなのは当たり前として、力を捧げていく島についても学ぶのは大事なこと。 科学的な知識に実用的な地理、人づてに語られる伝承もと、読み書きは一応出来るものの膨大な文書に目眩がする。 あとは一般教養に礼儀作法も身につけねばならない。 巫女は神聖視され、ある意味では特別扱いされる存在のため、人前では常に相応しい言動をするべきというものだった。] ……。 [塔にある図書室にはひとつだけ窓がある。 どうしても疲れたときにそこから空を眺めるのが習慣だった。 今日も先生が退室した隙に、ほんの少しだけと自分に言い聞かせ、石造りの冷たい窓枠に手を乗せて顔を上げる。 午後の空は明るく青く、薄暗い室内に慣れた目に眩しい。 こしこしと目を擦りながら視線を動かしていく。] (-158) 2023/03/02(Thu) 15:56:27 |
【秘】 天原 珠月 → 月島 雅空[中心街でもこの一角は石造りの建物が多いが、少し離れた向こう側には、昼でも夜でも細長い筒から煙がもくもくと立ち上り、明かりの消えない、鉄などで出来ているらしい茶色い建物が複雑に今にも崩れそうなバランスで組み合わさっている、この辺りとはまた雰囲気の違う場所がある。 地理の勉強によると、様々な飛行艇の整備工場や他の島までも行けるような飛行船の発着場などがあるらしい。 今日はそちらが気になりじっと目を留めた。 理由は最初分からなかった。けれど。] ……鳥? [煙に紛れるようにして、一羽の鳥が飛び立ってゆく。 群れじゃないなんて珍しいなぁ。 なんとなく視線で追い続け、あれ、違うと気づく。] 鳥じゃない……? [鳥にしては大きい。 でも、両翼があるように見える。 ひらりひらりと旋回し、高度を増し、姿が小さくなる。] (-159) 2023/03/02(Thu) 15:56:36 |
【秘】 天原 珠月 → 月島 雅空もしかして、人? [知らず知らず身を乗り出し、息を止めて目をこらす。 きら、きら、と。銀色の何かが太陽の光に反射していた。 あの鳥は、どんな景色を見下ろしているのだろう。 どんな風を受けて、どこに向かい、何を思っているのだろう。 自由に空を舞う姿がうつくしく心に刻まれていく。 鳥の正体をまだ知らない日のことだった。**] (-160) 2023/03/02(Thu) 15:57:06 |
【秘】 天原 珠月 → 月島 雅空― 巫女と守り人の日常 ― [自分は記憶力には優れているらしく勉学は順調で。 しかし力の方向性の制御に関してはなかなか上手くいかず、試行錯誤を繰り返しては調整を見誤ってその日の力を使い切り、ヘトヘトになったり立ち上がれなくなったり。 そんな日々の中、今日は風を待っていた。] ……昼下がりの鐘。西側の塔。4階の窓。 [昨日アスルから渡された羊皮紙は、小さく折り畳んでずっと袖の内側に仕舞っていたせいで皺くちゃだった。 彼の仕事場を訪れたときは長老の使いも隣にいたというのに、こんな内容の秘密文を堂々と差し出すものだから、誤魔化して隠すのが大変だったのだけれど。 午後のこの時間はいつもひとり。 4階は図書室。窓はひとつ。計ったかのような指示。 風を待てとは、一体何をするつもりなのか。 彼が風に関する不思議な力を持つのは知っている。 なにか飛ばしてくるとか? お届け物かな? 約束の時間より少し前、たたっと窓へと向かう。 何か飛んできても受け取れるように開け放ち、一応ドアから先生が来ていないのを確認してから目をこらした。] (-184) 2023/03/02(Thu) 18:38:46 |
【秘】 天原 珠月 → 月島 雅空……え? [何度か眺めたことのある鳥が飛んでいる。 今日もこの時間なんだなぁ、なんて思っていたら。 近づいてきている、ような。 街の上を悠々と旋回していると思えば、一気にこの塔の方へ、何なら自分のいる窓を目指すような動きで。 え? え!? ぶつかる!? いつもこちらまでは来ないのに。 あの鳥は何を考えて……いや、違う。 あの人は、 ――――アスルだ!] (-186) 2023/03/02(Thu) 18:39:38 |
【秘】 天原 珠月 → 月島 雅空……ッ、……うん! [考える暇はなかった。 衝動と本能、背を押してくれる力。 鐘の音が鳴り響く中、風に彼の声がする。 窓枠に足をかける、両足で立つ。 不安定に揺れる身体。 自分には自分を浮かす力はないはずで。 でも、踏み出した。窓枠を思いっきり蹴った。 こちらへ飛んでくる鳥へ、彼へと手を伸ばしながら。] (-187) 2023/03/02(Thu) 18:40:34 |
【秘】 天原 珠月 → 月島 雅空きゃ……っ [4階の高さから重力に逆らえず落ちていく身体。 肩までの金髪と真っ白な装束が風に遊ばれる。 つかの間の恐れをかき消すように。 伸ばしたままの手を力強く掴み取る手。 くるりと一回転すれば今までの全部がひっくり返るような感覚とともに身体が軽くなっていく。 引っ張り上げられ抱き寄せられ、必死で声に従う。 わたわたと伸ばした片手が取っ手にどうにかしがみ付き、彼の手に包まれ、掴まれている片手も同じように。 軽い身体は風に揺れるけれど、心に安堵が押し寄せる。 触れ合った手と抱き寄せられたときのあたたかさが鮮明で。] も、もたれるって、こう? 大丈夫? [重くないのかなって思うが今はそれどころでもない。 初めての空中に、初めての乗り物に、初めての飛行。 導かれるままに姿勢を安定させると、ふわり、翼のようなグライダーは風に乗り、鳥のように空を飛び始めた。] (-188) 2023/03/02(Thu) 18:41:44 |
【秘】 天原 珠月 → 月島 雅空アスルのお家? わぁ、大きな湖がある……きっと素敵なところね。 [こんなビックリなことをいきなりするなんて、という抗議は欠片も出てこなくて、でも心臓はドキドキしっぱなしで。 頬を紅潮させながら景色を見渡す瞳は大きく輝く。 声だって最近のおとなしい響きではなく、子供のように張り上げられ、アスルの言葉に溌剌として返した。] そう、私のお家はあの山の向こう側。 険しい谷もあって、いつもすごい風が吹いているの。 [あそこには行けない、の言葉に眉が下がる。 こんなに鳥のように自由に飛ぶ彼にも無理なんだって。 でも、いずれ、という呟きが実は届いたから、もしかしたらという期待が胸に消えない光を残してしまう。] (-189) 2023/03/02(Thu) 18:42:27 |
【秘】 天原 珠月 → 月島 雅空空を飛ぶって、すごいね。 [鳥なんじゃないかと思っていたのは、アスルだった。 この人は鳥のように自由に空を飛んで、風の中を舞うように翼をはためかせるのだ。 振り返ったら青い瞳が予想以上に近くにあった。 何を言わずにじいっと見つめた。 空の色のように様々に移り変わる青に、景色と一緒に、自分の姿が映り込んでいるのに、何故か心が震えた。] うん、きれい。 [満面の笑みを浮かべる。] この島は、こんなに広くてきれいなんだなって。 たくさんの色があって、たくさんの人や生き物がいて。 [私はこの島を守るための力になれるのだと。 初めてちゃんと思えた気がした。] (-190) 2023/03/02(Thu) 18:44:24 |
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